Novel - Paola | Kerry

it's just you


背負った太陽3

20/09/15
78

朝起きたら、
突然目隠しをされて

何故かそのままズンドコ運ばれ…


気付いてみたら




何やらどえれぇ儀式で祀られていたんですが…




「メルちゃん〜!びっくりした?」

『ちょ!?お爺ちゃん!?』

「いやー孫の一大イベントだから
お爺ちゃん張り切って準備したよー!
いい拝堂はいどうでしょ!!」

『はいっ!?拝堂はいどう!?』

あの礼拝堂の拝堂で間違ってないよね!?
いや悪魔礼拝堂っていいの!?あれ!?
礼拝堂って神様拝むアレじゃなかったっけ!?
いやそれは神殿!?礼拝堂ってお寺だったっけ!?


メルはあわあわしてもうてんぱっていた

中央に腰掛けられて、何時も着ている黒いマントとは違う
悪魔の角のように二本頭から出ている赤黒いマントを着せられて
膝の上に両手をグーにして肩を縮こませたまま居るしかなかった。

いつも着ている服とは違い、
上下わかれた着物は久しぶりな気がする。
上は薄い赤で下は濃い紺色の膝上丈のスカート。
靴は何時もと同じような少しヒールのある黒いブーツを付けられて


自分を中心に大人がドンドコドコドコ、ドンドコドコドコ…
下を見ては上を見て歩いていくのが異様過ぎて脂汗しかでない。

「理事長からメルちゃん降魔の儀してないって
聞いたから〜超特急で準備したよ!」

「いやー懐かしいなぁ何歳だ?6歳?5歳位したよ〜」

『ちょ、ダリ先生にツムル先生!?』

そうぎょっとして手が猫の手になったまま宙をさまよう


「メルちゃんの出身地は
特殊だから作法も違うし面白いでしょ!!」



そうですね!!!人間ですから!!!!
そう強く思いつつ歯を食いしばった。



『にしても降魔の儀って一体何ですか?』

「悪魔の誕生を祝う儀で参列者は捧げものを用意し、
仮装して踊りや歌を歌うんだよ。」

つまり人間界でいう所の誕生日会だ。
上を見上げると星や丸い形をしたライトが
コウモリにつるされてほんのり明るい

「しかしこれ程まで見事な式は始めてだな…」

「まぁそもそも毎年式をする悪魔もそういないからねぇ〜」

『あわわわわ…』

「メル先生〜!おめでとうございますー!」

『ドゥルジ!?どうしたのこんなところに』

「丁度職員室に居たのに
誕生日聞きつけてついてくるって聞かなくて…」

そう言ったオリアスにメルはああ成る程と納得した。
きっと彼女のことだ。メルの誕生日会に参加しなければ
悪周期でもなんでもなるとか脅したのだろう。

オリアスが若干引いてドゥルジを人差し指で
そっと指を指して説明したのに
メルは苦笑いで答えた

『にしても綺麗だなぁ…』


そう言うメルにオペラがきょろきょろする
カルエゴが来ていないのを確認して
バラムに聞いていたのだが
どうやら仕事が忙しくて来ていないらしい。

それにふぅむと唸った後、オペラはメルを呼んだ
それに近くにいたオリアスやドゥルジが気付く

『なんでしょう?』

「魔女になれば悪魔の召喚は
いくらでも可能でしょうか?」


『あぁ、そうですね。捧げものによりますよ。
オペラさんが望むなんて珍しいですね。』


贈り物をその悪魔に渡していまして。
そう言ったオペラを快く承るメル
その姿にドゥルジが「え?アレ理解してます?」
と言ったのに「ごめん否定できない」そうオリアス
がフードを深く被ったのに、マルバスが苦笑いで見ていた

流石にこんな場所に召喚するのも悪いですし
そう言ってメルが円から離れた場所に赤い杖を手に取る
そちらは?とオペラが問うのにメルは描きながら答える

『これは悪魔を一時的に召喚する用の杖です。
悪魔の召喚用の印さえ手元にあればその通りに円を描けば
まぁ一時間だけですが召喚可能なんですよ。』

「ほぉでは此方を」

『はいはい…あれ?これ見たことあるようなないような…』

まぁいいか!そう笑うメルにオペラは深く頷いた
グルグルとメルが地面に描く所を
じっとオペラやバラム達も見守る
できたぁと笑うメルにオペラが拍手をする

『“混沌を生みし一欠片の魂よ
我が力我が身において
此処に召喚されよ”!!』

いでよ悪魔!!そう言って左手は赤い杖を掴みつつ
右手を上げたメルの前にポンと何かをしていただろう
カルエゴが椅子に座った状態だったのか膝を揃えて宙に召喚された

「…何故私を召喚した???」

『わあああああああすいません
すいませんすいませんすいませんすいません』

まさかナベリウスの印だとは思っていなかった。
見たことあるなぁとは思っていたが、
何故そこに渡したオペラさん!!!
メルはカルエゴの片手で
頭を掴まれてもう軽く滝のように涙を流す

「おお、これが魔女の力ですか…」

「アンタの仕業かぁ!!!!」

「…よし」

「よしじゃない」

カルエゴの腕を掴んだオペラにカルエゴが低い声で答えた。
というか小さくない?そう言ったダリに
メルがいやぁと嬉しそうに答える

『私も未熟な者でして、ちょっと可愛い!!』

「今すぐ解除しろーー!!!」

「一時間は束縛されます」

そう言ったオペラにメルはすいませんと平謝りするしかない

「じゃあメンバーも揃ったし、始めようか」

そう言ったサリバンに周りが円の外に出る
ゆっくりと動き出し、「ハウェヤー」と唱えている
金色の豪華な葡萄のツタの装飾が入っているワインみたいな杯に
水を入れて、ラファイアと唱えると炎がでる。

水が燃えている現象に、
メルはじっと見ているしかなかった

『(ハッ!ってどうしよう私作法知らないんだけど!?
悪魔の降魔の儀って何かで本みたけど覚えてないんだけど!?)』


間違いなく本に書かれているのに
ここ最近清書と楽譜の譜読みで頭がすっぽり抜けていた

何かしたらいいかなと思ったがそっと横から声が聞こえる

「ーいや、何もしなくていいさ」

『っ!オリアス先生!?』

「降魔の儀ではまず、魔中水まなすいって水に火を灯す。
これは参列者の魂を表しているんだ。」

「順番にその火水を主役の大桶に移す。
自分の命の灯火を分けてやるように。」

「そして捧げものを掲げ感謝の言葉を伝える。」


「ありがとう」

そうメルの前に、ダリが翼を広げて贈り物を差し出す
目を丸くして驚き固まるメルにオリアスが肩をつついて指を指す
気付いたメルはそっと捧げ物を手に取った



「ー過酷な魔界において命は儚く貴重なもの。
降魔の儀は悪魔にとって命への感謝の儀だよ。」


君がこの世界で生き続けるというのならば。
仲間としてこの世界を守ってくれるというのならば。
折角生まれた誕生日を無視して
イベントを起こさないとはいかない。


「ありがとう」


そうダリに続いてスージーが手渡してくる
それにメルも礼を言った
小さな小包みや大きな袋から様々な物が渡される

翼を広げて捧げる者や、翼を広げずに飛び込んでくる者
様々ではあるものの皆言うのは「ありがとう」だ。
何故そんなにお礼を言うのだろう?

私は何もしていないのに。


そう思っていると、サリバンやオペラが終わり
後ろにいたオリアスが回ってメルの元に膝をついて言う




「生まれてきてくれて ありがとう」




そう言ったオリアスの言葉にメルは目を丸くした
今まで、こんなことあっただろうか?


「やーメルちゃんの誕生日10月だったんだね!
今までどうして言わなかったの〜」

そうダリがメルの肩にポンと手を置いた
目を見ると、メルはぽろぽろと涙を流していた

「ああああ!ダリ先生メル先生泣かせたー!!」

「っえええ!?ちょ、ごめ、嘘でしょ!?
そんな誕生日言うの嫌だった?!」

「大丈夫ですよ、今から燃やすので」

「え!?何を!?俺を!?」

そう言ったダリに
イフリートが半目で手から紫色の炎を出すのに
ダリが目を開けて焦りまくって訂正をいれていると
メルの言葉にびくりと驚き周りは緊張を張る

『…ちがうの、』


ーどうしてこんな簡単なことが出来ないの!!

そう少女を叩いて叫ぶ女性に少女は首を横に振って謝った

ーごめんなさい

『ちがう、っ、く、あのっ、ね』


最初は、どうして私のことを殴るのだろうと思った。
私は悪い子だからだと言い聞かせることで世界が私を
嫌っていることを、何とか納得させることしか出来なくて。


その声がか細く、立ち上がり歩く
ふわり男性が白装束で叫ぶ

ー嗚呼神よ嘆かわしい!!
何故このような使えない者を出したのです!!!

ーごめんなさい


僕は悪い子だから、何処に行っても足手まといで
何をやっても上手くいかなくて、
何も何も与えられることは出来なくて
嗚呼呆れられるんだろうなと思ってあるいていた。




ー嗚呼、貴方を産まなければよかった




そう言った貴方にただ、申し訳なくて。
僕はずっと貴方に受け入れて欲しくて欲しくて。
愛を、貴方に愛されることを、

望んで手を伸ばした先は
暗闇なのに叫ぶことしかできない。
そんな自分が嫌で消えたかった。


『ごめ、んね?ああ、バグっちゃったかなぁ…』

「…メルちゃん、」



でも、そんな僕の手を取ってくれた人がいた。
それは血まみれの場所よりも木の中よりも前に



ー僕ね、貴方の力になりたいの

そう女性の影が消えて光が差し込む
少女が顔を上げて光の先に
手を出そうとするのを引っ込めて縮こまる
まるで叩かれるのを身体ごと守る様に丸めたのを思い出す


嗚呼、貴方はずっと此処こころに居たんだね。
金色の髪の毛をした、白い翼を生やした貴方は
僕をずっと前から、見守ってくれていたのか。


『僕、ね?…こんな、こんな風にお祝いされたことなくて』

ぽろぽろと落ちる水に、メルは首を横に振って
手渡された荷物を抱え直す


ああ、あの時伸ばした手を掴んで良かった
あの時桜の木の下で手を取ってよかった

『ありがとうって、沢山皆に言って貰ってね』

ぎゅっと掴んだ荷物を持って、
前を向いてしっかり言葉にする。

ああ、あの時夜空に浮かんだ彼女の手を取ってよかった
あの時血まみれになって手を取ってよかったって。


『とっても嬉しいの!
みんなありがとう!!』



あの時貴方の手を取って、生きていて
今、良かったって心の底から言えるんだ。


そう笑ったメルに、
周りがスンと静かになった後

メルをぎゅっとドゥルジやツムル、スージーが抱きしめる
固まるメルにこらぁとオリアスが叫ぶ

「いやなんか抱きしめなきゃいけない気がして…」

「ねぇ?」


うんうんと頷くドゥルジに
メルはきょとんとしたままだ


「今日は皆がメルちゃんに
ありがとうっていう式なんだから、
ありがとうって言わなくたっていいのに〜」


『っえ!?あ、そ、そうなの?』


そう照れるメルに、ドゥルジは微笑んだ
わぁー私毎回言っちゃった〜!と言ったメルに
ツムルが可愛くて皆言わなかったのにーと
イチョウにブーイングを出した




「…とても幸せそうに笑いますね」

「ええ、本当に。」

そう言ったイフリートにダリは目を細めた
皆の誕生日教えてー!と言ったメルに
オペラがカルエゴの誕生日を伝える。

それにカルエゴが自分の誕生日を伝えろと怒るのに
メルが腹を抱えて口を大きく開けて笑う


冷たい目でダリ達を睨んだ
あの銀色の目とは違うのに
ほっと息を吐いた。






「降魔の儀なんだから…もう、
君が帰りたいと言っても帰らせたげないよ。」

そう言ったダリにオリアスがくすりとほほ笑んだ



彼女メル此方バビルスの物だ。
誰にも、渡させやしない。渡す訳にはいかないのだ。


悪魔を魅了する、メルは一体誰の手を取るのだろう?


「さ、メルちゃんに僕も誕生日教えておこー」

そう言って向かったダリにメルが手を振って笑う
メモを取るメルに手帳に記した方が楽じゃない?
と言って取り出したダリにメルが納得する。

「良いんですか?混ざらなくて」

オリアスに近づいたのはオペラだった
メルはダリやドゥルジ達と笑っていた

「…賑わう所は苦手なんで」

「メル様を
引っ張り出してくれて
ありがとうございます。」


「此方こそ、メルちゃんを
魔界に連れて来てくれて
ありがとうございます。」


きっと人間界に居たら
今頃天使の餌食になっていた
と思うと血の気が引く

皿の上に寝っ転がった
メルのことを想像して首を振った


「いえいえ、約束されていましたから。」


まぁ約束無くても知っていれば
すぐにお迎えに行きましたよ。
そう言ったオペラにそりゃそうですねと答えた。





+++++++++++++++++++++++++++

にしても沢山貰ったねぇー
そう言ったオリアスにメルは大きく首を縦に頷いて
『うん!』と答えた

荷物が余りにも多い為、
サリバンが馬車を使って
今は帰る事が多い女性寮にオペラを使ったのだ。


同じ寮のスージーはダリが付き合いがあるらしく
メル一人では可哀想だからと
オリアスに付き添いを命じたまま
何処かに消えて行ったのだ。


『僕ね?こんな沢山の人に
ありがとうって言われたことなくてさ
何処に行っても紛い物って貶されてたから
きっと僕は誰にも知らなくて
何処かでそっと死ぬだけで
終わるんだろうなって思ってた。』


そう言うメルに、
オリアスは少しきょとんとした顔で話を聞く

身体の中でぐったりしたまま
体温が消えていくのではなく

誰にも知られない森の奥深くで
横たわる彼女等想像したくない


『でも、あの人に出会って私の世界は変わった。
貴方にも出会えて、皆に会えて
…ちょっと逃げたって
すーーぐ追いかけて来ちゃって。』


「それ程、放って置けないんだよ」


『私何も出来てない。
何も貴方達に渡せれてない。』


「いい、充分してくれた。」


『どうか貴方達が、笑って過ごせるように。
僕ずっと笑って生きたいなぁって!』


そう思えた一日だったよ!


そう笑うメルにオリアスは
目を丸めた後ふっと笑っていて

メルはきょとんとした顔で首を傾げた


「ああ、そうすればいいさ。
きっと皆笑って返してくれるさ。」


ずっと一緒で、僕も嬉しい。


そう言って、何時かメルが
寂しく手を伸ばした願いを。

多くの悪魔がメルを
寂しくさせないように。


これからは誰が何をしようが、
メルを手放さない。


それはオリアスも同じだった。



「(誰がこの者を傷つけるというのだ)」



そうすれば、全力でメルを守るだろう。







今度こそ、間違えずに、
しっかりと手を掴んで離さずに。

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