Novel - Paola | Kerry

it's just you


純粋才能4

20/09/15
4

前回のあらすじ
メルが幼児化した。


此処はバビルス
メルを生徒に見せる訳にもいかない為
とりあえず何もないに近い準備室に移動した
メルを抱きかかえたツムルにイフリートは
これからどうする?と首を傾げた

「とりあえずバラム先生から
絵本貰って来たけど…読む、かなぁ?」

『んー!や!!!』

「拒否されてますが」

「やっぱ駄目かぁーーー」

降ろしてからひたすら走っているメル
ツムルは最初にあった時嫌な予感はしていたのだが
やはりメルは走るのが大好きらしく、
準備室に降ろしてから早くも二週目を走りはじめた

流石に外に解き放つわけにはいかない為
部屋の中を走らせるしかない
ツムルは頭をかきつつひとまずと椅子を出して座る

『ん!』

「うおっ!えっ!?大丈夫!?」

そうツムルが座ったのに気付いたのか
息を一つも切らさずにメルがツムルの膝に突撃する

『大丈夫!ツムル〜!』

「あっ普通に喋れるのね…」

『えへへ!』

そうにぱーっと歯を見せて笑う
子供らしさ満点の笑顔に
ツムルは微笑んだ

『パパとおなじ』

そう言って指を指したのはイフリートの煙草だった
隠そうとしてずらしていたのを見つけたらしい
取る素振りは一切なくただツムルの膝にくっついていた

ツムルはこけないようにそっと
メルの背中に手を置いていた


「煙草?それとも髪の毛?」

『んー両方、パパ。』


そう言ってすっとイフリートの膝に寄ろうとするが

そっと止めてツムルの方に寄るのに
何故行かないのかとツムルが
そっとメルを抱き寄せるために
脇を掴んで膝に乗せた


『んー…パパ会いたくなるから』

きっとメルが悪い子だからおいてったの。
そうしょんぼりするメルに違うよと
ツムルが首を横に振る

「メル先ぱ…メルちゃんは良い子だよ」

『ううん、メル悪い子。いつもママ怒ってる。』

「…え?」

『メル名前呼ばれるの怖いから、
まほーしょーじょのメルちゃんになりたくて。』

どうして怒るのか分からないけど
きっとメルが悪いことをするから。
だからもう会えないの。

そう言ったメルの目は
ただ子供が見せる目ではなく
何処かを見つめる目をしていた。

ーいいの、もう大丈夫だよ。

そう何時かツムルに笑った目の遠くを見る
あの目にそっくりだった

二度と叶わないから、諦めてしまうしかない。
伸ばした手を降ろすしか道が見えていない。


幼いころから感情を引き千切るしかない世界を
一体何年過ごしていたのか、
ツムルは途方もない時間にゾッとした

「(ずっと前から、メル先輩貴方は…)」

「実はさ、俺達君のママとパパにお願いされてたんだ」

「ちょツムル!!」

そう言ったイフリートに
メルがほんと?と首を傾げた


「うん!ちょっと今日一日は帰って来なくて
明日の午後辺りに帰ってくるから
今日良い子に居たら好きな事なんでもするって。」


そう言ったツムルに嬉しそうに
ぱあああと目を輝かせる


そうだ、そのまま笑って居られればいい。





例え嘘だとしても。




嘘でないと、生きれない世界だとしたら
もうそのまま居続ければ良い。


残酷な現実を小さな身体で
受け止めなくて良いじゃないか。



「何をお願いするか今から考える?」

『ううん!もう決まってるの!!』

「ほんと?」

『パパとママが仲良くなりますようにって!』

笑うメルにイフリートが目を丸くした
少しだけツムルも目を丸くしてしまったが
驚いた顔をするときっとメルは駄目だと思い込む。

それなら、

「そっか!仲良くなってくれるさ」

『ほんとー!?そっか〜ふふっ』

「だからお兄ちゃんたちと何か遊んでいようか」

『あそぶー!いいこ!!!』

そう両手を広げて笑うメルに
イフリートは頬をぽりぽりとかいた


+++++++++++++++++++++

一時限目のチャイムが鳴ったのに
もうー?とメルが眉を寄せた

コンコンと音が鳴ってドアが開くのに
ああああと言ってメルが積み木をガン無視
なんならぶち壊してまでしてドアの方に走っていく


「うおっ!メルちゃん良い子にしてた?」

『してた!!!メル良い子!!!!』

どや顔で鼻息を荒くして言うメルに
オリアスはそっかと言って腰を降ろし頭を優しく撫でる

「じゃあ俺達は此処で」

『えーツム兄もエイ兄も居なくなるのー?』

「ちょ待って?」

「うん、ごめんな。また今度会ったら遊ぼ」


そう頭を優しく撫でるイフリートに
片目を閉じて頭に手を持って行けずに
宙に手を浮かせるメルが『うん!』と言って笑った


「何時の間にそんな仲良くなってんの…」

「へへっ、ちょっと遊んでたらすぐに打ち解けましたよ。
驚かせない限りは人見知りしない子なんですね。」

『メル人見知りしないよ!
知らない人でもついてくよ!!』


「「「それはだめ」」」


えぇー?そう首を傾げたメルにため息交じりに
オリアスとツムル、イフリートが声を揃えて言う
此処に居たのかーと言ってダリとモモノキが入ってきた

それにメルがママぁと言って笑ってオリアスの傍から離れた
ぴょんぴょん飛ぶメルにモモノキが笑って腰を降ろす

「俺達が面倒みるよ。昼間で俺空いてるから」

「すいません宜しくお願いします」

『オズもういくのー?』

そう首を傾げるメルにオリアスも
また腰を降ろしてメルと同じ位置から話す

「ごめんね、お昼は一緒に食べようか」

『うん!良い子いるから!!
ママとパパのためにもいい子いる!!』

ママとパパ?そう言ったオリアスに
ツムルが後で話しますと言ったのにオリアスが頷いた

「じゃ俺達はこれで」

『いてらしゃー!!』

そう手を振るメルに移動するオリアスや
ツムルは手を振って笑顔でドアを閉めた
ふぅと息を吐いて職員室の方に足を運ぶ

「それで?さっきのは?」

「それがメル先輩の親の件なんですが
どうやら幼い頃から環境が悪かったらしくて
彼女に悪いですが両親から
一日預かったって言う話をしたんですよ」

「は?環境って」

「一日良い子にしてたら何でも願い叶えてもらえるって聞いてるって
言ったら、メル先輩間髪言わずに言ったんですよ。」

ーパパとママが仲良くいれますように。

そう言ったのをオリアスに伝えると
オリアスの目が丸くなる

「お母さんがずっと怒ってるって言ってたので恐らくは」

「分かったもういい。ごめんな、そんな聞いてもらって」

「いえ!!ただ…少し嘘ついて本当に良かったのかなって」

「いや、ツムル先生はメルちゃんのことを
傷つけないように言ったんだろ?ありがとな」

それなら良いんだよとツムルを励ますオリアスに
ツムルははいと言って笑った

「(虐待の話はそういや聞いたことがねぇな)」

何なら親の話になると素振りが急変する。
いや私の話は良いですよ。そう濁されていたのだ。


サリバンの家があった為何も聞くことは無かったが
たまに本当の両親の話をすると濁されていたのを聞いたことがある。

それは親が環境が悪いということを知られたくなかったからだろう


だから親という家族という環境の
何が正解なのかが分からなかった。


「(前に入間君がメルちゃんを連れて大事な家族って言った時
凄い不思議そうな顔をしていたのは…そう言う事だったんだろうな)」


分からないまま、ただ嬉しそうにしていたのは
その感情を幼い頃から感じ取れない場所に居たからこそだ。

まぁお昼に沢山食べて楽しい時間を過ごせたら
きっとそんな気持ちも分かるようになるだろう。

今、色んな悪魔から教えて貰えばいい
きっと、それが一番良い。




+++++++++++++++++++++


「いやーーーにしても可愛いねぇ〜」

『メル可愛いの?』

「うん、とりあえずここ数週間のストレス全部吹っ飛んだ」


割とリアルだな。そうモモノキは苦笑いするしかない。


オリアス達が消えた後、メルはモモノキの手を掴んだまま
ダリの方を向いて『だれー?』と言って
初めましての挨拶をした。

腰を降ろしてダリは自分の名前を言ったら
『ダリ〜!』と嬉しそうにって
ダリの胸にそっと抱き着いたのだ

いつもなら危機感を感じて
逃げまくっているメルだったが
素直な五歳児はそんな危機感もつゆ知らず。


ぎゅっと嬉しそうに微笑むメルに
予想外の反応に驚いて思わず

目を開けてぽかんとするダリに
『ダリ、にぃ?』と
上目遣いで見てくるもので


ダリは空を見ながら
「だれにそんなこと教えてもらったのぉ」と
悶えながら言うのに、
流石にモモノキは苦笑いする以外なかった


『ほんとー?ならメルもっとぎゅーする!!』

「ねぇこの子連れて帰って良い?」

「駄目ですよ」

『ダリにぃ〜!!』

「はぁーーー毎日これになる薬でも開発しようかなほんと」

「授業進まなくなるのでそれだけはやめて下さい…」


いっそのこと授業持たないようにする?しちゃう?
そんなことしたらメル先輩怒りますよ?
だよねぇーとメルをそっと抱きしめる
ダリにメルはニコニコしたままだ。

『ねぇー!おにんぎょもって!!だりにぃ!!』

そう閃いたと言いたそうな顔で近くにあった
段ボールの中から魚を二匹取り出す

青い方を持たせるために両手で持ってきたのを
そっと片手で受け取るダリにメルがまた走って
段ボールから赤い魚を取ってきた

一体何をするつもりなのだろうか、
赤い魚をそっと地面に置いたあと
ダリの手を持つメルに何々?と声を上げる

『こーもって!これ!!』

「あっはい」

『まだだよ!だりにいそのまま!!』

そう言って頬を膨らませつつ
後ろを向いて魚を持ってくる
メルの前に顔があるのに
魚の頬にメルの持っていた魚が突っつく

『ん!』

そう言ってダリの服を掴みだしたのに
そっと膝を地面について片膝立ち状態になる
メルの顔の高さになって前を向いていると
ダリの頬にふわりと温かく柔らかいものが触る

チュっとリップ音が鳴ったのに
目を開けたままダリが固まる

『ちゅ!』

そうニコニコするメルにダリが大きな
ため息を吐いたまま地面を向いて
モモノキ先生と声を上げる


「本当にコレ連れて帰っちゃ駄目?」

「駄目です」

「ねぇメルちゃん?
何処でそんなこと教えて貰ったの?
ツムル先生?イフリート先生?」

『ううん!ほっぺすりすりすると、
とってもふわふわさんなるから!』

口をつけたらもっと嬉しいかなって!
そう笑うメルにそっかとしか言えなくなるダリ
最早自分の考えが浅はか過ぎて恥ずかしくなった。

『ふわふわさんなった?』

「うん、めっっちゃなった…」

『やっったあ!へへ!』

「理事長が入間君溺愛する気持ち
今なら凄い分かるかもしれない…」

「まぁ連れ去るのは色々アウトですからね…?」

分かってるってそういうダリがよしとメルの前で言う
メルは首を傾げて何をするのかと今か今かと待っている。

「(本当素直に遊びたいだけなのを
隠しきってるのがバレるよなぁ〜)」

メルはお人形を持ったまま
ダリの胸元に入ってさっきから
人形とダリの手を持って
上下に振りまくっている


ダリがメルの方を見ると、
メルが気付いてダリの顔を見上げる

するとにぱっと歯を見せて笑うのに、
ダリはくすりと笑って頭を撫でる

頭を撫でたのに頭が少し傾きつつも
メルは嬉しそうに目を細めてかみしめる

そしてまた人形とダリの手に視線が行く
先程からその繰り返しだ


余りにも可愛らしい行動ばかりなので
記憶が残ったらダリにぃと呼ばせてみたいものだ。
記憶が残らなかったら、こんなことをしていたと
言い聞かせてデロデロに甘やかしたくなる。

それ位に破壊力があるのだ。
可愛らし過ぎて最近のストレスだって消え去る。


「あら?眠たいのかしら…」

そう言ったモモノキに、
メルが違うよ!と声を上げるも
うつらうつらと人形に顔を
落としかけているのをダリも確認する


「あらら、眠いなら寝る?」

『や…だ…』


そう言ってダリの胸にぎゅっと抱き着いた
いや、と言いながらぐずっと言った音に
モモノキもダリもぎょっとした

一体何処で驚いたりしたのだろうかと
慌てるのに違うのと声を上げる


『これ、夢かなって、
おもって…さめたくないよ』

「(嗚呼、そう言う事か)」


メルはツムル達と遊んでいるのが
夢の様な位に楽しくて幸せな時間を
過ごしているのを分かったらしく

これが夢だったら
眠ればさめると思っているらしい。



現実なんだから、何処にもいかない筈なのに。



「そんなことないよ、
コレが現実だからどこにもいかないよ」


『ほん、と?』


「うん。だから大丈夫。このまま寝てもいいよ」


そう言ってダリがメルを抱きしめて背中を
とんとんとリズム良く叩くのに
メルがうつらうつらとし始める

うーんと言いながら眼を閉じた後少しすると
規則正しい寝息が聞こえて来たのに
モモノキが寝ました?と言うとダリが頷いた


「余程楽しかったらしいね」

「凄い嬉しそうに寝ますね…」

「うん」

そう嬉しそうにダリはメルを見つめる


いつもは嫌です!!と言いながらダリから逃げるメルを
モモノキは遠くから見ていたが、ただ嬉しそうに笑って
ダリの元から離れないのを見て少しだけ、ほんの少しだけ


「(素直になったらいいのに)」


なんて思ってしまった。

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