メルのおでこに当てて1分もたたずにリンが
驚いて椅子を後ろに下げながらメルから遠ざかった
距離を置くリン
顔が絶望で表情が崩れていた
それに、メルは
寂しそうに笑ってほらと答えた。
『…貴方も、そうやって』
「ちっ、ちがっ!驚いただけで…」
『いいよ、それが正常の反応だからさ。』
「何を見せたんですかメル先輩」
『なぁにちょっとした
過去を見せただけだよ!』
「…アレが、ちょっとした!?
嘘でしょ…?メル貴方本当に」
そう言ったリンに、
メルはリンの目を見てじっとする。
それはこれ以上言うな
と言いたそうな警告の目に
リンは分かったと首を横に振った。
「ほんと、ムルムルさん。
貴方達愛されてますよ。」
そう言ったリンに
え?え?とツムルが首を傾げた
見せてと言っても
絶対にメルは見せないだろうし
なんならリンが止めとけと否定をする。
それは見世物ではないし
それに耐えられる者が
居てたまるかと言ったのだ。
「私一分も耐えられなかった…
それをたったひと欠片と言った。
貴方、本当にとんでもない化け物ね。」
『そりゃあお褒めの言葉どうも。』
「(…それは無。何もない空っぽの世界。)」
メルの中に入った世界はただ無でしかない。
何もない白だと思えば白だし透明に近い世界。
その中から湧き上がる水。
いや空っぽではない。
そもそも自分が水の中に入っていたのだ。
空っぽに見えていたのは反射しなかったから。
いや此処は本当に白い世界か?
そう疑問に思えば世界が変わる。
暗くそこが分からない世界に。
光が見えて手を伸ばすのに、
全く追い付けないし
追い付いて手を取ろうとしても取れない。
取った所で
この手の中は消えて
無くなる予感さえもした。
普通感情は
赤や青や色がある筈なのだ。
怒りや悲しみが色となり、形となる。
だと言うのに
彼女の場合は透明に近いナニかだった。
まるでその場所が
なんにでも作り替えられるから
何も置いていないという位に
殺風景な世界だった。
そんな感情を維持出来るなんて
芸当は今まで見たことがないし
本でもごく稀に
透明の世界を持つ者はいると聞いていたが
本当にお目にかかれたのは初めてだ。
…それに
「(感情が無いと同じ位
ぽっかり空いた穴に
膜でふさいでるだけだなんて)」
貴方は何を想っても感じないし、願えない。
だと言うのに
こうして笑って
誰かと居られて生きれている。
それは…奇跡に近いものであり、
その彼女と一緒に居られる
彼らはとんでもない程に良い人達だ。
絶望をずっと傍で見続けて生きている。
そんな感情の中で、
毎日メルは生き続けて、
どういう神経をしたら
この状態で入れるのか分からない。
だが、一つだけ分かったことはある。
「(この子が…生贄に相応しいこと)」
悪魔に身体を捧げるということが
魔女にとって
人間にとってどういうことなのか。
恐らく彼女は全く分かっていない。
感情や世界や全てを
悪魔に渡してしまうということだ。
まぁいわば結婚よりも
重い契りみたいなもので。
…でも、あんな
地獄みたいな場所で生きれるのなら。
きっとこの子は本当に…?
「…魔女の枠をぶち壊してくれる者…?」
『ん?何か言った?』
「ううん!!それよりも
私に他に聞きたい事ってあるの?」
『ああ!家系魔術って
複数持ってる魔女っているのかなぁって』
先程の悩みは消し去ろう。
そう思ったリンは
次の悩みを聞いて答えを出した。
「いや、基本居ないわ。
たまーーに居るけど、
本来家系魔術一つでもきついのに
二つは余程の才能があるか
ただの魔力お化けかのどちらかね。」
『魔力お化けなのかーそうかー』
話きいてる!?
いや聞いていたから
そう言うのだろうが
いや待って?
「あのー…メル、貴方ちなみに
魔法はどれくらいのレベル?」
『え?
一日に一回から二回程?』
「ま゛っで!?」
「え?
しょっちゅう出してますよね。
そう言ったツムルに
そりゃあ練習しとかないと
と言ったメルに
待て待てとリンが叫ぶ
「ちょあの
ハイランク悪魔を一撃で滅ぼし、
10ランクにさえ致命傷を与えることが
出来る結界諸々を破れる
超幻のあの
「っうぇえええええ!?
そんな威力あるんですか!?!?」
「そうよ!!!
不完全版でも威力は落ちるけど
7位なら致命傷与えられるし
そもそも使える者は
かなりの魔力量と感情の操作が上手いって
…嘘でしょ?
貴方一体どうやって操作してるの!?」
『ひえーーーそんなに
大きな物だったの?アレ』
そうだよ。
そう言ったリンに
メルは苦笑いして返した
『だからさぁ?
さっき見せたじゃん。
アレやってるんだって。』
「…マジ?」
『マジよ。』
「え?あの地獄よりも地獄の場所を?」
そんなに地獄かな?
そう言ったメルに
そうよとリンが答える。
『でも僕はそこを天国と呼ぶよ?
此処が凄く落ち着いて幸せになる。』
…ように、自分で自分に言い聞かせてる。
そう言ったメルにピクリと
リンが身体を動かして固まった
「っな…」
『この場所が最大の地獄なら、
此処を天国として思い込めば…
何処に行っても
幸せなままで居られるだろう?』
「そ、りゃあ、そうだ、けど…でもそんなの」
『僕はこの感情を愛と呼ぶ。
この愛は誰にも奪わせないし
誰にも愛させない。』
「…本当に、呆れた位ピッタリね。」
そう言ったリンが
良いわ強力しましょうと答える。
勿論、永久の魔女になる為の、協力だ。
それに良いのとメルが喜び席を立つ
「ええ、私に知り合い居るから、
その子達とも会って
仲良くしてくれれば良いわ。
逆に貴方みたいな人を
野放しにするのが恐ろしいわ。」
『え?そんなにヤバいの?』
「どれ位かって言うと、
そちらの悪魔さんにも
分かりやすいように魔界で言うと。
一年生からランク1で
半年で10になる位の。」
「…やばいですね」
でしょ?そう言ったリンに
ツムルが青ざめて頷いた。
「ソレが天然物で無垢で世界を知らない子
だったら尚更手の中に置いとくでしょ?」
「そりゃそうしますね。」
「バビルスに保護されてて良かったよ
ほんと貴方って運良いのね。」
他の学校やら場所だと貴方
普通に食べられてたわよ。
そう言ったリンに
メルがええと苦笑いした。
『にしても悪魔に捧げものねぇ』
「言っとくけど、人間の血よりも
魔女の血は数倍濃いからね?
永久の魔女の血は永遠の命をもたらすって
悪魔の中では神話になってる位だから。」
そうなの!?
そう言ったメルがツムルを見る
それに確かに聞いたことはあると
ツムルが答えた
「けどそれは子供が夢物語で話す内容でしかないですよ。
人間がいるとか食うとかよりももっと夢物語です。」
『はわーーー…あれ?何でじゃあ
ミレイユ生きれてたの?』
「ミレイユ様って前
永久の魔女様よね?
あのお方は軽く千歳超えてた筈よ?」
せっ!?そう叫び固まった
メルにそうよとリンは答えた。
「あのお方はずっと生きているか
どうかすら幻であった人よ
そんな幻のお方がどうしたの?」
『え?ミレイユと9年位
一緒に生きてたのに?』
っえ゛え゛!?嘘でしょ…
もう声がだみ声になって
咳き込みだしたのを
可哀想だったので
ツムルが背中をさすった
ありがとう。
あいつより優しいのね貴方。
いえいえ
うちのクソがすいません。
そうツムルがリオンの事で
謝りつつメルは言う
『そんなに驚くことなのぉ…?』
「いやぁ〜常識外れの
箱入り娘って言うのは
とはこういうことを言うのね。」
『あう?』
「魔女関連は私が教えるわ。
貴方はこのバビルスについて教えて?
例え敵に貴方を売られても私は反対するわ。」
こんな恐ろしい奴を
手の中に入れて見ろ。
爆発するぞ。
誘爆されたくなければ手を出すなと。
そう言い切ったリンに
えぇとメルは引き気味に苦笑いした
『所でさ、リン。』
「うん?」
『魔女の寿命って平均10年
って聞いたけど本当だったよね?』
「そうだよ。
まぁ度合いによるけど
吐血っていつした?」
『先々週位前かなぁ?』
おうぅ最近んと言ったリンに
メルは苦笑いする。
「まぁ大体来年か
再来年の今頃じゃないかな?
って言っても攻撃の途中で
吐いたなら割と力の暴走が強そうだけど。」
「え?じゃあ魔女でも
力を使い過ぎると吐血するんですか?」
「そうですねぇ
まぁ場合によりますよ。
攻撃しながら最大呪文を
そりゃ何発もぶち込んでたら
吐血の一度や二度しますし。
それで幅を広げる方法も無くはないですが…」
『いやぁコソコソ裏でやってたらバレちった!』
「だろうと思ったよ
…全く、君本性は本当に
魔女に向いていない。」
なのに感情の起伏を
コントロールできるところは
魔女に相応しいとはこれいかに…
『まぁそれ以来あんまり強い魔法
使わなくなったし!!大丈夫!!!』
「…通常でその思考回路しているんだから
それ以上強くならなくて良いよ。
寧ろコントロールに特化した方が良いかもね。」
『コントロール?』
「例えば今いるツムルさんとかに罵倒されて
気持ちが落ち着いたままで居られるかとか」
あーーーーと言いながら
ツムルとメルがお互いを見ながら言う
そう言えば前に
喧嘩吹っ掛けられて切れた時あった
と言ったのに
今後の課題此処でみつかるとは
とリンが嘆く。
「まぁ追々話はしていきましょう。
私も寮に住む予定だし
案内してもらえる?」
『うん!!じゃあ行こう〜!!
そいじゃツム君またねぇ!!』
あっはい。
そう言ってツムルは
リンたちを見ながら
一人部屋の中でぼやいた
「あれ、俺何で来たんだっけな…?」
+++++++++++++++++++
『ここが食堂で
2階から4階が部屋
5階会議室等々かな。』
「へぇー」
『僕の隣一応部屋空いてるから入る?』
「そうだね。その方が良いかも?
メルは
『一応持ってるけど
ミレイユの場所と自分の二つあって
ミレイユのを基本的に使ってるかな?
僕の方は避難所として作った。』
「そうなの…一人でやったんだよね。」
『うん。だってオズたち巻き込むのやだもん。』
「だろうなぁ…あんな世界持ってたらそりゃあ」
『ねぇ私そんなに珍しい?』
うん。
即答されてしょんぼりするメルに
良い意味でよとリンがフォローを入れる。
「私にあんな強い魔術の紙を
初見でくれるって言うのもビビったけど。
何よりも悪魔にこんな愛されてる人間
というか魔女は初めて見たわよ。」
『そう?僕職場仲間ってだけで
愛されてるとは思わな…
あれ?何でそんな目するの?』
「…ダンダリオン先生達
本当に可哀想に思えてきたわ。」
確かに感情という物自体が
怪しいメルにとっては
通常の感情と言うものが
判断できない以上
普通と言う概念が
よくわかっていない。
それはまだ修正が効くからいいのだが
逆に当てはめていくだけにとどまっているので
ひょっとして○○?とかに発展しない。
したとしても
大体が恐怖や
負の連鎖での発展だから
こう幸せじみたものに
疎いのは理解出来る。
『ほぇ?』
「貴方が生かされてるのは
ある意味面白すぎて
手元に置いておかないと
飽きないからって意味なのかもね。」
『そうかな?僕面白くないと思うけど。』
「いやぁーーーそれはどうかなーーーー」
メルがリンと
話す感じが流石に面白すぎて
それこそダンダリオン先生が
腹を抱えて
笑い堪えていたじゃないか。
それをみて面白くない
と言う人を見てみたいものだ。
あんなに起伏が激しいと
色々人生大変そうに思えた。
…にしても、面白い人だ。
透明な薄い膜をはっているのに
喜怒哀楽が上手い。
まるで水面の様な感情の起伏。
何かを落とされないと
一度も動かないその感情に
逆に何故そこまで静かに
居られるのかが分からない。
もっと知りたくなる。
そう思わせるからこそ、
悪魔の中に
生きれるのかもしれない。
「ねぇ、メル」
『うん?』
「リンクって知ってる?」
リンク?そう言ったメルに
リンがコクリと頷いた
「永久の魔女が使える能力の一つでね?
魔女や悪魔と手を繋いだら
一時的に相手の力と組み合わせて
力を出すことが出来るの。」
『なにそれすご』
「ただお互いを
知っていないといけないし
タイミングがずれると
事故を起こすから要注意。」
あぁそりゃあそうだな。
避けられても困るしな。
「通常の魔女でもハイランクまぁ
力を溜め込める量が多い者程
使える人は居るわ。
まぁ限定されるけど。」
『へぇ!魔女同士でってこと?』
「それもあるけど
人数も限定されるのよ。
ちなみに私は二人までよ。」
『色々あるんだねぇ』
「他にも力の強化は出来るし、
神話生物と会話出来る能力を持つ
とかの言い伝えもあるわ。
まぁどれも本当かどうかは
本人のみぞ知るって所だけどね。」
そう苦笑いしたリンに
メルはくすりと笑った