Novel - Paola | Kerry

it's just you


しっぽがゆらゆら4

20/09/15
42

そらを駆ける闇夜に沈みゆく星々よ
永久とわと無限をたゆたいし 全ての心の源よ
空と大地を渡りしもの 優しき流れ 我が手に集いて力となれ』

氷の矢フリーズ・アロー

そう片手を振り下ろして攻撃をするメル
氷の矢はメルの手の上に3本作り出されて飛び出した
無駄ですよ、そう言ってスージーが植物で弾いた。

いやそれありぃ!?と叫ぶメルは
くるりと身体を宙で一回転しながら着地する。

「お!やってんねぇ〜」

『イフリート先生!!』

オリアス先生は?そう聞いたメルに
イフリートは用事あるってさと言って
煙草をメルの居る場所から反対の方向に向けて持つ。

その間にスージーが休憩かと思いそっとメルの後ろから
話を振ってきた。

「ふいっ、今までメルさんの魔法が
どれ位のものかお手合わせしていたんですよ。」

「へぇー僕も混ぜてよ」

『むぅだめですぅ!』

「ふいっ」

そうですね。最近ずっとお相手してくれてましたし。
暫くは私もお手伝いしますよ。そう言ったスージーに
いやいや女性にはと言ったイフリート。

メルの動きはあの炎を扱うイフリートや
戦略を練るイチョウですら割と手こずる程。
ちょこまかと動き回ってばっかだった初期よりかは
断然今の方が面倒だし何なら余り動かなくても
メルの方が勝率上がって来ているのだ。

「ふいっ、メルさんも女性ですよぉ」

「あっ!いやっそんなことで言った訳じゃ!!」

『あ〜ど〜しよ〜尻尾で焼き芋の刑してもらお〜』

ニヤニヤしながら手を後ろで絡めてグルグル回るメルに
いやいや何て?と焼き芋が割と掴めなかったイフリートがツッコむ。

「まぁ大丈夫そうなら良いですけど…」

「…ふいっ、ひょっとしてメルさんと戦うの楽しみだったりしてました?」

『っえ!?そうなの!?』

んなっ!!違う!!
そう少し顔を赤くして言うイフリートに
ふふふとスージーが笑う。

『そりゃあ僕超天才だし!炎特化のイフリート先生と
長く戦ってたら炎も練度高くなるし!!』

「…そう言うつもりではなかったんだけどなぁ」

そうぼそりと言ったイフリートに何か言いました?
とメルが聞くが、イフリートはいんや何もと答えた。


『今スージー先生と氷と風の特訓してるのです。』

あと時々地。そう言ったメルが後ろを見る。
遠くの方で地面がむき出しになっていたり
葉っぱがいたるところに散っているのを見ると
割と長く戦っていたのを知る。

そりゃあ休憩も入れたくもなるだろう。

「それにしてもメルさん本当にお強いですよ〜
女性陣の中でも結構いい線いけるんです。」

『あっそこTOP違うんですね。』

良いですよ?します?TOPそう言ったスージーに
嫌ですとメルがはっきり答えた。
全く欲がないねぇとイフリートが煙草を吸いながら答える。


『僕だって底なし欲あるんです!
そんな誰かが羨むようなTOPなんて
誰かにわたしゃあ良いんですよ。』

「じゃあ何を持ったら満足するんですか?」

『え?満足しませんよ??』

何言ってるんですかと言いたそうに言うメルに
スージーが目を丸めて聞いた。

「ふいっ!では今までメルさん
嬉しそうにしてましたが
ひょっとして一度も満足したことが!?」

『う〜ん、そう、ですね?まぁ確かに??
満足感を持って堕とすのも良いですが
普通の生活から切り落とされる絶望感が好きなので。』

「待て待て待て待て待てなんの話ねぇ何の話。」

そう鼻で息を煙と同時に吐いた後イフリートがツッコむ。
彼女の元気な姿の口からサラリと
今とんでもない言葉が発せられた気がする。


『いやぁ自分自身を絶望にブチ堕とすの楽しいですよ〜
自分だけが知っている自分とかを殺すのも良いですが
やっぱり同じことだと勢いが衰えるんですよねぇ。』

「待って???」

『勿論魔法使う時だけですよ〜!
下手に思い込むと寮全破壊しかねないですし!!』

ストレス発散込みでお相手してくれる
優しいスージー先生には感謝ですー。
そう言うメルにスージーはふぃっと微笑み笑う。

可愛いーときゃっきゃするメルに
まぁ楽しそうなら良いか、
とイフリートは考えるのを放棄した。

何時もこんな感じでオリアスは相手しているのかと思うと
彼の労力をちょっとだけ労わってあげたくなる。

「休憩終わったらまたやる感じ?」

『ええ!なので、あっち〜いってください!』

「あーはいはい分かった分かったから背中押さないの…」

そう煙草を吸っているイフリートの背中に入り
後ろからぐぐぐと両手で押し出したメルに
こけない様に足に力を入れたので
ずりずりと地面が抉れる形で押されるイフリート

思った以上に力強いね君と思いつつ、イフリートは
これ以上居ると彼女たちの邪魔になるので帰ることにした。

居なくなったイフリートを見てはぁとため息を吐いた。


「ふいっ素直じゃないですねぇ〜?
イフリート先生達にお世話になってるから
特訓してるって言えばよかったじゃないですかぁ」

『ちょ!!しー!!』

誰も居ませんよ。そう言ったスージーにそれでもとメルは答えた。

『だって…何時もお世話になってるから、
ちょっと位炎綺麗に見せれたらなぁって。』

後氷と炎のコラボ良さげだよ?と言ったメルに
スージーは首を縦に頷いてそうですねと答えた。


最初何事かと思う位真剣な顔で頼み込みに来たが

ーイフリート先生やイチョウ先生を
驚かせたいんで特訓付き合って下さい!!

なんて話をするもんだから驚いた。
また何で自分かと聞いたら
植物の観点で炎や動きを見たらそれはそれで
防衛としても動けるかなって。

嗚呼、なんと可愛らしいお願いだろうか。
そんなお願いなら幾らでも聞いてやれるというのに。
彼女は今の今まで私に我儘を言わなかった。

折角の彼女との二人きりの時間だ。
此処に女性はまだしも男性を入れる訳にはいかない。
スージーはくすりと笑いメルの慌てっぷりをなだめた。


「ふいっ大丈夫ですよぉ。
誰にも言いませんからぁ」

そう言ったスージーに本当!?ありがどおおおおと
泣き声で言うメルにスージーはふふっと笑った


「それにしても爆風弾ブラム・ガッシュって技ですっけ?
とても良い調子になりましたねぇ」

ふいっとしゃっくりの様に癖でいうスージーに
メルは本当ですか!?と嬉しそうに聞いて来た。

「えぇ、最初は明らか傷つけないようにそよ風並みだったので流石に驚きましたが。」

『あれは魔風斬ディム・クローって言ってそもそもかっこつけの技でして…』

一瞬馬鹿にしてんのかと思ったわと言ったスージーに
サラリとえぐい事言いますねとメルが青ざめたので冗談と伝える。

「でも最後の氷の矢フリーズ・アローからの風はちょっと驚きました。」

『へへっ!魔風ディム・ウィンですよね!!
あれ横殴り出来るんで詠唱さえ出来ていれば打ち出せるんです!!』

通常目の前の敵に対して一直線で攻撃をするが
まさか目の見えない風を横から強力なものが吹きだすとは思わず
体勢が崩れた後更に追い打ちで氷の矢フリーズ・アロー
来そうになったのは流石にビビった。

「ですが同じ呪文を短時間で
二度も言うのはやめましょうねぇ〜」

『うっ…はぁい反省してますぅ…』

「ふいっ!」

『うぅむ詠唱は間違ってないから〜』

そうぼそぼそ呟きながら置いていたノートにペンを走らせるメル
こっちをこうして動かしたら相手怯むかなあと悩ませつつも
彼女はスージーの言ったことを活かせるように先程言っていたことや
動いていたのを絵にして書いていた。

「それは何ですか?」

『これですか?先生方から教わった物を書いているものですよ!!』

あ、イチョ君の動きとか見ます?彼凄く面白くて。
そう言ってペラペラとめくって話すメルにそっと隣に座る。
徐々に植物は消えて無くなり、ただ戦っていた場所にメルと
スージーが二人っきりになっていた。


『イチョ君身長デカいわりに案外動き小さくて
こっちが動くのも腹立ってきたので鞭を使用して
動いたりするように特訓したりしようと思ってて。』

あっこっちはダリ先生と戦った時のです!
そうペラりノートをめくるとダリの絵を描いたものが
メルが攻撃を避けているのが見える。

メルの手に伸びた線を辿ると何かメモをされている。
手の位置を下げた方が良いとか、動きを見過ぎていて
手の平を外側に出し過ぎとか。

「…ふいっ、勉強熱心ですねぇ、これ全部?」

『ええ!流石にお付き合いして頂いてるんですから
忘れない様にノートに取ってるんです!!って言ってもこれ
寮に帰ってから清書した方なんですけどね。』

今日間違って持ってきちゃって。
そう照れ臭そうに笑うメルに
まだノートがあるのか、というかそれに加えて清書までするのかと
色々突っ込みたくなることはあったが、ぐっとこらえて偉いですねと答えた。


「ふいっ、メルさんの教えている子達とっても羨ましいですよ。」

『そうですかね?皆とっても優秀なだけですよ?
まぁ苦手な子もいますから彼らに合わせて教える
例えが合ってるか毎回不安になりますが。』

「えぇ、とっても羨ましくなりますよ。
…こんなに何度も書いて必死に前を向いているんですもの。」

そう言ったスージーにメルの手がぴたりと止まる。
そんなことないとメルは少し不安そうに否定した。
声が震えているのに、気付いているのだろうか?


『僕はまだまだ未熟なんです。皆に守られてばかりで僕』

「…どうしてみなさんや私を守りたいと思うんですか?」

あ、尊敬とかお世話になってるとか無しですよ。
と言ったスージーにぐっとメルが口をつぐんだ
きっと彼女はそうやって言葉を並べて流している。

本当の気持ちは気付かれないように。


『…誰にも、言っちゃメっですよ?』

「ふいっ、お約束します。」

『…僕、最初悪魔と仲良くなるなんて怖くて無理って思ってたんです。』

「ふいっ?」

『悪魔怖くて食べるから嫌いでとにかく嫌だった。
ミレイユを取って自分の心まで奪っていきそうで。』

孤独になることが非常に怖かった。
でも、

『いざ面と向き合ってみたら皆優しくて
僕本当は見た目じゃなくて中身が怖くて
話さなかった悪魔沢山居るんですよ。』

カルエゴ先生とか良い例で、彼見た目怖いけど中身凄い優しいんです。
だから彼は割と話しやすい方でたまに話してるんですよ。
そう言うメルにへぇと感じた言葉がふいっと声に変換された。


『でも皆とちょっとずつ話していくと
割と自分の思っている以上に
優しい悪魔さん達なんだろうなって思って』

上手く言えませんがとメルは照れ臭そうに言う

『生徒さんに優しくしているのを遠くから見て
生きてた世界と同じ気がして
…僕本当は人間界の教師したかったんですよ。』

「ふいっ!?」

『生物教えてあげたくて…でも出来なかった。
いやしなかっただけです。
自分にはこんな居場所立てる権利も意思も許されないって。』

欲の為なら何でもやってるのにね。
そう笑うメルにスージーは無言で彼女の声を聞く

『でもこうやって生き返って
…夢が今ずっと叶っている。
凄い不思議な気持ちなんですよ。
嫌いだった悪魔が僕の夢を叶えてくれた。
なら答えは一つしかないんです。』

恩返しをしてあげなければいけない。

こんな幸せな時間に居させてくれるなら。
これは対価を渡さないと自分の気が済まない。


『人間界のお話は内緒ですよ?』

そうにやり内緒の指を一本立てるメルに
ふいっと答えた。



願わくば、彼女の夢がこれからも続きますように。

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