「え?本当にコレで良いの?」
『後は全部冷凍するので!!
丁度在庫が切れそうだったので良かったのです〜!』
これ授業終わりでやるの重労働で
何時作るか迷ってたのですよ。
そう笑うメルに
バラムは額から汗を流していた
今目の前にあるのは、
何かの血肉に野菜と
何かの薄い円状のものが
スライスされて上に積まれていた
「待って?メルちゃん誰を
『牛さんですが』
牛肉のミンチである。
そう言ったメルにバラムが首を傾げた。
どうやら牛肉が分からないらしい。
まぁそれもそうか。
『あれ?僕が人間界にたまーーに
行ってるの知らなかったですか?』
「え!?嘘でしょ!?ほんと!?」
『…言ってなかったですね。
魔女は悪魔と契約した人間です。
本来は人間界に住んでいる筈なので、
僕も一応そちらで薬草やポーションを
売り払った対価で食材を購入しているのです。』
勿論魔界の植物だが、
ちゃんと人間に効果のある薬草を取っている。
貴重らしく高く売れる為、
年に一度渡して大金を使って
食べ物を買っていた。
ちなみに回復ポーション一つで数百万円だ。
まぁ大量に渡したらそれなりの額になる。
回復と言っても体力だけではなく傷も回復するし、
場合によれば害のある物を浄化する事も可能なので
かなり期待の出来るものだ。
「知らなかった…魔関署には」
『報告してないですが、
前にアメリさんのお父さんに聞いたら
悪魔と人間の渡航の
取締りらしく魔女は対象外とか。』
それに魔女も少なくはない。
そこまで取り締まり出したらきりがないだろう。
そう言っていたメルを
バラムはへぇーと言いながら
メルの手を見る
大きな器に手を入れて
ぎゅっと肉と野菜を混ぜ合わせていた
優しくねーと言ったメルに
バラムは頷いて肉と野菜を手で混ぜ合わせる
「油引けたよ〜」
『ありがとうございます!
ではこっちをもう焼いてしまいましょう。』
その間に一緒ににぎにぎしましょ!
そう笑うメルにオリアスは
縦に頷いて野菜と肉が混ざった
タネを薄いものに包んで
フライパンに敷きだした。
水も入れてぐつぐつと
言い始める前にフライパンに蓋をした
「この名前って何て言うの?」
『餃子って言います!スタミナ料理で、
体力を回復するのにとっても効果的なんです!!
本来は香辛料がはいるんですが、
口が臭くなりやすいので今回は抜きなのです。』
明日も授業ありますからね。
そう笑ったメルにバラムは
へぇーと驚き目を丸める。
「人間も肉を食べるんだね!」
『まぁ人間悪魔とそう変わらないので。
肉も魚も食べますよ。』
「人間同士って食べないの?」
『…食べないと言われれば嘘になります、ね』
そう言ったメルにええ!?と
オリアスが青ざめて距離を置いた
直で食うことは多分無いだろうが
と付け加えて説明をする。
『そういう民族が一定数生き残っていまして
他種族と交流すると世界が破滅するとかって
他種族の交流をしていない種族もいます。』
「人間でも種類があるのか」
『はいです。
でも殆どはその地域に
住んでいる者を種族として
呼び合ってるだけですよ。』
へぇーそういうのあるんだ。
そう言って餃子のタネを
包み紙に包み蓋をする
「どうやって食べるとか
聞いたことあるの?」
『んーテレビで見た知識ですが、
焼いたり煮たり?
でも人間同士食べるのは
禁止されていて殺害もアウトです。
何か頭がおかしくなるとかで
危険行動に走るらしくて。』
「悪魔の悪周期、
いや元祖返りみたいな?」
『あー近いかもですね』
「よくそんな恐ろしい事
話しながらこれ作れるね…」
そう引いているオリアスに
どうしてとメルが首を傾げる
『悪魔の会話の方が
よっぽどグロいですよ?
ほらマルバス先生とか
あそこら辺そうじゃないですか。』
「止めよう、ね?
血なまぐさい話似合わないよ?」
『えぇ〜?』
「まぁそうだね。
所でメルちゃん
それもう良いの?」
湯気が出てるけど
と言ったバラムにあああとメルが叫ぶ
焦げてないよね?そう言いながら
フライパンの蓋を開けて
湯気を手で払い、
そっと餃子の下を箸でつついてみる
大丈夫そうなのに
よしと声を上げて裏返しますので
オリアス先生やって下さいと言った
自分でやれよと言ったオリアスに
僕は運使えないので
と出来ないのを適当に誤魔化す
「これでもう終わりかな?」
『じゃあ後はご飯よそうのです。
お野菜はあと全部僕がやっておくので
オズ〜バラム先生を席に誘導してくださいです。』
「誘導って…案内って言えば良いのに」
そう苦笑いするオリアスに
こっちですとオリアスが手を洗い
乾かしながら歩きだすのに
バラムもまた手を洗って後を追いかける。
その間にメルはひっくり返した餃子を
皿に移し、新しい餃子を入れて
そのまま隣で沸騰させていた鍋に
ほうれん草をぶち込みレタスや
トマトを冷蔵庫から引き出して調理する。
『んーこんくらいだな』
そう言ってメルが適当にトマトを切り刻み
レタスを手でちぎって木のボウルに入れる
ご飯はよそおってくれたらしいので
餃子とサラダもオリアスに渡した。
『お願いします』
「ん」
そう言って手渡しで渡った料理に
ちょっと指が触れて
どきっとした気持ちを押し込める。
ほうれん草を水を流しながらザルの上に流す
熱いので少し冷ましつつ
水を切って包丁でザクザクと
五センチごとに切って
鰹節と醤油はお好みで持っていく
『これもお願いします』
「へぇー美味そうじゃん」
『僕の好きなものなので
美味しいのです!』
「得意料理ってこと?
メルちゃん凄い上手なんだね」
『僕ひょっとして皆さんの中で
料理不得意で通ってました?』
皆にそう言われるんですが。
そう言ったメルに
いや流石にとバラムは苦笑いした。
餃子にほうれん草のお浸し、
サラダにご飯とまぁ付け合わせに
幾つか冷凍から取り出したものを
並べ席に着く
いただきますー!そう言って
手を合わせて言うメルに続いて
バラムとオリアスも
手を合わせて同じように
頂きますと言って口に食べ物を運んだ。
「ん!美味しい!!!」
『でしょー?やっぱうちの飯が
美味いのです〜はわ〜』
「え?腕上げた?
マジでうまいんだけど」
『そりゃ小さい頃から料理してるので。
レシピもちゃんと残してるのです!!』
「流石に魔界にこんなのないね
…でも僕達にばらしちゃっていいの?」
『んーログハウスの時の記憶は
大体消えちゃうので別に構わないです。』
「え゛」
『許したとは言えども、
軽く記憶に残る程度で。
悪魔はその点すぐ忘れてくれるので
とても重宝します。』
はいどんどん食べるよ
そう言って手を止めないメルに
ゆっくり食べようねと言った
オリアスを無視して食べる。
食事の量と言うか
ご飯の量だけ異常に多い。
女性にしてはかなり多めに見えるが、
数分で綺麗になくなったのには
バラムも驚いた。
「いや、マジ腹いっぱいもう食えねぇ」
「美味しかったよ、僕皿洗いするね」
『ああ!良いですよ!
折角来てくれたのに』
「ほぼ餃子?って奴を包んだだけだよ?
メルちゃんは良いから。」
「そうそう。休んでなって」
そう言ってオリアスも席を立ったのに
メルがうぐうぐと唸る
何もしない訳にもいかないので、
それならと言ってメルがそっと
地下に行くことを
オリアスに伝えて席を外した
「地下?」
「魔女の書庫というか実験場所というか」
「へぇーそんなところあるんだ!!!
でも何で彼女そんなところに?」
「多分此間の試合のお礼ですかね?」
ほら日本語ってやつを知りたいって
言ってたじゃないですか。
そう言ったオリアスに
バラムがああ!と言った。
さっさと洗って彼女から
面白い話聞きだしましょ。
そう言ったオリアスが
皿を洗っていくペースを上げる。
それにバラムが乾燥魔術を施しつつ
速度に追い付いた。
メルが帰って来た頃には
既に皿も洗い終えて席も綺麗にしていた。
それに速いなぁとメルが苦笑いした。
『日本語って言っても僕
バラム先生に喋って欲しいんですよ。』
「え?何を喋らせるつもり?」
『んーまだ入間君の誕生日
教えて貰ってないんですが
入間君空想生物学とっても好きなので
どうせなら人間の言葉を喋って
驚かせたいと思って。』
「ああ!サプライズイベントね!!
良いよ!!!」
やりたいと言ったバラムに
そうこなくっちゃと指を鳴らすメル
ひとまずじゃあと言って
メルが説明を始める。
『僕今から語学魔術解くので、
まず、入間君とお誕生日と
おめでとうを縦から三つ書いてます。
これを言葉に言い直して
発音練習しましょう。』
そう言ってメルは
上から書いたメモをバラムに渡す
何かの言葉を言いながら
メルが額に手を置いた
少しすると、
メルから全く違う発音が返って来た
それに意思表示として
「言葉が分からない」と首を横に振る
それに気づいたメルが
片手で判を押すような仕草をした後
用紙に大きく文字を書いた。
『〜〜〜〜!』
「え?分かる?
オリアス先生。」
「いーーや全く分かんないですね」
『〜〜?〜〜〜、〜〜???』
「ん?」
『〜、ぅ〜、〜ぁ!!』
「あれ?ひょっとして
入間って言ってる?」
これ?そう言ってオリアスが
メルが描いていた入間の顔を指で指す
それに全力で首を縦に振るメルがもう一度言う
『〜ぃい、る、ぁあ!』
「…い、ぅう、あ?」
そう言うバラムに惜しいと言いたそうに
指を鳴らして悔しそうにするメル。
何かを高速で話しているのだが
何と言っているのかは分からない。
と言うか此方の言葉が
理解出来るのだろうか?
オリアスはメルの肩を叩いた後
口に指を指して伝わっているのか
ジェスチャーする
それにうーんと唸った後
メルが何処かに行った
数分後、本を一冊
持って来てノートを開いた
其処には悪魔文字と何かの文字が
びっしり書かれたもので
あてはめつつ紙に何かを書いていく
「えーっと、“悪魔の言葉は
ある程度は練習してるので
大丈夫です”ですって」
「嘘でしょ!?
僕達の言葉分かるの!?」
そう言ったバラムに
メルがこくこくと頷いた。
『〜こぅ、いぅと、わぁる?』
「あ、訛ってるメルちゃんだ」
『あははっ!いぁ、じゅつ、
といてぅの、で
こぉまま、はーしましょ』
「…お願いします」
とんでもなく言いにくそうな彼女に
段々申し訳なくなった
バラムが入間という言葉を言い出す。
何度か言っていると、
メルが途中で
嬉しそうな顔をする為
表情が豊かで自分が言えているか
どうかの判断が非常に分かりやすい。
『〜〜!!!〜〜〜!!!!!』
「え?ひょっとして、
すごいすごいって言ってる?」
そう言ったバラムにメルが
ブンブンと頷いていた。
分かるの!?と言った
オリアスに何となくだけどと答える。
「多分こうかな?“いるま”」
『“いるま”〜〜!“いるま”』
「“いるま”…成る程」
パチンと指を鳴らしたメルが突如声を戻す
『凄い凄いですよバラム先生!!
滅茶苦茶優秀です!』
この語学凄く難易度高くて、
人間の中でもTOPなんですよ!?
そう言ったメルにオリアスが
一番簡単なのやらせないの!?
とツッコミを入れた。
それにメルも苦笑いして
そうなんですがと答える
『僕其処の出なので、
他になると入間君の
知識問題に発展しそうなんですよ。』
「へぇーそういうもんなんだ」
『今ひたすら入間を連発してたんですが
こんな短い時間で言えるなんて流石教師…』
「そんなに???
あ、って言うかその本って何?」
『嗚呼これは悪魔語と
日本語を読めるようにしたやつです。』
「そんなのあるの!?!?」
『いつも付けてる術は文字が
この日本語に変換されちゃうので
先に日本語書いてから
悪魔語を見ながら書いたんですよ。』
「…さらさらと書いてたけど、
ひょっとして定期的に外してる?」
『…そうですが、って言うか
皆さんと会わない日は基本的に外してますよ。
そうしないと戻った時に会話出来ませんし
それに何時か戻った時困ってしまいますから。』
「…帰る?人間界に?」
そう言ったオリアスが低い声を出したのに
メルの胸がひやりとする。
不味い事を言ってしまった自覚はある。
だが…一応最終的に、
本当に不味い時は
コレを考えていた。
「どういうこと?」
『…もし僕がこの場所から消えることが
一番良いことになれば、
僕は人間界の言葉を喋れずに
帰る事になる可能性が高いのです。』
「メルちゃんが?そんなこと」
『僕だって嫌ですよ!!!!
…僕だって、本当はそんなこと、したくない。
でも僕が人間である以上
可能性を消せるわけではないのです。』
「…させない、絶対に。」
『この世界にはどうあがいても
変えられない法則があるのです。』
それは絶対、それは確定、
それを変えることは不可能
星が変わることが無いように
僕の存在がミレイユが
望んだ世界が変わることがないことも
その世界を変える事が
とんでもなく恐ろしい事だと言うことも
『僕が人間界に行くことは二つです。
君達が僕を裏切るか、
君達を守るために帰るか。』
「っ!メル!!!」
『聞いて!!!…僕がこの世界で死んだ時、
ヴルに人間界に埋葬してと頼んでいますです。』
「…それは、本当かい?」
コクリと頷いたメルに
バラムは何も言わないまま
メルの反応を見る
『これはあくまでも仮説ですが
…僕はきっと良い死に方はしないです。』
「っ、メル、」
『死んだあと人間界に
遺体を葬ってもらいますが、
魔女を蘇生することが
出来るかもしれないです。』
「…は?」
『魔女を蘇生する材料と用紙は此処に記しています。
バラム先生、此方はいざと言う時で念のため保管を。』
「…分かった。人間界に行くルートとかは?」
『手筈も全て記入しています。
この事は他言無用で。』
分かってるよそう言って
バラムが用紙を服の中にしまう
『僕が生き返る時、
恐らく記憶は残ってないと思います。
だから、オリアス先生。』
「なに?」
『僕の肉体に魂を一時的に
維持するようにしています。
なので人間界に行った時
僕を生かすか食べるかは貴方に託します。』
そう言ってメルが胸に
手を当ててじっとオリアスを見つめる
これは死を覚悟した彼女の
けじめでもあるのだろうか。
『僕は貴方になら魂も身体も
食べられて文句はないです。
それに魔女を食べると
永遠の命が手に入るって噂もあるです。』
「…そんなの、」
『僕はミレイユの願いを
叶えたらそれで終わりって思ってた。
でもオリアス先生やバラム先生
皆さんに会ってからどんどん欲張りになって
もっと生きたいなぁって思ってるのです。』
だからちょっとしたことでは死なないのです。
大丈夫、でもそれでももし死んだ時は。
どうか貴方になら、食べて欲しいと思う。
お世話になったダリ先生とか、
バラム先生とか
親のサリバン理事長とかじゃなくて。
何時か入間君が言っていたお星さまの中に
入れる気がして。
「…そうさせるつもりはないけど、
まぁいざと言う時はね。
でも食べるつもりはないよ。
蘇生一択しかないかな。」
そう頭を撫でるオリアスに
メルは嬉しそうに微笑んだ。