Novel - Paola | Kerry

it's just you


輪っかの先3

20/09/15
34

「それではお世話になりました」

「ああ、気を付けて帰れよ」

そいつ暫く目覚めないと思うからよろしく。


そう笑うクルアーンに苦笑いしつつ答え
オリアス達はクルアーンに
元の場所に飛ばしてもらって帰宅した。




桜の木の下に降り立った皆
時刻はもう夕方から夜になりかけており
一体どれ程いたのだろうと思った。





「帰りますか〜」




「メルちゃん
共同用の部屋に寝かしたら?」



「暫く目覚まさないって
言ってましたよね。」



暫くの単位ってどれくらいですかねぇ
永久の命でしょ?そう言ったツムルに


ひょっとして軽く
100年目覚めなかったりして。


そう笑ったダリに
まさかぁと笑って居た
メンバーだったが



本当に彼女ならありえそうで黙ってしまった。


ダラダラと脂汗が
ぶわりと身体から出て来たのに
笑っていた笑顔のまま固まっている。



「まままままさかぁ〜!」


「…前力使い過ぎて
丸々3日寝てたからな」


「うっわ前科…」


「メル先輩を
犯罪者呼ばわりするのは
止めて頂けますか?」


お気持ちは非常に分かりますが。
そう言ったモモノキにツムルは謝った


「ひとまず他の寮の子が来ない
隔離の場所に住まわせる?」


「あああの悪周期用の離れですよね。」


「うん。何が起こるか未知だし
ひとまずそこに置いとくのは?」


俺らが1日ごとに交代で回ったらすぐでしょ。

そう言ったダリに全員一致で
ひとまず共同から北の奥にある
悪周期用の離れに向かうことにした。


中々この場所に隔離する者はいない。

大人になったからと言って
不摂生をしていれば
悪周期に突入しているのも気付かずに
ここに連れ込まれたりもするが



中々そんなことは無い。


外から鍵がかかる仕様で、
一応一通り暮らせるものはある。


勿論毎回壊されたりして
修理費の方がかさんでいるが。



「じゃあ今日と明日は俺が見ますよ。」


「オリアス先生だけだと
戦いに困るでしょ?

今日はイポス先生と
モモノキ先生にも付いてもらいな?」



男二人いたら女性も安心でしょ。

そう言ったダリに
こくりとモモノキは頷いて
メルの荷物を取りに寮に帰った。


「俺達も解散するよ〜
オリアス先生何かあれば連絡下さい。」




すぐに飛んで行きますので。

なるべく小さな事でも連絡を。

そう言ったダリに
オリアスはコクリと頷いた





+++++++++++++++++++




教師寮北部に位置する悪周期用の個室
No.5と書かれている札の鍵を開ける。
大柄の男性が使えるようにも
大きめに作られている。



1〜4は女性の小さめの個室で
6〜9は男性で少し広めの個室。
5と10は複数閉じ込める用で
最大4人まで入れる仕様だ。


入ってすぐに廊下があり、
左にトイレと風呂と
洗面台や洗濯できる場所。
右に行けばキッチンに直接行ける。


真っすぐ行けばキッチンにも繋がるが
広い部屋が待っていた。


高さはおおよそ6mはあり、
もっと大きい場所はNo.10にある。



ドアを入って左側に行けばキッチンに繋がる
前には広い机と椅子が4つ並び
その奥に白のキッチンが見える。


ドア入って右側中央には
テレビが設置されており
左右にはドアがあり
各部屋に繋がっている。



監視に二人一部屋ということだ。



主に此処を使うのは
双子が悪周期になったり

事故で半径5m以内に
居なければいけないと
死んだりするような場合で


寮に住んでいる皆は
この場所を“隔離事故部屋”と呼んでいた。


まぁそんな名前を
付けているのにも関わらず

何故かこの場所は
今まで壊されたことは
ほぼ無いに等しい。


強いて言うなら
隣の部屋からの崩壊に
巻き込まれた位だ。



オリアスはメルをテレビ右側。

リビングに入って
すぐ手前のドアを開けて中に入る。


部屋の中は左右に
ベットがあり2つともそこそこ大きい。

ダブルベットの寄りの
シングルベット位だろうか。

ベットの間にはランプが
ついており、まぁそこそこ良い
ホテルの様に見えなくもない。


入ってすぐ左右に
机や衣装ケースがあり


食料は一応キッチンに
保管するようにしている。


オリアスは入って左側にあるベットに
メルをゆっくり
壊さないようにそっと降ろす


すやすやと眠っている
メルの髪が背中に挟まれて

痛くないように
そっと頭を上げて髪の毛を横に流した

仕事で良く見ていた
長い髪の毛はサラサラしているように見えたが
触ってみるとかなりふわふわした感触だった。


ある程度髪の毛をまとめて
触らないと触った感じがしない。


銀色になっていた白い髪の毛は
もう緑色に落ち着いており
ミカがそっとオリアスの背後で声を掛けた



「…無事に儀式が終わって良かった
これで僕のお役目も殆ど終わったもんだ。」


「…お前は、どうして止めなかったんだ?
天使なら、あの時こいつを連れて人間界に戻って
天界に連れていけるチャンスだっただろうに。」


そう言ったオリアスは
メルの髪の毛を触りながら言う

ミカはため息交じりに
扉の隣の壁に背中をもたれかけて答える


「あのなぁ…僕は
天使とは言ったが元が入っている。

その子を殺しちゃった
時点で天界に帰れるチケットは無い。

それに、その子は
君と君達と居たいとずっと願っていた。」


そんな願いを叶えられる
天使が叶えさせなくてどうするんだ。


そう言ったミカに
オリアスはそっかとだけ答え
メルの替えの衣服が届く前に


自分の上着をそっと外し
上まで留めていた
中のシャツのボタンを外して
息を大きく吐いて身体を楽にする。




「なぁ…元の世界って
幸せだったのか?」


「それは何処の世界だ?
お前達と初めて会った場所か?」


そう言ったミカに
オリアスは首を横に振った
となれば一つだけしかない



メルが一番最初に生まれた世界。


「…傍から見たら
残酷そうな感じはしたよ。

初対面で見た時最初は
こんな奴が天使になれるのか?
って思ったさ。」


目は死んでおり
ただ手を伸ばすことさえも諦めた少女。


やせ細り髪の毛の長さは
バラバラで育児放棄されていると
一目で分かる程に
生活が良くないことは分かった。



だが少女は

学校や人が変わると顔を変えて
何事もないかのようにふるまう。


どうして
相手に気遣ってまで
生活するのだろうか
と気になった。




ある日、声を掛けた。
一つだけ願いが叶うとしたら何を願う。

そう言ったミカに
メルは良いよと答えたのだ。





ー良いよ、どうせ叶わないから。




「そいつは誰よりも自分を
救っても救われないし
報われないと分かっていた。

その欲望は深すぎて
手を伸ばすのすら恐れた。」



だが、ふとした瞬間
少女はミカに手を伸ばした。





もしもしもそれでも願いが叶うのなら。
どうかこの願いを受け止めて欲しい。







この感情と一緒に居られますように。







「っ!!」

「絶望していた彼女に問ったよ、
その感情を普通は
消して欲しいと願わないかと。


そしたら彼女は言ったんだ
…絶望さえも愛せれば何があっても
幸せなままで居られるだろう?と」





それは悪魔も恐れることだ

絶望を知り堕ちてしまえば最後なのに




彼女はメルは

その絶望を恐怖を愛し
味方につける

と言い出したのだ。



「だがメルは
僕に願わなかったし
なんなら友達になる?
と無邪気な顔で言いやがった。」


おかげ様で
中々手放せない子の
お守りに困っている。


そう笑うミカが
そっとメルの頬に触れ
頭を数回撫でる



「最悪の中で笑い続ける子
…この子が悪魔でなくて
心から良かったと思う。」


相手に願わなくて
心から良かったと思う。


それは元祖返りの
ソレと同じようなものだからだ。


「僕が事故で死んでしまって
自分が死なせたと泣いて
悪魔を召喚したのは
ちょっと予想外過ぎて驚いたがな。」



くすりと笑ってそっと
メルから離れまた壁の方に行き

今度はそっと床に腰を降ろし
メルのベットの前で答える



「…その前は」


「ん?」


「この子が、願ったものは…」


「聞かない方が良いし、
多分本気で怒ったら
敵に見せるだろうな」


え?俺達に見せなくて
敵に見せるってどういうこと?

そう言いたそうに
首を傾げたオリアスに
ミカがあのなぁと答えた



「お前はあの目を見たことが無いから
そう言えるんだよ…

見ると多分発狂するし
普通に死ねると思うぞ?

まぁそうしたくないから
必死になってお前達に
暴かれないようにしてるんだろうが。」



それもさっきで終わったから
まぁ落ち着いてるんだが。


そう言ったミカが
肩の力を抜いて息を吐いた



「…そっか」


「ああそうだよ。
ほんと、お前に会わなければ
今頃どうなってたか。

悪魔は嫌いだが
…メルが好きだと言った悪魔は
まぁ、嫌いじゃない。」


「…俺も嫌いじゃないよ」


そっか。


そうミカが答えお互い笑って居ると
コンコンとノックが聞こえた。

はあいとオリアスが答え
メルのベットから離れ
ドアを開けた。



すると女性寮の荷物を持ってきたモモノキと
男性寮の荷物を持ってきたイポス。


「わぁ!!何事かと思ってたら
メル先輩綺麗ー!!!」


「ちょ!?ロビン先生?!!?」


「凄い衣装で皆ずるいと
言って付いて来てですね…」



すいません。
そう言ったイチョウに
オリアスは
良いよ良いよと首を横に振った



捕まって離れられるものではないから
見つかったら終わりだと思っていた。




何で寝てるのー?
と言ったロビンが
すっと目を細めて弓を出したのに
オリアスやイチョウはぎょっとした。



「で、君は誰かな?…???」


「…その寝てる子のお守りを
していたと言った方がいいかな。」


そう言ったミカに
オリアスが弓を下げろと声を上げる

敵ではないことを理解した
ロビンがごめんと言いながら
弓を消してしょげる。


「良い良い
こんな匂いをさせているんだ。
普通に敵だと思うだろ…」


「それにしても皆してずるい〜!
なんでそんな綺麗な格好してるの!?」


「はぁ…あのねぇ」





+++++++++++++++++++




「ええええええ?!メル先輩
永久の魔女になったんですかあああああ!?」


「正確には“仮”な“かーり”」


そう伸ばして言うオリアスに
ロビンがへぇと言いながら
キッチンで食事を作りながら話を続ける。


メルはミカに頼んでオリアス達は
先に食事を取ることにした。

衣装も着替えて
通常の私服に戻っていた


「それにしてもなんか
違った感じしたというか
…ううん」


「え?そういうもんなの?」


「え?皆さん気付かなかったんですか!?
メル先輩なんかこう
下手につついちゃいけないというか」



キラキラしたモノには棘があるとか
言うじゃないですかと言ったロビンが
フライパンを使って炒め物を食器によそう


いやそれはそうだけど
と言ったオリアス



「メル先輩に捧げたからですかね?」


「…あり得ますね。
血の契約ですし。」


「使い魔みたいにメル先輩の
言う事に反したら
雷落ちたりするんですかね?」




それは…流石に分からない。
そう首を横に振りも出来ず
ううんとオリアス達は顔を下に向けた


ことりと食器を置いていくロビンに
私も手伝いますと
立ち上がったモモノキだったが

急に眩暈がして
くらりと倒れそうになるのを
イチョウが気付いて腕を掴んだ



「っ、モモノキ先生大丈夫ですか!?」


「え、ええ…」


「俺達魔力を彼女に殆ど
渡したみたいなもんですからね。
今日は大人しくしておきましょうよ。」



料理人の邪魔させるわけにもいかないし。
そう言ったオリアスにモモノキは
じゃあお言葉に甘えてと言って席に座った


「メル先輩
いつ目覚めるんですかねぇ」


「そりゃ俺達も分からない。」


「最長丸々3日でしたよね。」


「永久の命だからって
流石に寝坊助で
100年寝るとは思えないけど」


流石にそうなったら
ちょっと聞きに行こうかとも思う。


あの場所に
もう一度行けるかどうかは分からないが。



そう言ったオリアスに
モモノキやイチョウもそうですね
と首を一度縦に振った



「まぁまだ夏休みも半分切る
手前だし?大丈夫でしょ。」



「もし起きなかったら
休職しましたって何かしら
生徒に説明すればいいでしょうし。」


「まぁそうですね」


「はーい!ご飯出来たよーー!!!」


待ってました!そう言ったオリアス
そう言えば初めて食べますよねと
イポスがモモノキを見ながら答える



「ロビン先生
男性寮で料理人
しているんですよ」


「ええ!?」


「これでもうまいんだよね」


これってなんですかーと
言いながらそうだとロビンが
オリアスにミカの分も作ったが
いるかと聞いた。


それに聞こえていたのか
部屋から少し出てきた
ミカが答える



「僕の分は要らないよ。」


「あれ?そうなんですか??」


「元々メルの体内に生きてる
ほぼ肉体のない存在だし」


「なら食べちゃいますね!!」


皆さん召し上がれー
そう言ったロビンに
頂きますーと言って食事を始める。


それを見てほっとしたミカは
メルの寝ている部屋に戻った。


部屋には月夜の光が
部屋に入ってきており
メルの身体を照らしていた


「…お前は本当に強くなったな」



そっとメルの髪を一房とって口付ける
未だに眠っているメルに目を細めた


「これから幸せになりますように」


そう言ってミカは
ベットの脇に腰をかけて
身体を丸めて目を閉じた

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