Novel - Paola | Kerry

it's just you


同じ世界など見れないくせに6

20/09/15
20

『いやー暇めっちゃ暇』

今年の夏綺麗に授業吹っ飛んだ。
あの統括教師のせいで。

吐血したことが知れた次の日。
ふっつうに職場に行ったらめっちゃ怒られた。
ダリ先生に。君出て来ちゃ駄目でしょ!!って。

反省として暫く仕事しないでって。
おこなんだけど。
僕から生物の仕事を取られたら死活問題だ。

全く、授業内容とか改善点
まだまとめ切れてなかったから
資料とか色々家に持って
帰ろうとしただけなのだが。


『…本読んでもなぁ、
大分読み切ったし。
まぁ書く以外ないよなぁ。』


この一冊でもうクララの方面の家は完成だ。
と言うかもうさっきから適度に
休んでは書いてを繰り返している。


どうしても身体が動いてしまう。

文字を書き終えた辺りで
コンコンとノックが入った
それにはーいと声をかける


「メルちゃん居る?」


「居ますよ。ばっちり。
どうしました?スージー先生」


「どうせなら女子会しましょうと思ってふいっ」


私の部屋で?そう言ったメルに
ええとスージー先生が答える。


人間の匂いが付いて大丈夫かと考えたが
そう言えば匂い消しを大量に使っている為
ほぼ無臭になっているのを忘れていた。


入ってきたスージーとモモノキに会釈する


「メル先輩何されてるんですか?」

『ああ、それは魔女の
倉庫にある最後の本の写しかな。』

「最後?本を沢山写しをしてたんですか?」

『うん。大体千冊程』

「千冊!?え!?嘘ですよね?!」

『夜ちょこちょこ寝れない時は
書いたりしてましたよ。
まぁここ最近のは吐血の方でしたが。
はい魔茶どうぞ。』


そう自室にある冷蔵庫からお茶を出した。
どうもと言って飲むモモノキとスージーに
メルは先程書いていた本を取り出した


『これは人間界の物語の写しですよ。』


「人間の?」


「文字が分からないのですが、何か魔術を?」


『いーや…魔術ではなくて単純に人間語を
…と言ってもかなり面倒な方の人間語を使って。』


流石に日本の日本語とは言えない。
メルは少し濁してそうですかと
答えたモモノキに少し安心した。


下手に情報を出し過ぎると困るからな。
特にモモノキ辺りは凛々しい顔をしていて
案外思い立ったが吉日。

行動をする子である。


勿論それはスージーも枠に入っており
彼女ら二人を組ませると割と収拾がつかない。


「どんな物語なんですか?」


『え〜〜?おとぎ話…人の退屈を慰めるために
語り合う話で、創作や再話として親しみやすく
子供受けするような話ですよ。』


「例えば?」


『グリム童話とか日本昔話とか種類はありますが…
まぁ何だろうえ、どれかなぁ。』


「このマルを付けている所はなんですか?」


そう言って開いたページを見る
そこには竜巻の表現や
魔女の姿が描かれていて


『…嗚呼、それは“オズの魔法使い”って話ですよ。
僕とってもこの話が好きなんです。』


「そういえばオリアス先生の
下の名前もオズが付いていますよね?」


『うっ鋭い…そうです。初対面で会った時実は
オリアス先生魔女なんじゃないかなって思って。
僕ずっと疑ってたんですよ。』


でも魔女じゃないし
単純に運を呼び寄せる家系能力と聞いて
ちょっとなんか残念って思った時を思い出した。


『でもこの物語、実は魔法使いが
元々人間だったって話なんですよ。』



だからもし、オズが人間だったら、
人間同士で愛し合って良いなとか
思ってたりしたこともあった。

それに気づいたのか、スージーが言う


「メルさんはオリアス先生が
悪魔じゃなくて人間だったらとか
思ったんですか?」


『ええ、少しはそりゃ思いましたよ。
いや大分かもしれない。』


だって、人間は魔女は寿命が少ない。
長く生きれる悪魔が
羨ましくて仕方がなかった。



『どちらかと言えば悪魔になりたかったって思います。
欲望のまま、自分のなりたいようになる。
翼が生えて角も生えて…とっても羨ましいんです。』


「でもメルさんだって悪魔だと思いますよ?」


『私が?』


「はい。
メルさん自分のなりたいように
努力されてるじゃないですか。」


『私が??』


「あれ?自覚ない、んですか?」


『うん。全くない。え?マジで?』


そう言ったメルにスージーが頷いた



「ふいっ、メルさん私達を傷つける訳にはいかないって
私達を呼ばずに男性陣と特訓していること知っていますよ?」


『うっ!!!誰情報ですか』


「勿論ダリ先生です」



ううんですよね



『まぁそりゃそうですよ。
僕女の人に傷つけたくない
と言うか歯止めが効かなくなると言うか。』


「どういうことですか?」


『僕の親、母親が僕を手放したことが
全ての元凶なんですが。

母親から見捨てられた瞬間が
置いてかないでって思った現実が怖くて
その置いてかれた事実に
心が空っぽになった時があってですね?』

「母親の様に当たってしまいそうになるって事ですか?」

そういうことだ。


魔女に器になるにふさわしいと
言われたのは恐らくそこだろう。

当てはまっていた心が
ぽっかりと穴が開いて、
それを塞ぐために
ドンドンと網を形を広げていった。


なのに広げても広げても
穴が開いたままで、
メルはぼやく



『母親から愛情を得られない
自分は愛されるべきではない。

でも愛されたいから見て欲しいから
全てを失って得ようとした。』


その時に作り出したのが、
小さな幼子だ。

少女の自分はただ無垢だった。

何も知らない無垢な少女を
母親に愛して欲しかった。


だから、だからメルは少女を維持した。
何時か母親に愛されることを夢見て。



『結局愛されることはなく、
見てくれる前に僕が手に取ったのは自分自身でした。
それ以来ずっと同じ世界を繰り返しているのです。』



ごめんね。そう言われて
手放された瞬間から落ちる世界。

翼もない為飛んでいくことも出来ず


ただ堕ちていく闇の中



その中で光としてつかめたのが
自分の幼少期だった。

過去の自分を愛して
突き放してを繰り返して
今生きれている。




『会えた、触れれた、ずっと居られる。
そう思う事で魔女の力が維持される。』




でも満足されない。
満足できない。


満足をすると力は
その形で終わってしまうから。


だがメルは違っていた。


何度も何度も堕ちた暗闇から
少女と一緒に居続ける。

手放しては突き放しては
追いかけては戻ってくる。




その廻る底のしれないことこそが
永久の魔女の切符を勝ち取っている。


「そんなことが…」

『満足してしまえばきっと
無駄死にしますから。
だから誰の悪魔の手を取らず、
ただこの子だけを取ってます。』



本当はオリアス先生を取りたいのだが
今はまだ、この子だけを
見ていたい気持ちだと伝える




『それに吐血した時、あの子とっても泣いてたから。
僕が居なくなればきっと寂しくさせちゃうから。
だから倒れるのまずいなっておもって。』


「その子が…昔の貴方はきっと
とても素敵な女性だったんですね。」


勿論今もですが。
そう言ったスージーに
メルはそうかなぁと答えた。


「ええ、その子をただ守りたいと思うんでしょう?」


『うん…何時か母親に愛されてずっと幸せになれる。
そんな日を、どうか今も願ってる…だから強く居られる。』


更に強くなれる。そう言って
メルが手に力を込めて花を咲かせる。
魔術を使うなと言ったのにと
モモが言うのにメルがごめんと答えた。


『ほら…こうやって出てくるようになる。』


そう手を出したメルの先には
緑髪の少女が此方に寄ってきていた

メルの身体に抱き着いた
少女が嬉しそうに笑って居る。

それにメルは可愛い子と
言って抱きしめ噛みしめていた


嗚呼、こうやって居られる時間も少なくなったのだと。



消えていなくなる少女に
メルは少し名残惜しかったが仕方がない。



「…それを、ひょっとして毎日?」


『魔法を使う時とか家系魔術の時は特にしてますよ。
手放して手放されての時の方が爆発するので。』


まぁ流れを抑え込んだりする癖を何とかしたら
強くなれますよと言った
メルに無理はなさらずにとモモが言う


「メルさんはお母さまと
一緒になるのが夢だったのですか?」



『いいや、きっと今が一番の夢だと思います。
母親に見捨てられて落ちた先に、
こんな素敵な人達と出会えたのだから。』




だから最初の方は嫌だったとは言えど
今も嫌だとは到底思えない。

愛されている世界に落ちたものだと思う。



…嗚呼、もし、あの人に愛されていたら。
私は今…とんでもなく強欲になっていただろうから。


いや、愛されていないからこそ、
欲にまみれているのかもしれない。
どちらにせよ恐ろしい事この上ない。



『それにお母さんに自慢したいくらいです!
スージー先生やモモちゃんに出会えたんだから。』


貴方が捨ててくれたから、世界が広がった。


狭い世界から遠くまで
観れないくらい広い世界に落ちた。


だから、次会ったら…自慢してやりたい。


良いだろ!これは全部私の物だと!!


そう、言ったら…どれ程楽だろうか。
どれ程彼女に出会えれば…


どれ程彼女から離されたら、
楽になるのだろうか。


嗚呼もう楽になることはない。
きっと、もう。
それでいい、楽にならなくても。


僕はこの永久の中に堕ちて
目を閉じるだけで。



『(僕も堕ちたものだな)』



こんな世界で、
二人きりで居られるよりも
大きな世界でずっと
居られる方が好きになるとは…



たった10年されど10年。

もうすぐで自分の時間が
終わることを知らされている。
誰が死ぬというのだろうか。

僕はまだ君を救えていないのだ。



救えない場所で、僕はずっと
救いたがっているというのに。

嗚呼いや違う、救えない場所
だから僕は笑って居られるのだ。





僕は救われない世界で幕を降ろしたがっている。
バットエンドよりも救われることのない
酷いあの幕メリーバットエンドを。




「所で、オリアス先生の
何処が好きなんですか?」


『ふぇっ!?』


「確かに。オリアス先生
女性陣でも人気な方ですよね。」


生徒にも人気ですし。
どう射止めたんですか?
そう言われて
ううんとメルは首を傾げた。


実はメルもオリアスが
何故好きになったのか
正直知っていないのだ。


仕事モードonの時は紳士だし、
offの時はだらけているから
ぶっちゃけ彼が何処をみて
刺さったのかイマイチ分からない。


…だからこそ、
手放そうとしているのかもしれない。
僕には、彼は不釣り合いなのだと。



嗚呼、オズの魔法使いだったら
…どれ程良かっただろうかと。
そうしたら、悪魔ではない
自分が居てもお似合いだった。



いや、違うかもしれない。
この物語は、オズの魔法使いこそが
僕の物語に見えて仕方がないのだ。



彼女ドロシーは気球に乗れず、
最後異世界で幕を閉じた。



まぁそのあと無事に元の世界に戻って
幸せに暮らした話で。





僕もきっと元の世界本来の居場所に戻される。
そうなった時、この世界今の魔界を好きになってはいけない。
きっと、きっと幸せになんて暮らせないから。


だけど、もうそんなことはできない。
戻ることは、許されない。



ハートを奪われたら、帰れない
僕はもう…この場所から帰りたくなんて、ないのだ。




『そうですね…かっこよくて、キザで
ちょっとカッコ悪い時誤魔化す仕草とか
帽子外さないのなんでだろうとか
色々思う所は在りますが』





僕がきっと好きだなぁって思ったのは
彼がじっと僕の内を見ようとしてくれるから。




なんて、彼は分かっているのだろうか?




『外見を見ていた周りよりも、
中身を見てくれる彼だから良かった。
僕は例え彼が僕を嫌いになっても
…ずっと僕は好きで居るのです。』





だって、最初に僕をみたあの目は
誰よりも何よりも愛して見てくれた
何時しかの母に似ていたから



だから…心の何処かで感じてしまうのだ。
何時かの乙女ゲームみたいな感情を。

落ちた世界で狂って奪われた先は、
一体どんな末路に向かうのだろうか?




「なんだかオリアス先生が羨ましいですね」


『え?』


「そうですね、メルさんに
そんなに想われて…」



『っえええ?!ぼぼぼぼ僕
そんなに想ってないですよ!?』



少なくともあの子過去の少女よりかはずっと軽いと思う。




…と言うかそれ以上に重いと、割にあわない。




『それに…僕まだオリアス先生と付き合ってないです…』




そう言ったメルに二人が
女性寮に響き渡る声で叫んだことは言うまでもない

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