Novel - Carla | Kerry

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醒めない夢と誘わない楽園3

act 12.

チチチと音が鳴り目を覚ます。
光が入っている感覚はあるが
身体が妙に軽いのは不思議で仕方がない。

『(…朝か)』

飛び立たねば。

そう思いメルは荷物をまとめた。


ふとミサンガが見えたがチリっとも
胸を焦がさない自分に嗚呼と嘆いた。





風を身体に纏い、空に委ね飛ばす




『(にしても久しぶりに帰るな。
行方を晦ませるのに1年
バビルスで5年だから
まぁ6年程行方不明にさせたのか。)』



そりゃあ怒るだろう。

だって小学一年生から
中学一年生上がる位まで
行方不明だったんだぞ。


普通なら泣きだして感動するが
あの親なら喚く。



お前のせいで私は怒られたからお前が悪いと。



…まぁ確かに何も出さずに出たのは悪い。
そこは認める。


だが、どうして貴方達の場所から
出たのかをきちんと理解した上で
言って欲しいものだと思うよ。私は。





私は何も悪くないのに、濡れ衣を着せられ
何百との自分を殺しまくって本当の自分が
分からない程赤く染まった心を。



貴方達はそれでも悪だというのなら。


私の存在自体が許されないのだろう。







…嗚呼、だからこそバビルスが愛おしかった。





その感情さえも余り良く分からないが。




浮遊していた身体を着地させる。


もう歩いた方が早い位置だ。

草地に足を降ろした後前を向いた



故郷…田舎の森奥深く。

大木に住み着く彼ら。



家系図は私で止まっており、私が後継ぎとなる。



そこら辺分かった上で
虐待してたら割とサイコだよ。サイコ。


いや悪魔サイコだから
まぁ仕方がないのか。
駄目じゃん。世界終わってるわ。



本当に人の心の欠片もない。

嗚呼、悪魔だから
人の心すら分からなくて普通なのか。
いやそれでも悪魔の心も多分分かってない。



全く救いようがないこの家系を
…拾ってくれるとは飛んだ馬鹿だな。


君の家系、今から崩壊しますが、お覚悟出来てますか?


どうせ中流階級のバカだろ。こんな縁談なんて。




『…只今戻りました。メルです。』



そう膝をついて深く顔を落とす。
やっと来たかと悪態をつかれるのは慣れた。
いや慣らしているから割と楽だ。

ああもうさっさと終わらせてその縁談者と
遠くでひっそり暮らさせて欲しいわ。


家にいれば良いって言ってたから
割と自分の時間は取れそうだし。




悪態から一時間経過した後
メルは部屋を移動し姿を変える為
頭を手に置いた。



…これでもう、分からなくなる。
そう諦めかつらを取る様に髪の毛を落とす。

中から青い髪色を解き放つ
この姿はこの屋敷に居た時の姿だ。
元通りになった醜い姿に
舌打ちすら億劫になる。



青い目は何処までも透き通っており
本来の色を何処か教えてくれている気がする。


身体を白で身を包む。


午後5時、もう時間がない。

移動に二時間程かかるらしいので
荷物は最大限に小さくして
髪留めの中に隠しやっている。


最悪食べて糞から探し出して
持ち歩く勢いではある。


それ位ならバビルスに居た方が
良かった気がするが…あれ
何だろう、なんかいや



『(そもそもバビルスってなんだっけ)』




嗚呼憂鬱過ぎて頭が回らない。


先程までの姿の記憶だろうし
もういいだろう。


メルは目を落とし、
白いベールに身を包んだ

長い青の髪の毛を
左にゆるく三つ編みで寄せ
今日はお互いの顔合わせと言うことらしい。



はぁ…億劫である。
にしても相手の家系聞いてねぇな。
一体誰だ?



階級上とは聞いてはいるが…


予定していた場所に30分前についた私は
メイクを整えた後席に着いた。


はぁ…もう逃げたい。

もう逃げる方法しか思いつかない。


何か縁談の相手は滅茶苦茶普通って
毒図いていた母だが…
すっと、ドアが開いたのに椅子に座ったまま
目を落としていたのを扉に向けた。


するとドアから入ってきたのは
茶色髪の貴族だった


「…初めまして、安名メル様ですか?」

『…はい。私がメルです。』



そう虚ろな目で茶色髪の男性を見る
……うーんなんか見た事ある。



にしてもどーこで見たんだ、

この…何だろう

いやなんだ?何だろう、どことなく、こう



…殴りたくなるような顔は



男性は驚いた表情を一瞬見せた後
すっと片手を胸に当て片手を後ろに置き
ペコリとおじぎをしながら答えた

「…初めまして・・・・・私の名は
ダンダリオン・ダリと申します。」



『(なんだこいつ、何か凄い最初
とんでもなく強調しなかった?)』


いやでも名前も苗字も聞いても
聞いたことがない…訳もないのだが


如何せん思い出せない。
うーんただ、見れば見る程殴りたい横顔ではある。
なんなんだ一体、私は彼に何されてたんだ。

汗が頬を伝いかねない気持ちを落ち着かせ
席に座っていた身体を動かしてしまったのを
気付いたのか、椅子を後ろに下げてくれた。


うわ滅茶苦茶礼儀正しいんだね君。ごめんね。

でもね、謝らせてね?今ね私ね?
君凄く殴りたくなる衝動に駆られるんだ。



「メルさんとお呼びしても構いませんか?」

『えぇ…私はダリさんとお呼びすれば?』


そう言うと何故か何処となく鳥肌が立った。
うん?何でだ首を傾げるメルにダリが聞く。


「どうされました?寒いですか?」

『…いえ、何故かさん付けに鳥肌が』


そう言った途端ぶっと噴き出した彼。
いや失礼だな。
私も充分先程から失礼だが。


失礼と笑いながら細目な目から
茶色の色が見え捕らえられる。


いやぁ私ビビるよその目



凄い見たことあるんだもん。


「こういったお食事は初めてですか?
何か苦手なものとか…」


『いえ全般食べれますよ』


そう言うと凄く驚かれた。
まてまてまて。
さっきから失礼だな貴方。


『…あの、何方かと勘違いなされています?』

「っあ!いえ、失礼、綺麗な貴方に見惚れていて」

話を聞いていなかったと。
嘘つけ嘘!!!!


何だこの悪魔凄い癪に障るなこれ
…えぇなんだなんだ。


と言うかモヤモヤがずっと止まらない。
ブレーキ壊れた暴走列車並みに止まらない。




えぇ誰?私、絶対この悪魔と話したことある。
なんならめっちゃどつく勢いで会話してる。




「…どうされました?
どこか気分でも優れませんか?」

そう聞いて来た後止めます?
食事中止しましょうか?
と滅茶苦茶食事を遮ってくる。


ん?


私食事嫌いなこと
彼に話したことあるだろうか?
初対面の筈なんだが…

まぁ感情を殺せば食べれるため
別に問題ないのだが。


『ああ、いえ…すいません。
ダリさん…もお好きなもの
頼んで構いませんよ。』

「…言いにくいなら
さん付け取ってもらっても
構いませんよ?」

そう笑いを堪えながら言うダリに
いや初対面でさん付け無しは
不味いだろうとメルは感じた。

にしても何故此処まで笑うんだろう。
何私何かついてる?

そう言っているとメニューを聞きに
店員さんが入ってきた。

それに気づいたのかダリが率先して
メニューを見ながら相手をしてくれる。


「あではーーと、ーーーとーーーーを」

『(にしてもどっっっかで見覚えが、あれあったっけ)』


初対面の筈だ、どことなく
殴りたくなっていた気力も段々失せた。


それに何故か気付かれたのか
何かが居たのか知らないが
目を開けて此方を見て来た。



…いやいやいや何、私気の触ることした???



「…所でメルさんは
何のお仕事をされているんですか?」


『(おう聞いて来たな早速)』


一応カンペ通りの対応をしてスラスラ喋る。
勿論知識も丸暗記出来ている。


思い出しながら喋るだけでなく
それを気付かせない様に応用だってして。



『…所でダリさんは何のお仕事を?』

「教師です♪」


うん。何か腑に落ちる。
何でだろう、何か腑に落ちる。


首を傾げるメルにダリは
先程から気になっていたんですがと切り出した。



「何か気になってる事があるんですか?
私で良ければお話聞きますよ?」


『あっいえ…それ程でもないんですが…』


「初対面だからこそ言えることもあるでしょうし。
別に悪口だって構いませんよ?」


『いや流石にそれはない』


あっ。そうため口で言ってしまったのに
口を手で覆い隠すメル


それにくすりと笑ったダリに
何処かふわりと浮かぶ気持ち。


このふわりとした感情、私は知ってる。
知ってるからこそ、頭が悲鳴を上げている。

駄目だと、開けてはダメだと。

それは、パンドラの箱か?

それとも



「それで?何が引っかかってるんですか?」

『その…えっと、こう何かが引っかかっていて』

「何か…ですか」



お、何か目付き変わった。
何々、私やっぱり君と会ってる?


『ええ、とてつもなく申し訳ないんですが…
その何処かでお会いしたことってありますか?』

「…いえ・・これが初対面ですよ?」


あっまた強調した。多分答えはNoだ。

恐らくだが、外に監視が数名居るからだろう。

なら此方もほんの少し
意地悪をし返してやらねばならない。


『そうですか…何処かでお会いした方に似ていて』

「…ほぉ?私がですか?」

『そうなんですよ…こう、横から殴りたくなるような』


そう言った途端彼が飲んでいたワインを噴き出した。


待って、何でだろう
めっちゃ面白いんだけど待って待って。

むせている姿をみてつい笑ってしまった。


おっと、いけないいけない。



「…っ、笑われている方が素敵ですよ。」

『いえ失礼しました。』



いけない笑ってしまっては。

感情を表してはいけないのだ。
何のための努力だ。


と言うかこの悪魔が
横から殴りたくなるような
顔だからいけない。


ずっと引っかかっては消えてを繰り返す。
そんな中、食事が入ってきた。
おお、姿煮とかもあって、割と地獄絵図。


少し引いた身体に無理しなくても
構いませんよとダリに言われる。
いやいや相手に悪すぎるので口にはするよ。


そう軽くスプーンでそっとスープを飲む。

うん。

知ってる。





味しない。




『美味しいですね』

「…ええ」


あっ多分美味しくないのはバレてる。

味しないのはバレてないかもしれないが
こいつ結構、私のことカン探るの上手いぞ。




うーん、相手がこれだと困るなぁ。

それにしても店員さん部屋の中にいるけど
金髪の人どっっっかで、見たことあるような…えぇ?


チラリと目を見ると手をヒラヒラさせてくれる。
思わず手を振ってしまったが、いやいや。やめい。




「お知り合いですか?」

『…いえ、知り合いでーは…ない
…な、い…筈、なん、ですが』

つい手を振ってしまったのに詫びる。

一応店員さん男の人だし
目の前の君を見ないとは、
割と失礼に値するからだ。


音をなるべく立てずに食事をする。


うん…うん。



『(味しない…やっぱり
この姿は嫌でたまらないんだな)』


せめて別の姿なら良いんだが

…まぁ髪の色と目の色位しか
姿、変わらないし


嗚呼それでか。


『あの、失礼ですが』

「はいなんですか?」

『私と似た方をご存じのようですが、お尋ねしても?』


そう言ったメルにダリが
口元をふいていた手を止めた。


本当に一瞬だ。

これは間違いない居る。


確実に居る。




「…いえ流石にそれは」


『教えてくれないと
今回限りにしますね』


「ちょっ!?…意地悪ですね」


『ふふっ、貴方も
先程から充分意地悪ですよ。』


顔殴ってみます?
と笑っていうものだから、つい笑って
出来る訳ないじゃないですかと答えた。


「そうですね…いや妹の様に
可愛がっていた子が職場に居たんですが。」

『…居たんですが、ってことはもう』

「ええ、退職されたんですよ。
その子と貴方が非常に良く似ていて。」

『…ちょっとそのお話。
詳しくお聞かせ下さい。』


虚ろな目が声と一緒に色を帯び始める。

駄目だと警告音が鳴る。
多分数分後、色が溶けてなくなるだろう。
でも今聞かないと駄目な気がして。

今聞かないと一生後悔する気がして。

彼の茶色の目が気になって仕方がない。




その目の奥に、一体何を隠しているんですか?


「…とても元気で明るい子でして。
周りを見て手を差し伸べる優しい子です。」


『…私と真逆じゃないですか』


「いえいえ、そんな
ご謙遜なさらないで下さい。」


『いえ事実ですので。
私は悪魔に手を差し伸べること
すらできない臆病者ですよ。』


「…初対面でそんな姿は見てませんが?」


お、何だろう。何か怒ってる?
いや事実を述べたのだが。
割と現実はこうだぞ???


『いえ、きっと貴方も
私の全てを見て驚きますよ。』


「も?前に驚かせたことが?」


あ。食いついた。
うーん余りこういうのは
言わない方が良いだろうが。


『ええ…昔森の中で遊んでいた際に
一人の女の子に出会いまして。』


「女の子?」


『いやスカートみたいな
ズボンを履いてて
性別が不明だったんですよ。
その子と走って競争した際
驚いた表情をみたので。』


「なるほど、その子とはお会いに?」


『いえ10歳の頃二日間会っただけでもう』


「…お会いになりたいとは?」


願ってはいけない。だが…10分。

今から10分間、ちょっとだけ賭けよう。



きっとこれ、確実に私が負ける気がするが。



目の色を元通りに戻しながら会話するメルに
店員がすっと帽子を深く被る



『正直…会いたいです。一応名前?
偽名のようなものも聞いてますし、姿も割と』


「私の教え子にいたりするかも
しれませんしお聞かせ願えますか?」


まぁ確かにそれはそうか。
ありえなくはない…な?うん。


え?待って?君、何歳よ。
同い年程度じゃないなさては。


『えっ…と、確か髪の毛は黒で
あの時はおかっぱ頭でして』


「ふんふん」


『目の色が紫で角がおでこから
白いのが二つ出てます!』


「……」


『あと炎を使う悪魔で成人する際に確か
使い魔と名前を貰えるとかなんとか?
…ってどうされました?』


そう笑いを盛大に堪える為に
肩を震わせるダリ


なんなら店員さん
此方を見ていたのに後ろ向いてる。


あれ待って震えてない???
嘘待って?笑ってる???


「いっ、いえ…ちょっと
面白そうなので続けて貰えます???」

おいおいおい、面白そうってそれ本音だろ。
ダリの目尻に涙が見える。笑い過ぎだろう…


そう思いつつ、メルは冷や汗をかきつつ
話を続けることにした。



『えっ…と、最初は泉でばったり会って
私その際、掟で声を出さない様にしてたんですよ。』


「…へぇ!そんな掟が。」


『と言うよりも現在進行形でして
今見せている私も、実は本当の私ではなくて。』



なんなら生まれた頃に書き換えられて
本当の姿は分からない様にさせられるんですよ。
そういう古い話をするのにダリが目を丸めて驚く。


へぇ、君そんな顔するんだ。



「…それは、失礼なことを」


『いえいえ慣れてますし、
それにコロコロ変えて
秘密が濃厚になったら知った時
とても幸福に包まれると思えば。』


「…ポジティブなんですね」


『もう慣れましたからね』


色を失うという事に違いはない。
嗚呼駄目だあと6分しかない。
話を進めてしまおう。


『私の家系を知るのであれば
伝えておかねばなりませんし。
きっと貴方は私の事を
聞いてくれると思いましたので。』


「…ええ、勿論。」


『私の家系は代々血を濃く引き継ぐ者は
感情を魔樹に捧げ続けることです。』


「…感情を?」


『ええ、今初対面よりも動作も声も
目の色さえも色実を帯びていると思います。』


『ですが必ず魔樹に感情を全てを捧げないといけないのです。
というか無理矢理奪われるので、捧げる処か
気付いたら奪われたまま放られてしまっているんですがね。』


「…」


『私が継がなければこの忌まわしき呪いもうち切れますし
こんな状態の為故に周りの子と
会話する事は幼い頃からありませんでした…が』


「が?」


『ジン…だけは、
そんなことも見せずに私を見てくれた。
願わくばもう一度会いたいですが』


「…きっと会えますよ。」


『ありがとうございます。
…にしても楽に話せて嬉しいです。
きっと貴方とも会った筈なんでしょうが
すいません。』


「え?」



『私は姿を変えると記憶もほぼ失い、
一定期間姿を変えたまま居ると
前の姿を消し去ることになっているんです。』



その言葉にゾッとダリが青ざめる。


嗚呼、間違いない

…この人は、この悪魔は!!




『私の前の姿を知る者ですよね?
ダンダリオン・ダリ…先生?』



そう言った方が良いかしら。
外の警備が何故か薄い感じがする。



あと5分…さぁ罰は受ける。

もう心臓にでも突き刺せばいい。



『この場には貴方と
お仲間の方以外、居ない筈ですよ。
店員さん此方へ』

そう呼ぶメルに金髪の店員が
帽子を被りながらメルとダリの
真ん中に立ちそっと帽子を外した。


オールバックの姿に
目尻に星型が付いている。



うん、見たことあると思う。




『私はこの後、初対面で見た時より
酷い色を見せると思いますが、それこそが
私がこの場所から逃げ続けて居た理由です。』


『どうか嫌なら今すぐにでも破棄してください。
私はどうとでもなりますし、姿かたちを変えれば
またこの姿に戻ってきますから。』


「っ!…メリィさん貴方は
一体どれ程、その姿を」


そう言うダリにメルはクスリと笑い
こてんと首を傾げて
人差し指を立て微笑んだ。




内緒だ。




もう数えられない程の感情が
泡となって消えて無くなった。


だからこの核は色を望んではいけないのだ。



白というより、透明に近いこの器。





私は、私であってはいけないのだ。





『…その目や仕草を見る限り、
皆さま、私の事をある程度お知り合いそうですね。
そうですね、教師と仰っていましたし…』


そうメルは顔を両手でふさいだ後
ゆっくりと顔を上げる



目の色も声色も。


色を帯びていくのに、心がひんやりとする。



『こんな感じで話してたんですかね?』

そうにこりと笑みを浮かべる。

表情が目の奥が揺らいだ。


間違いない大正解だ。




『なるほど…確かにこんな明るそうな感じなら
このとんでもない掟も、包み隠せますね。
だからダリさん…いえ、ダリ先生貴方は驚いた。』


別にお話しても構いませんよ。
種明かししましょう。
とケラケラメルが笑うのに
はぁとダリがため息を吐きながら両手を上げた



「分かった、降参するよ。
…確かに僕は貴方の言う通り
初めましてではないよ。

数日前にちょっと
家から縁談の持ち込みがあってね。
つたっていくと数日前縁談で退職した子と
ぶち当たることを知ってて、退職させた。」


『あらら…それ記憶のある私に
聞かせたら多分、怒りますよ?』


明るい性格なら多分そうなると思う。



それに貴方だから言えるんですよと

ダリはケラケラ笑いながら
首元に閉めていたネクタイを
少しだけ緩めて言う



「とんでもなく落ち込んでいたし、
何なら泣きだして止まらない姿で
一応伝えようかとも思いましたが
貴方の素性を見たかった
……という欲が湧きまして。」


『なるほど、だから退職にOKしたんですね。
ダリ先生のような方が
そんな愛してる妹分的な位置の子が泣きじゃくってる中
ハイそうですかで送る訳ないと思いました。』


「おや、気付きました?」


『一応これでも…核に近い存在ですから。』


「核?」


『…先程からお伝えしていますが
“私達”は貴方達の知る一欠けらでしかないですし
なんなら一定期間、色をとどめることは
…まず不可能です。』


「…その核が今から出るものだと」


『ええ。そして貴方の愛する妹分が
一番見せたくないと願った姿でしょう。
……ですので、出来れば後2分程で
ご退場して頂きたく思いまして。』


「此処まで来て?
店員さんが僕の仲間だと
気づいたのなら分かってるでしょう?」


『…何なら、今から戦いでもします?
一応核なら首一つ縦に振ってこたえますよ。』


そうギラリと目を光らせるメルに
いいやと両手をまた上げるダリ


『それにしても、笑えますね。
…貴方達のような悪魔を置いて
この場所に戻ってきたとは、
一体何を人質に捕らえられたんでしょう。』


「…人質?」


『おや、私達の家系を侮るなかれですよ。
…教員ならば子供でも
命を委ねられたんじゃないですかね。
殺すなんて自分の感情だけにすればいいものを
他人まで殺すのに躊躇ないとかもう腐りきってますよ。』


「…メルさん。
僕達は覚悟が出来てこの場所にいます。
今更ノコノコ帰るなんて出来る訳がないですよ。」


それに、貴方が例え暴走しても。
僕達が受け止めます。


そう言ったダリにメルは
嗚呼と大きく息を吐いて呟いた。



『…良かった、貴方達が最初で、最期の悪魔で。』





安心して、私は微睡みの中に意識を落とせる。

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