二 日 目
彼女はやはりいた。
一応いるわけないだろうけど
何だかんだ暇だしと思っていたらまさかの居た。
居ましたいらっしゃいましたよ。お客様。
あのまだ開店30分前なんですよ。
そう思っていると彼女
ジンが此方を見つけて走りかけて来た。
おお、教えたこともう出来てるね!
凄いじゃん!!!
「メリィ!」
『(“おはよう。予定より30分も早いよ?”)』
「僕今来た所なんだ!へへ偶然だね!!」
そう笑うジンにメルは
にこりと口を広げてみる。
それにキラキラした目で
もっとやってと言われてしまった。
うう…
『(“私感情が分からないの”)』
「…え?こう怒るとか笑うとか?」
こくりと頷いたのに
そっかと言った次の瞬間
馬鹿みたいなことを言いだすジン
「じゃあ僕が教えて上げるよ!!」
『っはああ!?』
おっと声が出た。
驚くは分かるんだねと笑われてしまった。
うう…だって仕方がないじゃないか。
君が訳わからないこと言うからだろ。
「にっこり笑うのは笑顔だよ!
ほらこう口元にぃいいいって!」
そうジンが私の口をにぃと横に広げるので
その通りにしてみたら大爆笑されてしまった。
なんなのだ解せぬじゃないか。
君の通りにしたんだよ。責任取れや。
「ひぃひぃおなかっいたっはははっはは」
『…ぷっ、ふふっ』
おかしい、そう感じてつい声が出た。
それにポッと赤らんだ顔になるジンに
メルは不思議で首を傾げた。
「っ!!今の!!
今のが面白いとか思った!?」
『(“うん”)』
そう頷いたらそれが楽しいと似たようなもんだよ!
と嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねる。
一応人間界の喜怒哀楽は知っているので
この世界での喜怒哀楽が一致するか
正直微妙だったのだ。
まぁそうでなくても感情は今瀬で維持するのは
あまりよろしくない家系に生まれてしまったため
余り感情を出さない
…いや気付かないようにしている。
蓋を綺麗にするように。
「なぁ続きしようよ!
今日はえっと昨日負けたやつ!!」
教えてと言われたので
呑み込みも早いのを踏まえ
クラウチングスタートの練習とする。
正直「よーい」の合図が欲しいので
水の音ではキツイ為
葉がくっついた枝を使って
横に振り音が鳴るのを確かめる。
うん音が鳴るので採用。
『(“葉を鳴らした後
一度手を叩くから
叩いた時が走る合図ね”)』
葉は構えの合図。
そう形を見せながら真似させる。
スタートの位置や
勢いを指を指しながら教えるのに
まぁ三回程で出来るようになる。
お前凄いな。
そのスピード私も欲しいわ。
メルは数回教えた後、
一緒にやろうと言われて競争する事にした。
葉を鳴らし手を叩くのは同じだ。
多分秒位のハンデは良いだろう。
昨日割と調子悪かったってことにして、
今日も追い抜く予定だ。
彼女が構えたので葉を鳴らし、手を叩いた。
突如、はじめの一歩は甘かったが
次の足が綺麗に運べたのを横で見て驚いた。
うん、凄い呑み込みというか
感覚がべらぼうに良い。
このままだったら
炎を扱う時の体勢とか
構えとか使えそうだよ。
そう感じつつも手の力は抜き
足の力は抜かずに走る。
後半追い上げるメルに
前半は良かったのに、
後半結局メルが勝って
駄々を捏ね始めた。
うーんだって歴が違うんだもん。
私はな?経歴、君の年齢より
倍走ってるしなんなら教えたし。
そんな状態で君が勝てるとか
天才以外の何者でもないよ。
そう思いつつ、出来る様になるよ。と返した。
「にしても此処でずっと遊んでるの?寂しくない?」
『(寂しい…か、そりゃあ寂しいよ)』
孤独に慣らすことはしておいて損はない。
一人は別に苦ではない
…だがやはり寂しいものは寂しい
特に君みたいな元気な子が傍に居て
明日には居なくなると考えたら。
それこそ寂しくて辛くなって
寝込んでしまいそうだ。
ああそうだ!
身体に触りまくってはいたが
次いでだし、もっと触っておこう。
なんの競争が良いかな、
手押し相撲とかも良いな。
ニヤニヤ笑うメルに対し、
ジンはあのねと声を出す。
「メリィ、明日の競争でもし
僕が勝ったら一つ
お願いを聞いて欲しいんだ。」
『(なんだ急に真剣な目して…“分かった”)』
紫色の目が何処か
炎の様に揺らいだ気がした。
気のせいだろうか。
まぁ良いか。
その前にもう一度競争をしておこう。
メルは勝負なら100mだ
と言って横の方に連れて行く。
まだやるのおと言うジンに
メルはケラケラ笑ってみせた。
『(嗚呼…楽しいって、きっとこんな感覚)』
嬉しいってワクワクするってこんな感覚。
ジンが教えてくれる。走るたびに喜びを。
そして帰る一歩手前に差し掛かった時
つい力尽きたメルに
勢いを増してジンが先に木をタッチした。
「〜〜っ!!!やった!!!勝った!!!」
そう今まで負けていたので1勝24負5引き分け位だ。
看板用に木にがりがりと
メルとジンの勝敗を書き殴る。
うん。私逆だからな。流石私、大人げない!!!
「ね!!先に言っていい!?いいよね!!」
流石に駄目を言った。
明日ねと書いたメルに
いいよ明日は絶対勝つからと得意げに言うジン。
ぽつぽつと雨が降ってきたので
ひとまず大木の下に篭ることにした。
中は私の秘密基地として使用している。
此処に居れるなんて生涯、君だけだろう。
まぁ、きっと大人になる前に
私の事なんて忘れてしまうだろうが。
「ねぇ遊んでくれてありがとう!」
お礼にコレ見せてあげる!
そう言ってジンが
赤い炎を作り出してくれた。
その轟々と光る
赤い炎につい言葉が零れた。
『…きれい』
「〜〜っ!!ほんと!?
ほんとに!?綺麗!?綺麗かな!?」
そうグイグイくる少女に
メルは苦笑いして
コクコクと縦に頷いた。
それに嬉しそうにキラキラ
目を輝かせる少女に
メルは少し嬉しくなった。
嗚呼、楽しい。
…これがずっと続けばいいのに。
なんて、思ってはいけないんだろうな。
君がもし、男の子なら
…私は、いや考えてはいけない。
この子の将来を邪魔してはいけないだろう。
「実は僕大人になって
使い魔貰えるか不安だったんだ」
『(…へぇ完璧そうな子に見えたが
割と心は不安なんだな)』
それは歳相応で、大変私は好きだよ。
「でも君に沢山教えて貰ってこの動き
ちゃんと大人になっても使えるようにする!!
明日絶対勝って…君に伝えておきたい事があるんだ。」
それまでどうかワクワクして楽しみにしていて。
そう笑う子にメルはコクリと縦に頷いた。
++++++++++++++++++
次の日になる、手前の深夜
別れた後から何故か不穏な感じがして
私は家から抜け出し
魔法を使い雨を避けながら浮遊する。
ジンがちゃんと帰ってるか気になったのだ。
方角的には此方であっている筈
…そう思った次の瞬間
ーん。
『っ!!泣き声!!!』
うえぇん。そう聞こえた気がした。
10歳とは言えどもまだ子供だ。
暗闇で大人の場所に帰れず
こんな大雨の中一人ぼっちだったら
そりゃあ孤独で耐え切れず泣き喚くわ。
…それは、私じゃないから。
ツキリと痛む胸を無視し、
声のなった方に急いで向かった。
白いフードを被っている間は
魔法を使ってもバレない。
裏返すと黒いフードになり一定時間のみだが
姿を隠せる力が備わっている。
勿論一度反対に返した後
戻したら効果は続く。
この魔法のローブを使って
ジンを助けないといけない。
じゃないと折角教えてくれた力も
彼女の力だってぱぁになる。
『…っ!!おいおいおい!!!』
崖下の洞窟に水があふれ出し
もういつ流されてもおかしくない状態だ。
流石の炎でもこんな大量の水があれば
消されてしまうだろう。
翼もこの強風なら出せても
風に煽られてもう終わりだろうし。
洞窟からの響き音を聞いて
急いで身体を洞窟に近づけた。
『ジン!!!何処だ!!何処にいる!!!』
そう声を出すメルに
誰と言う声が聞こえた。
嗚呼そこか、今いこう。
そう手を伸ばした途端
彼女は激流に呑まれ
そのまま水流に入ってしまった。
『っち!!風よ我が身を包め!!』
そう言葉を発し
メルは身体を水の中に入れ
光を照らしながら前を飛ぶ。
何処だ、そう遠くに行ってない筈だ。
水に入った差はほぼ0に近い。
きょろきょろ見渡しながら行くと
前にグルグルと身体を回しながら溺れていく子が見えた。
アレだ!!スピードを上げて
少女の身体を掴み空に一気に加速する。
ゲホゲホと声が出る所
水を沢山飲んでしまったのだろう。
ちょっと魔界の水質汚染は調べてない為
管轄外で分からないが、
雨風しのげる場所に移動しよう。
メルは近くに大木があったため
ひとまずそこに身体を置くことにした。
にしても深夜で良く生きていたな。
私が助けなかったら割と死んでただろ。
『っ!?お、い、ジン!!ジン!!!』
不味い、低体温とコンボで水が喉を邪魔している。
ちょっと申し訳ないが
これは初キスをスルーして欲しい。
メルは考えながらフードから顔を出し
息を大きく吸い人工呼吸を始めた。
呼吸が止まって心臓も止まればおしまいだ。
「っげほっ、ごほっごほっ」
よし、とりあえず呼吸は、し始めた。
良かったひとまず
炎を照らして体温を温める。
暫くしていると
意識が朦朧としたままではあるが
誰?メリィ?と聞かれた。
『ああそうだよメリィだ。』
「声…出せるんだ」
『君の夢だからね。
悪い悪夢を見てたのに
気が気でなくてさ。』
君は明日私に会って勝つんだろう?
それなら、さっさと寝て
体調を崩さずに来て欲しい。
普通の人間ならこんな状態だと
高熱になってうなされるが
悪魔は割と丈夫と聞いているから
これ位では軽い微熱が出る程になるだろう。
それでも…私と遊んでいたから招いたことになる。
「明日に、早く、なって欲し、いけど」
『喋るなゆっくり寝て早く起きろ。』
「メリィの、声、聞けて…僕、嬉しくて」
『っ…ジン、駄目これは夢だよ。』
「夢、でも…はなせ、た」
嗚呼駄目、そんなことを言わないで。
感情が揺れ動いていく。
駄目だ、掟に背いてしまう。
それこそ駄目なのだ。
感情が芽生えたら追放ものである。
この世界で恋をしてはいけない。
感情を育ててはいけない。
淡い感情を抱くのは
前世だけ許されるのだ。
だから駄目だ。
なのに、
「君が、いる、それだけで…嬉しい」
悪夢なんかじゃない。
そう言ったジンに、メルは抱きしめた。
『何時かきっと、きっと君に会いに行く。』
「っ」
『その時はどうか、私と
…仲良くして欲しい。』
きっと初対面みたいに
臆病で震えてるから。
そう言ったメルにコクリと
ジンは答えたまま気絶した。
メルは勿論、ジンに
夢であるように操作し
そのままジンを探していた
両親の元に届けた。
白いローブの姿にうちの子を
と叩かれてしまったが
まぁ仕方がない
謝罪をした後、助けたことを言うのは
きっとジンが現実だと思い込んでしまうから
駄目だ。
悪い事に…全て繋げておけばいい。
そうすれば…きっと君は
現実にあったとしても
私を見て見ぬふりをしてくれるから。
++++++++++++++++++
『…夢、か』
あんな夢久しぶりに見たな。
そう起き上がるメル
時刻は朝の6時。
今なら既に起床して
学校に行く準備を
しているかもしれない。
嗚呼そんなこともしなくていいのに
定期的に目覚める時刻を恨んでしまった。
三時間程度の睡眠だが、
次の日がっつり寝れば問題ないだろう。
割と身体が冴えている、今がねらい目だ。
そう言えば…夢の場所って
確かもうすぐそこだったよな。
丁度バビルスと実家の間に位置する場所だ。
ついでだから、今日の宿は其処にしよう。
そうすれば抜け道も知っているし
そこから奥は庭みたいなものだ。
メルは浮遊し空を飛びだす。
荷物はちゃんと小さくして
鞄の中に入れているから
割とコンパクトで魔法バンザイである。
嗚呼一応寮の荷物は殆ど置いて来た。
いや正確には小さくして
そのまま置き忘れてしまっただけだ。
何か私を探す声が聞こえた為
急いで出て来たんだよ。
一体この期に及んで探すとか
ろくなことがない。
私はバビルスから出て
嗚呼仕事してぇとは思ってるけど。
『…懐かしいな此処』
そうかれこれ移動して
更に400km計700km移動している。
にしても超スピードで
次の日の夕方とか頭沸いてるだろ。
まぁ更にスピード上げて
風に乗れば明日は楽勝だ。
明日の夜七時までに合わせれば良いから
今日がっつり寝て、そのまま明日の朝
移動した後、姿を変えたら終わりだ。
『会いたくない』
その一言に尽きた。
メルは大木の中に入り灯りを付けた。
此処は出て行くとき
必ず幻惑を付けて保護している。
焼き払われたら困るからね。
『…ジンちゃん、元気かなぁ』
夢の中にいたおかっぱ少女。
名前は恐らく仮名だろうから
今の名前は分からない。
何なら私も偽名だったから
お互い様であるだろう。
メリィではなくメルだから
あながちヒントになっているのは
間違ってないのを気付いたらいいのだが。
まぁそんなこともない。
これから会う相手が
ジンちゃんであることを願うだけだ。
それなら…私は
捧げてもいいかなって思う。
一応タンマはしたけど初キス奪ったし。
それにジンちゃんは
きっと素敵な悪魔になっている。
ああ女の子だと思うけど男の子だったら
割とかっこいい系男子になってるんだろうなぁ。
黒髪の目が紫色で
左右に白い角が生えている姿しか
思い出せないが
…ん?あれはて、
何か似ている悪魔知ってるな?
『え?待って?いやいやいやいや
ないないないないないない』
ないない。
流石にない。
黒髪だし紫色の目で炎使ってる家系で
左右に白い角が生えている
名前にジンがついてる悪魔なんて
多分探したら何人かは当てはまるだろう。
それにぺたぺた触ってはいたが彼女は女だ。
まぁ私も下隠して上隠さず水遊びしたから
お互い下手したら男って勘違いしてそうだな?
相手が女なら小さい頃の戯れということで
私は器がでかいので許してやるが。
『…寒い』
そう体温が冷えて来たのを炎で包み込む。
そう言えば、あの子が付けてくれた炎が綺麗で
ただ赤い炎が綺麗だったから
…今の私の炎は赤なのだ。
温かい光をそっと抱きしめる。
嗚呼、会いたい。
貴方に、大人になって居なくても。
子供の姿だっていい。
会って…そして、連れ去ってくれたら。
嗚呼いや駄目だ。
『逃げても逃げても追いかけるなら』
私は捕まってしまうしかない。
彼女らも馬鹿ではない
私がもし拒絶したら
バビルスに戦を仕掛けるだろう。
そうなったら例え勝利しても
私は居ることはできない。
私が許さないし下手したら
自害して悪魔人生を終らせる。
『…にしてもあの子
何お願いするつもりだったんだろ。』
それが気になる。
まぁ過ぎた話だし、
例え知っても
ふぅんしか思いつかないが。
この淡い感情を抑え込んだ初めての初恋が
まさか夏の蒸し暑い日々に生まれたとは。
全く、別れを告げて寂しく
恨むのは夏のイベントばかりだ。
そう言えば、夏休み未だだったな
もうすぐ始まる筈なのだが…
『(夏休みの期間
此処にまた遊びに来ようかな)』
そうしたら、貴方にまた会えるかな?
今度は大人になった姿を見せて。
嗚呼でもあの時の姿は、正直今していない。
あの時白い髪色をしていた。
勿論紺色の髪色は隠して。
だって嫌な予感したし、
それに目の色も変えてたから
もう頼りになるのは
走るのがべらぼうに得意で
上手い子しかないだろう。
女の子の私が翼広げず走るのが上手いっていうのは
バビルスですら知らない情報だからな。
ジンちゃんだけが知っている。
私とジンの秘密の言葉がある。
『…貴方に、会いたい。』
次会った時、勝負できるように!
言葉を贈ろうよ!!
そう笑ったジンを思い出す。
嗚呼、今日はちゃんと寝ておかねばならない。
明日はもう…全てを手放したまま着地しないと。
私の心はこの場所に。
『“幻想の箱庭”…』
そう言ってイフリート先生を呼び出す。
左腕にはミサンガを付けて貰っていたが
それと同時に血まみれになっていたミサンガを…
『あれ!?ない!?
えっ待って…嘘でしょ』
確かに持って来ていた筈だ。
うわぁ…こうなるなら
こっちに渡しておくべきだった。
このスピードで魔界の中走ったんだ。
夜だし光を当てながら探しても
オリアス先生の家系魔術を使える程
触れる時間長くなかったから…
ああこうなるならもっと
オリアス先生に触れとくべきだったな!!!
そうしたら枝一つで多分すぐ見つかる!!
ため息を吐いたメルだったが
まぁ淡い思いを事実上
捨て去れるということで納得する。
『…それにこっちは此処に置いていくし』
私がエイト先生を
どれ程想っているかを詰め込んだタリスマン。
紫色のミサンガは綺麗な色を解き放っている。
この場所を守れるように
結界としても役立つだろう。
…まぁ想った対象が入れるから
イフリート先生が此処に来れたらの話ではあるが。
流石にお互い故郷の話を
一度もしていない為、知らないだろうし。
それに仮に来た所で
このミサンガをどうするつもりだろう。
流石に想い人でもない限り
追いかけてこないだろうし…
もし、彼が私の事を好きなら…もう手放さず
あの校舎に閉じ込めてくれていた筈だろうし。
そうさせなかったのも私ではあるのだが
まぁ最終的に此処まで来てしまったのだ。
私の勝ちである。
…勿論彼が私を好きであればだし
なんならこの勝敗に意味は全くない。
『…明日』
全てが終わる。
そして今日で最期だ。
目覚めたら、もう終わり。
虚ろの目を映し、全てを無としてとらえる世界に戻る。
唯一の楽しみは家系魔術がバンバン使えることだ。
魔術を使用しながらの
力技が出来るという点は評価する。
バビルスでは抑えまくっていたからな。
久しぶりに威力馬鹿になってなければいいが。
『…どうか夢に会いに来て。』
そうしたら、私は目覚めた時、きっと戻れるから。
安心して…これ以上の幸せはないと
喜びをかみしめながら最後の行を
読み終えた人が本を閉じる様に。
そっと、パタンと
後ろのページを含めて
本を閉じれるから。
感情と共に、永久に忘却して。
『おやすみなさい、私』
もう二度と会えない私へ。
楽しかった。
時間が泡のように溶けてなくなって。
この日まで幸せに生きて来れました。
嗚呼願わくば、もう一度だけ…夢を見せて欲しい。
そうすればきっともう、満足するから。
目が覚めた時は…もう。
そこに生きていた私は居ない。
きっとイフリート先生達に、もう出会えないし
まぁ出会えたとしても顔を隠した舞踏会だ。
その時はまた、髪の毛や目の色姿を変えて生きているから
かなりの運がないと見つけられないだろう。
それに見つけて貰ったとしても
私の目はきっと死んでいる。
きっと傷つかせて終わらせてしまう。
だから。
そっと手を首にやる
『(嗚呼、この幸せのまま誰か殺して)』
そうすれば、私は幸せのまま
死んでHappyendを迎えられるから。
これから進む道は
どうあがいてもBadendだ。
嗚呼出来たらいいのに。
血が怖くて痛みが怖くて、死ねない癖に。
人に悪魔に催促するだなんて
…本当にどうしようもない子だ。
微睡みの中、口ずさむ声。
嗚呼会えたらもし、会えたなら。
私は貴方にありがとうと伝えたい。