「甘い!!!」
『ぐえっ!』
そう叩いたミレイユに痛いと首をぶんぶか降るメル
それに煩いとまた叩かれ悲鳴を上げる。
「ったく、集中力が甘い!!そんな感情ぐうたらで行けば
この後大事な所で命落としちゃうよ!!」
『だって…どうせ人間死ぬもん』
「煩い!本当に大事で好きな時がやってくる。
そんな時に君がそんなしょうもない感情で向かったら
あっさり死んで周りに迷惑かかるでしょうが!!」
『っ!!!いやだ!!!!!』
「…いい?メル、君は私がこの世で
一番って言える位凄い力を秘めているの。」
それが何時開くか分からないし、
ひらいた時、開花した時
きっと誰もが君を驚いた眼で見てくると思う。
「メル貴方はその光すら自分で
芽を引き千切ってどうするの。
大事な人を守れる位強くなりたい時に
泣いちゃわない様に特訓してるのよ。」
これは魔女でも人間の世界でも
生きられる様にしているだけなの。
そう言ったミレイユにメルは
不貞腐れたままそっぽを向いていた
『だからって、なんで弓なの…』
「感情を集中して射るのが一番威力高くかつ
相手に高打撃を入れられるのが弓だからよ!!!」
『剣でも魔法でもいいじゃん!!!』
「いい!?弓を単に遠くの敵だけを撃つと思わない!!
魔女は感情が全て。感情が魔術に力に魔力になる。
悪魔からの魔力を受け継いだとしても底がある。」
でも、貴方の思った感情に底なんてあるかしら。
そう聞いたミレイユにメルは首を横に振った。
「そう。貴方は何度だって願う一つの願いがある。
その力が解き放たれた瞬間、貴方は誰よりも強く
どんな敵も倒せる凄い人になれるの。」
『…なったら、ミレイユも守れる?』
「ええ!勿論守れるわ!!!」
『…じゃあ、やってみる。』
「うん!!!」
++++++++++++++++++
『嘘つき』
守らせてくれなかったくせに
貴方はそっと手を振り払って
私を置いて何処かに行ってしまった。
嗚呼違う、嘘つきなんかじゃないんだ。
ー良い!?弓の構えは心構え!!
気持ちを矢に一点集中する!!!
『ふぅーーーー』
そう息を吐きながら矢を引きながら弓を構える
思い出せ、安名メル
この身体が動かなくなる位の怖さは
ただ元の世界に戻れなければいけない恐怖じゃない。
この場所に居られなくなることなのだ。
感じろ、恐怖を!!
ずっとずっと前から覚えているあの時間を!!!!
何のために、今まで恐怖を幸せだと勘違いさせていたのだ!!
こんな周りに言われて黙って閉じこもる自分なんて
受け止めて前に歩き出したと違うのか!!!
ー大丈夫、きっと
その気持ちは貴方を守ってくれる。
『っ!!守り通すって決めたんだ!!!
貫け!!岡本都佑!!!』
そう言ったメルの手の中にあった
緑の矢が更に色を濃くした
直後、メルの手から
撃ち放った矢は黒いモヤを貫きかき消した
『…っは、は、やっ、たか』
そうぱたりと身体を地面に委ねる
先程見ていた物はどうやら目の前に倒れている
トカゲみたいなものらしい。
悪夢を見せるやつなのか
知らないが、とんだとばっちりだ。
『ったく、僕さ君とずっと一緒にいるって願いだったのに
人間が魔界に永久に居られるとか願い絶対叶わないのに。』
でも僕が本体で、君がずっと僕を演じて見てくれている。
君がそう居られなくても…僕が僕で生きられる様になるのが
本当の…本当の願いなのだから。
『でも…この収穫祭いやこの全てのイベント何から何まで
僕が魔女から敵から守って生き抜いてみせる!!!』
なぁーんて。こんな状態で言うぅうおおおおおお!?!
そう足元から出て来た蔦に絡まって外に飛び出る
一体何事かと上を見ると
どうやらカルエゴ先生と通信しているのは…
『(入間君!?)』
「優勝します!!」
そう言ったのにさっさとP持って来んかと
怒られて飛び怯む入間に
メルはクスリと笑ってしまった。
「っえ!?何!?あれ?!
メルお姉ちゃん!?」
何!?そういう声が聞こえるのに
やっべとメルが言うのにも
すっと飛んでいた中継カメラが飛んできた
ちょ待って変わってとごたごた音
が鳴りつつも待ってとの声にメルが止まる。
「ちょ!メルちゃんだよね!!メルちゃん!?」
『…えと、はい、メルちゃんですが。』
「どうしてそんなところに???」
『う゛っ…洞窟入ってたら蔦に絡まって出てしまい。』
「…早くテント帰ってきて。仕事させるよ?」
『うう…すいませんお願いします。』
そう言ったメルに
通信用のカメラがするりと抜けていく
正直今ダリ達と会いたくなかった。
というか今から帰って
何とか気持ち上げようとしていたのに
ダリからの指示と言われたら
もうテント行くしかない。
仕方が無くメルは身体を持ち上げた
『(意識はしっかりしてる…
にしてもさっきの威力と
来たら凄まじかったな。)』
感情をあんなにキレイにのせて
威力を解き放ったのは正直アレが初めてだ。
確実に射貫いて姿も
ほぼ肉体見えなかったのだが
恐らく一度貫いたら姿も綺麗に消えて
無くなる程の威力なのだろう。
ひぇっ…感情高ぶり過ぎて
何時しかやらかしそうで怖いな。
そうぞっとする気持ちを抑えつつ、
メルは浮遊を身体にかけて
空を飛びテントの方に向かったのだった
++++++++++++++++++
「…おかえり」
『っ、た、だいまもどり、ました』
そう帰ってきたメルちゃんは
目を酷く揺らせて言う
警戒の一言に尽きる。
…申し訳ないが容赦なく
家系魔術を使わせてもらう。
「ごめんちょっとメルちゃん借りるね」
あと頼んだよカルエゴ先生そう言ったダリに
カルエゴがはぁ!?と叫ぶも
そっと流れるように
メルの腕を掴んでテントから離れ
樹木の中で話を続けることにした。
「んで?絶対安静にしてた子が
どうしてあんなところに?」
『うっ…それは、その、』
そう腕を組んで聞くダリに
メルがおどおどと目をきょろきょろさせて言う。
…うん、間違いない。
「いやそっちはまだ良いや…ねぇ
どうしてそんなに僕に怯えてるの?」
何があった。
というか何された。
そう言ったダリにメルがうぇっと言いながら驚く
驚いた後すすすっと音を立てながら距離を取るメルに
いや足元色々あるのに倒れずに距離取るとか器用だなぁと
何気に関心してしまった。
出来れば彼女の声から聞いておきたい。
カメラを最初見た時声が出ずに
目を見開いて固まってしまった位だ。
それは彼女が初めてバビルスに
入学してきた時の目と同じ色をしていた。
何もかも別に特に興味なく、
ただ生きていればそれでいい。
それだけの無欲に等しいその姿
そんな状態になるなんて、
誰かに強く言われても負けなかった彼女がだ
急に姿を変えるなんて
余程の事が起きたに違いなかった。
「言え、誰にやられた。」
『…っ、いえ、ません。』
あっ、そう。
仕方がない、余り使いたくなかったんだが。
そう言ったダリにメルが逃げようとするのを
瞬で腕を掴み捕らえ身体に引き寄せた。
おでこにそっと手を回し触れると
強い痛みと同時に声が聞こえ始めた
するとダリやイフリート、
オリアス達が浮かび上がり
突如とんでもないことを言い始める
ー汚らわしい、触れるな。
そう冷めた目、敵を見る目で此方を見てくる姿に
見ていたダリもゾッとして
つい手を離してしまいそうになる。
どうやら幻覚系、それも言われたくない言葉を
言う方にかかっていたらしい。
一人までならまだしも、
複数人に出て来られると
流石に堪えるものもあるだろう。
バッと出て近くの木に
身体を丸めるメルに手を伸ばそうとした
が
「(…震えてる、そりゃ、無理もないか)」
冷めた目で、
俺達を騙していてさぞかし
いい気分だっただろうな?
なんて言葉を振られて。
「…ごめんね、無理に見て」
そう言うも、ダリの方を見ないで頭を守る。
それは先程一瞬見えた
女性に対して取った行動だった。
恐らく体罰を受けていたのだろう、
身構える姿に目が細まる。
『まっ…て』
そうダリが行こうとしたのに
そっとメルが立ち上がり服を掴んだ。
おいてかないで。そう言ったメルに
ダリはそっと身体を寄せ抱きしめる。
『…ダリ、せんせ?』
「大丈夫、それは悪い夢だった。
…君をそんな目で見る奴は
誰一人も居ない。」
そう頭を優しく撫でる。
すると数回撫でるだけで
グズグズと泣き始めた。
流石にこのまま戻る訳にもいかない。
休憩というのも含めて、
ひとまずこの子をあやすか。
そう思いダリはそっとメルを
抱きしめたまま木に身体を擦りつけ
地面に腰を降ろした。
胸の中で息を押し殺しながら泣く子に
頭だけでなく背中もポンポンと叩いてやる。
++++++++++++++++++
「どう?落ち着いた?」
『ずびばぜん…っぐ』
「ははっ!!そんだけ泣いたらそうなるよ。」
はいティッシュそう出したダリに受け取ったメルは
反対方向を向いて鼻をかんだ
「…よく頑張ったね」
『…僕小さい子じゃないですよ?』
「ふふっ、僕からしたら
教え子も小さい子と変わらないよ。」
それとも…異性として見て欲しいの?
そう言うダリにメルは
いいえと首をブンブン振る。
あちゃ〜そう苦笑いする
ダリにメルはだってと告げる
『だって好きな悪魔増えたら困るもん…』
「…………」
ほんと、マジで奪おうかな。
そう照れて困る彼女を見て割と本気で思った。
って言うか何でこんな所に彼女居るんだ?
…ひとまず
「じゃあ、その枠増やしちゃえばいいじゃん」
『ふぇっ?』
「というか、こんな体勢なのに
何もないっていうのも正直」
しょうじき?そう首を傾げて言うメルは下を向いた
今現在ダリがメルの背中に手を回し
ピッタリくっついたまま居る。
それもメルから抱き着いて
首元でずっと身体を委ねて
意識し始めたのか、
ダリの方を向いて顔を赤らめ始めた
おっ、良い表情〜!そうそう、
絶望に目を浸してないで
あらぶりまくっている方が君はお似合いだよ!
急に移動し始めようとする
メルが滑ってダリの身体に戻る
「あら、おませさん」
『っ!!ちちちちがっ!』
「ダリせんせ〜?」
「おっと、お迎えきたよ」
ひょいっと身体が浮かび上がるメルに何事だと思ったが
どうやら背後にオリアスが来ていたようだ。
全く気付かなかった。全く。
「ったく安静って言っても
聞きやしねぇなお前」
『う゛』
「あはは!!でも説教は程々にしたげてね。
彼女ちょっと迷惑なのに掛かってたばかりだから。」
僕はそれをあやしてただけだよ〜じゃ仕事戻るね。
そう言って消えたダリに
オリアスは迷惑?と首を傾げる。
ひょいっと脇を掴んで離した
メルをそのまま地面に降ろす
何があったのかとりあえず聞いてみた…が
「…そんなのいう訳ないじゃん。」
ダリの言う通り、とんでも迷惑な幻惑系だった。
にしてもそんな魔術を使う者いたかな…
そう考えていると、メルがポロリと涙を流したのに
ぎょっとする
「あー!オリアス先生がメル先生泣かしてるー!!」
「っあ?!え!?ちょロビン先生!?うおっ!!」
何々!!そう言ったオリアス
メルがびくりと反応し
オリアスの背中にしがみついたのだ。
じっとしているとメルがカタカタと
身体を震わせているのを感じる。
…あ、怖いんだ。
そう感じたオリアスはふぅむと考えた後
帰ってきたツムルやイチョウ、ロビンにあのさと聞く
「昨日、メルちゃんに
何か言い忘れてる事ある?」
そう言ったオリアスにバッとメルが顔を上げる
良いからと手を背中に回したオリアスがロビンの方を向く
「昨日?昨日ですか??あっ!!
メル先輩弓撃ちましたよね!!!」
『っ!!!』
「あの弓滅茶苦茶かっっっこ良かったです!!」
『…はい?』
「あーあと俺やイチョウの方まで
魔法と俺達飛んできましたよ!
いや〜我ながらかっこよかったです…!」
「炎だけでなく雷や氷も使って、
何時もはメル先輩の周りにしかいないのに
急に来たから一瞬誰かと思いましたよ。」
『え?いや、あの、え???』
「くくっ…ね?君の感じた冷たさなんてないでしょ?」
そう笑うオリアスに何々?とロビンが食いついてくる。
ひぃっと言って下がるメルに、
背後にメルを見たロビンが固まる。
それももうびしっと、
石のように動かなくなったのに
どうした?とオリアスが聞く
「…何でそんな逃げるの?何かされた?」
『え?え?え?待って待って待って』
「はいはいはいストップストップ!!」
今この子ナイーブだから接触禁止!!
オリアス先生良くて何で僕駄目なんですか!!
そう言ったロビンにオリアスは
あのなぁと帽子を動かしつつ
メルに持って行ってた手を離した
『…ん』
大丈夫、だよ。そう震えながら言うメルが
ロビンの服をちまっと掴んで言う。
それに騒いでいたロビンが固まりそのまま顔を
下から上に赤らめた後両手で顔を隠した。
「ずるい」
『なんで!?!?!?』
「うん、アレはずるい…」
「同じく」
そう傍から見ていたツムルやイチョウも
顔を赤らめて何処かそっぽを向いた。
何で!?と言うメルに
オリアスは笑いまくっていた
『むぅ〜〜!!!』
「ごめんごめん!!…それで?気晴れた?」
『…っ!!…ええ!!ありがとうございます!』
そう笑って言うメルにオリアスは
いいえとため息を吐いて答えた。
++++++++++++++++++
「トラウマを見せる悪魔、ですか」
『ええ、下手したらそいつ
危険視した方が良いかもです。』
「メル先輩を陥れる程の脅威ですか…
確かに生徒にするには
ちょっと威力が強すぎますね。」
僕も何気にツムル先生直伝の
精神耐久コース受けてないからな。
そんじゃそこらの匂いだけでの
幻影やら悪夢は特に問題ないのだ。
なので絞られてくるのは、悪魔の家系魔術。
『この収穫祭が一番生徒を捕らえたり
殺したりしやすいでしょうし。』
現に魔女が昨晩襲い掛かって来やがったし。
そう温度を三度程低くするように冷えた声で言うメル
それに今日はどうするんですか?とツムルが聞く
それにメルは嗚呼、仕事すると答えた。
『悪周期用の効果が良すぎて
ずっと消えた状態なんだよね〜』
それに下手にぶち込んでも帰ってくるから
もういっそのこと居させた方がマシじゃね?
ってダリ先生から言われて。
そう言ったメルに全員が
「ああー」と納得した。
『…それに今日も出るだろうし。』
「え、あんだけ狩ってまだ出るんですか?」
『多分ね。一人で流石に600超える
魔獣を出したわけでもないだろうし。
と言うか殺したのに魔獣生き残ってたってことは、
絶対他のアマがこそこそ生き残ってんでしょ。』
「メルちゃん?言葉遣い言葉遣い。」
そう男性にこの野郎と言う様に
女性に対しての暴言をサラリと吐いたメルに
オリアスがどうどうと落ち着かせる。
いやぁキレるのが悪周期の期間早いんですわ。
そう笑うメルに、一同通常ならキレたりする機会
少ないのは割と許容範囲広すぎるだけなんだろうなと
各々の行動を改めて反省した。
「所でメル先輩先程とてつもない魔力感じたんですが…」
『…え?何時?』
「ああ入間君が大きな植物出して出てくる前かな?」
『…あーーーっあーーーー
あーーーーアレかなーーーーーあーーーーー』
そうあーしか言わなくなったメルが
アレと言ったのに何々とロビンが食い込んでくる
『いや、ちょっと…本気で
弓で勢いよく解き放っただけ、なんですよ。』
「みたい!!!」
『ぜっっっっったいむり!!!!』
なんで!!そう言うロビンに
誰があんな高火力高威力高難易度の技を
やすやすと見せられるかぁと叫ぶ。
まぁ本音は本名を叫びながら悪魔の前で
撃てるわけがないだろうと言いたいのだが。
それはロビンだけでなく勿論オリアス、
この場にいる誰にも言えない
とんでもなく秘密の事である。
「メル、お前まだ動けるのか」
『っはい!夜とか特にリタイア者
多いでしょうし動けますよ。』
「昨晩のようなのは?」
『…アレは結構土壇場だったんで、
そのー追い詰められたらいけなくは。』
「ほほう、つまり追い詰めたらいけると。」
「あっ」
『うぐっ』
そう言ったメルはカルエゴに
聞かれたことを後悔する事になる。