Novel - Paola | Kerry

it's just you


誰もすくえなかった子3

20/09/15
82

『もう食べられないですー』

「あんだけ食べれたらそりゃそうだよ」

本屋から洋食屋に寄って食事を堪能したオリアスとメルは
次何処に行く?との声を出したが、スマホからの連絡に
もう帰りましょうかと苦笑いでメルが答えた。

オリアスはそうだなとメルのことをみてそっとぼやいた


「…例え星が変わっても俺は」

『何か言いました?』

「いや、なんでも。
それよりも食後のデザート買ってからにしない?」

そう言ったオリアスにメルはそうしましょう!
と言ってスイーツ屋に入り
男性寮や女性寮用にもケーキを買って帰った。

ちなみにお会計持ちはサリバン宛にした。
勿論そのことは先にサリバンに伝えておいてある。

ばさりと羽音をたたせて降りるオリアスにメルは身体を降ろした
こんな所まですいませんとお礼を言うメルに夜道は怖いからと
行き帰り抱きかかえて貰ったことに何も言う必要はないと答える

『今日はありがとうございましたとても楽しかったです!』

「そ。それならよかった。じゃ、また今度ね」

『はい!おやすみなさいー!!』

そうオトジャンさんにもぺこりおじぎをして
メルは帰ってきた部屋に荷物を置きに行く
その途中でスージー先生に出会い、女性寮の皆で
食べようとケーキを取り出した。


+++++++++++++++++++++++++++

『ふぅ、疲れたあぁ』

そうため息を吐いて、メルは荷物を取り出した。
年明けに仕事用の本を分けて置く。
休みの間は休むようにしておきたいのだ。

そう言えば髪の毛かなり伸びてきたな…
最初は肩位にあった髪の毛が
いつの間にか胸が隠れる位になった。

あー散髪いきてぇな。
でもミレイユは髪の毛長かったけど
ひょっとして魔女の髪の毛ってかなり重要?

流石にないとは思うけど、魔力を宿すことがあるとか
聞いたことはあるし、一応そのままにしておくか…
三つ編みしたら一応スッキリするし。

今日使った瓶を思い出しつつメモして明日辺りまた
取っておかないとと考えながら
風呂に入る準備を作っていると
ドアのノック音にうんと気付く


「ふぃっメルさん〜」

『ああ!スージー先生どうされました?』

「ケーキ一緒に食べましょう〜」

そう言ったスージー先生に
メルは部屋入ります?と声を掛ける。
風呂の準備はしているものの
別に後でも構わないし良いだろう。

「すいません〜急に押しかけて。
ちょっと魔植物について
此間気になったことがあったので」

『いえいえ(ん?何か見せたことあるかな)』

そうお茶を渡して自分の茶を飲んでいる

「桜の木は咲かせること出来ませんか?」

そう言ったのにメルは飲んでいた茶を噴いた
むせつつ大丈夫ですか?と言ったスージーに
メルはつい敬語を外して叫んでしまう

『っげほっ、げほっ、ちょ!
スージー!?なにいってんの!?』

「ふいっ!あら、違いました?」

『っ!いーーー…や、ちがわ、ないで…すが』


敬語外してもらっても構いませんのにー
そういうスージーにいや流石にと苦笑いする。

彼女には大変世話になっているのだ。
にしても私は過去に桜と一度でも
彼女の前で話したことがあるだろうか?

首を傾げるメルに、前に空想生物学の
植物の会話をしたことがあったと言って固まる


「ふぃっ、矢車草のことは存じてますよ」

『っちょ!?す、スージーさん!?』

「…メルさんが奥手なのは知ってます。」

そうお茶を置いてスージーは
メルを見て何が不安なの?と聞くのに
メルは何の話かと笑ってみせた。

それにとぼけないでと真剣な顔につい
メルも何時もの笑う顔とは違い
真顔になって彼女の目を見た。

嗚呼、この悪魔は本当に見ている。


「ですがこのままと言うのも」

『でもおかしいですよね、流石に私』









大事な悪魔にそんなこと言ってないんですよ。




そう言ってメルは帽子を被り目を開ける
銀色の目でスージーの周りに槍を作り出した
こいつ一体どうやって入ってきたんだ。






「ふぃっ!?メルさん!?これは一体」

『ふざけるな。スージー先生に化けても無駄だよ。
彼女は私の部屋に入る悪魔じゃないし桜の木も知らない。
これは警告だ。今ならまだ殺さないで生かしてやる。』



もし何かしようとするなら、
いや殺す方がマシか。
手は出したくないんだよな。


そうメルが睨む間にスージーが
クスリと笑い目を開けた


やはりピンク色の目が赤くなっていくのに
おかしいとは思っていたが



「…よくわかったね」

『何でここに入れたか分かってる?』


私の部屋はある意味
危険が伴っているいや危険だからだ。



魔術を最大限まで引き出して
殺せるようになっている。

この部屋自体が爆弾みたいになっているのだ。



「君に一応説明しておこうと思ってね。
何も知らないのに引き抜くのは
フェアじゃないだろう?」


『とりあえずその姿で話すな
殺されたいのか?』



おお怖い怖いそう言って
指を鳴らした奴が姿を変えた

白より銀に近い髪の毛で
頭に羊の角が生えている
目は銀色で白い衣装が
ウェディングドレスに見えなくもない。



「あたしの名前はロザ。都佑貴方を
熾天使してんしに任命させにきたのよ。」


『…何故?』





熾天使してんし


それは天使の九階級のうち最上とされる天使。
三対六枚の翼を持ち、2枚で頭を、
2枚で体を隠し、残りの翼で羽ばたく
「熾」は「火が盛んに燃える」の意味で、
神への愛と情熱で体が燃えていることを表す。


天使の中でもかなりの力がある天使だ。
それを何故スカウトに来たのかが理解不能だ。





「貴方は元々熾天使してんしだったのよ。
都佑という名前は前世で仲良くしていたただの人間の子。
人間の子の言い訳を素直に聞いた貴方は死んだ。」


『だからと言って今回も天使に成れというのも
おかしい話ではありませんか?
それに天使の位置が分からない程私も馬鹿ではない。』


そう目を細めるメルに、警戒が強いのは昔からね。
と苦笑いするロザにメルは眉をひそめた


「へぇ?」


『それに私が仮に熾天使してんしになったとして
私にメリットはあるんですか?
天使はこの魔界では間違いなく生きれない筈。
それに仮に貴方が天使だとして、
何故此処で息ができる?』


「魔術を使って一時的に息ができるようにしているのよ。
本来は生きていけないんだけどねこんなみすぼらしい場所に
ぬくぬく生きているなんて考えられないわ。」


『私はこの場所が良いと思ったから居るんです』


「いいえ、貴方の場所は此処じゃあない。
貴方は天界で活きるべき存在なのよ。
相応しい場所で生きるべき。」




まただ、また同じような言葉をいう。

何故貴方達はそうやって
私を相応しい人だというのだ。

一体何がどうしてそうなるのだ。



「貴方に全てを話しに来たのよ
…あの悪魔に魂を売ったミレイユのこともね」


『悪魔?そりゃ魔女だから魂売るのは』


「今ならまだ間に合うわ。こんな場所に
そんな印をつけられているから
貴方は此処に縛られているのよね。」


そう言ってロザがメルの首元に
手を出すのに嫌だと身体を引いた。

じりじりと詰められているので
壁に身体が付くのも時間の問題だ。


「天使の仕事として人間界に降りた
貴方は人間の子を誤って殺した。

それを人間は良いと言っていたのに
貴方は悪いと言って人間を復活させた。

そこからが全ての始まりよ。」


『いやいやいや何の話』


「人間の子は復活しても
最終的に死んでしまい貴方は嘆いた。
そこで人の子だった
ミレイユ魔女が貴方に近寄った。」


『いやいやだとしても
どうしてミレイユが私に近づいた?』


それは知らないわ。
だって見るしか出来なかったのだから。

そう言って此方に
一歩近づいてくるので、
一歩引いて距離を取る。


「貴方は魔女にもう一度
やり直させて欲しいと願い死んでしまう。

そこで魔女との契約をして
間違って死んで人間に生まれてしまった。」



『つまり貴方は私が瀕死の時に
間違った選択をしたから無かった事に
してあげてそのまま天使に戻って来いと?』


そうよ。

そう言ってまたロザが此方に歩み寄るのに
メルは下がろうとしても
背後に壁がある事に気付いた

目を壁に一瞬逸らして後がない事に
逃げ場がない状態と気付く



不味い携帯は机に置きっぱなしだし
そもそも今は服を着替えている状態だから
魔術を使っても軽い物ばかり。


帽子を取ったらもう何も出来ない。




怖がってはいけない!!

誰も助けなんて…



「もしこのまま貴方が居座るなら、
反逆者としてこの魔界をせめにきてしまう。」




え?



『…どう、いう?』


熾天使してんしが寝返ったと
知ったら天界は大騒ぎ。

貴方のせいでこの魔界に侵略されて、
魔界が大騒ぎになってしまう。」




ふと脳裏に横切るオリアスにメルは
何故今なのだろうと思った。


桜の木の下で此方を見て微笑む
その目が何よりも愛おしくて。



それは悪魔の印が出来たから
そう見える訳ではなかった。



悪魔のオリアスが好きになったわけではなくて
生徒に優しくて紳士で、

分からない事があってもヒント出してくれて
ただ温かい悪魔だと思ったから、
だから好きになっただけで。






笑って繋いでいた時間が消えて無くなるのかと



その現実が、
本来の場所なのだと。





「貴方はそれでいいの?
もし天界に戻らないと、
多くの知らない悪魔が犠牲になる。」


『っ、それ、は…』


そんなのは出来ない。

そんな自分の我儘のせいで、
誰かが傷付くなんてことは
許されてはいけない。


首を横に振るメルに、ロザは微笑む。


「貴方が天界に戻ってきてさえくれれば、
もう天界は魔界に干渉しないわ。」


『でも』


「いいの、こんな印に
惑わされているだけなら」


そう触れるロザの手に
嫌がり手を取るも片手で手を防がれた

首の後ろに手があたると
痛みを伴い生理的な涙が出てくる


『っあ゛あ゛っ!!!』


膝をついて痛みに耐えきれず
身体を前に倒れてしまう

それに身体を委ねなさいと言われた
その声に頭がくらりと揺れる

抱きしめられている身体を動かせずに
ただ痛みを何とかしたくてもがく


いやだ、記憶がまるで
シャボン玉のように膨れて空に飛んで行く
そのまま手に届かない場所まで行く
そのシャボン玉はもう戻って来ない?

ふわりと香るあの匂い、
嗚呼貴方に抱きしめて貰った時に
貴方の匂いがくっついたのね。


服から匂うその香りに、
メルは涙を流しながら、
名前を呼ぶ。




痛い頭に、
もう何がどうなっているのか
分からなかった。




『や、だ、たすけ、て…オズっ…!!』


「…うちの子に何してんだ」


その声が聞こえたのに、
メルは痛みから解放される
触れていた手が外れたのだ。

身体を床に体重をかけていた
メルに、オリアスの目が細まる



「お前、何をしたぁ!!!」



「あら来るの?
この子がどうなっても?」


そうぐったりして身体を倒している
メルの首元に針を押し付ける


動けばすぐにでも刺して殺すつもりの
ロザにオリアスがぐっと動けなくなる。



「そう、そのまま居ればいい」


『っ、やっ!!っなりたくない!!!
オズといる!!!』


「それで多くの悪魔が犠牲になってもいいの!!」


その声にぐっとメルが止まる
顎を引いて首を横に振った

耳の上にある髪の毛を鷲掴み
首を大きく横に振った




嗚呼どうして僕は悪魔でなかったのだろう。



悪魔だったら貴方と一緒に生きていられただろうに。

貴方の隣で、ずっと笑っていられただろうに。


どうして、
僕は人間だったのだろう、
天使だったのだろう。



どうして、貴方は悪魔で僕は違うのだろう?





『っ…やだ、どっちも、どっちも!!!』



目の前が白くなっていく。
自分のせいで誰かが傷付くのは
もう二度と見たくない。



嗚呼、それなら…それならいっそのこと





『すべてがまっしろだったらいいのに』



メルの目が銀色に光り輝き背中に白い翼が生える
色が灰色に変化し、メルの頬に黒い傷が浮かび上がる
それに驚いたロザの隙を狙い
オリアスは近くにあった小物を投げつける
怯んだロザにオリアスがメルを抱きかかえて距離を取った




「オリアス先生!!」


加勢します!
そう来てくれたイフリートとスージーに
オリアスは少しほっとする。


メルは未だにパニックを起こして
首を横に振って暴れている
翼は透明で身体から離れている。



まるで幻のようだ。



「っ!落ち着け!!メルちゃん!!!」

「っち、一旦は離脱ね。都佑!
貴方はまだ許されるのよ!!
貴方がその気なら私達は待っているわ!!!」


「待て!!」


そう言ったイフリートにロザが
透明になって消えて居なくなる

逃がしたかと舌打ちをしたイフリートだったが
メルの容態が落ち着かないまま
メルはオリアスから離れて距離を取った



『っあ゛あ゛っ!!あ゛あ゛あ゛あ゛!!!』



刃を出してオリアスに攻撃を仕掛けてきたのに
イフリートが炎で防いだ

それにメルが攻撃を仕掛けて力任せに飛び掛かる重い圧に
一瞬怯んだイフリートの隙を狙い横腹に一撃いれる


それにスージーが植物を使って
メルを取り押さえようとするが
メルの前で止まるのに
スージーが声をあげて驚いた



「っええ!?」

「っまずい!当たる」


そうオリアスの方めがけて攻撃を
仕掛けたメルとオリアスの前に一人入る
緑髪で、メルよりかは少し小柄な体系の子が


「ーったく!本当に暴れ馬だよなお前!!!」


「っだ、だれ!?」


「良いんだ、誰も傷付けない。傷付かない!!」


「っ待て!行っては」


そう言って向かった女性にイフリートが声を出すも
女性の手から白い剣が生まれ
飛び掛かるメルに刃を重ねた

メルの手からは黒い剣が
生まれて重なる刃に女性が言う


「まだ大丈夫!ほら、皆心配してる…っ!!」


そう言って距離を取った
メルに女性もまた距離を取る


「天使がどうとか悪魔がどうとかどうだっていいじゃない!!
君は君だ!君が居たい場所に居れば良い!!
それが欲望だろう!?
勝ち取るのに私は協力する!!
私は!君が良いと思ったから此処に居るんだから!!!」


そう言ってメルに向かって
剣を構え直して走りだした


素早さも重さも全て互角


「大丈夫!変わって行ってる!!
…それとも、私の心臓を貴方に捧げようか?」


そう首を傾げて刃を自分の身体に向けた女性に
オリアス達だけでなくメルも目の色を変えた


「…大丈夫、
そう呼吸を整えて。
そう…良い子。」


そう大きく息を吸い、
落ち着いてきたメルの目が戻りだし
翼も消えて無くなるのに
女性はにこりと笑って剣を捨てると
落ちた剣は溶けて無くなる。


「君の気持に私は何度だって付き合うよ。
…私は君であって君は私なのだから。」



そう言ってメルに近づき、
抱きしめた後消えて居なくなった。
メルの意識はそこで途切れた。

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