たちの悪い純真

数分後
喧嘩し終えた二人が畳の上に寝そべる
紀伊と呼ばれた者は「もう良いぞ」
と言って下の者を帰らせた


『神楽ちゃんと沖田さんは?』

「…夜兎の食費が馬鹿にならんから
速く帰って欲しかった処だ」

新八「あ、あのー…二人とも何してるんですか?」

『「嗚呼?何してるって?駄弁(だべ)ってる」』

そんなことを聞いてんじゃねぇ!と
軽くブチ切れてる新八に対して
紀伊は大きなため息を吐いた


紀伊「初めましてうちの可愛い妹がお世話になりました」

『終わらせるんじゃねぇよこのクズ兄貴ぃ!!』

そういきなり背中を蹴り上げた都佑に
天井に手をついて「何しやがる!」と怒る兄に
都佑は片手を横に切って「じゃかしいわ!」と怒鳴る

因みに「じゃかしいわ」とは標準語で
「煩いわ、黙れ、騒がしいんだ」
等の意味合いがあります。

良い子の皆は憶えないでね!


『ったく相変わらずの暴力だよね!』

土方「お前の方が暴力だったけどぉ!?」

紀伊「記憶が戻ったのか!?」

『戻る訳ねぇだろこのクズ!勘が言ってんだよ!
お前に近づくと余計な事ねぇって言ってんだよ!!』

「それは言えてる」と言った紀伊の方に
居た者が綺麗にまた消える
一体彼らは何処に飛ばされているのだろうと
新八は不安げに考えるのだが…

都佑のあらぶり様を観てなぜか気が抜けるのだ


紀伊「100年程しか寝てねぇけど、お前は何してたんだ?」

『誰が言うかボケ』

紀伊「別世界で小籠と一緒に居たんだろ?
お前は小籠を【護る為に産まれた者】なんだろ?」

いきなり何を言い出すのだろう?

そんな言葉に銀時達は表情を変えた


紀伊「なぁ、お前ら真選組の人間なんだよな?
悪い奴らをとっつ捕まえるんだよな?」

嗚呼、純粋な人は本当に残酷だ

紀伊「そいつも俺も悪い奴らだぞ?
捕まえて本当は処刑物なんだけどなぁ?」

銀時「…一体どういう事だよ」


紀伊「そいつはその昔
この国を滅ぼした者なのだから」


全員の目が開きその場で身体が固まった

ただ、一人だけ、身体が自由に動けた者がいる



『…昔の話だろ、そしてソレは私じゃあない』

紀伊「いいや、元を辿れば小籠で、逆に言えば
小籠が産まれて死ななければお前は産まれていなかった
記憶が無いのは小籠が望まなかったからだ。わかるだろ?」

普通の人間よりも
優しい優しい心を持っている
お前の心なら


山崎「都佑さ」

『…100歩譲って処刑されでもしよう。
だが記憶も無い者に罪は擦り付けれないし
加えてその時の身体なんて持っていない』

紀伊「まぁそんな細かいところは気にしないで」

『いやいやいや!気にするでーー』


紀伊が自分の腹の下に入って
来た時に動いた時は

もう既に遅かった


赤い鮮血が宙を舞い、目を開いて彼の顔を観る
嬉しそうに、笑って居た


飛ばされる前に自分から飛び、風を創りそのまま外に出る
外は夜になっていたらしく、いよいよまずいと焦りが募って来た


銀時「よっ、と…おいアイツ一体
何もんなんだよ、兄貴じゃねぇのか?」

『お兄ちゃんだった…んだよ
私も大量の人を殺した。
誰かを愛した、笑って、
居たかった…全て事実だった。』


小籠として生活していた頃はとても可愛らしい
ソレこそ「何かを閉じ込めていた」時間だ。

その場にその空間に「いたかった」だけだった。
なのに彼らは許さなかった。許すわけがなかった。

だって「掟」なのだから。



「」


感情が左右されて不幸になる?
誰が?皆?皆ならとても悪い。
でもそれが私だけなら?


なら だれも きずつかない じゃないか。


宙から地面に綺麗に着地出来た私はゆっくりと立ち上がる
攻撃はあくまでも「一時的に休戦しただけ」だった
嬉しそうに話してくれるのは隙を取りたかっただけ

夢の中で見た人と全く同じだった
だから小籠ちゃんはあの時死んだのだ
私はそんな過ちを繰り返さない

だからちょっとだけ、意識を保っていた。
笑って怒って怒鳴っている中でも
ほんの少しだけ、自分を観ていた。

それが功を成したのか、術もすぐに使用出来た上に
綺麗に全員脱出出来たじゃないか。


何が悪いの?何を悪いとしているの?
私は悪い子なの?私は悪い子だったの?


今も悪い子なの?



山崎「でもまだ中に沖田隊長達が」

『あそこには居ないよ、私ならこんな場所に閉じ込めない』

余りにも残酷な場所、それはきっとあの場所だろう。
一番大好きだった遊び場、大きな木の下、お花畑
風が春夏秋冬心地よい、あの人にも会えた、出会いの場。

もしも私が誰かを傷付けようとするのなら
私はその人の一番大事で思い出深い処を
最期に仕立て上げようとする。

きっと彼も同じことを考えているだろう
だって彼は昔、私の兄だったのだから

『…ごめん』

ごめんね。
そう、泣きそうな声で足を引いて
思いっきり前に出した

誰に謝ったのかなんて
愚問な事だ

+++

紀伊「お?鬼ごっこかい?前みたいな楽しい鬼ごっこか!!」

そう嬉しそうに風を使って降りたからわからなかったが
20m程高い場所から飛び降りながら攻撃をしかけてくる



そんな紀伊に、私は両手を使い土方さん達の後ろになる処迄
足を止め、直ぐに防御壁を作って煙幕を地面にたたきつける

『前見て走って!止まらないで!!』

新八「都佑さん!?何で!!」

『いけぇええええ!!!』

霧が晴れそうになった頃
土方達の目の中に映ったのは別人とも言えそうな女だった

銀色の目の中心は黒く何かを射抜く様な鋭いもの
髪色は黒く戻り胸の中心では蒼い光が炎の様に燃え
手からはその色と同じ様な光を放つ弓を創り上げた

身の丈程の蒼い弓を引いて飛ばし射った場所は
紀伊が飛んでいた場所であった


それは紀伊の元に届くが
紀伊が驚きながらも打ち消した


然し
四方に紀伊を囲もうと飛び回るその矢は
まるで「いきもの」の様だった



『だから走れってば!ほら!!』

土方の手を取り走るが、とんでもない敵の量に
ちょっと晦ますかと考えた私は
銀時達を近くに寄せて土方と銀時の背中に飛び上がった

銀「あのー?都佑さん?お宅今から何を」

『野郎どもぉ…しっかり捕まってろよー?』

土方「おいやめーー」

その後は土方達の記憶が綺麗に飛んでしまった


++

都佑はその間必死になり術を使い
とある場所に向かって宙を飛んでいた

然し人が余りにも多く
上に土方達が気絶してしまっている
やり方を間違えたかと焦っていると
背後から攻撃が向かってきた

『ぐっ(何でどうして私を
狙うの私なの彼らなの?)』

嫌な感情が込みあがって来る
小籠ちゃんと呼ばれる人は
確かに都佑として生きていた
あの夏の日に出会ったことはある

然し私の記憶の中の少女は
身体すら見覚えが無かったし
恐らく私が呼んだ「クロ」が
小籠ちゃんだったのだろう。

その小籠ちゃんは私、都佑が
昔に殺した筈なのだ。

20歳になった時、リアルで生きていた
両親に聞くと「それは駄目だ」と否定された。
悲しくなって自暴自棄になった私は
小籠ちゃんを殺したのだ。

言葉で、心から、消してしまった。

然しそんなことは出来なかった。
何故なら【私が小籠ちゃんだから】だ。


『はは…本当に、馬鹿だなぁ私は』


自分を自分で断ち切ろうなんて
どんなに、もがこうが、足掻こうが

無謀な話だというのに


サァサァと風に揺られる木の音が鳴り響く
優しい匂い、花の匂いが鼻を掠める



其処は開けた場所だ
大きな木の下には一つの黒と
一回り小さな赤が縛られていた

木から離れまいとよく見ると
縛られている物はツルの様だった
恐らくアレは動く。

術を使っての操作をしているかもしれない
侮れないので中々前に進めない私に対して
気が付いたのか土方さん達がうめき声をあげだした


神楽「都佑っ、どうして…」

『嗚呼、そっかぁ…此処だった
そういやそうだったよね。』





















































10数分でほとんどを片付け
土方達も苦戦している中
未夜はたいしょうと闘っていた

山崎や新八が助けに行き周りを土方と銀時があしらう
逃げれるようになった瞬間だった
未夜は斬り付けられ血を飛ばした

余りの痛みに髪色は戻りそのまま吹き飛ばされる
沖田がかかろうとしたが先に未夜が敵の
腹に入って腹を切っていた


【同じ事なんて繰り返さない】

そういって大将を瀕死状態で終わらせそのまま
部屋を後にして出ようとした直後だった
未夜を撃った狙撃に土方が庇ったのだ

術を使い元の場所に戻せたのが
沖田、神楽、銀時、鉄、山崎だった
悔やんでいる間ヘリに向かわせるようにする
然しヘリの無線は斬れていた

夜狼がほとんど殺していたからだった。


未夜は必死になり土方を殺さまいと止血する
怖くて手が震えながらも笑って大丈夫と言った。
涙が落ちて視界が分からなくなる。

土方の声に未夜が首を横に振る
新八も必死で土方に声をかける
まだここで死ぬわけにはいかない。

なのに瞼を閉じる土方に新八は絶望した。
同じく、いやそれ以上に絶望したのは未夜だった。
一度蘇生した者を蘇生するわけにはいかない
心臓がまだわずかだが生きているのを知った未夜は
命を使い血を口移しで飲ませ回復させた

勿論自殺行為の術なので土方が生き返ると同時に
未夜が倒れて息を荒げてぐったりとしていた。
其処に大将が現れて殺そうとした直後
朝狼の夜狼であった大将の奥さんが現れた。