土方「お前は狼森小籠(おいのもり こごめ)だろ」
その言葉に羽黒は髪の毛を逆立てた
目を開きトパーズ色よりも赤色に近い色に染め
土方の真正面から赤い刀を抜き下ろした
勿論刀を取った土方は受け止めるが
そのまま力に押されて外になぎ倒された
近藤「トシぃ!大丈夫か!!」
『…その名前を呼ぶなど、
おこがましいにもほどがある』
羽黒未夜としての殺気を放っていた都佑
それにゾクリと周りが静かになる
『狼森家を他種族が口にする等
死にさらせの何物でもない、無礼者だ
…知っている口なら尚更腹立たしい』
土方「けっ、お前が言った事か?
国一つを滅ぼしたてめぇが言えるのk」
瞬き一瞬の時間で土方の頬に赤い刀が触れる
血が流れ腰を深く落としている都佑の手は震えていた
『…なら!この現実をどう受け止めれば良い!!
沖田さんや神楽ちゃんが捕まって、あの人の様に!
あの人と同じ様な過ちを繰り返す家紋なんて
私一人で断ち切らせたら良いのに!!!』
高貴だからこそ、他人が口を出すものではない。
悪い、高貴だからこそ
私が名乗るだけで、悪い物はないではないか。
土方「救いに行くんだろ?
この日記に書かれてる奴の
二の舞にならねぇ様に」
『…っ』
膝から崩れ落ち、その場で項垂れる都佑
髪色は真っ白で綺麗なトパーズ色に戻る
すると鉄が言葉を放った
「綺麗だ」
と
鉄「都佑さん、その日記にはこんな言葉がありました」
≪肩より下位で白髪の狐色を灯した瞳の少女は小籠と言った。
小籠は涙を良く流して、観てられずに抱きしめてしまった。
慌てて距離を取る僕を見て、小籠は笑ってくれた。
僕がその笑顔を護れたら、どれだけ良いだろうか。
そう言ったら、君はまた
その太陽の様な笑顔を見せてくれるだろうか?
どうか、ずっと笑って欲しい。
僕の隣で、その嬉しそうに笑う笑顔を。≫
その言葉に都佑は驚き目を丸くした
涙を流していた少女を想い出す
都佑として前世で生きていた時の頃
心の中で良く涙を流していた子が居たのだ
その子が今なら鮮明に思い出せる
晴れた空の木の下で優しい風を感じながらも
涙を流している女の子
その衣装は民族衣装にも見えた
鉄「土方さんのご先祖様は小籠さんを
とても愛している事が分かりました。
可愛らしい字は恐らく小籠さんの字でし」
『小籠の字があるの!?』
立ち上がりその日記を手に取る
ページがいくつもあるが、かなり古びれていた
なのにその日記は手にしっかりと馴染む
肌触りが良い物を好んでいたことが分かる
目に留まった言葉に
私は涙が零れ落ちそうになり
日記を涙の届かない処に離す
”だいすき”
書いた言葉の表情が直ぐに思い出せる
嗚呼、愛されて愛していたのだ。
そんな優しい時間が流れていたのだ。
なのに彼女は何処で踏み間違えたのだろう?
…ん?待て。
『い、今…なんて言った、の?』
土方「その日記は俺の高祖父が書いた物らしい
つまり狼森小籠は俺の高祖父と一時的だが付き合っていた」
つまり
元を辿ると
私「羽黒未夜」は「狼森小籠」で在り
土方の高祖父と付き合い、蘇生し
国一つを滅ぼし、記憶を失くし
そのまま「岡本都佑」として
別世界で幸せに暮らせようと生かした
人間
『…え?ウソ、そんな』
新八「そんな偶然、あるんですか?」
驚いた顔のまま地面に崩れ落ちた未夜。
在り得ない。
然し記憶にはないのにも関わらず
その土方から聞いた言葉に既読感を感じる。
それは伝説に生きた少女その者だったのだろう
涙を流して笑い玄関先でずっと
其処で膝を抱えて泣いていたのは
岡本都佑としての記憶では無く
狼森小籠の幼少期の記憶だったのだ
記憶にあった点が、一気に繋がって円を描く
別世界に居ても、土方を、父や母を
里の幸せを願った少女は
優しく強い女の子だった。
『…一つ、聞いても良いですか?』
あの人は、幸せだっただろうか?
そう聞くと土方は愛おしそうな目で
優しく口にした
「幸せで堪らない、この時間が続けば良い」
そう書かれていた言葉を呟いた
読むよりも、心が温かく満たされる気持ちになる。
嬉しそうに、笑えたのなら
私は
『そっかぁ…よかった』
そう心から思ったことを呟くしかなかった
+++
其処から都佑は沖田&神楽救出作戦を立てる
相手は夜狼、下手すりゃ狼族全員かもしれない
そうなれば明らかに此方の戦力不足と言う事が
手に取る様に分かってしまう
唯でさえ術を扱い岩を砕き地を壊し
炎や水を使い空さえも飛ぶ種族だ
そんな者達に生半可な力は使えない
刀で斬る前に、近くにさえ行かせないまま
命を終わらせてしまう事の可能性は
必ず少なくは無い。
『…ううん』
近藤「ど、どうしたんだ?何か疑問でも」
『はっきり言って、此れは負け戦です』
土方「…おい、そりゃどういう事だ」
『夜狼…いや、狼族を舐めてもらっちゃ困るって話です。
夜狼一人ならまだしも、相手は恐らく100近くに及ぶ可能性もある』
夜狼成人者で、大体1分で人を殺せる量は50人近く
一振りで20人は確実に命を飛ばせる能力を備えているからだ
その言葉に現実に隊士達、周りの気が冷えた
新八「え?そ、それじゃあ、もしも
敵が成人者だとしたら?」
『まぁ行って瞬殺、はしないだろうなぁ。
苦しんで苦しんで殺すだろうから
それなりの覚悟は必要になって来る…けど』
まぁ其処はもう腹くくっているだろうし
何も言わなくていいだろう。
然し問題は敵の人数が決まっていない事だ
出会った直後で「ヤバい」と感じたのは事実
連れ去った者は確実に下の人間だろう
ならばその上の人間が多ければ?
それはもう、唯の負け戦だ。
銀時「おいおい、じゃあこのまま
指くわえて待ってろってか?」
『いや?幾つか散弾はある。
極力人数を減らして挑めば…』
かなり危険な橋を渡る物ばかりだが
此ればかりは仕方がないだろう
土方「だ…!?」
ピリリと携帯の音が鳴る
それは都佑の携帯からで
液晶画面には「沖田」の文字が書かれていた
喉唾を飲み込み、電話に出る
”やぁ久しぶりだなぁ?何十年ぶり…いや、何百年ぶりか?”
聞きなれた音に都佑の顔が一気に冷めた
手から携帯が落ち、そのまま土方が取り
外に聞こえる様にする
”嗚呼、驚き過ぎて声も出ないか?まぁそりゃそうか”
『…おま、うそ、そんな』
”在り得ないって?おかしい話だなぁ?
お前が息を吹き返したのなら俺だって
息を吹き返すに決まっているじゃないか”
だって、俺は【狼森小籠の兄】なのだから
その言葉に声を荒げ髪色を変えた都佑
それに土方は止める様に肩を抑えるが
暴れる都佑の目は血走っていた
『黙れ黙れ黙れ…お前をそんな者じゃない!!
神楽を!沖田さんを返せ!!』
”くっくっく、本当に小籠は可愛らしいなぁ?”
『黙れ…おい待って、お前何を考えてる?
まさか二人を殺すつもりじゃないだろうなぁ?』
土方「都佑っ!!」
その声にハッと正気に戻る
髪色は戻り、直ぐに土方から離れ礼を言った
”その感情の揺れ、お兄ちゃんは分かるぞー?
まぁ良いが、お兄ちゃんは悲しいよ。
お前が【また同じ過ちを繰り返している】なんて”
山崎「同じ…過ち?」
”狼族は薄狼は狼森家は代々他種族と関わらない様にしていた
なのにお前は【あの日も】今日の様な過ちを犯す!!”
その言葉は乱暴で、後ろから高い声が聞こえた
神楽の声だと知った新八が声を上げる
”駄目アルヨ!こいつ都佑を殺すつもりネ!!
きちゃ駄目ヨ!都佑だけでも来ないでヨ!!”
銀時「神楽…」
『神楽ちゃん、隣に沖田さん居る?』
そう優しく聞く、すると不安そうな声ながら
隣で眠っていると言った
『大丈夫だよ?神楽ちゃん。だいじょうぶ。』
きっと助けるからね。
その声が余りにも優しくて
神楽だけでなく、近くで聞いていた
土方達からも喉から声が出なくなった
嬉しそうに、悲しそうに笑う都佑
ゆっくりと噛みしめる様に紡ぐ言葉は
意味を成していない様にも聞こえる
まるで自分に言い聞かせて奮い立ち上ろうとする
弱気の子供の様な、そんな言葉に
『だいじょうぶだよ、私が、助ける。
愚兄等に何度も私の大事な人達を傷付けて堪るか』
”駄目ヨ!みんー”
鈍い音が響く、それに殴られたと察する時間は
遅くなく、銀時と新八が声を荒げた
”あぁー駄目だよ?兎なんてすぐに食べれるんだけどなぁ
小籠の【お友達】なら、直ぐに調理は出来ないんだよ?”
『(何度この黒い物は込みあがって来るのだろう)』
”今日の薄暮にて、土佐の桜城にて待つ
嗚呼、人数は多くても良いぞ?但し
罪償う奴はお前だけだがな!!”
『(私は何故断ち切られる人にしか巡らないのだろうか)』
そう聞いた後、そのまま携帯から音が消えた
沖田の声は聞こえなかった。
息をしている事は神楽から聞いたが
それも長く持つものではない
それに
山崎「薄暮…って夜になる前って
…ことで、すよね?」
新八「そう、なんですか?
なら!もう後30分も無いじゃないですか!」
土方「チッ!今から土佐なんて無茶過ぎんだろ!!」
出来るよ。
『…大丈夫、大丈夫、大丈夫。
一人じゃないよ…ねぇ
そう、言ってくれ、たのは』
小籠ちゃんだったのだ。
涙を一つ零し、立ち上がる
支度をせねばならない。
こんな隊服では動きたくても動けないだろう
『土方十四郎、坂田銀時、志村新八、山崎退
以上の四名で立ち向かう予定で進める。
異論は認めん、以上』
「ええええええええええええ」
土方「ちょっ、ちょっと待て!何処行くんだよ!!」
『服を着替えます、鞘も持たないとダメだし。
チョーカーは念の為持っていくつもりです。』
山崎「えっ!?でも、確かチョーカー全部壊れたんじゃ…」
ううん、あるよ。
『此処にあるよ』
心臓を叩く都佑に、全員が察した
チョーカーを持つのではない
死にに行く覚悟なのだと
『近藤さんはこの場で待機でお願いします。
下手すりゃこっちに襲撃が来る可能性もありえます。
その時の為にも戦力は落としなく無い』
近藤「だが、いくら何でも無謀過ぎる!」
『無謀?はっ、っくく』
鼻で笑い思わず声が出ずに笑みが零れる
『産まれた時から皆と笑いあう事
事態が無謀だったんだよ。』
たった話すだけだ。
言葉を選び笑いあうだけ
それすらも、許されない。
種族で産まれた私が、悪い。
私が全て悪い。
それで良いじゃないか。
頬に痛みが走る
殴られたのは知ったが
殴ったのは意外にも近藤だった
近藤「なら何で此処に居んだよ…
お前が変わりてぇって思ったから!
此処で生きてるんだろ!!」
鼻から折るな
そう怒鳴った近藤さんに少々気が晴れた
礼を言って、私はすぐに部屋に戻る
その姿を近藤は寂しそうな目で見つめていた
土方「近藤さん」
近藤「世間一般じゃあ、もう家庭持って
幸せになれる歳の女性なんだよなぁ?トシ」
なら彼女は何故二度も同じ苦しみを
味わわなければ成らない?
そう言った言葉に土方は胸を痛めた
近藤「総悟とチャイナ娘を頼んだぞ」
土方「嗚呼…言われなくとも迎えに行くさ」
+++
部屋から出したのは何時か着ていた衣装だった
袖を通し何時かの甘い香りが漂う
この匂いは、この着心地は
服を洗っても洗ってもこれだけは落ちなかった
肩出しのプルオーバー(頭から被り後首元を留める服)
胸元には襟の様なでかい物の中央に物を入れれる様に
穴が開いている
其処に壊れていたチョーカーの結晶を全部入れ
腕に傷を作り、血を流し込む
『我が命よ更なる灯を与えん事を』
言葉を紡いだ後、光り輝き
そのまま色が徐々に変わっていく間
服は放置しレギンスを下ろしついでに
気持ちが悪いので下着も変えようとしていた時だった
土方「おい、邪魔すーっ////!?」
『あー…なんか御免なさい』
土方は「みみみっみてねぇからな!?」
と慌てて部屋の襖を閉めて外で待っていた
勿論謝ったから余計に恥ずかしくなり
「見た事認める様な言い方すんじゃねぇ!」
と言ったので…やっぱり見たのだろうか?
『見たなら別に良いのに』
土方「んなっ、こたぁ、ねぇ…だろ」
嗚呼、多分声を聴く限り
顔か耳が真っ赤になっているなぁ
そう笑いながらも手は止まらない
止まる暇なんて作らせない
今も尚、彼と彼女は不安の色を灯している
そんな色なんて、飛ばせる様にしなければ
私が、全ての元凶なのだから。
その現実は残酷で、手が一瞬止まる
スカートと言ってもアシンメトリーの
左右違うヒラヒラしたスカートを先に履く
腰元に合わせ、ポケットからは何時でも
術を使える様に札を常備していたのを
手で触り確認できた
靴はクラシック系の襟の付いた
少々高めのブーツに近いものだ
と言っても3p程なので左程高くもない
靴下はフリルの無い丈の短い物にした
炎態勢も出来ているので問題は無いとは思うが
普通の靴下は到底履けない
土方「…なぁ、何で俺や万事屋を連れて行くんだ?
お前なら、一人で行こうなんて思わなかったのか?」
そう聞いてきた土方に都佑は
言った通りの事をしようとした
数分前の自分にも、答える言葉を探す
『そりゃ行くつもりでした、一人で行って
それこそ二人以外の人間を今度こそ滅ぼして
狼族なんて無かったことにしようって』
土方「っな『でも』」
出来ない。
記憶に残る、最期の情が、抑止するのだ。
狼族に居た頃の楽しい記憶が
「無暗に人を殺しちゃ駄目だ」と
それが無いと、私はもう、
罪人処じゃない処罰を送っているだろう
…と言っても、もう手遅れなのだが。
『小籠の時の記憶が、物を言うんです…
少し大きな男の子を抱きしめて、涙を流すんですよ』
【置いていかないで】
『何処に居ても、誰かが私を置いて何処かに行った
私はもう、そんな気持ち持ちたくなんてないから
だから土方さん達を置いて助けになんて、出来ませんでした。』
土方「そ、うか…ありがとな」
とんでもない
貴方に三度も会えた奇跡を
私は今凄く感激しているのです。
襖に手を出して扉を開ける
もたれかかっていたのか
背中からちょっとだけ身体がずり落ちたが
直ぐに離して地面に立つ
『私は小籠でも在り都佑でも在り未夜でも在ったのだから。
流石に置いていく辛さも置いていかれる辛さも知ってます。』
だから速く二人を助けに行かねばならない。
そういった都佑に、土方は動揺し
返事が遅くなるのを、都佑は見逃さなかった
土方「…っ、に、似合ってるって、思ったんだよ///」
『!…えへへ、ありがとう。十四郎』
その返事に土方は驚き目を丸くした
肩をあげ、後ろで手を組み合わせながら
都佑は銀時達が居る場所に向かい走り出した
土方「(不意打ちとか、ずりぃ)」
そう感じながらも、自身の名前を呼んでくれた事が嬉しく
笑みを隠すのに精一杯ながらも、銀時達の元に
足を進めた
+++
『お前ら準備は…ってのぶちゃん!?』
土方「とっつぁん!?どうして此処に」
其処に居たのは新選組だけではなく
見廻組の人間も待っていたのだ
思わず目を丸くして都佑はのぶちゃんと
二人で会っている時の名前を呼んでしまい
口を両手で隠す
信女「いいよ、それより話は聞いた。私を連れていけない?」
『…悪いけど、先に行く人間は決めたから』
其処は曲げたら駄目な気がした。
だからそっと否定する
信女「そっ、か…頑張ってね」
『うん…』
彼女は何故か、のぶちゃんでは無い気がした。
とっ「まぁっても俺達も既に移動するつもりだがな」
土方「えっ?どうやって行くんだよ」
近藤「ヘリを使って超特急で良くらしいぞ!
ったく俺も行きてぇが、都佑ちゃんに任されちまったからなぁ」
『近藤さん…』
私はそっと術の札を取るが
直ぐにのぶちゃんが手を出してきた
瞬時に手を振り払い銀時達の方に避けた
とんでもない、嫌な感情が過った
これはすぐにでも出ないとダメか?
それともこの場所を倒してからか?
焦る都佑に土方達はすぐに意識を戻させ
直ぐに出る決意を出した
それにのぶちゃんが声をかける
銀時「そういやおたくら、確か今日は
別の場所に居るんじゃなかったの?
前に優しい女の子が教えてくれた情報なんだが…」
今日は見廻組は誰一人この場所に来れる
予定は入っていないといった銀時に
都佑は手を合わせ呪文を唱える
身体が変化したのを青ざめた表情で見る都佑に
手で覆い隠し冷静にさせる様に土方は腕を取り
身体に寄せた
都佑の身体に触れて居れば飛べるらしく
直ぐに銀時、新八、山崎、が肩や頭、腕に手をかけた
消える寸前近藤が声を荒げる
「生きて帰ってこい!!」
その言葉に都佑は胸が痛む思いだった