都佑は一人父と会う
其処で二人の話をする。
母がどんな人だったのかも全て話し終えた後で
前世の記憶が全て身体にしみこんでいる事
そして都佑自身がその現実に溺れていたい事
然しそう簡単に人生は転がらない
父は前世の記憶にある別の所帯を思い返す
其処でも優しい娘に愛されていたと
それに何処か、他人じゃ無い様な気がした都佑
「父上、私は決めたんです」
「…叶わない願いを希(こいねが)うのか?」
「勿論、だって”都佑ちゃん”との約束ですから。
あの子ったら凄く嬉しそうに笑って指切りしたんです。
…もう二度と悲しい顔なんてさせたくなくて、したくなくて」
都佑は自分で、未夜も自分で
両方の感情が混ざった今が不安定なこと位
病に蝕まれていってる事位、自分が分かっていた
「どうせ、届きゃしないんです。
と言うか、届いて欲しくなくなった。
私の願いは届いたら寧ろ叶わないんです。」
「今が、夢事態が叶っていると?」
「ええ!今私はとても幸せなんです。
だって100年も昔の自分で居ても良い場所にいる」
照れくさそうに笑う都佑の表情を見たこともない父は
目を開き、都佑の優しい優しい目に見とれた
「私やっぱり人の事嫌いになれやしないよ!
今も昔も、私が私で居られるとなったら」
都佑は必ず真っ直ぐな優しい眼をみる
キラキラとした、優しく、無邪気な心を映す眼を
「…此処が好きなんだな、お前昔から何も望まなかったじゃないか」
「前世から、って付け加えてよね?」
「お前、本気か?」
「…たまげた」
「望むのを捨てたのは9歳からだった。
物を欲しがる事を止めて本当に貰えるものを欲した。
それでも貰えなかった、手を伸ばしても。」
だから私は望むのを諦めた。
望まないんじゃない
望むのを捨てたままなのだ
「前世の9歳の時間を止めて優しいありのままの自分を育てた
何時かパパとママに会った時に何時もの私で迎えられる様に」
「…良い娘さんに愛されてるこった」
「よく言われたなぁ!だって私しか二人を愛せないだろうし!」
私を褒めて喜んで笑ってくれるのは彼ら二人しか居ないのだ
それ以外の人間の愛情なんて捨てて貰えるのなら一生
別の人の愛情なんて貰わなくても良い位だ
「それでも分かっているのか?此処が現実だと」
そう、分かっている、違う
「認めなければ、いけない。そうでしょう?」
「嗚呼、そうだな。お前ってそーんな
前から大人みたいな感情持ってたのか
そりゃあ天使みたいな性格持つわけだ」
そう項垂れる父に私はははっと喉で笑った
「知ってる?私天使の日の誕生日なの」
「…マジか」「マジだよ」「…てん「違います」」
「都佑だ、私は都佑だ。…嗚呼、私って都佑だったんだね」
自分の名前を久しぶりに呼んでみる
うれしくて、どこか寂しくて、胸が痛む。
「…都佑、覚悟は出来ているのか?
お前の母は苦しんで死んで行った」
「当たり前じゃん、この覚悟はもう100年も経っている」
今も尚、生きているのだから。
「例え苦しくても辛くても、愛おしく感じてしまう
こんな私の感情は、もう狂って人なんかじゃないだろうに」
「土方君は俺で良ければって言っていたぞ?」
「ふぁっ!?ひひひっ土方さんが!?マジか…物好きだな。」
「嗚呼そりゃ俺も思ったさ、お前さんのご両親もそう言うんだろう?」
本当に生きていた、二人の顔を思い浮かべて
私は深く声で、うん、と頷いた
「かぁさんと本当に似ているなぁ、お前ら前世で双子だったとか」
「残念ながら前世でも一人っ子でしたよー?父上さん!」
「そうか。そりゃ残念だ。」
「私は大丈夫だよ、もう一人じゃない。」
だって胸の中にはこんなにも満たされている
ぽっかりと空いている場所は、もう無い。
愛おしい、色褪せて白と黒でしかない前世も
新選組の人達も、江戸の人間や朝狼の人達が生きる
この現実も
「私は私なんだ」
そう微笑んだ都佑
「そうか、それなら病気になっても大丈夫だな
これから沢山の感情が溢れ零れ落ちる。
それを全て受け止めなさい。そうして君は人として生きれる。」
朝狼としての術は最後まで使える
病としての寿命が速まるなんて事はない
本当に好いている願いが自身の首を絞める
「…都佑、君を愛しているよ」
「…私も、父として、嫌いではありませんよ」
「なんだ、愛していると言ってくれりゃいいものを」
「私の愛おしい人の定員は満員ですから!」
「そりゃ残念だ」