ー魔女は数年で命を奪われる。
『…んなの分かっている。』
何でスージー達にあんなことを言ってしまったのか。
それは、勿論魔女として生きるとするならばだ。
ー魔女は感情の起伏を魔力として使用する。
その為、幸せな状態に漬け込まれていては
どんどんと力が衰える。
多少なりとも残酷な世界に落としておかねば
…本当に力を使いたい時に
使用出来ないとなったら
その瞬間の爆発的な感情を
身体が制御出来るとは考えられない。
要は絶望して堕ちていくのは
許されないということだ。
メルは最後の物語を書き終えて本を閉じた。
やっとこの本と後の本をまとめて持って行けばもう終わりだ。
…あとは、後継者と、どう死んでしまうのか。
未だに占いの末路は変わらない。
だから、オリアスとバラムに
大事なことだからと言っておいた。
勿論彼は怒っていたが…仕方がないだろう。
何度だって突き放して、
何度だって掴まえてくれて。
追いかけっこにいい加減
彼も飽きてくる頃だろうに。
悪魔も人間も飽きてくればもう追いかけてこない。
そうなった途端、自分の感情が制御出来るか
…それも怪しいのに。
だから魔女は孤独に
生きなければいけないと
何度も言い聞かせた。
『…剣の10』
オリアス達がこれからどうなるか。
メルが居た最終的な末路を占った。
それは、人が剣にくし刺しになっているカード
正位置では
悪い形で物事が終了することを示し、
苦痛からの解放されることを意味する。
逆位置の意味
最悪な状況から抜け出し状況は
一時好転することを意味するが
それは永続性のない好転です
つまり
『まぁ…とっても良いカードかな』
苦痛から解放されるのが、魔女としたら
彼らから僕が居なくなることが…本当の好転。
このまま待っていても、
恐らくその機会はいずれやってくる。
それなら、このまま安静にして、力を蓄えて
いざと言う時に派手に散ってしまえば良い。
そうすれば…彼らを、守ることが出来る。
このカードは、彼らが生きれる
という意味を示していた。
『…良かった』
犠牲が僕になるのなら
…これは超ラッキー占いだ。
天秤にかけたってどう考えても
100と1を比べたら1を捨てる。
寧ろ自分が生き残って
皆死んでいる姿なんて世界は見たくない。
血みどろになって倒れている悪魔の数々に
赤い世界金色の髪色が身体の中で
ぐったりと倒れている
あの世界は、僕が必要としている世界ではない。
同じ世界など見れないくせに
なのに僕は
一緒に笑って居られる世界を望んでしまう。
嗚呼、この結末を見るのが…楽しみで仕方がない。
物語は何処に向かって
幕を閉じるのだろうか?
ハッピー?それともバット?
嗚呼それとも
『(夢の中に閉じ込められる?)』
それでもいい、いやそれも
加味しておかねばならない。
いざと言う時は
…この魔力も力も感情も記憶も
魂さえも
彼らに捧げて消えていなくなる。
ミレイユが僕を生かしたように。
僕も、君と同じような世界に。
ーダメよ、貴方は、選ばれた人なの。
『…貴方は、どうして僕に託したのですか』
貴方は、僕と同じように誰かを好きになって
誰かを置いて来て、
人間界で僕を育ててしまったのですか?
オリアスには悪かったが、
ログハウスに戻り、
書類を纏める作業に移る。
書庫を整理していると、
壁に何かくぼみを見つけそこを押す
するとパカリと音を立てて
何処かが開いた音が聞こえた。
辺りを見渡し、
地下の壁が空いている事に気付いた
その中に入っていたのは、
一冊の金色の本
中を見ると
『…っ!!ミレイユの日記!?』
何々なに!?そう思い、
メルは扉を閉めることも忘れ
本を取って女性寮の自室に戻る。
『…あ、これ、僕を見つけた時からの話だ。』
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今日は良い収穫があったから
日記をこれから記しておこうと思う。
いつもの魔女研究㊙で一人
良い人材を見つけたのだ。
彼女の名前は岡本都佑。
どうやら偽名は安名メルと
既に名前を決めていた。
素晴らしい。
普通は数日かかるらしいが、
早速彼女を拉致した。
彼女の素性を聞いて行くと面白いことに気付いた。
それは私も同じ幼少期を送っていたことだ。
幼い頃に母親に捨てられ、
家庭崩壊し一人で悩み苦労した。
場所や時期は違えども、
同じ状態で同じように心が崩壊した。
それは、魔女にとって
必要な器を作る基準値に満たしていた。
…余り考えたくないが、
後継者として一応枠に入れておく。
後継者以上の力を秘めている彼女を、
本来は巻き込みたくない。
だが、あんな暗がりの狭い
一人の世界しか生きれない部屋で
世界に幕を降ろすなんて
可哀想にもほどがある。
まだ5歳位だと言っていた彼女に、
これから沢山愛を感情をそそいでいく。
そうしたら、きっと彼女も
普通の暮らしを過ごせる。
魔女ではなく、
人間界で人間の普通の暮らしを。
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拉致ゲフンゲフン…保護してから一週間が経った
彼女は本名を呼ぶ事を酷く嫌っている。
その為なるべく彼女の偽名を使うようにした。
質問に対して感情を持つような
答えは基本的に帰って来ない所
恐らく感情を殺して
戻れなくなっているらしい。
色の識別もグレーしか答えていない為、
精神的なダメージが酷い。
まずは触れることに慣れさせよう。
ひとまず火は危ないのでキッチンは禁止だ。
幸いなことに「禁止」「駄目」は言うことを聞く。
きっと一か月程で効果が出てくるだろう。
時間はまだある。…まだ、あと2年位。
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保護してから三か月が経った。
久しぶりに掃除をして
この日記を記すのを忘れていた。
最近メルと呼ぶと
此方を向いて傍に居るようになってきた。
可愛らしいが、この日記は読まれる訳には
いかないので基本的に彼女が居ない時に
書かないといけない。
言う訳にもメモとしておくわけにもいかないので
かなり飛び飛びに記すことになるだろう。
メルは食事を好まず
基本行動の一部として認知している。
楽しいとか美味しいという感情が
完全に欠如している。
これは長い戦いになるだろう。
というか無理かもしれない。
彼女がいつか誰かと食事を共にしたときに
回復する事を願って
毎日彼女の好きそうな食べ物を作る。
最近好きだと気づいたのは酸っぱい料理だ。
甘辛いものも多少好むが、
酸っぱい料理を先に食べて終わる。
適度に渡して、
薄味の料理を多めに作った方が良いらしい。
濃い料理は苦手で匂いと見た目で判断し
口どころか手すら出さない。
嫌いな料理という訳でもなさそうなので、
これも時期が来れば食べれるようになるだろう。
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保護してから5か月が経った。
メルが今日ようやく自然と笑ったのだ!!!
死んでいた目が少しだけきらりと光ったのを見た。
徐々に精神的な回復を遂げている。
ちなみに月明りから見えた花畑を見せた。
彼女曰く両親とピクニックに
行きたかったと言っていた。
だが両親が忙しいと言うこともあり
行けずに生涯を終えたらしい。
…そこで疑問を浮かべて話を聞くと、
どうやら前に私が飛んでいた場所で
契約した女性の生まれ変わりだと言うことが判明した。
同じような名前だったらしく、
記憶が戻って、
その夢だけが頼りで生きてきたらしい。
…ある意味本当に魔女の素質があるかも
しれないのが恐ろしくて怖くなった。
魔女は感情の起伏を糧として攻撃や防御
…家系魔術を使用する事が出来る。
彼女がもし、魔女として
生きる時が来てしまった時の為に
感情の起伏の補助を
一応教えておこうと思った。
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保護から7か月程経った。
髪の毛が伸びて散髪をしたら怒られた。
どうやらかなり前髪が
無くなったことが原因らしい。
ちなみに散髪から三日が経過しているのだが
未だに口を開かない為放置している。
自分から騒ぐよりも
彼女から口を出す方が効果的だ。
まだ放置していても問題ないだろう。
…しょげているのを昼間見ていたので、
謝るのは時間の問題だろうし。
そんなことよりも経過観察のまとめだ。
メルはようやく楽しいということが理解出来た。
喜怒哀楽でも悲しいという
感情が強かった彼女が
ふわふわするくすぐったい気持ちに
嬉しいと言うことを教える。
するとその嬉しいから
楽しいを分かってくれた。
これで一通りの喜怒哀楽は
分かって来てくれている。
年単位になると思っていたが、
案外早くて驚いた。
最近は薬草の知識や、人間界の授業を学ばせている。
足し算や引き算が出来るのに
何故かかけ算が出来ない。
割り算は完璧なのに、
彼女曰く覚えにくいとのこと。
魔女だけでなくこれから生きる時に暗記は大事だ。
最近非常に感情の起伏が落ち着いている為
これからは授業を入れて学ばせた方が良いだろう。
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保護から8か月が経った。
メルはとんでもなく暗記、特に情報系が苦手だ。
整理が途中で止まる。
処理が追い付いていない。
それもそうだろう
…何せ獣みたいな暮らしていたのだから。
暗記系は続けて行けば大丈夫だ。
幸いなことに嫌っている感じはもう見受けられない。
先生と言って茶化してくる位になってしまった。
得意分野は理科の空や生物系だ。
特に星の暗記系は完璧である。
何故その暗記が社会や物語の流れに
くっついて行かないのかが不思議でならない。
まぁ星は魔女にとっても必要になってくるため
一応覚えていて損はないだろう…
占星術や悪魔の世界の授業も視野に入れておこう。
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保護から一年が経った。
メルから誕生日を聞くと、
どうやら10月04日らしい。
天使の日なのに、
悪い子だから悪魔だと思っているとのこと。
…彼女が悪いわけではなく、環境が悪かっただけだ。
自分のせいにするのではないと一応叱っている。
誕生日はまだ先だが、今日は
彼女と出会った記念すべき一年目だ。
お祝いに誕生日プレゼントとして
花のバッチを渡したら嬉しそうにしていた。
風呂まで持っていきそうなので、
後で一応防水加工にしておこう。
彼女の経過観察を書いておこう。
メルの運動能力がかなり高い事に気付いた。
100m走をさせているとタイムが
20秒から15秒にまで早くなっていた。
どうやら体幹も悪くないらしく、
変な動きもある程度考えたらものにする。
このままだと本当に魔女の力を
ちょっと知識として蓄えて置いて損はない。
と言うことで、彼女に後で大事なことを説明しておこう。