天気予報の日付でそんな日か、と案外簡単に感じた
「今日一番運の悪い星座はてんびん座の人!
特に自分の事を卑下しているそこ貴方!」
『…ん?私?』
「今日一日自分を大事にしましょう。
ラッキーアイテムは”空”です!
そうすれば本当の自分が見えるかも!?」
『ってアイテム処じゃねぇだろぉおおお!!』
そう屯所内に響いて小目玉食らったのは言うまでもない
+++
『空って言ってもなぁー、今日は中仕事だからなぁ』
鉄「沢山書類ありますね!姉貴!!」
『鉄君迄もか…皆何でそうくっ付けるのかなぁ』
そう土方さんがトイレに行っている間
鉄と軽い休憩をとっていた
運勢を信じる方ではあるが、あそこまで
自分を見られている気がするのはちょっと怖い
というか私以外にアレ当たる人居るのか?
遠まわしに「転生した人」って意味もあるくね?
『そりゃ土方さん好きだよ?うん。好きだけどさぁ?
私と一緒に居ると困らないのかなって思うんだよ。
自信が無い副長補佐であり薄狼ってかなり駄目だと思うんだよね?
だから自信つけろってもさ?調子に乗るから?
自分を卑下したままで他人をおだててた方が性に合ってるのよ。
なのにあいつと来たら大事にしろなんてさ?無理っつの
そもそも私は男の人が苦手なんですっ!
いやそりゃ苦手になったのは後天性だよ!
私の本性は悲しくも好奇心なんだよ!固まり!わかる?
Do you understand(ご理解して頂けましたか)!? 』
鉄「逆に何で其処まで自分を卑下するんですか?
俺からしたら都佑さんって黙ってりゃとっても
可愛らしくて守りたくなる様な人だと思いますけど」
『何で其処に皆たどり着くの!確かに
前世の身体はか弱くて可愛らしい小動物系だけれどもっ!
ちゃうんやぁあ!そうじゃないんゃあああ!!』
自分の事を大事にして優しくされると
どうしても甘えてもっともっと、なんて欲が出る
そんな欲が出ると大体良い事は、無い。
無い
うん、ない。
言い切れちゃう位なのでちょっと悲しくなってきた
急に立って「うがーっ」と叫んだことで頭に血が上ってしまった
深い溜息を付きながらどしっと音を立てて腰かける
前世で死ぬほど経験したのだ
パパもママも皆私が我儘を言え出すと
皆何かしらの不幸に巻き込まれるか
私自身が嫌な思いをしていたのだ。
甘える事をたった8歳から我慢を始めてしまった事で
前世で甘えたり自分から進んで行動した事は
正直数えて終わる位しかない。両手両足で数えられる程だ。
だから真選組の人間や万事屋等
私の身の内話を知っている人には
余計に甘えたくない極力甘えたくない。
『ったく、今更素直になれるかってーの!』
そもそも私は親から天邪鬼と呼ばれていた事が
ある位の度が付いた天邪鬼だったのだ
好きなものは嫌いと言って嫌いなものは好きと言っていた
嗚呼でも好きなものは大抵知られない様にと結局
好きでも嫌いでも嫌いって口走っていたのだけれども
空を見て居るとどうしても前世の
甘えられていた時期を想い出してしまう
手を伸ばしても届かない甘い蜜を
今も心は決意を固めても、揺らぎ戻る
前世で決めた事が早々この世界に来て数十年で
切り替わるのであれば、既に私はこんな場所で
頭をグルグルとハムスターの回し車の様な回転をかけていない
嗚呼、本当に恥ずかしい!
そう恥ずかしがっていると
ふと鉄君が思いもよらない事を呟いた
鉄「それじゃあ願いが叶う術とかあるんですか?」
『…無くは、ない。いやある、あるよ。
あるある、あるんだ…ある、けど』
その術を使えば私は弱くなる
幼くて小さくてとても守る様な場所に居られない
そりゃ幼体の時は身体も心も小さく弱くなったけど
今は昔も今もごちゃ混ぜの新しい自分だ
だからこそそんな術は使えない。
自分を大事にするのならば、そんな甘い夢は願ってはダメだ。
そしてその術は一日幻を見れる様なもので
悪く言ってしまえば麻薬みたいなものだ
一度ハマると戻るのにかなりの時間がかかる
その為里に居た時でも必ず術は覚えるが詠唱したことはなかった
そう言えば術は沢山ある
それこそ覚えきれない程に
その中には勿論頑張ってしまえば
前世に帰る手段だってあるだろう
時間を巻き戻してしまうことだって出来る
でもそれをしないのは
しなかったのは、したくなかったから。
出来なかったではない
”変化を恐れてしなかった”だけなのだ。
『所詮私は私のままで居たいだけなんだよ』
真選組の人間として動いていてなんとなくわかった答えだ
前々から気付いては居たが、此処まで来るともう
神様もお手上げ状態なのではないだろうか?
もういっそそのままお手上げして
私のこの感情を彼らに知られない様な術を
今すぐ私の脳内に垂れ流して欲しい
そうしてそのまま私が私で無くなって
誰も傷付けずに消えて無くなれたら良いのに。
嗚呼でもきっと今良いって思ったけど
その時になったら私は「嫌だ」と否定する。
その感情を持つのが私(天邪鬼)だから
『…大事になんて出来たら
私は此処にも何処にも居ないのになぁ』
廊下から見える空を眺める
青い空は鞘の紐と同じ様な色だ
そういえば今日は大事な日”だった”
今現在進行形で過ごしている時間
何年前の話をぶり返しているのだろうと
鼻で笑った
『私はパパとママを好きで居る
私が居ればもう何も要らないんだけどね
土方さんとかもさぁ?胸苦しそうに駄目とか言って
甘やかして来るからもうどうしようかと思って』
鉄「そのマヨどうするつもりですか」
『投げ捨ててやろうかと』
土方「ほぉー?仕事ほっぽり出してんな事するのかぁー」
おっと、例の人間が帰ってきた
『わぁああい!!にっげぇえええろぉおおお!!!』
土方「待てこの野郎ー!!!」
+++
屯所から逃げ出した私はふと自分がした事に恐怖心を憶える
恐怖心を憶えやすいのは前世で培ってしまった
私が憶えて苦労してしまった一つの原因だ。
『…謝らないといけない、んだろうなぁ』
空を見て自分がちっぽけな存在と、ふと感じた
彼らの居る場所は前世で言う処の実家なのではないだろうか?
離れようとも離れられない、麻薬の様な甘味の味が続く場所
幸せとは、一体誰が決めつけるのだろう
自分が決めつけると誰かが言っていたのを想い出す
わたしは自分で物事を決めつけることが苦手だ
天性的と思えるものだが、これが実は後天性によるものだった
先天性の物は好奇心や他人の笑顔みたさに天邪鬼になる事
後天性の物は自己犠牲や我慢をしたり、決定的な物事を自分で決めれない
まぁ悪く言えば臆病者、良く言えば慎重と言った処なのだが
『幾らなんでも他人に対して慎重過ぎないか
…と私でも思うぞ私よ、何に対してそんな不安に感じるんだよ』
これじゃあ大事な日も台無しである。
私が憶えているだけで、良い。
なんて思っていたのだが、土方さん達がそんな悲しい事を言うなと
良く甘えさせてくれる様な仕草を手足を動かす様にしてくるから
自分の得意としていた流れ作業が移って自分に反って来て困っている
えーと、こういうのを何というんだっけ?
飲食撲滅?いやそれ人類を滅ぼすつもりかコノヤロー
嘔吐インコ?ん?なんか逆な気がするけど
ちょっとツッコミが追い付かなくなってくる
沖田「因果応報でさぁ」
『そうだよ!良い事悪い事全部自分に返って来る四字熟語で
本で見て文字がなんとなく好きだったベスト5に入る奴だった!
あの時は土いじりの方が好きで大根やニンジンや食べれない物
ばかり採って土まみれで良くママが呆れていたなぁ…な?』
はて、私の記憶上「でさぁ」で語尾が終わる人は大体一人しかいない
抜け出してきたのもあり靴は履いてはいるものの
考えずに走ってきてしまい、大体私に言った言葉に反応したと言う事は
数分前から話を聞いていた事と言うわけでありましてだね
つまり何が言いたいかと言うとだ
『おお、おっおおっ、おきっ』
沖田「何幽霊でも見たような素振りしてんでぃ
都佑は今日屯所でしたよねぃ?」
真面目で礼儀正しい自分がこんな場所迄
走って息を切らせて愚痴っているなんて
前世の親に顔向けができない…
って言っても顔向け処か出来ないのは当たり前なのだけれども
『…別に、何処に居たっていいじゃん』
沖田「おお、珍しいじゃねぇいですか。
あんたがそうやってふてくされるのは」
私其処まで素直だっただろうか?
まぁ前世の幼少期と言えば素直で通していたのだが
それはあくまでも周りの人間としてであって
『み、身内にはよく天邪鬼って言われてたから…
ふてくされるのは日常茶飯事だよ。』
沖田「へぇー…それじゃあ俺達の事を
家族って思ってくれて接しているんでぃ?」
そう首を傾げる沖田に都佑は動揺する
これは「そうだよ」と言った方が確実に沖田は喜ぶだろう。
然し私の口と心は馬鹿らしく、直ぐに「違う」と否定した。
嗚呼、そうじゃない。
家族と言うか家族に近い人たちとは感じている
だから質問的には「違う」で正解なのだ。
だけどそうじゃない。
沖田「…ふぅん?」
『(嗚呼もう!この人と居ると余計にボロが出て
後で色々な脅し文句にされそうで怖い)』
そう冷や汗をかきながらそっと空を見上げる
そういえば今日は一度も雲を観ていない
雲ひとつない晴天だっただろうか?
沖田「空ばっか見てどうしたんでぃ」
『うっわ!』
急に後ろから顔が入って来たので驚き
反動で後ろに動きそのまま背中が沖田の胸板に触る
ふわりといい匂いが鼻をくすぐった
その匂いが何処か
『…母上』
沖田「あ?俺ぁお前の母上じゃねぇでさぁ」
『あ、いやごめん…匂いが、ん?匂い?』
そういえばあの日も匂いを気にして空ばかり見上げていた
嗚呼、何時だってそうだった。
私は大事なものを空に飛ばしてしまったままだった
『ごめん隊長、私ちょっと用事が出来た。
土方さんが来たらなんか理由つけといて』
沖田「え?あ、おい!…なんだったんでぃ」
するりと沖田の腕からも離れ何かを追う様に走って行った都佑
その顔は見えなかったが、声が少し動揺していた
不安そうな声色なら直ぐに追いかけようと沖田は
都佑を追いかけようとしたのだが、
後ろから山崎の声に反応して足が止まった
山崎「今さっき都佑さんが居な…沖田隊長?」
沖田「シネ」
急に呼び止めたのが彼女の話であるのなら
直ぐに追いかけてしまえばと思い顔を走った後に戻すが
其処には彼女の形跡は無かった
足を強く踏まずに小走りで軽く走る彼女の特徴だ
然もご丁寧に軽く人ごみの中を通って行ったもので
追い付く前に形跡が無ければ追いかける事すら出来ない
舌打ちをしながらも沖田は
土方になんて誤魔化そうかと考えていた
+++
都佑
それは私の名前
私”だった人”の名前
私の名前であっては”ならない”
けれども、今日だけは。
今日だけは甘えさせて
『はぁ、はぁっ、くっ、ふぅ…
久しぶりにこんな小走りしたなぁ』
何か急に走りたくなった
何かを追いかけてなんかいなかった
私はただ単に走りたくなっただけだ。
たどり着いた場所は山の麓(ふもと)
公園の近くにある道路沿いに面している山の道前だ
沖田隊長が何かを言っていた気がするが
何を言っていたのか忘れたし、
と言うか今日抜け出したので下手すりゃ沖田隊長と
土方さんが探しに来るかも…んなわけ
『あらやだ、ありそうで怖いわ馬鹿』
薄狼の情報も知っている二人だ
防チョーカーを付けて居ない今日はとても気分の良い物
空も晴天快晴、雲ひとつない空だ。
あれ?確か晴天が雲ひとつないって意味で
快晴が晴れているって意味だったような?
まぁそんな情報や日本語なんて大体が伝われば良いものだ。
少なくとも私はそう思っている
『…風が吹いています』
この世界はとても素敵な世界です。
山道に足を踏み入れる
ちょっと位入って散歩してから帰ろう
今日だけ、今日だけ甘えさせて下さい。
貴方に言葉を伝えたくて。
『とっても気分が良いね、気候も良いし、
こんな日に遊びたかった、もっと遊んでやっても良かったなぁ』
大きな犬や面白い人達が居ます
貴方がとても気に入りそうな場所です
嗚呼、こんな日も、来るとは思わなかった
記憶は残酷だ
日付と時間が直ぐに脳内で変換され
その場所を酷く自分の心を占領する
嗚呼、でも君になら別に占領されても良いんだけど
『寧ろ結婚前提だったし?こんな山道も歩いてたなぁ』
花を見つけてそのまま前を進むと神社の道だったらしく
門の中に入りそのまま神社の前に腰かけた
『そういや、こんな神社にも来たよなぁ。
嗚呼キスだってしたなぁほっぺにも沢山。
可愛かったよなぁーこんな場所ではないけど』
過去に想い耽(ふけ)っていると草むらから「キスー!?」
ととても馴染みのある声が聞こえた
その声に反応して私は声をかける
++
時同じくして土方の方では沖田の報告により
都佑を探す事になり、辺りに聞き込みをしていると
どうやら彼方こちらの犬を触りながら何処かに
走って行ったらしく
そのまま聞き込み通りに進んでいっていると
数分前に来たらしく、都佑が誰かの事を
好きだと言っていた現場を聞き思わず土方は声を出す
すると反対側に新八が同時にツッコミを入れ
そちらの声に反応したのか都佑は手招きして
新八を近くに呼び座らせた
新八「なんかすいません」
『いいのいいの、それに人間の話と勘違いしてたんでしょ?』
沖田&土方「(あ?人間?)」
彼女の言葉に新八だけでなく沖田達も首を傾げる
すぐに新八が付き合っていた男性の話を持ち出すと
大きな声で笑い『そんな事ねぇよーコノヤロー』と
銀時の真似をしていた
『愛犬だよ愛犬』
新八「愛犬!?」
『大きな耳を持った小型犬、その子ね、今日が死んだ日だったの』
その声のトーンに土方は目を開いた
『寒くなっていく日に急に容態が悪くなってそのまま死んだ
色々手を出したものよ?チ○コやきん○まも触ったし、
触った処無い処は胃の中とかかな』
新八「あんた何愛犬にしてんだよ!!
っつーか其処触れないだろうな!
触った経験あった方が怖いわ!!」
『えへへ、色々してあげたのを急に思い出してね。
空がこんな晴れた雲ひとつない日だった。
朝方死んだの思い出して、天気予報さんにも言われちゃった』
”素直に、本当の自分をみて”
新八「都佑さん・・」
『私辛い事があれば必ず空見るの。
特に夏の蒼い空と秋空の晴れた蒼い空は好き。』
だって何処までも走っていけそうだから
彼と、愛犬だった子と。
新八「あれ?じゃあ結婚前提とかって言ってた話は!?」
土方「結婚!?・・・あ、まじっ」
『ふふっ、何となく居そうな気がしたんで良いですよ。
ほら、昔話しますから、此方に座ってください。』
沖田「そうですかぃ、都佑がそういうんなら」
そう言って直ぐに沖田が都佑の隣にぴったりとくっついて座る
それに土方が「何してんだてめぇ!!」と怒鳴りあげる
苦笑いしながらも都佑は二人の喧嘩を見て微笑んだ
新八「記憶が、受け継がれるって、どんな気持ちですか?」
土方「おいメガn」
『気分の良いもんじゃあ無い事は確かだよ。
でも同時に私は…安心、したなぁ』
沖田「安心?」
だって何も変わっていない。
私は私のままだ
何処に居たって何をしたって
犬好きで極度の甘い辛いものが苦手で
食は少なく酢の物が大好きで痩せている
人の笑顔が好きで笑わせて安心して心臓が動いている
『嗚呼自分は自分なんだって。変われないんじゃなかった。
”変化を望んでいなかった”のが私だったんだって
まぁ気付くの遅いのか早いのかわかんねぇけどね!』
新八「その子は…そんなに想われて、幸せですね」
『そう?箪笥段ボール箱ごみ箱洗面台風呂の中等
入れられる場所には入れたし幼い時に時々山の中に置いて
逃げて帰ってると異常な速度で走って帰ってきたりしてたけど?』
新八「それ愛犬じゃなくてただのいじめでしょ!!
可愛がってると思ってたら何か物凄く酷い事してない!?
っつーか入れない処まで入れてない!?」
『あはは、まぁ結婚してぇって思った位好きだからなぁ。
あの子私と一緒に居ると嬉しそうに笑ってくれるから
まぁ犬だし?結婚しても子は出来ないけどね』
新八「いやそもそも犬と結婚っておかしいよね?
何なの?あんた何者?そりゃ飼い主と一緒に居れば嬉しいだろうけど!
子供出来ないのは当たり前だろ!っつーか話おかしいよね!!」
ぜぇぜぇ言っている新八の背中を
何故か同情している土方が冷や汗を頬に流しながら
背中をさすってやっていると
今度は沖田が距離をとってはいるものの
座って前のめりになりながら首を都佑の方に向けて話かけた
沖田「それは母性だけじゃねぇんですかぃ?」
『んまぁそれもあったけど、恋愛みたいな縺れた
人間の憎たらしい気持ち悪い情よりゃ可愛いと思ったな』
新八「あんた前世で一体何してたんだよ」
『男にレイプされたのは確か』
その言葉に三人の肝が冷える
うーんと言いながら何でもない様に話すもので
一瞬言葉を失っていた土方が話を止める
『ん?男はがっつく物でしょ狼さんだもの。
嗚呼でも私が今は狼か?んん?よくわがんね。』
土方「ちょ、ちょっと待て、ならお前何で
今も真選組にいんだよ…怖くねぇ、のか?」
確かに怖い。
はっきり言って怖くないなんて無い。
意識すれば直ぐに逃げ出したくなる
前はそんな時に愛犬が助けてくれた
優しい純粋な気持ち好きな気持ちに救われていたのだが
今は真選組内で女は私一人で尚且つ犬は居ない
飼ってすら居ない
『んー大丈夫って思ったから、かな?
私お父さんみたいな人って考えたら別に恐怖対象にならないし
そもそも男性を恐怖心感じたのはそれ以降だから
考えないとわからねぇって位でしかなかったなあ』
沖田「次にレイプされたら問答無用で俺が斬ってやらぁ」
土方「切腹もんだな」
『いやいや、あの時は純粋過ぎたのもあって捕まっただけだし
今回は情報豊富で寧ろ男性のアレやソレ知ってる位だから大丈夫』
新八「何知ってるんですか!っつかその手辞めろ!」
目が笑って居ない分口が笑って居ながら
人差し指を片手で丸を作った穴にぶすりと刺す動作に
新八だけでなく土方らも別の意味で青ざめる
『あーでも好きな奴じゃないとやる気起きねぇなぁ
修道って面白いもんだと思うんだけど気分じゃねぇし
男の穴にイイ処あるって知ってる?つくと喘ぐの』
土方「いや気分でやられると困るっつーか
なんでそんな話になったんだよ!」
『いやぁ顔がコロコロ変わって面白いなぁと』
土方「上司の肝をなんだと思ってんだてめぇ…」
そんなもんだと思っています。
なんて鼻をほじりながら回答すると
刀を手にして振り回しそうになっている土方を
必死になって新八が抑えている
『ま、良いんだけどね…ありがとね新八君』
新八「え?何がですか?」
『そういえば新八君って思い込み激しかったよね?
良く自分で悩んだりして』
新八「九割あんたらみてぇな奴の悩みだけどな!!」
そんな時私はどうしていただろう。
そうふと思い出すのだが、あいにく犬が死んだ事が
あっけない事ばかり頭に浮かびだす
死んだ日は、何をしていただろう。
『最初は否定しても良いけど、最後は必ず認める事。』
新八「認める?」
『そ、駄目と言っても現実そうなってるんだから
嘘でもない事を否定して自分が落ち着けるのならそうする。
でも最後には「そうだったこと」を認めてあげるんだよ。』
沖田「それって苦しくねぇですかい?寧ろ忘れた方が」
『じゃあ沖田さんや、君は”姉上”が忘れられるかい?』
その言葉に沖田の表情が切り替わる
嗚呼、君だってまだ”18の子”なのだと実感した
まぁそん位にも私だって死人と対面した経験はして居るが
『人間の記憶は忘れないの、
忘れたんじゃなくて”頭の中に浮上してこない”だけ
辛い記憶こそ抱かなければならない』
なら私は一体どれ程辛いと感じたのだろうか
楽にならずにずっと希う感情は
何故この場所にも来てあるのだろう。
新八「じゃあ都佑さんみたいな」
『私は駄目、新八君。そりゃ駄目だ。』
顎を引いて彼に忠告をする
彼はとても私に似ている
直ぐに他人に縋ったりして一番良い方法をとるが
いざとなれば自分で動き何も悟らせない
新八だけでなく、身の回りに居る人間はその
悟らせない事を得意としているのだが
私の目は誤魔化す事は出来ない
何故なら私が一番彼らよりも経験しているから。
『手を伸ばして諦めるなら忘れろ、それだけは言える。
胸の中に仕舞っちゃ駄目だ。声に出してもプライド捨ててでも泣け。
私みたいになっちゃ駄目だからね?わかった?』
土方「男がメソメソ泣ける訳ねぇだろ」
『泣いておいた方が良い、一番駄目なのは
笑って周りに合わせ自分の感情を押し殺して綺麗に包み仕舞って
何も無かった様に振る舞い忘れた様に自分の感情を惑わせる事だ』
沖田「っ、」
そうすれば手遅れだ
もう手が届かなくても手を伸ばして希ってしまう
こびりついてしまえばもう、自分が自分でしか居られなくなる
怖くなりそのままその場所から離れることを嫌う
全てを拒否してしまう可能性だってある
それには流石にと新八が否定をするが
都佑は自分を目標にされる事だけは前世から嫌だった
『私みたいになりたいって事はさ
私の感じた感情も同じ経験する事になる
こんな痛み、私だけで良いよ』
手を取りたくても取らずに我慢するだけ
そういえばあの日もそうだった
犬の手を身体を抱きしめて、涙を流して
それでも最終的には認めなかった
「死んだ」事を観もしなかった
抱きしめた熱で、全てを察知出来る筈なのに
新八「そんな事ないですよ!だって
都佑さん優しいし人を見る目あるし
悪い事しないし強いじゃないですか」
『優しいのは前世から認めるよ、
でも君らにまだ見せてないやさしさがある。
それ程迄優しいと皆”優し過ぎるね”って返すんだ』
土方「お人好しが過ぎると逆に死ぬからな」
だから私は自分を自分として見なくなった
観るだけに専念して自分の感情を捨てていた
最近は色々ありすぎて前世の犬まで思い出している始末だが
『人は見る目無いよ、勘で動いてるだけだし
悪い事はしたくないだけ
怒られたり怒っている姿観るのが嫌なのよ。
私は弱いよ、強がっている餓鬼の子だし』
強いのはこの”種族”に産まれてしまっただけの話だから
新八「でも、守れるのは凄いです。僕は何も・・」
『思い込むと本物になるからやめとき?』
そうふわりと立ち上がり新八の唇に人差し指を使い言葉を遮った
私も幼い頃そんな悶えを抱えていたのを風が吹き知らせてくれた
今日だけは許してくれ
(愛した犬位観て自分も自分じゃないと言い聞かせさせて)
(そうすれば明日には何時もの私のままで居るから)
(だからどうか、この時間だけ、願わせて)