土方「岡本ちょっと良いか?」
『あっはい!何ですか?』
土方「此処の件に付いてなんだが
お前の方の意見が聞きたくてな」
薄狼の術も粗方覚え扱える様になった頃
都佑は副長補佐として間違えは多々あるものの
覚えは早く鉄も一緒に3人で作業をしていた
土方「鉄はコッチの作戦を立てている、俺も同意見だが
お前からしての意見は案外役に立つからな一応と思って」
『そんな大した事無いですよ、私だって外しますし
…これは、微妙、なんじゃないですかね?』
そう手に取ったものはとある攘夷志士を取り押さえる場所だった
山の中にあると風のうわさで聞いた山崎に資料を作成させ
そのまま土方が鉄と一緒に考え作戦を立てたもの
本来なら私は全く話す事はない、完璧な案件である。
然も挟み撃ちする様にしているので袋のネズミ状態で
軽く事が進みそうだ。
勿論相手も攻撃するだろうし、生傷は耐えそうにないだろう
その案件に何処か気にかかった
何だろうと首を左右に振りながら考える都佑
それに鉄がコレで駄目なんですか!?と驚いていた
『悪くはないと思います…なんか、じゃあ鉄君なら
このまま進めたらどうなるか、予想出来る?』
鉄「え?捕まえるだけですよね!」
『あー…うん、予想外の事って予想出来る?』
例えば、来ていた味方が敵だったとか。
そもそも、その場所は囮だったとか。
そういう全く違う観点を例に出す
『他にもあるけど、山の中にポツンと一つに
大勢で行けば、ほら山火事とか出来て火の海にしたら
証拠も何もないじゃない?』
鉄「いやそんな考え過ぎじゃ…」
土方「いいや、やっぱりお前に聞いて良かった。
俺も無いとは言い切れなかったが、こういうのは
一人で決めるよりは聞いた方が良いと感じてたし」
『良い?鉄君。長い生活を覚えている私からすると
君らの決断は余りにも軽すぎると思う。』
例えばを揃え過ぎて身動きが取れないのもどうかと思うが
考え作戦を立てて居た方が後々楽にもなるし
この先そんな作戦を二度も三度も使うかもしれない
相手は違えど、そういう起点は培っていて損はないのだ
『山なら何が起こる?土砂崩れ、山火事、木が倒れる、
天気も移り変わり激しい、雨が降りやすい、
地形によりけりでかなり作戦を変えなければ、
確実に捕えるなんて出来ないのよ』
鉄「へぇー!流石副長補佐ですね!!」
『口だけだよ、出来るかどうかはその時の上の判断に左右されるし
見た感じ天気も良好だけど、火は気にしておいて損は無いだろうね。
私は出なくても良いんですか?私なら水作れますけど』
ペットボトルさえ一本忘れなければ問題ない
火の海になれば被害も出るだろうが、まぁ
そうなるかも分からない話である。
土方は別に問題ないだろうと踏んでいたのだが
彼女の言った意見の別の方を考えていた
土方「岡本お前確か”これが囮なら?”って言ってたよな?」
『はい、忍術の一つに噂を流して混乱させるって手があります。
何で引き取りの場所がこんな山奥なんでしょう?って思いまして』
その術の様にもしも囮になっていたら?
別の場所で何かをする可能性もある
しかも山奥なので途中で土砂があれば足を止められる
敵としてはかなり良い場所を流しているのでは?
そう捉えた一つの仮説に納得する土方
もう一度聞き込み調査をするべきだな
と感じた土方は資料を全て集めて鉄を使い
山崎に持って行かせた
土方「お前本当に鋭いからな…最近の案件
全部お前の勘が当たってるの知ってるか?」
『ええ!?マジですか…あんなサラッと言った事?』
本当に思い付いた事なのだ
頭の中にふわりと浮かんだ別の方向からの勘というか予測
此間起きた立てこもりに都佑がぼそりと言った
『まさか只の時間稼ぎじゃ?』なんて言ったものが
当たり、其処から離れた銀行で強盗があり
勿論二つ共すぐに解決したのだが、土方や近藤は驚いていた
土方「女の勘は当たると聞いちゃいたが…あそこまでとは驚いた
って腰ぬかしそうになってた近藤さんが言ってた」
『私のふいに出る勘は何故か昔から当たりますからねぇ…
私も結構不思議だったりするんですよ。嫌な方向は余計に当たるし』
良い方向には正直当たったなんて殆ど無い
その代わりなのか知らないが悪い方向は結構当たる
此間の案件も同じく、今まで全く触っていない事にも
さらりと呟いた事が近い道を通っていたなんて現実にあったからこそ
今回から土方は気になったら都佑に相談してみようと思ったのだ
土方「昔からそう言うもんだろ。
まぁでも機転が利くのは有り難いのは事実だ
隊士の一部も最近お前に感化されたのか知らんが
気が利くやつらも出てきたからな」
『余り私の様にならない方が良いですよ…
その人達真似しているんであれば
直ちに辞めた方が良いです』
そう急に真面目な顔になる都佑に
どういう事だ?そう同じく真面目に見つめる土方
『私の様になると言うのなら
それは”自己犠牲が激しい”って事でしょうね
出来れば自分の身を守りながら守って欲しいです』
私とは違う、輝かしい未来を背負う人達に
私みたいなずっと昔のことを観るだけの
人間に成って欲しいなんて思えない
というか成るのは否定する断固だ
まぁその人達が良いと思ったなら別にとやかくは言えないが
それでも先のことを知っている自分だからこそ、なるべく
そういう自分に成るなんて言ってほしいもんでもないし
真似て欲しいものでもない。
だって私の様になると言う事は
玄関先で立ち尽くしていただけの
無力な少女と同じ様な気持ちを持つ事になるのだから
勿論土方も其処は察しており、隊士もバカではない
彼らは都佑が無意識にする
”純粋な気持ちを言葉にする”事を真似ているのだ
都佑が心配する事は何も無い
なのに彼女は先のことを心配したり
色んな方向に足を止めて簡単な事も考える
物事に置いてはとても尊敬して問題ない思考の持ち主である
優しい処か危ういと感じたのは近藤や沖田だけでなく
土方もその一人であった。
女である事をさらけ出しつつも、か弱い処は一切見せない。
人を心配し思い遣り笑う、無邪気な女の子でもあり
真面目で少し自信が無く人を信用しなかったりするのは難だが
ほぼ完璧な申し分ない子が、こんな場所に居て罰は当たらないのだろうか?
出来れば田舎にでも行って幸せに暮らして欲しいとは思う。
然し本人から此間聞いた様に、幸せは其処ではないのだ。
真選組の一員として胸を張って歩いている時間が幸せだと
何時しか言っていた彼女は本当に誇らしいと思う。
まぁ彼女本人はその持ち前の明るさと好奇心には気づいているが
近い人間を信頼している様でまだぎこちない処がある事は
恐らく土方や近藤位しか知らない話である
土方「そういやお前、最近休暇取ってるか?」
『あ?と?とっ取って…とっ、トッテマスヨー』
こうして目を逸らしながらぎこちない
見え透いた嘘を言うのは最近になってからだった
本人曰くこの行動はどうしても前世の行動そのもので
癖として染み付いている為
中々戻らないと苦悩の一つになっているらしい
まぁそんな事はどうでもいい
休暇をとっていないのはそれはそれで問題だ
今すぐに休暇を取らせようとする土方に
都佑は待ったをかけた
『いやいやいや、仕事溜ってるでしょう?
寧ろ仕事終わらないと私休暇になりませんて』
土方「んな事言って本当は結構
限界近けぇんじゃねぇのか?ああ?」
土方がグイッと顔を近づけて尋問の様に聞くと
むっと眉を寄せて大きく首を左に向けた都佑
図星の様な顔に大きくため息をつき、煙草をふく
土方「ったく、補佐がんな事でどうすんだ…
休暇も仕事のうちの一つとなりゃ楽になんのか?」
『んーどうしても誰かの役に立ちたいって
思っちゃいましてー休暇でも色々手つけたりしちゃうんですよねー』
それこそ隊士の世間話や洗濯や掃除も
休暇であるが故にやってしまう事を話すと
土方は「いや駄目だろ」と突っ込む
『お人好し過ぎるので、柏木さんにはかなり説得したんですが
今世のままで居れば前世が無かったことになるってなると
どうしても嫌でしたしーでもコレは流石に、ねぇ?』
土方「分かってんならとっとと休めよ」
『やる事無いんですってばーボケーっとしてると
どうしても色々考えますし…それに』
急に会いたいと感じる。
そんな欲がこみ上げて来るのだ
会える訳も無いのにも関わらず
会えばもう、笑顔すら見れない事も知って
それでも、私は
『笑って喋って楽しんで、皆もう要らないです。
私お腹一杯なんですよ?甘やかさないで下さい。
これ以上、浸ったら弱くなっちゃいます』
会いたい、叶わない。
否定してようやく自分を認知出来る
この場が居心地良すぎてどうしても
彼らに、土方さん達に甘えそうになる
そう膝を立てて座り膝の上で
両手を合わせ口をつけて笑った
もうお腹一杯と思わなければ駄目なのだ
望んでしまえば手に入らない時に痛むから
望む事すら頭の中に無ければ痛みも無い。
楽で居られるのだ、そんな楽を彼らはぶち壊してくる
望んで笑って幸せな時間を得てしまえば、
もう一度何かを失った時
手を伸ばす事を笑って諦めた日の痛みよりも
痛くて辛くて絶望に色を染めて戻らなくなりそうで
痛みの為に全てを委ねるのだ
私はそうやって楽に生きてきた
近藤「都佑ちゃんはもうちょっと
甘えても全く問題ないと思うがなぁ」
『近藤さん!?』
声から始まりひょっこり出てきたのは近藤さんだった
そのまま土方の隣に座り先程の話を聞いていたのか
話に入ってきた
近藤「人の役に立とうとするから
周りも都佑ちゃんの役に立ちたいって思うんだが
何も我儘言って来ないから寧ろ心配してるんだよ」
『うっ、そんな事言われましても…
私人に何かをしてもらうって事が苦手で
親にも気を遣ってた位なんで』
5歳位ではまだ我儘を言っていたのだが
小学生の低学年後半から我慢を覚えてしまい
自己評価がかなり低くなり他人よりも頑張らないと
いけないなんて思う様になった
それは親でもそうなってしまい
甘えるなんて事は殆どしたことがない
そう説明すると尚更甘えるべきだと近藤は頷く
『甘えれば、どうなるかなんて、私経験してるんです』
前世の足枷は異常な程に心に沁みついていた
手を伸ばせば届くのに
忙しく疲れた人に元気になって欲しいと
自分の感情は二の次にする
そうしなくても自分の感情を優先した処で
彼らから貰える喜びは欠けていると感じるだろう
満足しても、また満足出来なくなる
ずっとその満足したままで居れば良いのに
欲を育てられると本当に後々痛みが大きくなる
然し彼ら真選組は寧ろ守ってやると言うのだ
そんな確実な事なんて無いのにも関わらず
彼らは私を信用して守ってくれると手を差し伸べてくれる
暖かい本当に欲しかった場所が目の前にある
手を取らずして何になろう?
とらずに居れば、痛みは半減する。
全ては楽に、息をする為に。
『甘えると申し訳ない気持ちも出ちゃいますから』
土方「何かしたいとかは無いのか?
女なら服とか小物とか欲しくならねぇのか?」
あー…それ前世でも言われたなぁ。
『あー…欲しいとは思いますが買う迄に至りませんね。
物欲と食欲は恐ろしい程に低いですし、お金で買えない物が
近くにあって見れるんであれば、私はそれだけで十分ですし』
そう笑う都佑に隠れていた山崎が出て来て
「いい子だー!」と胸に手を当てていた
『なんか昔もそんな事言われてたなぁー
買えない物が自分から生まれだせるのなら
今の現状で問題ないって思ってたのが8歳の時?』
近藤「ええ!?そんな小さい頃から!?」
『欲しい物が手に入っていた時に知ったんです。
だからお気持ちは有り難いですが、土方さんや
皆さんのお手伝いが出来て笑えたらそれで良いんですよ』
好きなものを持っていると其処に情が沸いてしまう
そうすれば何時かの時に傷付き立ち直れなくなる可能性が
大きく跳ね上がってしまうだろう
私は怖いのだ
今も昔も、同じことに恐怖を抱いている。
『皆さんが言ってくれる事も分かるんですけどね!
お世話になってるから役に立ちたいなんて。
でも的外れだったりして逆に悲しませちゃったら嫌なので』
近藤「謙虚過ぎるよ、寧ろ一日何でも我儘しよう?
あ、それ良いかも。これ局長命令ね?」
いきなり話が変わってきた事に都佑は二度見する
近藤の意見には土方も賛成というか「あ、いいなそれ」
なんて何本目かも知らない煙草に火をつけた
『ええええ!?むむむ無理です!ってか何そんな
どうでもいい事で局長命令出してんですかわれぇ!』
山崎「われぇ!って突っ込み方動揺しておかしいですよ。
良いじゃないですか。一日何でも誰でも我儘言って良いんですよ?
パシリとか使えない人にも使えるんですよ?」
沖田「土方を殺せでも俺ぁ我儘いわれなくてもするでさぁ」
そう何処から湧いて出てきたのか知らない沖田が
刀を抜いて土方の頭上を振ったのだが、生憎土方は
沖田が来ることを察知してか瞬時に刀を抜いて受け止めていた
『ああああ!おおっ沖田さん何してんですか!!
味方殺しちゃ駄目ですって!って言うか
私まだ同意してませんけど!?』
沖田「じゃ隊長命令も追加で」
土方「んじゃ副長命令も追加な、出来なけりゃ切腹」
『切腹して死なない事知ってて言ってるだっろぉおお!!
あと副長でも局長でも命令に逆らわないって知ってて
お前ら言ってるだろぉおお!職権乱用だってば!!』
だ、だれか上の人呼んで・・・上
あ、松平のとっつぁんじゃん・・・詰んだ。
口を巻いて叫んで否定していた都佑だが
本人達が折れないことは知っていたので
仕方がなく此処は従おうと思い、
数分の格闘後、首を縦に降ろした