Novel - Paola | Kerry

it's just you


透明な左手では君と手を繋げない2

20/09/15
23

見ていて呼吸が止まった感じがした。
今、現在吐血しているのは魔女としていや
生死が近づいているという証拠らしい。

力の操作でも何でもなかった。
もう長くないという証拠だったのだ。
ただ途中で消えて無くなるから、
割と放置していていいだろう。


此間沢山吐血したから、
恐らくあの日が死ぬという日だ。
夏頃になるということか。
嗚呼困るなぁ。





夏の夕暮れ時に、
僕は母親から手放されたというのに。




まぁ、これで何となく分かった。
どうやらミレイユが受けていた家系魔術は
僕で6代目。もうかなりの強さになっているらしい。


最大で30人と言っていたが、
なんだそれ恐ろしくない?


まぁ一応10人位は出せるようになっているが
あと三倍ですか。鬼かな???


まぁその時は派手に死ぬときに使おう。
どうせなら驚かせてみたい。




それにしても




『…戻る、選択肢か』




彼らを置いて、戻れるわけがない。
だから選択肢はただ一つ。


永久の魔女になるそれだけだ。
だが、この話は一応言っておいた方がいいだろう。
私はこの次のページを見ずに
本を閉じた事を強く後悔した。





其処には大事なことを書かれていたのに。





+++++++++++++++++++



本を見てから一週間後
オリアスやダリと話をして
ようやく魔法を使える許可を得た。
その為一応攻撃をしたのだが…



『(駄目だな、楽しいとかが勝って中々起伏が浅い)』



残酷な事を感じないと難しいと言うことか。
かと言っても彼らにどう説明した方が良いのか。
どうせ適当な事言って違うとか言い出しそう。



…あり得そう、だからと言ってもこのまま




『(人間界に戻る?…そんなこと)』




笑って居る少女が戻ってくるとは限らない。
そんなの嫌だ、帰りたくなんてない。


深い感情がブクブクと泡立っていく
これは怒りか?悲しみか?それとも



「っうぉっ!?」

『っ!!!』



イフリートと対戦をしていたことを
すっかり忘れて考えていた

起伏が急に激しくなった為か
思いっきり彼を傷つけてしまった。


急いで駆け付けて回復魔法を施す

それに気づいたスージーが
応援を呼びに走って行った


「メルちゃん、また考え事してたでしょ」


『っ…はは、分かっちゃいました?』


「目が暗くなると攻撃が強まるって分かってるからね」


予想以上に威力出て引っ込めなかったけど
そう言ったイフリートにメルは苦笑いした


「何か悩み事?」


『…まぁ、その』


「俺には言えない?オリアス先生とかにも?」


『…僕は、人間界に戻った方が良いのでしょうか?』


そう言ったメルにイフリートは
「は?」と声を上げた

吐血したことが力の使用ではなく
寿命が近いことを知らせるだけ。

そして吐血したことで、
徐々に人間に戻れる様になっている事を伝えた。


それに顔を青ざめていったイフリートだったが
すぐにメルちゃんと声をかけた



「君はどうしたい?」


『僕?』


「そう。君がもしこの場所に
居続けたいと思えば
俺達は君を受け入れるし、
何時も通りにいるよ。


でも、もし君が帰りたいと思うなら
…きっと皆引き止めない。」



それは…それはあんまりだ。



嬉しいと悲しいと思う
感情が落ち着けば人間になる。

きっと永久の魔女として
生きていたミレイユも
途中穏やかに過ごしたからだろう。





だから継承者が現れた。





どちらにせよ、長く居られない。
ならば普通に戻ってしまえば良いと思う。




でも、きっと其処は私は幸せになれない。
この場所が何よりも楽しくて仕方がないから。





『…僕は、戻りたく、ないです。でも』


「でも?」


『…幸せに居ると、皆と、居られないのがっ』


魔力も衰えてきっと死んでしまう。
だから魔女は孤独で居続けなければいけない。
感情をループさせようとしても、
多少不幸せだとしても




幸せな時間を知ってしまえば、
もう右肩下がりだ




「メルちゃんはさ、魔法が使えなかったら
俺達と居られないって思ってる?」


『…え?』


「強さだけが力とは言えないってことさ。」


「イフリート先生!!!」


そう応援が来てイフリートの身体が治癒される。
殆ど傷は抑えた為、大丈夫だろう。


にしても、強さだけが力ではないとは
どういうことだろうか。




今は魔女で、もう少ない時間で
でも永久の魔女になっても、
感情の起伏が激しければ
永久に居られるというだけで
穏やかに生きれるということは
あり得ないという世界。




それでも、私は生きたいと思うのだろうか?



オリアス達を置いて、
一人で生活をするということになる。
事実上、この世界から追放ということだ。






どうあがいても…人間に戻れと
言われている気がする。




これじゃあオズの魔法使いと
同じようなものではないか。


元の世界に必ず帰らせるあの物語と。
せめて、帰れない様に閉じ込めて欲しい。



なのに世界は残酷で、
幸せに生きれば死ぬしかない世界で。




こんな自分では、オリアスを
幸せにすることは間違いなく出来ない。



…決めろ、決めるんだ。
いやもうとっくの昔から決めている。






なのに信じたくないのだ。

思いたくないのだ。

だからまだ、
魔女として生きれている。









ー人間界に帰らなければいけない。








拒絶で今感情の起伏を何とか維持している。
暫くはまぁ力は使えるとは思うが
…だが、時間は無い。



永久の魔女になっても…どうなるか。
ミレイユも継承者が出たのに驚いていた。
だが、僕が変えてくれると言っていた。


一体何をして変えれるのだろうか?
永久の魔女になってしまえば、変わるだろうか?
そんな簡単に?変わる筈がない。




…変わろうとしていないだけではないのか?





どす黒い感情が心の奥底で飛び散る
ふわりと世界を巻き込んで、
姿を思い浮かばせる




自分が居たい場所に居れば良い。
それだけで良いと皆言ってくれる。
だからこの場所に居たい。




でも居続けることは不可能。
これは魔界だろうが
人間界だろうが天界だろうが
何処に行っても同じ結末





嗚呼そうか






『…貴方は、』








生きていた世界を手放すしか道が無かっただけなのね









だから地獄だと言うのだろう。
嗚呼、それなら、作れば良い。
たった一年されど一年。

彼女と特訓した時間は
幸いなことに覚えている。

イメージにそのまま
具現化すればいいだけだ。



どうせならぶち壊してやろうではないか。
幸せに暮らしても笑って居られても
強いままで維持出来る様に、
感情を世界を変えてしまえばいい。



『…強くなったな、ほんと』


永久の魔女に、僕は成って。
貴方を救って貴方に一言言いたいのだ。



僕を救ってくれて、ありがとう。と



『さ!次々!!』



そう言ってメルは手に
力を込めて炎を作り出して投げた


+++++++++++++++++++


『ごめんね?急に呼び出して』

「いいよ。それで?何処に行くって?」

夏休みも半ば、入間達は遊園地で大騒ぎしてしまい
クララの所に避難している最中だった。

メルは最後の書庫整理というのも含め
掃除ついでにオリアスを招待することにした。

『目瞑って、箒に捕まっていて欲しいのです』

良いよって言わないと開けちゃだめですよ。
そう言ったメルにオリアスが分かったと言って目を閉じる

浮遊した箒にまたがって作り出した場所に向かう。


数時間放置は悪いので、かなり超特急で移動したおかげで
とんでもなく早くついた。多分一時間。
あのここ普通に遠いんだけど、時速何キロで移動したん僕。

地面に足がついたのにもういい?とオリアスが言うのに
まだと言って箒をしまい、彼の手を取ってこっちと歩かせる


『いいよ』

そう言ったメルに眩しそうに眼をゆっくり開けるオリアス


「…あれ、此処」

『ちょっと場所はまだ教えれないけど
魔界の一つにこんな場所を用意しました!!』

中身もほぼ同じだよ!そう言って
メルがオリアスの手を繋いで案内する。

これどうやって作ったの?
と言ったオリアスに

メルは全部手作り
作業はほぼ魔法でと言ったのに
オリアスが口をあんぐりと開けていた


「っえええええ!?ちょっと待って家も家具も!?」

『まぁ棚はもう二度と作りたくないですね。
貴金属系で難しい形なら買いましたが
簡単な物や木の材料とガラスは自作ですよ。』

そう言ったメルにぇええとオリアスがドン引きしている。
まぁあのログハウスに強いて似ていないと言われると
カラーリングが多少温かみを変えている位だ。

ミレイユのログハウスは明るい木の色だったが
こっちの方は暗めの木の板を使っている。

マツの木材よりもガルボオークと呼ばれる
ちょっと暗めの色と
明るめの木材を乱雑に組んでいる床板

壁はちょっとシックに暗めの色合い
天井は少し高めに作っている。
一応バラム先生とか大きい悪魔も居るから。

念のため裏側から大きなドアを付けて
移動出来るようにしている。


「ひっっろ…」

『地下も完備してますよ。』

そう言ってメルが地下行きの扉を開ける
後を追ったオリアスは扉をくぐり前に遊びに行った
ログハウスの中の記憶を思い出しながら見る

記憶は曖昧だが、何となく面影がある気がした
大きな棚にずらりと並べられた本と
降りて左側を向いて、右奥には薬草などの素材保管庫に
真正面には地上の光が入りつつ光る植物園があった

「えぇ…ここは?」

『ミレイユが作ってくれたログハウスを
僕の知識なりに保管している場所です。
僕が死んだらミレイユの場所に移動出来る者はいないので。』

はいそう言ってメルが
金色の縁を取った羽根ピンバッジをオリアスに渡す。

縁の中は深い緑色がキラキラと光っているように見えた


「これは?」

『強く願えばこの場所に移動出来る超優れものアイテムです。
オリアス先生にしか反応しないので注意してくださいね。』

「っえ?!なんで」

『僕の爆発ならこの場所は耐えられることが可能です。』

「…メル?」

『魔女には最大であり最悪の魔法があります。
闇の球を目標内部に転移して
闇の火柱が大きくはじけ目標を破壊する』


威力も桁はずれで、
浜辺を生き物が全く住みつかない
巨大な入り江に変える程

人の持つ全魔力に加え、
生命力をも使用する術であり、
髪の色素が全て抜けるなどの
症状が現れる


『“不完全版重破斬ギガ・スレイブ”』

「不完全…?完全は?」

『完全版はどんなものでも壊滅させるもので…
制御に失敗すると暴走し、
世界を滅ぼしてしまう可能性が高いです。』

「…そんなものを、撃つ時がくるって?」

『もしそうなった場合、
ありったけの考える人達をこの場所に強く念じて下さい。
そうしたら自動的に何処にいてもこの場所に来れることが可能です。』

ちなみに外からの移動は
基本的に僕かオリアス先生以外消滅するので。
転移しか移動方法はないと思って下さい。

そう言ったメルにオリアスがひぃと声をあげた


「…これ、俺が悪用する可能性だって
ある訳じゃん?どうして今渡すの?」

『オリアス先生は悪用しない悪魔です。
だって僕が認めた悪魔なのですから。』

「はっ、随分と気に入られちゃったなぁ。」

『ふふっ、此処の資料は多分解読するより
直接入間君に読んでもらうべきです。
彼が読めるように細工をしているので。』

「…分かった。飛ぶ時は彼も移動させよう。」

『お願いします』


「…あのさ、」

そう言ったオリアスにメルがピクリと動きを止めた
オリアスの方を向かずにそっと声を聞いている

「俺、イフリート先生から聞いたんだけど
此間メルちゃんが吐血した件。」

『…嗚呼、アレですか』

「人間に戻れるってこと?」

『…戻れるどころか、
永久の魔女になっても意味がないのです』

は?と言ったオリアスにメルは
寂しそうにオリアスをみて答えた


『オズ、僕はこのままだと人間に戻ってしまうのです。
それはバビルスの足手まといになる可能性が高いです。』

「…そんなこと」

『幸せに居ると、力は徐々に衰える。
僕はバビルスに居続けると…人間になる。
何も出来ないただの肉体になる。』

「っ!!…泣くな」

首を横に振りながらメルはにこりと笑う


『僕、みんっ、なの…力になりたいから。
毎日、楽しくて楽しくて
…あんな時間に戻りたくなくて』

母を追いかけ続け、落ちていく時間に。
戻った方が良いだなんてこと、考えたくもない。

なのにその時間に戻ればずっと魔女として生きれるし
なんなら永久の魔女として生きることが出来る。

だがそれは…誰にも会えない状態に戻るということで。


「…メルちゃんは、俺達と居て嫌?」

『そんなっ!!』

「じゃあ、何が怖い?
魔力が無くなって迷惑かけるのが?
それとも俺やスージー先生達に会えなくなるのが?」

それは


「俺はね?バビルスで一緒に仕事しててさ
楽しいって言ってくれるそんな君も好きだし、
毎日必死になって頑張る君も、笑ってる君も
全部好き。」

「幸せだって言ってくれて凄い嬉しいし
きっと俺だけじゃなくて皆そう言ってくれると喜ぶ。」

でもね?

「俺は君が好きなんだ。
魔女でも人間でも悪魔でもない。
君自身メルが好きなんだよ。」

『っ』

「幸せになって何も出来ない訳ないじゃないか。
君には足や手や口があるだろう?
攻撃特化は他の奴らに任せて、後衛に回れば良い。」

『でもっ!もし魔女が攻めてきたら!!!』

「そうならないように、
君はこうやって俺達と一緒に居てくれている。
本当は今すぐにでも人間界に帰れる筈だ。」

違う?そう言ったオリアスに
メルが黙って下を向いて俯いた

「はぁーーー、どうやったら分かってくれるかなぁ〜」


『…僕は、君を幸せにすることはきっとできないのです。』


「だから?俺は君が居るだけで幸せだし
それに人間に戻ったら
寿命も多少なりとは延びるでしょ?」


『それは…まぁ』


「知識は充分あって損はないし、
場所だって提供する。
それでも…戦えないから不安?」


『…どうして、僕を其処まで
好きでいてくれるのですか?』



他に女の子だって沢山いるだろうし



悪魔ではない人間の

それも魔女を好きになるとは


「…初めて会った時、変な子だなって思ったさ。」

人の機嫌を伺って無理に溶け込もうとするその仕草に
ちょっと頑張らなくても良いんじゃないかと思った。
だからちょっかいをかけたりしてると、
あだ名をつけられて正直嬉しかった。

「ちょっと弄るとすぐに驚いて、見てて面白かったし。」

でも、誰かと一緒に居た時、
ふとモヤモヤした感じがして。

嗚呼嫉妬してるんだなって
気付いた時は好きだと思った。

「好きになるって、ふとした瞬間でなるものじゃない?」

確かにモテるけど、嗚呼そうかもしれない。

「メルちゃん、恋沙汰に疎いでしょ?」

『ぴぇ!?』

「ほら、俺だけじゃなくて顔が良い教師とか他にもいるけど
顔が良いから見た目や地位を見て尻尾降らないだろ?」

悪魔はランクが全て
だから強いランクの相手に逆らうことはない。

だというのにメルは
強かろうが弱かろうが同じように相手をする。
強いて言うなら歳が上か下か位だ。


「中身を見る子だなって思って気になった。
悪魔にとってそんな奴は中々いないからさ。」

『…そういう、オリアス先生も、
中身見てくれる良い悪魔です。』

「ふふっ、俺きっと
君に出会う前はそうでもなかったよ?」

それはオリアスだけじゃない
きっとメルが出会った全ての悪魔もだ。

メルが首を傾げる


『そうなのですか?』

「うん。君がそうやって
皆を俺を見てくれたから。
鏡映しみたいなもんだよ。
良い事をすればいい事が起こる。」

『…僕は、』

「それにこれを渡したってことは
君がもし居なくなったとしても俺や
俺の周りの悪魔を救える救済措置だろ?」

例え人間界に戻ったとしても
この場所は恐らくメルが死んでも残り続ける。
と言うかその予定でメルが作り込んでいる。

死んでも生き残れる救済措置
そんなものを普通渡す訳がない。


「こんなにも想われて逃げるだなんて許さないから」

『っ!!』

「それに君が人間に戻ったとしても
使い魔になってやるさ。」

そうしたら力だって多少は使える気分になるだろう?
そう言ったオリアスにメルはううんと唸る

「ほら後は何が欲しい?」

『ちょ!それじゃあ僕が
欲張りな我儘っ子じゃないですか!!』

「だってそうだろ?」

『うぅ…』

「感情の起伏が激しければ良いんだろ?
じゃあ…定期的にドキドキさせればいい話。」

そう言ってオリアスが
メルの腕を掴んで急に胸の中に押し込んだ

それに驚いたメルが目を丸めて
オリアスの名前を呼ぶ

「沢山思い出を残して、沢山作ったらいい」



そうして、俺の事だけを想って生き続けてしまえば良い


そう言ったオリアスにメルは顔を赤らめて反抗した


『…ずるい』


「ははっ、そうだね。
それで君が居てくれるのなら、
ずるくて良いよ。」


それなら、ずっと一緒に居られるね。
そう言ったオリアスにメルはくすりと笑ってみせた


嗚呼、何時も貴方は僕を助けてくれる。
だから…僕は、何度だって貴方を貴方達を。



「『(この子は、殺させない)』」


廻って戻ってくる

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