『んぅ』
そう目を開けたメルにイチョウはおはようと声を掛けた
それにうんとまだ寝ぼけている顔のメル
可愛い〜と言う声にメルが驚いて振り返る
「こら、ロビン先生駄目でしょ」
「良いじゃないですかー!
僕も抱っこしたいですー!!」
『うぇ?ろ?』
首を傾げるメルに、
イチョウは泣かないんだと驚いた。
朝バラムが驚かせてしまって
メルが泣いたとツムルから
聞いていたのだが、
案外バラムが大きかっただけなのかもしれない。
『ろヴぃ?』
「ろ・び・ん!」
『ろヴぃんぅ!』
「…諦めよ?」
「嫌です~!!イポス先生だって
言って欲しいとか思わないんですか?」
「いや俺もう『しろ!!』ほら名前ですらないから…」
嗚呼ーそう苦笑いするロビンに
イチョウもまた苦笑いした
あうあうと言いながら
目をぱちくりしているメルに
もう目が覚めたのを感じ取る。
『ロヴィン、みどり!』
「ん?どれ?」
「多分髪の毛…かな?」
『いっしょ!!』
そう笑うメルに、嗚呼と言って
ロビンは髪の毛を一房持って一緒と笑った
髪の毛がぼさぼさになっているのに
駄目だよ〜とロビンが手櫛でメルの髪の毛を触る
「あ、俺の使う?でも他の悪魔の
使うのも良くないと思うんだよなぁ」
「魔法使って櫛でないかなー」
「いやーまっさかー」
そう笑う二人にメルが上を向いていると
ううううと言いながら下を向いて唸りだす
それに何!?うんち!?と言ったロビンに
ええ!?嘘でしょとイチョウが驚く
『ん!!!くしぃ!!』
そう言って手を前に出したのに
出て来たのは本物の櫛の様だった
それに目が飛び出る程二人が驚いた
「「えええええ!?」」
「嘘、だろ?え?マジじゃん…」
「櫛、とりあえずときます?」
そう言ったロビンにうんと言ってイチョウが
メルが出した櫛を手に取ってメルの髪の毛を梳く
イチョウもストレートヘアーではあるが、
メルも柔らかくストレートヘアーなのを実感する。
何時もは遠くから緩く編んでる
三つ編みを見ていただけだったが
予想以上に柔らかいのは子どもゆえだろうか?
「どうせならいつも見ない髪型にしてあげます?」
「どんなの?」
「こーポニーテールとか?」
「あーそれなら出来るかも。」
『ぽにー?』
「髪の毛をこうやって上にまとめるやつだよ!!」
そう言ってロビンが自分の
頭の上の短い髪の毛を纏めてみる
それにほうほうとメルが首を縦に頷くのに
イチョウがじっとしててと指示を出す。
それに気づいたのか固まるメルに、
意外と素直なんだなと
思っている間に櫛が綺麗に通った
「よし、こんな感じかな。
俺の予備のゴム使ってるけど。」
「おおおおお!!可愛いよ!」
そう言ったのにメルが首を左右に振るとピロピロと
視界に入るのが気になるのか嬉しそうに横に振る
櫛は役目を終えたのかすっと櫛がキラキラと
光って消えて溶けてなくなった。
キラキラした目でメルが
『メルみたぁい』と笑った
「メルみたい?」
『安名メルってまほーしょーじょいるの!
メルその名前なの!!』
「え?本名じゃないの!?
メル先輩の本名は!?」
『それは…駄目』
そう真顔になったメルに
どうして?とロビンが首を傾げる
『だって悪魔さんだから』
そう言ったのにええ!?と目を丸める
気付いていたのか
…いや気付かないわけがないか。
周りの耳のとんがりや角が多いのに
流石にコスプレだとは思えないだろう。
尻尾も生えていたのに気になっていたらしい。
『悪魔さんにホントの名前教えちゃ駄目ってママ言ってた』
「どうして?」
『連れてかれて、帰れなくなっちゃうから』
そう言ったのにロビンが帰る場所
此処でも良いんじゃないと首を傾げる
それにメルがきょとんとした
「ちょ!」
「だってメル先輩朝から
ずっと笑顔じゃないですか。
嬉しそうに笑ってるの、
元のメル先輩以上ですよ?」
それって今とっても楽しいってことでしょ?
なら帰らなくても楽しいなら良いじゃないですか!
そう言ったロビンになるほどとメルが頷いた
『メル、でもパパとママが良い…
喧嘩沢山するけど、
居ないと泣いちゃうかもしれないから。』
「そうだよな、きっと心配するだろうな。」
「でも大丈夫だよメル先輩!
もしパパとママが悪い事をするなら
僕達がきっと君を連れ去ってくるから!!」
ほんと?というメルに
ほんと!とロビンが頷いた
それにはイチョウも同意である。
もし両親がメルを
虐待していたのであれば
帰らせなくても良いだろう。
この場所に居た方が気持ち的にも
落ち着いてすくすく育つだろうし。
『そっか…でも、帰るよ。』
「うん」
良いよ。そう言ってロビンが
メルの頭を優しく撫でる
嬉しそうに笑ったメルは
『よーし!』と言って
イチョウの膝から降りた
『おえかきしたい!』
「お絵描き?ならペンと紙持ってきますよ!!」
「いやそこにクレヨンと画用紙がある筈だ」
そう言って段ボール箱に指を指すと
メルが直行して中を探す
するとちゃんとあったらしく、
画用紙とクレヨンを取り出して
地面に置いて描き始めた。
黒のクレヨンで描きだしたのに
そっとしておこうとイチョウが言って
ロビンもまた邪魔をするのは悪いと感じ
メルがじっと集中しているのを見て席を外すことにした
+++++++++++++++++++++
コンコンとノック音が入る
はーいと言ったイチョウに失礼〜と言いながら
ダリが入ってきた。
「メルちゃんいる…?あれまた寝てる?」
「ちょっと集中して完成したら安心したのか寝てますよ。」
すよすよと寝ているのに、元気な姿で見たかったなぁと思いつつ
メルの前に数枚の絵にそっと身体を伸ばして中を見る
「これ…」
赤や緑、黄色や茶色のカラフルな色に
メルの顔や手も色が付いている。
「沢山遊んでくれたお礼だって言って描いてましたよ」
できたぁ!と言って画用紙を持って
イチョウに持ってきた一枚をダリに見せる。
其処には今までメルを見てくれた教員が全員集合していた
左下に文字が書かれていたが、読めない文字に首を傾げる。
ただ、何となくだが「ありがとう」と書いている気がして。
くすりとダリは微笑み笑った。
「髪の毛可愛いね。結んであげたの?」
「はい。あ!そうだメル先輩こう
ぐって踏ん張った後櫛を出してきて」
「…疲れてる?」
「いやいやいやいや本当ですって!
五分位で櫛自体が消滅したんですけど…」
「…家系魔術?いやでも」
メルが五歳の頃は魔女としての契約はしていない筈。
なので家系魔術はおろか魔法は使用出来ない筈だ。
というか、メルは人間なので、悪魔達の言葉を
理解できていない可能性が非常に高かった。
なのに最初の方は顔一つ崩さなかった所
やはり顔を見て反応をしていたのだろう。
「…まいったな。」
ツンツンとダリがメルの頬を触っていると
うつらうつらとしながらメルが
ダリの身体を掴んで丸まり始めた
よっこいしょと言ってメルを抱き上げて
背中を優しくトントンとさする。
ドアが開いた音で寝ぼけた顔が目を覚ました
「あ〜起きちゃった〜」
『ぅ…』
「あっ!すいません、
起こしちゃった?ごめんね?」
そう入ってきたツムルが苦笑いする。
それに首を振って大丈夫と言った
メルにホッとする。
「それにしても戻りませんね、放課後になるので
もうすぐで戻ると思っていたんですが。」
「朝になったら戻ってたりしてね」
「それもそうですね」
そう周りが解散を命じている中
メルが目を完全に覚ましたのかそっと降りだす
それにどうした?と言ってダリがそっと降ろした途端
「っあ!!ちょ!?メルちゃん!?」
何処行くの!?そう言ったツムルに
メルが大人の腕をかいくぐって
半開きになってしまっていたドアから出て行った
「「あああああああああああああ!!!!!!」」
そう叫び声が出るのを聴きながら
メルがケタケタと笑いつつ走り逃げた
「ちょ!メルちゃん!?何処!?!?」
「あっち!あっち行った!!!」
+++++++++++++++++++++
きょうはとてもたのしい
ぱぱとママが居ないけど。
そう思っていたメルはダリの目を盗み
そっと降りた途端ツムルやイチョウの手から逃げて
そのままドアに走って行った
後ろから慌てる声が聞こえて嬉しくなる
前にパパとママと遊園地って所に
行った時もこうやった。
後できっと追いかけてくれる。
そんなことよりも今は匂いが気になった
クンクンと鼻を鳴らして匂いの方に寄っていく
甘い花の匂いな気がする。
『どこだろ…ここ』
首を傾げるメルは桜の方向に歩いていた
桜の木に登ってと言ったパパのことを思い出す
ジワリとママの声を思い出しているとふわりと香りながら
桜が目の前を隠してしまい、思わず目を閉じた
『…ママ?』
目を開けると、ママがいた。
黒髪のロングのママ。
目が顔が見えないけど匂いは間違いなくママだった。
きっと迎えに来たのだ。
ツムルから聞いていた話よりもずっと早い帰りだ。
暗くなる前に家に帰ろう。
手を伸ばそうとしたが、
何かが違う気がしてそっと手を引いた
ーメル、帰ろう?
そう言ったママにメルは強く言った
『ちがう!ママはメルのこと
メルって言わないもん!!!』
そう言った途端、世界がぐにゃりと変化し
目の前に大きな花が現れる
『ーーーっ!!!』
食べられちゃう!
そう思って身体を縮こませていると
ふわりと身体が浮かび上がった
『…?』
ぎゅっと閉じていたのを開けると
其処にはキラキラした金色の光が見えた
「ーっ、あっっぶな」
『おじゅ?』
「無事そうだね」
良かったぁーそう大きなため息を吐いたオリアス
メルが居た場所は
スージーの植物園でも危険区域だったのだ。
イチョウがメルの描いた絵の文字にヒントを得て
ひょっとしたらオリアス達の声が
分かっていない可能性を提唱したのだ。
外に出て何もないわけもなく、
ただ家系能力を使って棒を落として移動していくと
植物園の危険区域の方に落ちたのに
スージーと出会って顔がぞっと青ざめた。
ーふいっ、まずいです!危険区域には捕食する植物が!!
ーっ!メル!!!
急いで走り中に入ると、奥の方で手を
前に出そうとしたメルに名前を呼ぶ
ーメル、帰ろう?
そう言った女性にメルが強く声を上げた
ーちがうもん!ママはメルのこと
メルって言わないもん!!!
そう強く言った事で幻影だった女性が消えて本体を表した
それにオリアスはメルの所に走って横からスライディングして
メルを抱きかかえて身体を地面にこする
その間にスージーが植物を眠らせて、無事に外に出て来た。
「あの時手を取ってたら確実に食べられてましたよ」
「えっ…本当に危なかったんですね」
間に合ってよかった。そう言ったのに
オリアスの身体の中でずっと
ガタガタとメルが震えて何かを唱えている。
「メル…?」
そう呼ぶとびくりと身体を震わせたあと
そっと顔を上げた
怖かったのか身体の力が入ったままだ。
『ごめ…なさ…メル、悪いっ、こ』
そうぽろぽろと泣きだしたメルに
スージーはそうですね。と言った
「メルさんとっても悪い子でしたね。
大人の事を無視して危ない所まで入ってしまって。」
でも
「最後ちゃんと手を取らなかったのは
本当に素晴らしい勇気だと思いましたよ。
あの幻影は一番会いたい人を掴みたいと
思う人を映し出す植物なんです。」
なので誰でも手を伸ばして取る筈だった。
だがメルは幼いながらも取らなかった。
違うと、お前は自分が知っている人ではないと。
「普通の大人でさえも惑わされる
レベルの危険な植物なのに
それを一発で見抜いて嫌がった。
余程お母さまのことが大好きなんですね。」
よく頑張りました。
そう言ったスージーが
メルの頭を優しく撫でる。
それが懲りたのか大きな声で
泣きながらスージーの方に手を伸ばす
よしよしと言いながらスージーは
オリアスからメルを受け取り背中を叩く
遠くから赤い髪の悪魔が走ってきたのを
メルはそっと頭の中で気付いた