Novel - Paola | Kerry

it's just you


デビュー式

20/09/15
84

タヴァンの洞窟の近くの地獄谷

ウリアスは仲間と共に地獄谷のタヴァンを訪れ、
ミレイユの愛を得るため媚薬を買いに来る。

友人たちはミレイユのほかにも良い娘はたくさんいるのにと言って、
夜の訪れとともに怯えて去っていく。

嫉妬に狂ったウリアスは一人でヴァンサンを待ち伏せすることにする。
やがて、ヴァンサンがそこを通り掛かると、
ウリアスはお前みたいな貧乏人がミレイユの心を掴んだのは、
あの女から媚薬でも買ったのだろうと侮辱する。

激昂する二人は争いとなるが、
卑怯にも凶器を使ったウリアスに
無防備なヴァンサンは簡単に打ち倒されてしまう。

ヴァンサンは瀕死の重傷を負って倒れる。
ウリアスは我に返り、逃げ出す。

タヴァンは地獄谷に住んでいたので
ヴァンサンをすぐに発見し、手当を施したため、
ヴァンサンは一命を取りとめる。


タヴァンはウリアスを呪うのだった。


オペラ、ミレイユより。

+++++++++++++++++++++++++++


それからあけおめことよろをして、
何時も通りの仕事をしている中。
カルエゴと会話をしているのを見て
メルはきょとんとした顔で首を傾げていた。

背後を見ていると、
彼女の姿を目にしてぺこりとおじぎをする。
何か葉っぱが見えたのでそっと声をかけて手で取ったのだ。



『ついてますよ?』

「えっ?ああ!すいません」


そう泣きそうな声になる彼女にいえいえと笑った
お名前をお伺いしてもと言った彼女にメルは名前をいう
彼女の名前はモモノキ。

そう、モモノキ先生だったのだ。




まぁそれから話をして打ち解けるのには時間がかからなかった。
メルはサボテンや植物の話、
カルエゴのことが気になっていた彼女に
カルエゴの情報を渡すと凄く嬉しそうに笑って居たのに笑った。


「どうされました?」

『いや、とても嬉しそうだからつい』

「とととととんでもない!!」

『モモノキ先生可愛いから、
きっとカルエゴ先生も気になっていますよ。』

そう言ったメルにモモノキは顔を真っ赤にして
そんなことないですと強気に言うのに
メルも昔の自分を思い出してしまった。

嗚呼こんな風に見えてたらそりゃあダリ先生辺りが
弄り倒すわぁ気持ちちょっと分かるな。
そう思ったメルだったが、
彼女を弄り過ぎるのは悪いと思い話を逸らす事にした。


『所でモモノキ先生は授業どんなことするんですか?』

「私ですか?私は魔術基礎なので全般的に教えられることを
メル先輩はどのような授業をされるんですか?」

『私は空想生物学の教師で、
来年度はちょっと広く授業任せてもらえるとか。』

「初任の次の年で授業持てるって中々ですよ!?」

そうかなぁそうですよ!
そう言ったモモノキにメルは照れる

三年目にもなる次の年は
かなり忙しくなることは目に見えていた。
今の所正確な記憶を知っている者は誰一人としていない。


まぁ未来の記憶を完璧に引き継いだからと言っても
悪魔は基本的に忘れやすい性質を持っている。
その為生徒とは言えども
一年以上何も覚えていない情報等
無いに等しいのである。


入間が来る年と言うことも全く気付いていないし
また入間がいつ来るかも分かっていないだろう。


カルエゴにとっては心の余裕を持たせるためにも
モモノキの指導やカルエゴのお荷物を
軽くして置いて損はないだろう。
というかしておかないと私の気分が悪い。


彼には今後かなりお世話になることになるのだ。
…主にうちの弟に関してなんだが。
まぁ彼はまだ記憶が戻っていない所、
未来ではどうやらモモノキと
同じく記憶を保持しなかったらしい。

選ばれなかったというべきか、
それとも人数制限的な物に
引っかかったのかは定かではないが。


『はは…あ、そう言えばモモノキ先生
魔術について教えて欲しい事があるんです』



が。そう言う前にモモノキの方を向くと
キラキラした顔で私でよろしければと
ぷりぷりと意気込む彼女に、
黒髪の風車みたいな頭の
お嬢様を思い出す…

いやキノセイだな。うん。

なんですか?そう言いたそうにするモモノキに
都佑は魔術の基礎的な知識だけでなく
応用や魔力の保有量に関して聞いてみた



すると案外そこは悪魔によって千差万別らしく
元々保有量が多い者から少なく全くない者までいるらしい。
そこは悪魔によってその先増える者も無くはないが、
基本的に生まれた時によって決まっているとのこと。


魔女の様に保有量を変えることはほぼ無さそうな事に
へぇーとメルは頷いた。
成る程、保有量が変化するのは話は控えた方が良いのだな。


「後は悪魔によって得意不得意がありますよね。
家系魔術のように」

『ああ』

「あの類でしたら、使えば使う程威力は上がっていきますよ。」

『私の五元素魔法と同じ要領か』


そこはまぁ嘘でもなくはないが、誤魔化しが何とか効くらしい。
モモノキの家系魔術と比べたらかなり劣っている気がするが…
まぁ私が覚えていないだけだし、そうそう使う物はないだけだ。



…今度悪魔対策用に聖なる魔法も習得しておくべきだな。
あと天使対策用に悪なる魔法もね。どちらか問えば後者を
かなり粘度を高めておかねばならないだろう。


神威斬ラグナ・ブレード
完成形を綺麗に出せる訳でもないし

なんなら消費量が半端ないので
ちょっと対策しておかなければ。


そうと決まればまたタリスマンを
作って保管しておくか。
考えているとモモノキから声がかかった


「何か私に出来ることはありますか?」

『ああ!いえ、他の担当教科の方の
情報が得られるだけで充分です。』

「勉強熱心ですね…
自分の担当教科だけで充分じゃないんですか?」

そう不思議そうにするモモノキの反応は
悪魔にとって普通だった。


悪魔は集中力が無く、
興味がないものに関しては本当に気を引かない。


人間と正反対のその性質は、
メルにとって少し普通からかけ離れていた。



いえいえと言ってメルは家系魔術的にも集中力や
知識が必要になってくるので、と誤魔化した
モモノキと似たような部類でもあるからだ。


家系魔術器用富豪オールラウンダー
あらゆる種類の魔術を習得できる。
その威力は本人の魔力に比例する能力だ。



魔女の本来の魔法は実は五元素で間違ってはいない。



主に精霊との密接な関りがあって
攻撃が可能になっている訳で
その精霊と仲良くなければ
そりゃあ反抗して威力は低くなる。



なんなら全く魔法を出せない状態にまでなる。



魔女でも五元素はおろか、
光や闇の魔法等使える者はそうそう居ない
かなりレアケースな部類なのである。


まぁメルが前世天使だったということと、
魔女の引継ぎが出来た理由、
そして人間の子の魂を持っているという
意味不明な三点セットがあってこそ
成し得ている者だと思うが…




そんなことはどうでもいい。




『いえいえ、魔術の応用も効きますし。
あ、教科書って予備頂けますか?』

「構いませんよー
資料室に保管している物でも
予備がありますのでそのまま
持って行って貰っても構いません。」



ありがとうございますーそう泣くメルに
大げさだなとモモノキは苦笑いした



「何か分からない事がありましたら
いつでも聞いて下さい。
私も生徒に指導する際の勉強になりますので。」

『はい!遠慮なく聞きに行きますね!!』



とりあえず基礎の部分から叩き込んでおこう。
一応調べ直したら案外
意外な所で躓いているものが分かるのだ。



…ちなみに此間魔法の練習をしていると、
なんと詠唱する際に間違って
打ち放っていたことが判明した。



本来の威力よりも劣っており、
きちんと想像して詠唱すると
威力が跳ね上がったので、
これは不味いと思っていた所だったのだ。


モモノキに礼を言って
メルは席を離れることにした。


どちらにせよチャイムが鳴ったのだ。
今日は立て続けに授業が入っている為、
ではまた今度とモモノキに会釈をした後
メルは席を外す、否教室に向かう事にした。


その後を見ていたダリやカルエゴがモモノキに近寄った

「何話してたんですか?」

「ああ、メル先輩から魔術基礎の勉強を教えていた所です。」

「ほぉ?別教科の余裕がおありと…」

「カルエゴ先生、余裕は彼女ないとは思いますよ。」



主に家系魔術の練習で必要になるので。
そう言っていたことをカルエゴにモモノキは説明すると
嗚呼そういうことかと納得した。


にしても彼女熱心ですねぇと言ったダリに
モモノキは仰る通りですと答えた。


「私ももっと沢山努力しないとと思いました!」

「意気込むのは大変よろしいですが、
くれぐれも無理はなさらないように。」

はい!そう言ったモモノキに、
カルエゴは少しため息を吐いて
職員室の自分のデスクに戻って行った


「熱心だよね彼女。此間俺の所に魔歴の勉強で
教えて欲しい所聞きに来たりしてたんだよ。」

「ええ!?魔歴もですか!?」

「彼女曰く、昔に起きた現象を
二度も同じことは通用しない可能性を込めて
練習しておきたいとかなんとか。」



本当に熱心だよ。
聞いてる事一応合ってたからね。

予習してたんだろなぁと
ダリは顎をさすりつつ
うんうんと縦に首を振った



「…メル先輩ひょっとして
全教科教えられるのでは」


「はは!彼女案外教えるの下手だから!!
教育係のオリアス先生やバラム先生に5回位
チェック入ってようやく授業に入れる位だし!!!」


えぇ!?そう驚いたモモノキに
ケラケラとダリが笑って答える


「まぁ、最近は1回位で何とか
調整できるようになって来てるし
来年度は本格的に一つ任せつつ
何処かのクラスに充てても構わなさそうだしね。」



それは副担任に就任か?そう思わせる言葉に
モモノキは彼女の努力が皆に伝わっていることに
こうしてはいられない


授業がない自分としては
もう少し勉強をしておきたいと
予習しにモモノキは自分のデスクに戻る。



失礼しますとダリに一言言ってモモノキは
自分のデスクに走って行ったのをダリは見つつ
「皆やる気凄いねぇ」と一人ぼやいたのだった


+++++++++++++++++++++++++++




『はぁあっ!!』

「っ脇甘いよ!!」

『っ!うわ!!』

そう体勢が崩れて尻餅をついたメルに
今日は此処まで。そう言ったイチョウの言葉に
メルはありがとうございましたと礼を言っておじぎした。

手を差し伸べるイチョウにメルは手を取り
身体を起こしてもらった。


その後両手で服についていた埃を払いつつ
指導していたイチョウからの言葉を聞く



「大分詰めれるようになったよね。
俺のこと傷つけるのが怖いのか、まだ脇甘いけど」

『はは、耳が痛い話です。』

「でも充分男悪魔のそれも
体格差違う奴に対して
突っ込んで攻撃できるようになったのは
良い方向だよ。」


もう少し自分を褒めても良いんだよ?
そう言ったイチョウに
ううんとメルは首を傾げた後横に振った



『いえ、これ位でしたらまだまだでしょうし。
それに動きが鈍くなるのは頭の回転がまだ追い付いてない
突発的な現象に対応できないのが悪いので。』

「…あーほんとうちの生徒に
メル先輩の爪煎じて飲ませてぇーー」



そう謙虚な姿に、
イチョウは頭を抱えて空を見上げた


生徒はどうやらこれで良いだろと
ぶっきらぼうに学んでいるらしい。

詳しく説明するイチョウに、
説明自体分からない事があるだろうに

嫌な顔一つせずに黙々と
イチョウの言うことを聞いて動くメルが
可愛らしく思えてくるのも無理はないのだ。


「な?うちの子可愛いだろ?」

「本当に可愛らしいですね
どんな教育したらこうなるんですか?」

「いや適当に見てたらこうなった」

「イチョ、ダメだって。
これは素材が良いんだって。無理だ。」

『お兄さん方僕に期待し過ぎでは…?』

「いえいえ!メル先輩がとても筋が良いんですよ!!!」

そうぷりぷりと言うモモノキにメルは苦笑いして答えた


今はちょっとした休憩をぬって
イチョウに指導を軽く入れてもらっている。


丁度ツムルやモモノキ、
ダリやオリアス達は休憩の時間が合い
移動している途中だったのだ。

目に入った二人の動きを遠くから見ていたが
終わった所を見計らってメルや
イチョウの元に寄って話し出した所だ。


『それにしてもまだ爪が甘いですね。
途中振りかざす時の動作も鈍いですし、
あと振った後の隙もかなり大きい。
あれじゃあ突いても良いですよって
言ってるようなものですし…』

「おぉ…」

『もっと脇を引き締めるべきですよね?
あーでも力むのとは違いますよね?』

「そうだね、こう力はいれるけど
全身に力を籠める訳じゃない。
戦術を利用したら勝てる事だってあるんだから、
まぁ力を抜くのも一つの戦法だ。」



だらしなく立ち尽くす訳でもないんだから。
そう笑うイチョウにメルは
苦笑いしてそうですねと答えた。


「でもこのままいけば本当に
非戦闘員の悪魔だと勝てるんじゃない?」

『えぇ?流石に無理です無理無理。
腐っても男悪魔ですよ?僕か弱いので。』

「街一つ滅ぼせる奴がか弱い訳あるか…!!」

そう言ったオリアスに、モモノキが声を上げて驚いた
メルはその話はまだ言っていなかった為
オリアスに強く言う

『ちょ!!オリアス先生!?』

「そうなんですか!?」

『う゛っ…そうだよ。』

何なら世界滅ぼせるよ。



ソレは流石に口が裂けても言えないことだが。
街一つは軽く滅ぼせるし、
何なら得意分野にならなくもない。


意外と黒魔術は好きな方だ



…最近黒魔術の効果がイマイチなのが玉に瑕だが。



恐らく襲撃してきたあの女性の攻撃を受けたからだろう。



威力は半減しているし、
印を見ても薄くなっていたことから
本当に悪魔の印を消すつもりだったらしい。


もし本当に悪魔の印が消えていたら、



黒魔術はおろか下手したら
全ての魔術が使えなくなっていた
と思うとゾッとするものだ。



勿論あの後オリアスに相談をし、
無事に契約を再登録することに決めた。


一度消してからもう一度する方法と
上書きしていく方法があるが

念のため一度消してからもう一度する方法を
取って何とか今は元に戻せたのだ。



…ちなみに一度消すにはやられたように
し返さないといけない。


呪文は心苦しかったが、
詠唱して痛みを何とか堪えた。



付き添いで回復要員のブエル先生や
何かあれば困るとバラム先生が居た時だったが。
少し恥ずかしかったなんて言える訳もなかった。




「本当に何でも可能なんですね」

『いやモモノキ先生みたいに全てではないんだよ。
回復の物によれば毒の様なものは消せても呪いみたいな
厄介な方は消せることはできないしね。』

「そうなんですか」

『それに魔力の保有量を上げても体力の限界だってくるし
案外使いにくいもんだよ?コレ。』

そう言って手から火炎を放つメルに
へぇーとモモノキが答えた。

「あ、それじゃあ俺はこれで」

『私も準備室に戻ってバラム先生に
書類渡してから職員室帰ります。
それではみなさんお先に失礼しますー』

「待ってメル先輩!
俺もバラム先生に用事!!」



そう言って付いて来たツムルに
メルは一緒に行くかと言って歩き始めた。
それに良いんですか?
とダリがオリアスにちゃちゃを入れる。


何がですか?そう言ったオリアスに
ダリはおお意外と答えた。

「てっきりついて行ったのに嫉妬してるかと」

「そんな心狭くないですよ。
彼女わきまえる子ですし。」

「信頼してるねぇー!
ひゅーあついあつい!!」



ん?そう思ったモモノキにイチョウが
メル先輩オリアス先生と付き合ってるんだよと
答えるとぴしりと身体が固まった。


あれ?そう身体を少し曲げてモモノキの表情を見るも
わなわなと震えていたモモノキが
オリアスの方を向いて話し出す
その勢いに少しオリアスは帽子を手に置いて背を逸らした



「メル先輩をたぶらかしたってことですか!?」

「っええ!?いやいやいやどうしてそうなるの!?」

「っくくく」

ちょ、ダリ先生!?笑ってないで誤解解いてくださいよ!!

そう焦るオリアスにそのままでも
良いんじゃないと言いたそうに笑うダリ



「たぶらかしてはないよ…ってか、
あの子否定しない子ではあるけど
そもそも俺が勢いつけて
猛アタックする性格じゃないし。」


「あれ?それ前にしてませんでした?」


ちょ!!ダリ先生!!!そう怒って言うオリアスに
ダリは面白がって笑いが止まらないらしい。
とても嬉しそうに笑っている。

全くやめて欲しいものだ。

「メル先輩を…私のメル先輩を通すなら
まず私を通してからにして下さい!!」

「あれ待って?保護者増えた?」

「俺も通してもらえると助かりますね」

そう言ったイチョウに
お前も?待って?そうオリアスが焦っていると

チャイムがまた鳴ったのを聞いて
不味いと皆で走り出す。


予鈴のチャイムが鳴り響いたのであれば
良いのだが、これは後で大目玉になりそうだ。



まぁ無事にオリアスは間に合ったが、
その後イチョウたちのことは何も知らないのだった。






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