Novel - Carla | Kerry

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新しい日々5

act 20.

それから消し炭にした後、隠れ家に帰って
身体を洗い流し一晩経った。

メルはイフリートと鉱石を採りに来ていた。

『ここがイフリート先生に上げてた鉱石の洞窟です』

「うわぁ…すげぇ広いね。」

『まぁここ崩落するんですけどね全部取って。』

「え?」

『さぁ〜!ちょっと頑張ってみよ!!
“幻想の箱庭”!オリアス・オズワール!
一番おっきな採掘場所に連れてって!』

そう言って出て来たオリアスにメルは小枝を渡す
了解と言いたそうに帽子の唾を上げてウインクする。
小枝を落とし落ちた方角を指さす


『ありがと!』


そう言うとオリアスはニコニコと笑い
手をヒラヒラ振ってそのまま消えて居なくなった。


移動すると大きな採掘場所に入った。
とりあえずありったけね
と言って漁り始めるメルに
エイトはため息を吐いた後メルの後に続く


キラキラと石がくっついた空洞に
何処かでオリアス先生が
遊んでいたゲームを思い出した。

まさかこんなゲームの世界に
あるような場所があるとは
思いもよらなかった。

ザクザクと音を立てて歩く二人の足音
洞窟の反響をイフリートの炎と
メルの魔術が相まって
昼間のような光が辺りを照らしている。

まるで洞窟じゃないかのように
所々水が漏れているのか苔が生えていたり
何なら奥に陽の光が見える。

どうやらオリアス先生を出してまでして
占った方向的には真正面の場所らしい。

今まで幾つか道があって
メルが全部指を舐めて風頼りに進んでいた…が、
最初にオリアス先生を出す意味は果たしてあったのだろうか…?

それするなら最初から指を舐めて
風を読めば済む話では?
そう疑問に思うイフリートの気持ちは知らず
メルは目の前のことに集中していた。


「あれここって」


『前に私が連れて行けません
って言ってた場所ですよ。』


開けた場所には天井から陽の光が入り
そのおかげか岩から出てくる鉱石に
乱反射し、キラキラと輝く世界が目の前を埋め尽くす。

『はいこれ』とメルは言って
イフリートに鉱石堀り用のピッケルを渡す。

一応魔術でとってもいいですが
溶かさないで下さい。

と言ったメルにイフリートは
ピッケルを片手で持ち、自分の使いやすい様に
何度か持ち替えながら「了解」とニヤリ笑って答えた。


炎厳禁なら肉体労働一択だ。
それにこんな鉱石取りに自分の炎を出すなんて
なんだかご先祖様に申し訳ない気がして…


イフリートはピッケルを持って
鉱石付近に打ち付ける。

岩肌が脆いのか知らないが
ぽろぽろ崩れて落ちて来るのを
追いかけながら広い取り出す。


その間にメルもまた風を使い
岩を砕き鉱石を取りだしていく

少し集めるとメルは
研磨し光る所まで出したら
白いシーツの上に置いていく
風で飛ばない様にシーツの四隅に
石を置いている為動くことはない。


開始から3時間程で休憩を入れることにした。
意外と集中できるんだなと思っている間
メルが傍に居るから
時間が過ぎるのが早い事に気付いた。


キラキラした目で見たり
ギロリと睨んだりと

数日前からコロコロ変わる姿に
内心ワクワクしていたのだ。


「(ったく数週間前までは
傍に居なくてイライラして
八つ当たりしてたんじゃないか)」


ダリにメルが取られると思って
ついカッとなった自分が
恥ずかし腹立たしい思いだ。

ため息を吐いたイフリートに気付かず


メルは休憩用で作ってきた
サンドイッチを取り出す。

ルンルンと嬉しそうにしている
メルにふぅとため息を吐いた
元気そうでなによりだ。


今までの苛立ちも
こうやって二人きりになると

途端に消えて無くなってしまうもんだから不思議である。

仕事終わりの煙草は格別で
炎を出して付けて吸う最初の煙草が一番美味しい。
イフリートは煙草を見ながら吸い、途中で止めて
息を空にふきあげる

煙はもくもくと雲のように宙に漂った後溶けるように
消えて無くなった。

「…なに?吸ってみたい?」

煙草。そう言ったイフリートにメルは首を横に振りながら
無理矢理サンドイッチを喉奥に押しやって答える。

『っん…別に?まぁ煙草吸ってたら
確かにお絵描きに困らないなぁ…』

「いや、させないからね?」

『えっならなんで聞いて来たのよ』

「…いや、その…物珍しそうに見てたから」

そう思っていたことを
案外口に出すと恥ずかしい事に気付いたのも遅く、
イフリートは照れ臭いのを隠そうと
頭をガシガシかきながらそっぽを向いて答えた。

まだメルが強気であればイフリートを
弄る事も出来たのではあるが…

メルは今の今まで感情をぽろぽろ落として生きてきたため
特に恋愛感情に至っては失ってしまった色を
一気に取り戻してしまえば整理はつかない訳であって。

『〜〜〜っ!!そそそそんなこと、ない、…よ?』

ちょっとしたことでも気になって
つい顔を赤らめてしまうのだ。
何時しか前にダリから「初心だねぇ?」と言われたのを思い出す。
いや確かに初心だと思う。我ながら初心だ。

だがこのときめきを、全て魔樹に捧げていたのだ。
まぁ取り戻せるなら良いが、多分かえって来ないと言うか
出来るのであれば帰ってきて欲しくないとメルは強く願った。

だって

『(こんな一々反応して心臓バクバクなのに
帰って来たら思い出だけでも心臓止まってしまう!!)』

過労死するわ。心臓が。主に貴方のことで。
いやそれはそれでまぁ別に…良いのか。

「…ねぇ、これいつまでやるの?」

そう煙草を人差し指と中指で抑えながら
顎を使って「これ」の場所を指すイフリートに
メルは嗚呼と言って答えた。


『もう色が全く見えなくなるまで堀りつくしますよ。
…一応感情を入れることが出来なくなると言っても
他悪魔の感情を入れることが機械で操作できないだけであって…』

「嗚呼もしも逃げ出した時に此処に来たら
また作りかねないってことね。」

そういうことだ。
その為にも掘り尽くしておく必要がある。
勿論そのまま埋め立ててもいいのだが…

何分前世の記憶を維持したまま生まれたメルは
ひょっとして私のご先祖自体前世人間だった者
ばかりではと考えてしまって。

『(もし仮に全員が前世人間であるとすれば…)』

確実にこの場所を掘り当てて意地でも
もう一度作り出そうとするだろう。

まぁ犯罪歴があれば別の事を思いついたりもするだろうし
死刑になっていない所、釈放された後を考えたら
割と此処に帰ってくる可能性は捨てきれない。


…まぁそれが人間の意地みたいなものが出ればになるし
悪魔であればすぐに忘れてしまうだろうし…?
どちらにせよこの宝石は余り外に出すのは正直良くない。

気付いた悪魔が何に使うか分からないからだ。

『それにコレ貴重っちゃ貴重なんですよねぇ…
一見耐久力ないように見えて
案外ちゃんと魔力入れたら馬鹿強くなりますし。』

そう研磨した宝石を太陽に当ててメルは見る
キラキラと反射するのに直視するのはしんどく
ただ薄く目を開けて
片手で眉に手を当て影を作りながらだが。

それにイフリートはへぇと答えまた煙草を吸い
煙を宙に吐き捨てた。

「そうなんだ」

『そうですよ』

だからこそ…砕け散らなければいけない…のだが。
まぁこの宝石たちに罪はないのだ。
要は使う者が悪いのだ。

まぁ悪魔だから悪いという訳ではないこと位
もう産まれ直してやっとわかった事実なのだが。
メルがこの魔界のことを人間に強いて言うなら
人間が言う「悪魔」は悪魔で言う「元祖返り」だ。

何をしても快楽として何かを壊す者。
その罪は何よりも重くのしかかる。
悪い者、それが「元祖返り」



…もし、私も悪魔であれば、



『ねぇ、イフリート先生』

「ん?どした」

『元祖返りって、どういうもの?』

そう聞いたメルにイフリートは少し驚いた眼をした後
明後日の方向を向きながら「うーん」と言いつつ
煙草を吸って吐いた


「そもそも悪周期ってさ、何で起こると思う?」

おっと質問で返された。困ったな。

『うーん…ストレスが爆発するから、溜め込み?』

「まぁ、そうだね。
定期的に起こる発作みたいなもので
ほら君も良く見かけたんじゃない?
破壊衝動に駆られてる所とか
犯罪行動などの悪意への欲求とか。」

抱いている生徒。

それにメルはああ!と思い出して
こくこくと縦に小刻みに頷いた

「悪周期は、悪魔本来の自我に目覚め、
犯罪行動などをおこしてしまう周期の事を言うんだよ。」

それは悪魔本来の姿

「元祖返りは常に悪周期が起きている状態。
まぁ欲に忠実過ぎるからこそ、
元祖返りの奴らに通常の話なんぞ伝わらないんだ。」

それこそ此間起きたアミィ・キリヲとかね。
そう言ったイフリートにへぇーとメルが声を上げた。
確かにそんな騒動もあったなと思い出す。

「にしてもどうして急に元祖返りの話を?」

脈絡が無くて不思議に思ったイフリートに
メルはもごもごする。

それは、

『貴方も私も元祖返りになる可能性もあるって事ですよね?』

「まぁそうだね」

まぁそうだね!?そんな危険なというか
あんな危険な?!そうメルは
いつぞやの生徒会長との出会いを思い出す。


元祖返りしかけた者と対立して
おん逃げまくっていたメルを
生徒会長のアメリが助けてくれたのだ。

いや、正確には生徒会長になる前であって
メルのおかげで
生徒会長になるきっかけ作りになったと
前に褒めてくれていた時があった。

「君が堕ちた時は僕が拾うし
僕が堕ちた時は君が拾ってくれるだろ?」

『両方一度に堕ちちゃったらどうします?』

「んーその時は…周りに助けて貰う!」

おおぅ…マジか。そんな感じで良いのか元祖返り。
一度帰ったら二度と戻れなさそうな感じするが。
メルは苦笑いしながら最後の研磨を終えた。


『(…私は、何処かストッパーになっているのがある。)』

悪周期にならないのも
今までその「何かに触れていないから」であって
他の悪魔よりも一番元祖返りに近い者である気がした。

あの親の子だ…何をしでかすか分からない。
メルは怖かったのだ。
誰かを傷つけるのが…


ちょっとした拍子でほどけてしまって
それが自分の一番大事にしているものに
触れられたことだったら。


気付いている。私は気付いているのだ。
目を背けて、ずっと気付かない振りをし続けている。
そうすることで、なっていないからこそ…
今凄く恐ろしく感じる。


「ま、大丈夫だよ。
バビルスにいる限り、君は一人じゃないし。」

それに独りぼっちになっても
僕が傍に飛んで行くさ。

何処に行ってもね

そういってウインクするイフリートにメルは
先程の不安をかき消してくれたウインクに
感謝の意味を込めくすりと笑って『そうだね』と言って返した。


そうだ。私は一人じゃない。
あの世界では独りでいたのに。
この世界では独りではないのだ。
…この世界では、私は、私は


『(煙草の煙になれたらどれ程良いだろう)』

すぐに消えて無くなったら、この熱を知ることは無かったのに。


++++++++++++++++++

それからほぼ一日ずっと採掘してようやく
穴にある分の宝石を山の様に採掘した。
荷物は小さくしてポケットに入れて嬉しそうだ。

「それどうするの?」

『タリスマンにしますよ。
感情ではなくて普通の。』

そう笑うメルになるほど
とエイトは納得する。

何だかんだメルは宝石として眺めるのではなく
魔術に活かすという選択肢しか出てこない程の
魔術オタクである。


それに納得しつつ明日も獲る?と聞いたエイトに
メルはうんと答えた。
採掘場の中を調べて変な物がない限りは崩落させると。

それに頷いたイフリートは帰ろうかと手を出す。
ん?と首を傾げるメルにイフリートは首を傾げた。

「手、繋がないの?」

『…へっ!?』

「ほら」

『あっああちょ、ちょっと待って!?』

流石に一日では採掘足りない。
何なら皆総出でやって一日で終わるか怪しい位だ。
嗚呼ダリ先生にもう数日開ける訳にもいかないので
悲しいが、一旦終わって明日ちょっと見てから
夏休み期間中にまた取りに来るようにしよう。

殆ど採掘したはずだけど、
多分探したらもっと出てくる。

それ程この場所は宝石が出やすい場所なのだ。
メルは仕方なくイフリートの手を握り返し
明るい光を放ちながら一緒に来た道を帰ることにした。



「それにしても広い洞窟だね。迷ったりしないの?」

『んー風を頼りにしますし
来た道は直感で覚えているので。』

ほら反対方向で自分を向けてこうと
説明するメルによくわかんないと答えた。
イフリートにメルは『ですよね』と苦笑いする。

『私説明へたくそなんですよ…
だから教師向いてないって言ってんだけどなぁ』

「説明なんぞ技術になってくるから慣れだよ慣れ。」

言うて僕も生徒にあんまり触れないから
説明上手かどうかは知らないけどね。
そう苦笑いするイフリートに
メルはそんなことないと思うけどなぁと考えた。

そうこうしている間に外に出る。
どうやら本当に外は真っ暗になっているようだ。
洞窟から陽の光が出てなかったので
ひょっとしてとは思っていたが…

光を常に出し過ぎて時間帯がおかしくなってしまったか。
メルはまだ疲れたりない身体に嫌気が差した。

「さ、帰るか。」

『ひとまず私の隠れ家にですね。』

そう翼を広げるイフリートにメルは浮遊を開始する。

「ああ、ちょっと抱っこしてあげるのに」

『荷物馬鹿重いでしょ。
それになんか体力有り余ってるんですよ。』

「あんなに動いて?」

『逆に動いたからこそハイになってるのかなぁ』

「それなら余計に疲れすぎてるから
早く寝なきゃじゃない?」

そう首を傾げるイフリートにメルは
それもそうだなと思いこくりと頷いた。

「…ねぇ、どうして翼広げないの?」

何かわけが?そう聞いたイフリート
止まり空に浮遊する彼にメルは先に行った背中を
イフリートに見せながらそれはとどもる。

彼に、言って…引かれるのは嫌だ。
多分だけど引かれない気がする。

でも…でも、これだけはまだ…秘密にしておきたい。

『もう少し、仲良くなったら教えますよ』

「じゃあそれまでの楽しみにしてるね」

教えないとは言っていない。
それに嬉しくなったのかイフリートは
ニヤニヤと笑いながらメルの前を行く

『(…きっとその仲良くなるは、来ないだろう。)』

何処かこの胸のざわつきが、そう言っているから。
 






一階に大量の宝石をメルは
浮遊させながら分けていく。

赤青黄色とキラキラしている宝石に
割と高値で売ったら
とんでもない額になりそうだと思ってしまった。

まぁそんなことにはしない
欲のない彼女は
ただ分別しているのだが。



「…ふと思ったんだけどさ」

『はい?』

「その感情って入れて
どうやって防いでたの?」

『ああただ呪いみたいなものですよ。』


待って?それ僕に渡そうとしたの?
だから重いから止めたって言ったんですよ。

そう言ったメルに
なるほどと何となく納得してしまう。



『好きだ嫌だ触れないで。
…どうか気付かないで。
そう思えば防御に転じますから。
それも、強く強く。』


そう願えばどれだけの感情を欲を放てば。

この力は強くなるのだろうか。
底知れないものに恐怖も帯びる。



「…気付いて欲しくなかった?」

『正直…気付いて手を取って
離れないようにして』


そのまま溺れるように堕ちたかった。



と言ったメルにイフリートは腕を掴み
そっとメルの頬を撫でた



「こうやって?」

『(そう、こうやって)』


キラキラと光る宝石の中
そっと触れる唇




甘い時間がずっと続いてしまえば良いのになんて思う。




これが夢なら…どうか。


嗚呼現実なのだ。



だからどうか


『(眠りたくない)』




眠ってしまえば
そしたらきっとこの世界も
みれなくなってしまうから。

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