Novel - Paola | Kerry

it's just you


透明な左手では君と手を繋げない3

20/09/15
24


ー君が例え人間だろうが魔女だろうが君は君だ。
俺は君を好きになった。だから何も心配しなくて良い。



そう言ったオリアスの言葉を思い出しながら身体を丸める
その本人は今お風呂に入ってもらってる。
ちなみに僕は先にお風呂入った。

髪の毛を乾かして、そっと髪を前に持ってくる。


『…僕は、魔女じゃないと、力が無いと
貴方と釣り合わない気がしてならないのです。』

だから、せめて力が無くなってしまったら
人間界に帰ってしまわないといけないと思った。

そんなの嫌で、でも


ーそうして、俺の事だけを想って生き続けてしまえば良い


最後に言ってくれた言葉が唯々嬉しくて
嗚呼自分はこの場所に居続けれるのかと。


そうだ、母親の状態をオリアスにすり替えれば良い話だ。
…だが彼が突き放すなんてことを考えたら一体僕は

どれ程の絶望を感じて爆発してしまうのだろうか?

感情の起伏が激しいことで魔力が維持されている所
ある意味というかもう確実に魔力は無限大と言っているのと同じだ。
ぶっちゃけ体力と集中力勝負という所になっている。

…今度ロビン先生に弓の集中力特訓してもらわなきゃな。


ガチャリと音が鳴ってドアが開いた音と耳が判断し顔を向けた
風呂上がりのオリアスはまだ髪に水が含まれているのか
前髪を後ろにかきあげたままメルの方に歩いて来た

いつもはスーツ姿かジャージ姿で、
シャツを着たままの姿なんて見たことが無かった。


というかこの家にある衣装が
大体布一枚からなので、
速攻で風呂入った途端服を持ってって
似たようなサイズを作り出したのだ。

にしても何でもできるな僕。凄いよ。


「お風呂あんがとね、めっちゃ良かった」

『それはどうも。高さとか狭くなかった?』

「…あれで狭いと思うんだったら余程の金持ちだよ。」

普通の風呂よりも三倍位は広かったよ?
絶対大柄の悪魔も使えるように設定したでしょ。
そう言ったオリアスにメルは違うと首を振った

どちらかと言えば自分が小柄な為
グルグルと風呂の中を移動したかっただけだ。
ゆっくりするにはちょっと広すぎるのは
…ちょっと作って後でハッとなった。

「にしても此処本当に何人か住めるね。」

『一応避難所としても使えるように完備していますです。
一応地下だけで生活できるように、種とかもありますし。』

木々も周りに育てている為、
多分暫くは食べ物に困らない。
枯れない限りは…まぁ。

『まさにノアの箱舟って感じなんだよなぁ』

「ノアの、何?」

『あ、知らないの、か。
そうかコレは神話の方だったか。』

何々?と言いたそうにオリアスがメルの隣から顔を覗き込む

『大洪水が起きて絶滅するのを守る船です。
辺り一面海になって陸で生活する者は死んでしまうからって』

「へぇー」

『そこに人間界が今育ててたり
生きている者達が生活しているという話で
割とアニメとか漫画で面白いんですよ。』

「面白そうなゲームの設定とかもありそうだね。」

『あー!ありますあります!!
神話って結構奥が深くて、
良くゲームの設定であるんですよ。
神様よりも悪魔の方の設定が特に多いんですがね。』

「え?そうなの??」

『はいです!懐かしいなぁ〜アスモデウスとかモラクスとか
覚えるために口に出したりメモしてたりしたなぁ。』

そう懐かしむメルに、オリアスはねぇと言って聞いた

「メルちゃんはどの悪魔を最初に興味持ったの?」

『そりゃあナベリウスでしょう!!
僕は大の犬好きでケルベロスを出せる
っていうのが超羨ましくて!!』

「…カルエゴ先生にケルベロス出してもらったりしないの?」

そう目を細めて言うオリアスにメルはとんでもないと首を全力で横に振った


『カルエゴ先生はお世話になってばかりの尊敬する先生です。
幼少期の頃憧れていたから触らせて下さいというので
触るのはおこがましいですし、彼の性格上無理かと。』

「あぁまぁ確かに…後は?」

『後ですか?うーん、ムルムルとか二回言うの面白って思ったり?』

「ぶっ、ツムル先生じゃん…っくく」

『へへ!ああ後ダンダリオンとかウァラクとかも
響きが好きで会ってみたいなぁって思ってましたよ!』

「…オリアスは?」

『う゛っ…実は、オリアスは
昔ミレイユと一緒にお話したことがあるのです。』

「っえええええ?!!?嘘いつ!?」

『僕が確か10歳位でしょうか?記憶が曖昧で
ミレイユの日記を読んで知った話です。
どうやらオリアス家の家系と仮契約を結んでいたらしくて。』

「…え?え?ちょ、ちょっと待って?
ひょっとして、俺がメルちゃん気になってたのも」

星がメルを導いていた可能性が高いということだ
そうなれば、オリアスがメルを気になってくるのもまぁ分かる。

まぁ星が導かなくたって、
メルの奇想天外な行動は
誰もが目を引くものではあるが。


『…ひょっとするかもしれないですね』

「はぁー…マジか。それって見れる?」

『ああ!見れますよ!丁度此処に置いてるんですよ。』

そう言って前からちょこちょこ移動させている
超大事な日記をメルは自分の部屋の本棚から引き抜いた

はいどうぞそう言って渡した金の本をペラりと開いた
悪魔文字で書かれている、と言ったオリアスに
その本自体読み手に翻訳されるらしくてとメルが説明をしながら
オリアスの隣に座った


「へー…っぐっ」

『うん?どうしました?』

「っ、くくっ、ふふふっ
…ねぇ、待って?君さぁ〜〜???」

そう言ってオリアスがメルに見えるように見せて指を指す
其処はミレイユが「オリアス家の人達本当にごめんなさい」
との文字に笑っていた。


仮契約をした時、メルが使っていた
家系能力の話を書かれており、
占星ラッキーハッピーをミレイユの
ドジをカバーするだけに使っていたとの記録に
メルは目を丸めて『うそ!?』と反応した


「他にも、晩御飯の嫌な食べ物が出ない様にしたとか
髪の毛がはねないようにしたとか
…っくはははっ、あー駄目だ腹痛い!!!」

『ん゛〜〜〜〜!!!!!』

「ごめんごめん!ははっ、あー駄目だ、
ははっ、無理、っやっぱ笑う!」

大きく笑うオリアスにメルが頬を膨らまして
オリアスの胸を叩こうとするので
オリアスはそれを腕で防いで
首を少し丸め、もう片方の手で口を隠して笑っていた

『他には…え?なにこれ、
結ぶの出来ないから運よく結べるようにした!?
嘘でしょ!?器小さすぎない!?』

「ぶっっっくくく、ははははっ、ひぃ駄目!!」

もう無理そう言って笑うオリアスに
メルは深いため息を吐いた後少し笑ってしまった

それをきっかけにメルもオリアスと一緒に笑った


久しぶりに声を出して腹から笑った気がする。
…それこそ、ミレイユと一緒に遊んでいた時以来で


『…きっと怖かっただろうに、こんなに愛してくれてた。』

「ミレイユ様?」

『うん。もし永久の魔女になれば僕で六代目だって。
ほら何が出来るか予測も含めて書いてくれてる。』

「…本当だ。え゛30人も出せるの!?アレを!?」

『なのでもっと力を付けないといけないです!!
あ、ちょっと身体を動かさずに音楽流しながら
練習してみたいのです!ひょっとしたらイメージだけで
動かせる可能性もありますし。』

「あーそれなら視界奪われている時でも
何か出来るって事か。
確かにやっといて損はないね。」

『後々、どうやら僕に強い魔術をかけているようです。
これは魔女でないと解けないとかって話で。』

「あー、リンちゃんの所にまた行こうってこと?」

『ですです!!』

そう言ったメルに、オリアスは分かったと一言言って答える。
予定はまた同じように土曜日の午前中に行こう。
そう夏休み中に行けるように予定を組み、携帯に保存した。


「…これ、本当に君の成長記録なんだね。」

事細かに描かれてる。
特に最初の方。
そう言ったオリアスにメルはうんと頷いた

「身長とか体重とか…君の精神的な状態も。」

『昔は生きるのが全てでしたから、
感情は消し去っていたのです。』


だからこそ、魔女の素質があった。
そう言ったメルにオリアスはコクリと頷いた

「ミレイユ様が書いてくれているね。
魔女になってしまえばこの気持ちを
同じように受け継ぐのかと…恐怖を込めて。」

そう言ったオリアスにメルは頷いて
そっとオリアスの手にある本のページをめくる。
大体は読んでいるが、読み飛ばしたりしていた為
綺麗には読んでいないのだ。


『昔は大人しくて何もしない子だったのですよ?
今と比べてイメージつきます?』

「全く?」

『ふふっ、それ程僕はミレイユに出会って
そして貴方に会って変わったと言うことです。』

ありがとう。こんな幸せな感情を教えてくれて。
そう言ったメルにとんでもないと
オリアスは首を横に振った
自分はただ手助けをしたまでで、導いてはいないと。

だがメルは導いてくれていたと思っている。
ミレイユも、オリアスも
…星の導きがあったからこそだろう。


『僕は皆に出会えて幸せなのです。
知識も記憶が戻った今では使えていますし
勿論前にやってた勉強もコツコツやってるです!!』


「…えらいね」


『へっへーん!!…それに、僕がこんな性格なのは
皆と話した時楽しいお話をしたいなって。
きっと前から思っていたんだと思うです。』

幼い頃は、罵倒され虐待されて生きていた。
薄暗い部屋の中で一人感情を消し去って。
転生したとは思えない位、それは夢の感情だと。

一体どちらが夢で現実なのか、区別がつかないなら
いっそのこと、どちらも夢であれば良いと思った。
だから現実から醒めないまま目を閉じてしまえば良い。

そう思って閉じていたら、光を見せてくれた。
ミレイユが、拾ってくれたから。


それでも、僕は前世で生きていた時間を愛おしく思える。
それは、ミレイユがきちんと僕を育ててくれたから。
だからこうやって生きて今も想えるのだ。



嗚呼、会いたかった。と



「メル…」

『僕は、これ以上幸せにならなくてもいいのです。
もう沢山望んでしまった。
これ以上幸せになったら戻れなくなってしまうのです。』

「どうして?何処に戻るの?」

『それは…もう、二度と戻れない世界』

転生した以上、二度と帰れる場所ではない世界だ。
時間軸が違えども同じ生活をしているような記録は残っていなかった。

と言うことは、そもそもここは自分にとって異世界の可能性がある。
まぁ時間軸が違っていて、単純に同じ世界というのもありえるが。

まぁそこら辺はどうでもいい。


『でも、こうやって想える…それでいいのです。』

それこそが、魔女としても生きれる唯一の救いであるから。

そう言ったメルに、オリアスはそっとメルの頭を撫でた


「きっと楽しかったんだね、その世界が。」

『…ええ、とっても。だから帰りたくもなる。でも』

「帰らなくて良い…そう言いたいの?」

コクリと頷いてメルはオリアスの目を見て言う
キラキラした金色の瞳に、自分がうつっているのが見えた


『だって、貴方が此処に居てくれるから!』

だから、あの場所に戻らなくたっていいのだ。
そう言ったメルに、オリアスは嗚呼
と言いながら本を閉じて上を向いて悶える

こっちの気も知らないでと言ったのにメルは首を傾げた


「…そういやさ、メルちゃん此間
スージー先生からとんでもない事
聞いちゃったんだけど」

『ふぇ?』

「俺達…付き合ってない、よね?」

『…ないです……よね?』

え?そこ言う?そう言ったオリアスにメルは
いやだってと答える。


『告白と言う告白、お互いもしてないですし』

「う゛っ」

『それに僕は魔女で寿命も限られていますから
僕はどちらかと言うと付き合わない前提で魔界に居ますし』

「う゛っ…」

『と言うか、そもそも人間と悪魔っていう
とんでもない境界線を渡ろうとしている
オリアス先生の方が危ない気が』

「あ゛〜〜!!分かった分かったごめんって!!!」

いや謝られても特に怒っていないのだが。
そう言ったメルに嘘でしょとオリアスが叫ぶ

何時もだと、女子は
「なんで待ってるのに
告白してくれないの!?」
とか言い出すらしい。

いやいや、そんなことを思うことがおこがましい。
そう否定するメルに
へぇとオリアスは目を丸めた。


『相手がどう思っているのか分からないのに
傷付くような行為を促すのは良くないのです。』


「…まぁそりゃあそうだけど、」


『そりゃあムード?的なのは気になるですけど…
どうせ死ぬし、一瞬のことを誰かに話しまくらないと
行けないと言う後の面倒を考えると別に』


「いや絶対後半が本音でしょ…っくく、」


全く、男みたいな考え方してるね。
そう笑ったオリアスに
メルがまた頬を膨らませた


『だって面倒じゃないです?
きゃぴきゃぴきゃぴきゃぴ…
そんな話している暇あれば
研究に没頭したいのです。』

「っくく、そうだね。本当だね。」



男性陣とよく話している理由が
何となく分かった気がする。


かなりあっさりした考え方の為、
女性特有のきゃぴきゃぴが苦手なのだろう。

確かにメルが女性陣と話している時
かなり苦手そうに笑って返しているのを見かけた。
アレはきゃぴきゃぴから
逃げたい気持ちが表れていたのだろう。


『さ、晩御飯作ってしまいましょう!』

「今日はどんなご飯にするの?」

『へへ!どうせなら魔界のご飯も
食卓に出してみたいのです!
ちゃんとお野菜もあるんですよ!!』

「へぇ!何か手伝おうか?」

『じゃあ〜一緒にレシピ見て決めます?』

いいね、そう言ってオリアスとメルが部屋から出て
扉がガチャリとしまった後
風が部屋の中に入り、閉じていた本が
ゆっくりと開きペラペラとめくられる


最後のページに書かれた山羊の印について説明を書いていた




ーそれは警告。

印が出る者は処分する者。

大いなる災いをもたらす。

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