Novel - Paola | Kerry

it's just you


誰もすくえなかった子

20/09/15
80

『…天使と悪魔』

それは白と黒の存在。その中間が此処
シャーペンで指す場所。人間。

何時もの様にメルは休日をログハウスで過ごしていた
資料と見比べつつスラスラと描けるようになったのは
ちょっとどころかかなり嬉しい。

最近の悩みの種と言ったら棚を見る度に青ざめるのと、
日本語を間違えて書いてしまう癖に悩まされるが。
今は基礎的な部分を通り越して神聖な物の位置にいた。


ミレイユの話が童話はおろか天使や
悪魔の存在の逸話に全く関わっていないのだ。

『ふぅむ、ダンダリオンやムルムルはいるんだがなぁ』

悪魔は悪魔。聞いた方が速そうだ。
そう思ったメルは良しと言って青いノートと黒い本
「悪魔について」の本を持って何時もの寮に戻る。

『あーでも皆忙しいかんなぁ…しゃーねぇ一人図書館に篭るか。』

そう言って寮から出るために
いつも付けている薬瓶の入ったポシェットを腰に巻く
魔女の恰好を新調しようと思いつつ、
どんな服装にしようかなとも考える。


『出てきてスクーパ。バビルス図書館まで』


そう出て来たスクーパ(箒)に乗りそのままひとっとびする
それを後ろから見ていた影も気にせずに。


メルは図書館の書庫に来ていた
コツコツと一人の足音が心地よい。


『えーーっと、悪魔悪魔悪魔のー
家系家系家系がーーーーーっあった!!』

これかぁと棚を一覧みてひぇっと声が落ちる
まあこれ位朝飯前になるよな。そう半笑いしながら。
黒い本悪魔の本と書かれたのはA4の少し分厚い本だった。

開いてバビルスにある本を開いて横に置いて、手前にノートを置く。
それも面倒だったので、本を立てれる奴を図書館から借りて
斜めに立てかけて見比べつつ書いていくことにした。


『えーゴエティア…ソロモン王が使役したという
72人の悪魔を呼び出して様々な願望をかなえる手順を記したもの
必要な魔法円、印章のデザインと制作法、必要な呪文など』

そうは言っても印章のデザインは
家系で違うというのがここら辺あっているのか?
うんうんと頷きながら薄く本に印をつけていく。
此処はあっていて、この場所は良いと。

『って、私72も書くのおぉ?…あ、ナベリウスある
おっダンダリオンにムルムル、あーやっぱ悪魔だなぁ…』

そう苦笑いしながらページをさらさらとめくる。
場所は違うが殆ど内容は同じなようだ。これは楽では?
ふと止まったページにメルは目を止めた

『オリアス…惑星の在り処を知り、
星の効能を教示するといわれ、
占星術と結び付けられることがある』

成る程あながち間違ってねぇな。
そう思いつつ、
悪魔の本とは違う記述におん?と声を上げた

『あれ?友人や敵からの
好意をもたらす力の関係が書かれてねぇな。』

そう悪魔の本には書かれており、
図書館の方には書かれていない物が記されていた。
恐らくだが悪魔の本も正しいものだ。
手書きではなく印字の色合いに
へぇとため息交じりに目を丸くして見る


『お、ダンダリオンだダンダリオン』

そう我らが教師統括の苗字を連呼する。
いやぁ言いやすいし覚えやすいよねダンダリオン。

『へぇー無数の老若男女の顔を持ち、
右手には書物を持った姿で現れるとされるねぇ〜
あぁー確かに若い様に見えるから間違ってないなぁ』

苦笑いしつつメルはノートに
悪魔の印と彼らの絵を描いていく


日本語に書かれている物を
見比べつつ楽しくなってきた


『愛を燃え立たせる力、及び
望む場所に幻覚を送り込む力を持つ、か。
…あここら辺も書かれてねぇな。』

多分この力関係は個性に近いのだろうな。

『…召喚した際の効果がありそうだな。』

そう思ったメルは持って来ていた用紙にそれぞれ書き上げる
ダンダリオンやナベリウス等教師陣の苗字をスラスラと
空中に浮かばせて居ない方の苗字も分けて調べる。

『…流石にゴエティアには掲載されていない。か』

舌打ちをしつつまとめた用紙をチラチラと見比べる

『あーーわっっかんねぇ!!
天使の資料はこの悪魔の世界だとないし。
空想生物学の範囲になっちまうしなぁあああ』

うーんと背を伸ばして今まで
まとめた資料を悪魔の本に挟む
今日は此処までにしておこう。
そう思って挟んだ後でぺらりとはがれた用紙に気付く

『あれ?なんだこれ?赤字のヤギ…?』

そう赤いマークのヤギの印に警告と書かれた文字が見える
一体何があるのか分からないがひとまず本に挟み直す。

赤ヤギのマークは何かに書かれていた気がしたが
まぁ気にしなくていいだろ。
手を上げて本を元の場所に戻し部屋を後にする。

廊下を歩いていると電話が鳴った。
どうやら職員会議らしい。
内容を聞いてすぐに帰ると伝え電話を切った。

『スクーパ!!』

そう言ったメルの腰元に箒が入る
箒に乗ったメルがスピード上げてと言って速さを上げた
背後からの視線に気を取られないようにぼそりと
箒に身体を倒し声を小さくして指示する。

『…スピード速くして撒け』

そう言った途端箒の速さが上がり
帽子が飛びそうになるのを抑える

窓から飛び出してスレスレの状態に少し焦ったが
更にスピードを加速させて数十分もせずに寮に戻ってきた

パンパンと服を叩いてスクーパありがと
と一言礼を言いポシェットに戻す。

帰って来た女性寮に
メルは部屋にノートを置きに行き、会議室に入る

『すいません遅れました』

「いえいえ、間に合ってますよ」

そう言ったスージーにホッと息を吐く
今年度の生徒に関しての会議を始めるらしい。
長机の左右に資料が大量に置かれていた

ー学年ごとにもっと効率よい授業形式にすべきです

そう言っている声に席に着いた
資料を目で追いつつ話を聞いていく

ーメル先生この時間動けます?いける?

『ああ行けますよ。構いません。』

ー次の4年生授業入れたい子居る?

ーあ俺入れたいです

『あ私も入れたいですあと5年6年にも』

ー了解。調整するよ

『すいませんお願いします』

そう会話がモニター越しに伝わりつつシャーペンを走らせる。
空想生物学の資料や魔植物の資料等がチラホラ目に入る。
手帳に予定を記入しつつ、

来年度の新一年生や教師陣の担当者等の割り振りを
挟みつつ、今年度の反省点や良い点を
片っ端からあげてくこと3時間で会議が終わった。

コップに入れていたお茶はもう三杯目で飲み干してしまった。
流石に4つ目飲むのはやめよう。
そう思いメルはコップを持って捨てに席を外す。

『(えっと、来年度の資料をあの人に確認してもらってあと…)』

そう頭をかいているとぱさりと帽子が落ちるのに
あっと思い地面に落ちた帽子を取るのにしゃがむ
すると髪の毛が自分の左右目に入って色に驚き声が出た

バタバタと足音を立ててトイレの鏡の前に両手をついた



『…っな!!なんで!?』


髪色が水色から淡い緑色に変化していたのだ

『…一応帽子を被れば元の場所には戻れる。』

ただかなり消費が激しい。
その代わり何故か魔法系は一切使えない。

『なるほど、新月の時期か』

そう月夜の空を見る。
空には光は一切ない事に納得した。
満月だと多分この感じなら力が増すなぁと思いつつも
こんな時人間みたいな状態と変わらないのにため息を吐いた。

ったく髪の色変わり過ぎだろと思った。
さっきまでは変わっていなかった気がするんだが。
日付変わったかなぁと頭をかいた

「あれ?メルさん髪の色変えました?」

『ああスージー先生、いや変えたんじゃなくて変わりました。』

そう三つ編みをした髪の毛を一房掴んで落とした
原因は不明だが、魔法が一切使えない事を報告すると
どうやら男性寮にも中継が繋がっていたらしい話が飛んでくる

ーっえ!?それ大丈夫なの!?

『一時的な物だとおもいます。
原因は不明ですが詠唱魔術全て無効化されてますね。
学校が始まる迄には必ず元に戻すつもりです。』

幸いなことにまだログハウスには戻れる。
あの場所さえ戻れられたら此方の物だ。

…もうあと数回で戻れなくなりそうな予感はしている。
何となく、魔女として生きていけない気がする。
でもそれでも今は使える物は使っておきたいのだ。

『まぁ今日は休みますし、
明日変わってたら原因分かるんで。』

ーそう?なら良いけど。

『そいじゃ私は失礼します〜お疲れ様です』

そう言って自分のモニター画面を消す。
ため息を吐いて帽子を脱いで帽子を小さくして
ポシェットの中に仕舞った。

魔法が使えないんじゃあ
帽子を付けていても無駄だからだ。

『んあー…勉強しに戻るかなぁ』

大きなあくびをして、
夜の時間になっているが仕方がない。

部屋に戻り、自分の机に座って前にやってた
日本語をノートにスラスラ書いていく
正確な記録という意味合いはほぼ合っているが、
どうしても間違っている場所もある。

んぅーと言いつつ、
どうしてもパソコンとデスクが欲しい。

これ日本語にするパソコンねぇかな。
流石にねぇよな。
そうため息を吐いて正面に向かい書きまくる。


今はコレが一番の近道だ。


ペラりと次のページをめくって『ん?』と眉をひそめた
今やっているのは音楽のオペラでの物語だ。

ああ決してオペラさんの方ではない。
勿論オペラ先輩でもないよ。
オーケストラのオペラの方だ。

そこにミレイユの全く同じ文字を
見つけて深夜ながら叫びそうになった。


『…っ!!これだ!!!!』

フランスの農家で、恋仲に落ちた彼と逃げていた際に
夏の暑さと強烈な日差しで疲労困憊で
そのままミレイユは瀕死状態というか最終的に死ぬという
なんとも非恋の結末だ。

『まぁオペラだからそりゃそうか。
ありゃドロドロ恋愛サスペンス劇場だからなぁ…』

だが、コレを見たらかなり彼女の話に繋がる気がした。
読み漁るのは明日にした方が良い。
うとうとと目が疲れているのに気付いて
メルはそのままベットに入って目をつぶった。



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