Novel - Paola | Kerry

it's just you


デビュー式2

20/09/15
85

ローヌ河畔

ヴァンサンを殺してしまったと
思い逃げるウリアスは
ローヌ河畔にたどり着き、船の渡し守を待つ。

ウリアスは良心の呵責に苛まれている。
ウリアスは「ああ!俺は何てことしてしまったのだ?」
と嘆く。彼は船頭に対岸に運んでほしいと頼む。

突然、オーケストラから半音階の不気味な音楽が流れ、
川底から白い亡霊が現れる。
遠くから真夜中を伝える鐘の音が聞こえて来る。

音楽は亡霊が水面を渡るイメージを引き起こさせる。
船が岸を離れると川が波立ち始める。
ウリアスには渡し守がヴァンサンに見えてくる。
川の半ばで舟は沈んでしまい、ウリアスは溺れて死んでしまう。


ーミレイユ (オペラ) 第3幕第2場より


+++++++++++++++++++++++++++


そうこうしていると早くも卒業式からの始業式だ。
毎年慌ただしくてどれくらいかと言うと
先程から作業していた記憶が無くなる位である。

メルは今年で三年目になる年だった。
新人教師の指導も出来たし、
生徒との関りもかなり
スムーズなことを考えて
何処かの副担任に就任する方針が決定した。



何処に行くんだろうと思っていると
スマホから連絡が入り、メルは急いで一時的だが
寮からサリバンの家に帰る事が決定した。


「メル様。お迎えにあがりました」

そう言って入ってきた職員室に、少しざわつくが
『嘘でしょもう!?』と小声で言ったメルが鞄を持って
席を立ってオリアスの方に寄る

『…すいませんちょっと急用で私失礼します。』

「了解。後のことはまた後日伝える。」

すいませんそう泣きそうな声に
オリアスはいいよいいよと言って手を振った
パタパタと走った後オペラと会話したのか、
オペラがオリアスの方を向いてぺこりとおじぎをした。
それにオリアスもおじぎを返した。

ちなみにその間オペラはカルエゴを弄り倒していた。
それに気づいたのかメルが急いで向かったのかなとも
思ったが、職員会議の話にそっと思考を切り替えた。



「すいませんお忙しい所呼び出してしまい」

『いえいえいえ、家の急用とあらば
出ないといけませんし…
というか何があったんですか?』

オペラがメルの仕事中に
急に連絡を入れて迎えに来る等そうそうないことだ。


余程の緊急事態が起きなければこうならない。

察していたのかオリアスや周りの
教職員もメルが外れることに何も言わなかった。

オペラが歩きながらそれがですねと言って濁すのに
まさかサリバンに何かがあったのかと言ったメル
焦る都佑の言葉にオペラは半分正解だと言った。



『サリバンさん!!一体なに…が』



家に帰って急いで扉を開く
其処にはサリバンが青髪の男の子に
膝を立てて手を取っている姿に
メルはぴしりと身体が石の様に固まってしまった


「わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

『わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!』

そう叫んだ少年にメルもまた叫んでしまった。
何故ならそうその少年は


「紹介するねぇ!この子は鈴木入間君!!
今日から僕の孫になる子だよ!!!」



鈴木入間14歳。
メルが未来に行っていた際弟として
様々な行動を起こしていた張本人。

そしてメルと同じく人間の男の子であったからだ。



あれこの時期だっけ!?
この時期だっけ!?

そう慌てふためくメルだったが、
そんなことはつゆ知らず。

サリバンは入間に対して
「いやー女の子も良いけど男の子も欲しかったんだよね!」
と言ったのにメルが気付いた


『ちょ!まさか急用って!!!』

「サリバン様が人間の子供を拉致して来たからです」

『急用処か重大じゃん!!!こら!
悪い事は言わないから元ある場所に戻してきなさい!!!』

「やだもんねーそれにこの子はもう買収済み。
入間君のご両親が僕を召喚して等価交換にしたものだから。」


メルちゃんだって教師の端くれ。
人間が召喚したことでもう大体察しはつくでしょ?
そう言ったサリバンにメルはうっと鈍い声を出した。

人間が、何も魔女としても契約もないただの人間が
悪魔を召喚するには等価交換が必要になる。

例えばお金が欲しいからと言って
そのままただでお金がそのまま取れるわけではない。
お金の代償が必要になるのだ。
タダ働きはできない。

お金の代わりに自分の命半分とか
そこそこその内容によって等価交換の比率が変わる。


ちなみに話を聞く所入間はどうやら
実の血のつながったご両親に売り飛ばされたらしい。
波乱万丈な人生の最終的な場所が悪魔の住む魔界とは
不運にもほどがあるというものだろう




…いや可哀想。マジ可哀想。


「おじい、ちゃんあの」

オロオロする入間に、
いやー孫になってくれてよかったよと答えたサリバン


「…もし孫にならないっていうんだったら、
今晩のおかずにするしかなかったからねぇ」


その圧にメルはひぇっと入間と同じように顔を青ざめた


普通の悪魔でも中々こうならないだろうに。
余程入間がお人好しなのであろう…嫌だろうに
さっきからいいよしか言わない。

…いや、いいよとしか言えない世界でしか
生きていけなかったのだろう。




砂嵐と共に誰かのお願いが聞こえる。
いいよと頷いて仕事をしていたのは、

一体何時の記憶だろうか?


「あの、貴方は」

『ああ!ごめんね…
ちょっとサリバンさんほらオペラさんも席外して。』



ふたりで話したいことあるから。
そう言ったメルに兄弟で話したいって!

と変な方向に解釈が飛んだサリバンを
はいはいと言って連れて行った
オペラに今度メルはお礼をしなければと思った。


バタンと扉が閉まったのを聞いて、
メルは誰も聞こえないように魔法を張った
これからはかなり大事な話をするからだ。


入間には申し訳ないが、
ちょっと弟と言うのであれば
立ち位置的に巻き込まれる可能性が高い。


それなら知らないで恐怖を感じる位なら
知っておかねばいけないことがあるからだ。


だが…初めて来たものにそうぽんぽんと言っても分からない。
それにまだ14というまだ決定意思を持って
行動するにも少し弱い歳だ。



彼に任せるにはまだ後でも良いだろう…


『ごめんね、うちの親というか祖父が…』

「ああいえ…」


『改めまして、私の名前はメル。安名メルと言います。
魔界ではかなり稀な人間の女の子です。三年前位から
サリバンさんの孫になってます。よろしくね』

「っええ!?は、はい!!」

『ああ、あとここ魔界では本名を告げると
悪魔に意思判断を任せちゃうから告げると軽く不味いかも。』

多分死ねって言ったら普通に死んじゃうんじゃない?
そう言ったメルに顔を青ざめた入間
まぁそうそうないだろうけどねと答えた

「あの。メルさんは何故この魔界に?」

『ああ私はちょっと色々あって
サリバンさんに養子で引き取られたんだよ。
血のつながった親からは虐待されて
転々として身体売られてたら
一人の女性に引き取られてね。』

えっそう青ざめた入間に大丈夫だとメルは笑って告げた
もう昔のことだし、それにアレがあったからこそ
メルはこうやって今の暮らしが出来ているというものだ。

こうあったらよかったのにと言う願いはあるものの
しなければよかった的な後悔は一つもないものだ。

「それにしてもその恰好まるで魔女みたいな」

『ああこれ?そうだよ。
私魔女、魔女見習いのメルだよ。』

「っええええ!?ままま魔女!?
あ、あの魔法を使って空飛べる。」

そうそう。そう言ってメルは
仕事着だったこともあり
ポシェットにスクーパと声を掛けると
中から小さな箒が飛び出してきて
入間とメルの目の前で大きな人が
掃除をする際の大きさにまで箒が大きくなった



『帽子を付けてないと基本的に魔法は発動しない。
衣装も君が知っている黒帽子に
黒装束に、飛行移動手段は箒だよ。』


「す、すごい…かっこいい!!!!」


『はは…入間君、きっと君も
沢山魔法を使えることが来るだろう。

今日はあのサリバンって
悪魔の言うこと聞いて…ひとまずは』


「入間くーん!明日から早速学校いかない!?」


『…学校の手続きしたげようか。』


そう頭を抱えたメルに入間は苦笑いした
片手は腰に置いてあるものの、
魔法を使っていたのに
まさか我慢しきれず出てくるとは思っていなかった。


全く孫を溺愛するのひょっとして
私が寮に行ったから拍車かかってる?


そうオペラに言うと
どうやら寂しかったのはあったらしい。


前に孫をもう一人とか言ってはいたが、
まさか本当にとってくるとは…


この後入間があれよあれよと
サリバンの話を
うのみにしていくこと数時間。



一日が終わり、就寝についた頃だった。
メルはサリバンに会って話をしていた。



『…本当に彼で良いんですね?』


「というのは?」


『魔女の騒動をお忘れで?』


「いや、聞いているよ。」


『何故今なんですか?
騒動が終わってからでも
犠牲にならないでしょうに』



「今じゃないといけない…
それは一番君が分かってるんじゃないかな?」



そう言ったサリバンの目が開いたのに、
メルはぐっと身体を固めた





緊張からではない、
ただの圧に少し怯んでしまっただけだ。



『…それは』


「彼はきっと大きな役割を果たしてくれる。
…君もきっと彼に助けられる日がいつか来るよ。」


『私は…助けて守り通したい方です。』


「それでも良いさ。さ、
明日は沢山やる事があるから
今日はもう寝なさい。」


『…おやすみなさい』



はいおやすみそう言って扉は締められて
一人部屋に戻って行く


自室の扉を閉めて
身体を横にしたかったが服を着替えないとしわになる。


メルは着替えて
すぐにベットに横になった。


嗚呼、これから未来が
どんどん変化していくことだろう。

どうか、このまま
…何も起こらなければいいのに。



そう思って目を閉じた。
勿論そんなことはやって来ず。






朝入間君と朝食を取って、家から出る際。
入間君が箒に乗って行きたいと言ったが
流石に人を1人乗せて移動したことがない為却下した。


…今度落としても大丈夫そうな奴
一人捕まえて練習するか。

誰だ?ツムルあたりが何処から
落としても帰って来そうじゃない?
そう犠牲者を考えつつ、
メルは箒に乗って
先に職場に向かうことにした。



『おはようございます』


「お、おはよー昨日はどうだった?」


『昨日は…あー』


そう間延びしたメルに
オリアスがこれと昨日の資料を渡す
ありがとうございます。


と言って昨日の資料に目を通しつつ
今日は壇上に上がるのかなぁ
と思い思考を巡らせる。


あれ、三年前だから流石に覚えてねぇな。
そう思いつつ、メルは入間が来て
二度目の始業式を目の当たりにするのだった。



壇上にアスモデウスではなく入間が上がる話に
メルは顔を手で覆い隠した。


やめさせろ誰か止めてくれ…

あの理事長止めろ…


そう思いつつ隣からの視線が痛い。




孫の入間と言ったのだ。
隣にいたオリアスに肘でつつかれた


「…アレ昨日の?」


『そうです
…ご迷惑おかけします。』


弟さんいたのそう言ったダリにメルは
昨日急に弟が学校入るって理事長が勝手に決めて。

と言ったメルの泣きそうな声に
近くで聞いていたメンバーは
「あー…」と間延びした声で答えた。


職場から連れ去ったと思えばそういうことか。


昨日の今日のことにメルは
気付いていなかったわけではなかったが

だがまさか今日に今年の年になるとは
思いもしてなかったのである。


壇上で「あべるはうけ」と言った言葉に
メルだけでなく周りの顔が青ざめ固まる


「…メメメメルちゃん?」

『言うな、言うでない…!
知らん知らんと言ったら知らんって!!!』



余りの焦りについ敬語が消えてしまう。

禁忌呪文。

一つ間違えると大変な事になる。



詠唱する奴は余程の世間知らずの馬鹿か勇者の二択だ。



ちなみに入間が唱えたもので間違えると
四肢が爆散するものである。

入間の方に駆け寄った
ダリやモモノキが教えてくれた


メルは駆け寄りたかったが、
驚きすぎて足が固まって動けなかった。
戻ってきたモモノキたちに礼を言った。


無事に始業式は終わり…うん、
一部何処かかなりぐじゃぐじゃにしたけど。


頭を抱えつつメルは職員室に
クラスを持っていない教師と一緒に帰る。


その間ダリが
いやー面白かったねぇと笑って居た



此方は笑いごとではないのだが。



「まさかメルちゃんの
弟さんがあんな勇者だとは」


『…私も弟もこの魔界から
かなり田舎の方で暮らしていたので
禁忌呪文は特に教えてなかったんですよ。』




まぁ田舎っつても人間界だしな


「あれでも血のつながっている弟さんじゃ」


『私はサリバン家の養女としての立ち位置ですから。

入間は義理の弟ですよ…
まぁ彼曰くかなりの田舎育ちで
外の世界の知識はおろか、
教育と言う教育はされてこなかったらしくて』


いわゆる箱入り娘みたいな立ち位置だ。

大事にされてきた上での知識不足は
彼にとって生活があやしいものになる。


メルは先に誤解を解いて置き、
入間が人間であることを隠す方に専念した。


まぁ生まれた場所は違うにしろ、
メルも入間も人間界出身である。

悪魔の知識がないのは当然である。

それに魔力も…翼だってない。

そこら辺は彼の不運が一周回って
幸運が起こる事を祈るばかりだ。



下手に此方が上手く言ったら
ボロが出た時困るからな。


『しかも理事長が急に孫を自分の近くの学校に
連れて行きたいって連れて来たのが昨日でして…
その決定権に一応養女の私も同伴しろってなって』


「それで昨日途中退社したんだね」


『まさか一日で連れて来て準備するとは
思わないじゃないですかぁー…!!!』


そりゃそうだそう苦笑いする
モモノキやオリアスにメルは涙目だ。

まさかのデビュー式がこうも
突然起きるとは誰も思いもしない。




『しかも全部私と同じ様にペアルック作ろう
としたの必死で防いだんですからね…!?』


「そりゃ災難だったね…」


『流石にやめろって
オペラさんと一緒に叱りましたよ…』


職員室の扉を開いて、メルは席に着いた
次の授業をまとめるためにも作業に取り掛かる為だ。

メルは今日受け取った資料を再度確認して
そのまま授業の予定も確認後
オリアスに話しかける予定だった。



のだが、入学式のことが気に食わなかった主席を
まさか禁忌呪文の効果で
ジャーマンスープレックスを
主席のアスモデウス・アリスに
お見舞いするとは思いもよらなくて。




自分から新入生代表の座を奪った
入間を嫌悪していたらしいが、

自ら申し込んだ決闘で完敗した結果心服し
保健室に運ばれてから意識を取り戻した後
入間様と呼んでいる情報が垂れ込んできた。




いやいやいやいや、何で何で何でそうなる何で。




メルは深いため息を吐いて、
アスモデウスに問いかけた。

どうして感服の方になるんだ。
喧嘩売って負けたからって
そんなやくざじゃあるまいし…え?


まさか魔界ってやくざ…!?


んなわけねぇそう言って
突っ込んだ声は気にしない。


其処からはかなり激しい。
生徒が教師を攻撃したり、
物損事故入ったりと
アブノーマルクラス候補のメンバーが
どんどん揃っていくのに
メルは苦笑いするしかなかった。




挙句の果てには、入間が
教師カルエゴを使い魔召喚したのだ。

それにメルは顔を手で抑える以外他なかった。


おかげ様で次の日の職員会議は休んでいる。
その間、メルはというと


「メルちゃんこれ
アブノーマルクラスの副担任でいいよね?」


『っえええ!?なななんでですか!?
ってか身内は基本ついちゃだめでは!?』


「でもいつか担当持って欲しかったし、
カルエゴ先生担任にするから
君が副担任でも大丈夫かなって!!」


『…本音は?』


「そっちの方が面白そうだからー!!!」



だって弟と祖父と担任に
挟まれるとか面白すぎじゃん


そう言ったダリにメルは
これ以上言っても無駄だと判断し

許可を承諾する以外他なかったのだった。

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