小籠はとても可愛らしい
明るくて無邪気で純粋な子供
大人になれば可愛らしいまま
可愛い系の美人は間違いなかった
「皆が幸せで居れば小籠はそれで良いのになぁ」
そう笑って居た言葉は本音だった。
都佑はとても可愛らしい
明るくて無邪気で純粋な子
大人になっても可愛らしい姿で
小籠とは身体つきが違う位
「皆が幸せで居れば、私はそれだけで良いのになぁ」
そう何処か寂しそうに笑って
言った言葉は本音だった
未夜は全てを知った大人の子供
都佑の記憶を取り戻した時には
都佑を護ろうと決意し全てを託す為に
心さえも都佑の為に渡す
「君が笑って居られるのなら
私はそれだけで十分なのになぁ」
そう未夜は泣きそうな声で呟いた
三人は違っている様で似ている
似ている様で全く別の人間
小籠が身罷(みまか)った事で
都佑は生きて、未夜が産まれた
それは小籠が「狼族であり薄狼である」からこそ
代々狼森家は「他者と関わらない様にした」のは
「異常な者」と疎遠されない一種の【自己防衛】だったのだ
未夜と言う偽名を使っている都佑
本名だと言いたかった名前は違い
本当は狼森小籠だったことをつい数日前に知った
その入れ替わり立ち代わりの事実に
心が追い付けているのを、自分は
別の自分は追い付きたくないと思っていた
『…これが夢なら、良いのに』
前世の名前だと思っていたのがまさか
別世界の人間だったなんて
いや別にそれ前世で良くない?
って思うんですが、駄目らしいです。なんでだよ。
『…小籠、か』
可愛らしい名前だと思う。
小さいに籠(かご)や籠(ろう)とも読める
然しこの狼族であり薄狼であり狼森家
必ず意味がある様な名前な気がしなくもない
丁度この場所は100年も前に生きていた故郷
始まりの地でもある
『確か籠(かご)なら線上の物で
編んだって意味だったような…
あれ、そういや私』
ふと戦闘中に無意識で打ち放った弓を想い出した
あの時は必至だったもので刀を投げる前に
飛ばして其処から物を覆う様に攻撃を繰り出した
あれの術を私は「憶えていない」のに
なのに「知っていた様に使えた」のだ
私は「知っていない筈」なのに。
『…もしかして小籠ちゃんだった頃では
弓を使っての攻防が主流だった?』
それならこの物凄く動きにくくも見える服も理解出来る
狼族自体力技は得意では無い種族である
術を使っての攻撃だけでなく、別の攻撃方法だってあるだろう
それが唯遠距離攻撃を持ちえた物だっただけで
『籠(ろう)って確か、何だっけ…ちょっと聞いてこよう』
思い立った私はすぐに皆が寛いでいる場所に帰る
相変わらず男性陣がギャーギャーと煩いので
耳を軽く長袖の部分を使い耳に当てて入った
こういう話は山崎さんをあてにしたら大体成功する。
『山崎さんちょっとお伺いしたい事がありまして』
山崎「え?ぼ、僕に?急にどうしたの」
そう真剣な声で言ってしまったのもあり
かなり動揺する山崎にうるさくしていた
土方と銀時が都佑が来たことに気付いた
『あ、いや、日本語でちょっと気になる言葉がありまして
「籠(ろう)」って言葉の意味って知ってます?』
山崎「あの籠(かご)の籠(ろう)でしょ?
かごは囲むって意味合いで
ろうは閉じ込めるって意味だったと思うけど」
…ん?
土方「籠城とかそうだったよな?」
待てよ?
新八「あ、確かにそんな字でしたね。
それがどうしたんで…都佑さん?」
小さな者が、囲む?
閉じ込める?何を?誰を?
『…いやいやいやいや、そんな、
私の勘なんて当たらないで欲しい』
首を全力で横に振る都佑に
何か気付いたのかと土方が隣に来てそのまま
席につくように促す
ぽスンと音を立てて座った場所の隣には
遊びに来ていた神楽が座った
『いや、私の名前は一応「都佑」なんですよ。
優しくて何処に行っても明るくて人を助けられる
そんな誇らしい意味なんですよ。』
銀時「それがどうした?」
『小籠の名前が妙に気になって…
小さな物を囲む物が得意とする?
いや若しくは「一番の武器」だとすれば?』
そう考えていくと次第にことの大きさが分かる
確か私が一番最後に死んだときは
誰かを護って死んだのは確かだった
色んな情報を聞くと、恐らく土方さんのご先祖様が
小籠を救い、小籠は土方さんが傷付いた事に驚き
絶望し、全てが無くなればいいと願い暴走してしまった
その時どんな力を解き放ったのだろう?
新八「…なん、の話ですか?」
『小籠”ちゃん”が恋をして
死を遂げた歳はたったの
【九歳】なんだよね』
だからどうした。という話にもなるが
いやいや、問題は此処からなのだ。
まぁ速いご年齢で恋に落ちたと我ながら思う
とんでもねぇマセガキだよ全くもう。
銀時「あ?随分なマセガキじゃ…あ?今なんっつた?」
『九歳だよ銀さん…ねぇ、おかしいよね?
一桁の年齢の上に書物にはこう書かれていた』
【九歳の少女が国一つを滅ぼした】
『私何も憶えていないの、おかしいよね?
紀伊兄は【昔の事憶えているのに】ね?』
そう、言った私にその場の空気が冷え込んだ
まだ寒くなっていくには早いのだが
記憶が戻っていない事が一番恐ろしく感じたからだろうか?
『それだけじゃあない、たった
九歳が何故「国一つ滅ぼせる?」』
山崎「…本当に滅ぼしたんですか?」
土方「どういう事だ」
山崎の方に振り向いた土方
それに銀時達も視線を向けた
山崎が言いたいのは
仮に小籠と言った少女が九歳で
国一つ滅ぼしたとしよう。
世間一般的には滅ぼしただけに見えて
本当は滅ぼされていないのではないのだろうか?
山崎「囲む意味や閉じ込める意味もあります
何かを護りたい為に取りこんだ可能性も」
『いや、それなら掟厨の紀伊兄が手を回してくる筈
それに名前の意味がそうだとしても、私が何故
今迄そんな術も知らずに使っても居なかったのかに
説明がつかないよ』
蘇生だって、やり遂げた事がいまだに不思議な現象なのだ
何故なら蘇生が出来る人間は「限られている」から
新八「そんな、深く考え過ぎじゃあ」
『うーん、良い処行ってるとは思うんだけどね
なんかごめんね皆、変な空気作っちゃった』
そう肩を下ろして頭を軽く下げる都佑に
とんでもねぇと両手を胸の前で広げて慌てるザキ
慌てる姿や気が付けば土方が銀時と喧嘩をしているのを見て
何処となく、この場所が続けば良いと感じる
何時だって、私の心は満席だ。
ホールの中に居る観客席は一人も座れない程
私の心は何時でも、誰かが居る。
『小籠の籠は”ろう”とも読みますよね?
囲み何かを閉じ込める?若しくは』
【全てを取りこむ事を出来る者なら?】
それが現実に在り得るのなら
とんでもない危険人物だとわかる
自分の身体で巡っている血がスッと引いた
そんな考え過ぎですよ。と新八が言うが
果たして本当に考え過ぎだろうか?
『じゃあ、誰が説明出来るの』
何故私は別世界で息をしていたのか
その記憶があり、その世界の身体にもなれるのか
何故私は色んな術を扱い空も飛べるのか
記憶は無いのに、無意識に使えるのは?
何故?
『未夜の名前は私が付けたの』
意味は
”未熟者で夜の様な不完全で不安定な者
何も出来ない護れない愚かな者”
新八「…っ」
『狼森の最初には狼族の文字まである。
夜狼や朝狼、薄狼の頭文字全て術の範囲上の文字だ
加えて紀伊の名前の意味は』
”物事の全てをきまりを知り
長老であり長(おさ)であり
部族の長であること”
沖田「…まさか」
『小籠の時に掟を破り何かをしたのであれば
辻褄があうんですよ…なら?小籠は?』
何を囲み、取りこむの?
自身の全て?それとも
この世界丸ごと?
『…純粋で無垢だったんじゃあない』
純粋で無垢に仕向けられていただけだったのだ
『なぁーんてね!うっそー』
そう舌を出してあっかんべーをする都佑に
緊迫していた時間がウソのように崩れ落ちた
新八「ウソな言い方じゃなかったですけどぉ!?」
『まぁぶっちゃけどれが私だろうが私
知ったこっちゃないですけどね?
国一つ滅んだ位でグチグチ
言いやがってコノヤロー』
新八「グチグチいうだろ!国一つ滅ぼ…え?」
神楽「都佑は国一つ滅ぼした事アルノカ!?」
ある、にはあるけど、記憶には一切残っていない。
強いて残っているとすれば
手の中に生ぬるい血の付いた感触を抱きしめていただけ
それ以外は一切憶えていない
『文献がウソつくわけないし
紀伊兄が嘘言うような人でも無い
まぁ大袈裟だとしても人はうん百人は殺してるでしょ』
かと言って警察に抑えられても証拠も無けりゃあ
100年も昔は流石に時効になっている。
それに犯したとしてもたった9歳の女の子だ
それでも犯した罪は重い
決して忘れてはならない物である
なのに私は忘れている
何も憶えていない
想い出した後も怖いが
想い出さない事も、怖い。
『それに私が本当に狼森小籠ならば
私は【殺せない】人間になるんだけどね』
そう苦し紛れの事実に都佑は眉を下げて笑う
その言葉に聞いた者は沖田だった
沖田「前に自殺は出来ねぇっては
聞いたがアレは嘘って事かぃ?」
『否、【他者からも己からも殺せない】人なんだよね』
新八「それって…不老不死って事ですか?」
私言ったぞ?殺せないんだってば。
普通のやり方では、殺せない。
『色々あってね、その決まりに従ってから
小籠ちゃんであればそのまま殺されるだけ』
まぁ言ってしまえばルールがある人だ
とても面倒なルールに縛られている。
もしかしなくても、小籠ちゃんは
そのルールが面倒になりすぎて退屈で
誰かとお話相手が欲しいと思ってから
行動したのでは
もしもそれが事実なら
どれだけ彼女は狭い場所で
息をしなくてはならなかったのだろうか?
そのまま土方達は朝狼の里に招かれた。
大将が怒鳴るが元々嫌と言っていたのは
奥さんの様でしばらく口もききたくないと
言ったら直ぐに何も言わなくなった
未夜は他の朝狼が回復を行っている間眠る。
その間土方らは手厚く介護され、そのまま
銀時たちを薄狼が出迎え部屋に入れた
銀時たちが土方と新八に再開した後
朝狼と夜狼の長が薄狼と現れて三人で話した。
未夜の事、全ての話だった。
勿論それに待ったをかけたのは未夜だった。
身体を引きずりながら入って直ぐに倒れた
朝狼が「狼森様!なりません!まだ万全では!!」
と騒ぎ横から女が立ち上がらせ何とか車いすに乗せた
のだが、そのまま前に揺らぎ倒れながらも
這いつくばり『私の事を話すなら私にも聞かせて』と言ったのだ
否定するかと思えばまさかの聞きたかったのだ。
それに安静出来るお前の部屋に戻ろうかと言った長
そこで場所は変わり小籠だった時の部屋
ベットに寝かされて安心したのか
ほぼ夢の中に居る未夜に
土方の方を向いて話をする