Novel - Paola | Kerry

it's just you


輪っかの先4

20/09/15
35

「お風呂あがりました。
オリアス先生どうぞ」


「ああすいません
ではお願いします。」



「ミカさん寝かしました」



ありがとうございます。
そう言ったオリアスに
モモノキはこくりと頷いて
メルの傍に寄る


ミカは何もせずに
じっと隅っこで寝始めたのに

せめてベットで寝て
と言ってモモノキに
隣の部屋で寝かせるように
起こして誘導して帰ってきた所だ


オリアスは席を外すついでに
イポスに席を外すようにモモノキが告げる。

何故と首を傾げたのに
モモノキはメルさんのお着替えですので。


「〜っ、失礼。」


そう言って席を外した
イポスに続いてオリアスも席を外す
モモノキは一人くすりと笑った。



衣服を外して
丁寧にたたんでいく


身体が露わになって
肌が白いのに驚いた



「…綺麗ですね」


目を覚ました時
衣服を着替えさせたのに謝罪するだろう。


だがそんなこと
自分が助けてくれた
ものからしたら小さいものだ。


彼女には仕事でも恋でも
随分と助けて貰ったことが
あると言うのに。



「本当に尾も翼もないんですね…」



着替えさせながら
ぼやく独り言にこたえる人は居ない。

すやすやと寝ているメルに
何時も見ていたシャツと

寒くないようにパーカーを着させ
そっとシーツを羽織らせた


「よし、これで良いですね。」



一応着ていた物は洗濯に回そう。

男性と女性が共同で
一つ屋根の下で一時的に生活するのだ。

洗濯は同じにすると
色々不味いので
後で先に洗濯させてもらおう。


そうオリアスやイチョウが
帰って来た時に言う事をまとめつつ
洗濯ものをまとめ
ドアを開けてイチョウを呼ぶ



「もう入ってきて構いませんよ」


「先程は気が付かなくてすいません」


そうリビングで落ち込んでいたのか
イポスがモモノキの前にきて謝罪するのに
いえいえとモモノキは首を横に振った


「私洗濯物置いてきますので
メルさんを頼みます。」


「分かりました。」


こくりと頷いて
入れ違いになったのを確認したイポスは
ドアを閉めてメルの寝ている
ベットにそっと腰をかけた
ぎしりとバネの音が鳴り深く
ベットが沈む


メルはロビンが騒いでも
一度も目を覚ますことなく
ただただすやりと眠っていた。


ロビンは食事を提供しに
ちょくちょく来るらしい。

その話をイポスは
ダリにラインで連絡すると
了解〜と返ってきた返信に
スマホの画面を落とした


「…早く起きて下さいよ。
皆待ってますので」


『…んぅ、そう、するぅ』


「っ!?メル先輩!?!?」


そう大声をあげたイポスにモモノキが
どうしたんですかと
驚いてドアを勢いよく開けた

風呂上がりなのかオリアスも
髪をタオルで拭いながら駆け付けた



「いや、さっき声かけたら答えてくれて…」


「…メルちゃーん、メルぅー?」


「寝てますね」


「気のせいか…」


驚かせんなよと言った
オリアスにすいませんと
イポスは謝った

いやだが誰でも
起きて下さいと言って
そうすると返されたら
驚くに決まっているとは思う。



「それにしてもぐっすり寝てますね…」


「モモノキ先生
先に寝ても構いませんよ?
俺リビングのソファーで寝るんで。」


「え!?いやですが」


「いやそこのベット
使ってもらって構いませんよ。
寝にくかったら隣の部屋でも」


「私リビングで寝ますよ!?」


「「流石にそれはできないです」」



そう二人がハモるのに
モモノキが首を傾げる



「仮にも女性をそんな場所で寝かせたら
後で色々私達が問い詰められますよ」


「そうそう。何ならミカをリビングで
寝かせるってのもありだと思うけど。」


「いや流石にそれは…」


あいつ多分どこでも寝るだろ。

現に床で寝始めたし。

そう言ったオリアスに
じゃあとモモノキは
隣の部屋で寝ることにした。


ミカの移動はイポスが
手伝うと言って席を外す






「…二人きりだね」


そう言ったオリアスに
メルが少し微笑んだ様に見えた


気のせいか、と思ったが
むにゃむにゃとメルが言う


『オ、ズぅ…』

「ふふっ、随分甘えたさんだねぇ」


メルが寝がえりをうち
頬に触れていた手を取った

人差し指をぎゅっと
手で掴むメルに可愛らしくて
思わず笑ってしまった




「良かった…生きてて」



メルが黒いモノに
包まれそうになった瞬間

メルが光に刺された瞬間


もう自分の脳が起きている現実の出来事を
上手く整理できずエラーを吐いていた


奪われると思って
身体が動いていたのを
そっとクルアーンが止めた


あの時メルを信じずに
動いていたらどうなっていただろう?




この場所ですやりと寝ている寝顔を
見ることはもう無かったのかもしれない。


そう思うと、
あの時じっとしていて正解だったと
オリアスは自分を褒め称えた


「オリアス先生は寝ませんか?」


そう言って戻ってきたイポスに
テンションハイで寝れると思う?
とオリアスはイポスに聞き返した


「…いいえ、実は
俺も今日寝れる自信なくて」


「どっちか眠たくなったら
隣の部屋で寝る?」


そうしますか。
そう言ったイポスに
オリアスはコクリと頷いた。

シンと静かになった部屋で
すやりとまだ眠っているメル。


「…静か、ですね」


「そうだね…
ねイポス先生」


「なんですか?」


「もし俺が居なくなっても
この子お願いね。」


「…オリアス先生?
貴方は一体何を」


そう眉間にしわが寄るイポスに
いやさとオリアスが言う


「そりゃ俺も全力でこの子を守るけど
どうしようもない時は、お願い。」


「言われなくても
覚悟は出来てますよ。」


あんな契りしたんですから。
そう言ったイポスに
そうだなとオリアスは笑って答えた



「あんなにはしゃいで笑って居た子が
こうも静かに寝てると
なんだかしんみりしますね。」


「そうなんだよね
…早く目覚ましてもらいたいよ。」


「くすっ、ほんとですね。
それ言ったらメル先輩
そうするって言って答えたんですよ。」


「え?じゃあ何で早く起きないの???」


そう言ったオリアスに
イポスは寝言でしょうしと答えた



「まぁ今日はもう遅いですし寝ましょう」


「…そうするか」


そう言ったオリアスに
ではとイポスが隣の部屋に行った

それにオリアスも
メルの傍から離れようとしたが
ぎゅっと離さない
人差し指にはぁとため息を吐いた




+++++++++++++++++++


「で、床で寝て身体が痛いと…」


「無理矢理離そうと思えば
出来ましたよね?」


「予想以上に強くて…」



ベットの中に入れば良かったじゃないですかと

さらりとミカが言うのに
誰ができるかとオリアスは答えた。

可愛らしく寝ている彼女と
ゼロ距離で寝てしまえば
襲わないという宣言を守れる自信はない。



「まぁ何事もなさそうだからな…ふぁああ」


「まだ眠いのか?」


「嗚呼…前は、
こんな眠くなかっ、たんだが…」


ごめんもうちょい寝る
そう言って入って行ったミカに
モモノキはメルさんが原因ですかねと聞いた



「恐らく…」


「メルさんの力を
抑えるための箱だったのに
解き放たれたことが原因で
箱の中に維持出来なくなった。」


「それか単純に眠いだけとか?」


それもあり得そうだと思い
深く考えないようにする。


そうこうして昨晩
朝食分を作っていたロビンに感謝し
朝食を食べ食器を洗って片付けていると

ピンポンと音が鳴ったのに
モモノキが急いで扉を開けに向かった。



オリアスはイポスから
皿を受け取りタオルで水気を取る。

ダリからの命令で暫く
魔力を使用するのは控えることになったのだ。


メルと契約を誓ったというのもあり
想像以上に魔力が戻って来ない。


すっからかんの状態で
下手に使おうとすると
何が起きるか分からない。




「よ、調子はどう?」

「ダリ先生!それに
イフリート先生やマルバス先生も」


「お疲れ様です。
何かすることあります?」


そう聞いたマルバスに
イポスは特にと言って
最後の皿をオリアスに渡し、
ドアノブに垂らしていたタオルで
自分の手の水気を取った



「皆さんどうして此方に?」


「メルちゃんの事を
昨日伝えたら
様子見に来たいって
皆言ったから連れて来た!」


「僕達もいるよ」


「バラム先生にカルエゴ先生?!」


「失礼。」


メルは?そう聞いたカルエゴに
此方ですとオリアスが前に出て案内する


扉を開けると眠っていたメルから
モモノキが心配そうにして
ドアの前に歩いていた



「オリアス先生!!メル先輩が熱を」


「っ!!」


そう聞いてオリアスは
メルの元に駆け付けた

昨日は何もなかったが
手を額に当てると
高熱で熱いとつい叫ぶ


「僕解熱剤作ってくる!!」


「私冷やしタオル取ってきます!!」


そうバラムとモモノキが急いで取り掛かる
はぁはぁと息を必死で整える
メルの額に浮かぶ汗を手で拭う


「昨日は何もなかったの?」


「ええ」


「まぁほぼ間違いなく
昨日のが原因だろうけど…」



そうメルを覗き込んで言う
ダリにオリアスは頭を下げた
それに良いよとダリが
オリアスをフォローする。



「君の責任じゃないさ、
気を負うとメルちゃんが悲しむでしょ?」


「…そうですね」


「大丈夫そうかなって
思って見に来たけ…ん?」


小さな声にダリが
目を開けて言葉を止めた



『…って、…で』


「…メル?」


『……おい、てか、ない、で』


そう右手をぎゅっと
シーツを掴み言うメルに
オリアスは大丈夫と優しく答える


「此処に居るよ、大丈夫。いるよ」


そう言うオリアスに
メルがううんと眉間にしわが寄る

すると突如
メルの背後から黒い何かが飛び出した
オリアスごと飲み込まれる!

そう感じたダリとカルエゴが
メルから引き離そうと急いで動く


「っ!!!」


「オリアス先生!!!!」


「大丈夫…大丈夫だよ」


そうぽつりぽつりと
オリアスが言うのに
黒い影がぴたりと止まる



「何処にもいかない」




一人じゃないよ。




そう言ったオリアスに
影がじわりじわりと引いていく


まるでオリアスの言葉を
理解しているかのように



影がメルの身体の後ろ
壁際に身体を形どって泣き声を出す

ひっくひっくと泣くその姿は
幼少期のメルだろうか?



何が、とカルエゴが声を上げる。




「大丈夫…大丈夫だよ」



ひくひくと泣きじゃくる少女に
もう片方の手を伸ばした

おいでと手を出すオリアスに
少女が首を振った

両手をベットのシーツを掴んで
Mの字になって座る少女から
段々黒い影が消えて無くなっていく




「…っ、この子」



今の姿とは別人のようだった



髪の毛は乱雑に切られており
目元は常時泣いているのか
こすって赤く腫れていた


がくがくと震えて縮こまる
頭を隠すように
手をグーにして身体を丸める



まるで怒られて殴られるのを防ぐように




「…怒らないよ」


そう言ったオリアスに
ぴたりと震えが止まった

本当?と言いたそうに
そっと顔を上げる
それにコクリと頷いた



「カルエゴ先生
顔怖いんじゃないですか?」


「ちょ、そんなことは」


そう言ってカルエゴがメルを見るが
恐ろしいのか
身体をびくりと跳ねて後ろに下がる


と言っても後ろは壁でずりずりと
身体を下げようとしているのに




カルエゴは汗をダラダラ流す
ほらぁという声に煩いとも言えず
そっと近くにあった椅子に座った


「誰も怒ってないし
誰も君を殴らないよ」



そう言ったオリアスに
少女がオリアスの目を見る

その目はミカが昨日言っていたような

何かを諦めているかの絶望した
真っ黒に染まった色をしていた。



「…大丈夫」




手を出したままずっとキープする

君はどうしてそこまでして
絶望に身体を委ねていたんだい?


魔女になるがために
そこにいたわけではない。


そんなこと、
目の前の少女を見れば
一目瞭然だった。




黒い目の奥が揺らいでいる

炎のようにただ何かを見て



揺らぐ



「この手を取らなくたって此処に居るよ。」




そう言ったオリアスに
少女がびくりと跳ねる

どうしよう。
と言いたそうに
もじもじし始める





「(…お?)」




ダリ達はメルを見ないように
彼女の視界を見ないでいた



すると気付いたのか
そっと身体を前に出して
オリアスの手を取ろう
とした次の瞬間


ドアを開けて入ってきた
バラムの声に驚いて


少女は身体を大きく
跳ねてメルの身体に
引っ込んでしまった。


「シチロウ…お前…」

「〜〜〜〜っバラム先生ーーーー?????」





そう言ったダリとカルエゴに

バラムはえ?え?え?
と驚いて固まった。

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