Novel - Carla | Kerry

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めぐる、まわる、おりられず3

act 23.

メルのような者はそっと消えて居なくなり
静まり返る廊下に声をぽつりとバラムが言う



「…おわっ、た?」


「イフリート先生!!無事ですか!」


イルマくん!?無事!?
そう後から追いかけて来た
ツムルが叫ぶのにはいと入間は答えた。


一体何事?と言ったバラムに
それがメルちゃん急に暴れて
と言ったツムルに
いやとイフリートは否定した。


「明らかに怯えて何かから逃げる行動をしていました」


そう完全に意識を失ったメルの傍に
イフリートは腰を降ろし頬を撫でる。

これ以上危険はないと判断した
檻に入れなくても構わないだろう。



「僕達を見て悪魔だとぶつぶつ言ってて
丁度イルマ君を見て、すぐにぴたりと止まった。」


「っ!!」


「ニンゲンとは言ってたけど、
多分この子の想像している人間に
一番近い存在だった。」


恐らくトリガーは「人間と悪魔。」

そう言ったイフリートにバラムは
イルマが悪魔であることを伝える。


それにはイフリートも
気を悪くしたらごめんねと謝った


「僕達は彼女と出会った時
翼を生やしていたし牙や角だってあった。
でも見て来た中で
君が角も翼も牙も見せていなかったから
人間だと勘違いしてぴたりと止まった。」


「…成る程、自分が無害な人間だと
思うことで、悪周期を止めているのか。」



恐らくは。
そうコクリと頷いたイフリートに
人騒がせなとバラムが頭をかきだす。



「多分ですが悪魔だと自分を信じると
悪周期になるんでしょう。
流石にメルちゃん以外の教師には伝えておいた方が良い。」

「そうだね、生徒でもイルマ君みたいに
見せない者はそうそういないし。」

「あの…僕、その」

「嗚呼、ごめんね
後で君にお詫びしに行かすから。」



今日はバラム先生と一緒に帰りな
そう言うイフリートに入間は違うんですと答える。


「その違くて、メル、先生
…凄く、悲しそうにしてて」


「っ…!」


「僕を見た時、でも凄い嬉しそうにしたんです。
まるで…やっと会えたと言いたそうな顔して。」


もし僕で暴走が止まったんだったら
それはそれで良かったですし。

そう苦笑いする入間に
イフリートはそれでもと答える。


「君の名前を呼んで向かったんだから駄目だよ。」

『ん゙っ』


そう言って唸るメルに
バラムが入間を腕で守り
イフリートは身構える




『…夢か』

手を伸ばすメル。



まだ意識がぼんやりとしているらしい。
宙に伸ばした先には嬉しそうに笑う少女が
ふわふわと浮かんでいた。


そのまま地面に足を降ろし、
少女の隣に角の生えた悪魔が現れる


それにまた暴走するかと身構えた一同だが
一行に魔力を上げないメルに目を丸めた

じっと見ているのだ。

ただ、じっとその場所を



翼の生えた少女は凄く怯えて泣いている
それに白い服を着た少女が首を傾げながら
両手を広げて翼の生えた子の手を取り
身体を引き上げる


笑いながらくるくる回る少女に
ただ角の生えた悪魔の少女は
混乱して首を傾げて
不思議そうにしながら身体を回される。

なんだかおかしくなったのか、
嬉しそうに悪魔は笑い
少女も笑って手を取って嬉しそうだ。



『嗚呼…夢、淡い、夢…
ねぇ、いつかお願い夢をきいて』



そうメルがおぼろげに
少女の方にゆっくりと手を向ける

それに気づいたのか少女は
悪魔の手を掴んだままメルの方に走る

すっと身体を降ろした少女に
悪魔もつられて降りた
メルは身体を起こし、
お姉さん座りからM字型に足を組み替えた



『どうか君達を愛せますように』


そうそっとメルは
少女と悪魔の間に身体を入れて
二人の背中を両手で抱きしめた。


『私は、人間だから…
私は、悪魔で、人間だから。』


間だから、宙ぶらりんだから。
だから回る、また戻る。


『またもどる、きっと
嗚呼どうか…ごめん、ごめんね。
何時か、君と笑えたら。』

私はそれだけで、幸せだから。
そう言ってまたメルは身体を床に落とした。


++++++++++++++++++

『ん゙…』

「あ、気付いた?」

『……………気付いたは気付いたんですが』

これどういう状況?
そうメルは指を指す。

おきた場所は隣にというか真横に
ピッタリくっついた状態のイフリートに

目の前にはダリとイチョウが座り
奥からバラムがお茶を出して
此方にやってきている状態だった。


「此処はバラム先生の準備室だよ〜!
メルちゃん気分はどうかな?」

『…頭痛い』

「あははは!!
だろうねあんなに暴れたら!」


ん?あんなに?
アレ私暴れたっけ?


『え?もしかして何かしました?』


「んーしたっちゃした、けど…どうする?」


「ダリ先生今はちょっと」


「いやーでも聞いておかないと
あやふやだと何時起きるか分からないでしょ?」



そうイフリートが止めるのに
ダリが首を横に振ってこたえる。

一体何が起きたと言うのだ。


頭を押さえながら自分の空いた背中に驚き手を当てる
うん、破れてる!!!なんで!?!?!?

ぺたぺたと背中に全く何もない。
うん、なんで?????



「あははは!凄い不思議そう!!おもしろーー!」

「…ダリ先生」


ごめんごめんと笑うダリ。
いやーこうやって和ませないとと言う彼の言い訳に
バラムがため息交じりにメルちゃんと聞いた

それにメルはなんですかと首を傾げながら聞く
未だに自分の背中や身体を触りながらだが。


「君、人間?」

『っ!!!………それは、』



分からない。

それが答えだ。

いや嘘。違うと首を横に振る。


『…人間だと思いたいし、悪魔…というのも思いたいけど、』


「けど?」


『………悪魔、と思いたくない自分が居るんです。』


「悪魔じゃない。なら君は人間だと思う?」


そう聞いたバラムに
首を少しだけ縦にこくこくと頷いた


『でも、両方だったら、いいな…なんて。』


空想生物学の読み過ぎですよと苦笑いして答える。


隠したがっているのだ。

笑いながら目を逸らす仕草に
バラムは良いんじゃないと答えた。



「君は君なんだから。どちらでも。」

『〜〜〜っ!…そう、ならいいですね。』



そう微笑むメルは少し勘づいた


どうやら人間と悪魔の境目に堕ちて
今まで迷惑をかけていたようだ。


全く、とんだ馬鹿をしやがったなこの馬鹿。



『…バラム先生』


「なに?」


『悪魔にはあって人間には無い物って分かりますか?』


「っ!」


教えて、そう言いたそうにするメルに
バラムは言っても暴れないならと答える。
それにコクリと頷いたのにため息交じりにこたえた。

「人間は角も翼も牙も尻尾も無い。牙は丸く耳も丸い。」

『はい、はい、…そうです。そうなんです』



それならこれを見たら分かってくれますか?



そう言ってメルは黒いシーツを外し、
そのままソファーの方を向いて
ペラりとダリ達に背中を見せた。


「っ!!!ちょ!!!!」

「メルちゃんこら!やめなーー」

『ね、今私の背中って、翼の管ってありますか?』


そう言ったメルに一同が固まって声を出さない。
触った感覚には、恐らく答えはイエスの筈だ。


なのに聞こえてこない声に、
そっとイフリートがメルの腕を掴み
そっと服を戻し黒いシーツをかぶせる。 


「…ない、えええええ!?
何でなんでなんでなんで!?!?!?」


「ちょ!!バラム先生落ち着いて下さい!!!」


「いやだってさっきまで翼生えて
角も生えてたのに管すらないってどういう」


「バラム先生!!」


『やっぱりアレは夢じゃなかったのか』


そう低い声にメル?とイフリートが声を掛ける。
大丈夫と首を横に振るメルに
無理してない?とイフリートが聞く。



『昔からそうなんですよ。
定期的に、家系魔術使わないで
抑え込み過ぎると嗚呼なるんです。』


「えっ、ちょ!!それなんで言ってくれなかったの!!!」


『言える訳ないじゃないですか!!!!
…こんな、こんな姿。』


翼が出ない。それは人間。
でも魔術は使える。でも翼はない。



『悪魔は人間を食べる者だと言う。
食事なら、目の前にいる私を見れば
間違いなく悪魔ではなく人間。』


そう世界が言うなら、
誰にも見せないようにするのは至極当然でしょう?


そう言ったメルに
そりゃあと言えずに
目を逸らすダリ

メルは答えた。



『翼は暴走しないと出てこないし、
それに何処か人間であって欲しいと
願う自分が居るんです。』


そうしないと、何か帰れない気がして。
そう言ったメルに帰れない?とバラムが聞く。

チラチラとイチョウやダリ、
イフリートを見ながら
うーんと言った。


『…5分間だけ、バラム先生と二人きりにしてもらえます?』



ちょっとお聞きしたい事が。
そう言ったメルに分かったと
イフリートが出る。


それに続いてダリ達も出て扉を閉めた。


「いいの?聞かなくて」

「彼女がバラム先生だけと望んだんです。
多くは聞きませんよ。」



それに何時か言ってくれるでしょ。
そう言ったイフリートに
ダリはふぅんと答えた。



++++++++++++++++++




「それで、僕に何を教えるつもりかな?」

『…やっぱり嘘は分かりますか。』


家系魔術“ブザー”を持つバラム・シチロウ
空想生物学の教師であり、
人間がこの世界にも存在すると言っている者だ。



「うん。だって
さっきから仕草は本当なのに
嘘のブザーが鳴るし、
その逆もあるしで驚いてるんだけど。」


『私前世人間だったんですよ』


そう言った途端バラムは
ダリ達の飲んでいたお茶を落とす
パリンとなった

メルは動かなかったバラムが
メルの方を向く

にこりと笑い返した



「えええええええええええええええええええええええええええ」


『あ、ちなみに記憶も幼少期から死ぬまでばっちりありますよ♪』


「嘘嘘嘘嘘待って待って待って待って待って!!!!!」


そう大声を上げた途端近づかないでと距離を取られる
なんなら天井に張り付いてしまった。
ああーですよねーそうなりますよねーーーー。



「え!?ブザーならないんだけど!!!
ねぇ!!!!待って!?!?!?
君今まで僕と話した中で
一番鳴らないんだけど!!!!!」


『もーだからそう言ってるじゃないですかー
やだなー嘘ついてないですよー』


そう笑うメルに本当らしいことは分かり、
バラムはとりあえず地面に身を降ろした

「嘘嘘嘘!!何で!?
いやでも翼ないよ!?
角もない!!あれでも!?」

そう先程のメルを思い出しては
悩み、わたわたするバラムの姿に

メルは大笑いして
ひぃひぃと腹を抱えて笑う。


「ちょ笑ってる場合じゃないから!!!!!」

『あっははははは!!ひぃ、おかしっ、ぐぐっふふっ』


喉を鳴らしながらも笑うメルに
もおおおと声を上げる。


「はっ!!もしかして空想生物学のテスト
満点取ってたのって!!!」

『ふふっ、そうですよ。私の記憶から
引っ張り出して来ていたんですよ。』

「じゃあアレであってるの!?」

『いえ、一部間違ってますよ。』


そう言ったのにまたバラムが別の意味で固まる。
ぶわりと汗が流れたのに『あっ』とメルは答えた。


『まぁでもこの世界に人間界があるとは
限らないですし私の記憶違いと言うことで。』

「待って待って待って待って
待って待って待って待って」

『わぁ〜〜〜!』


いやー楽しいね!!!!
秘密話すのって!!


そう笑うメルに
楽しんでる場合かとバラムは叫ぶ。


「ったくも〜!
其処まで上司に似なくてもいいでしょ…!」

『へへ、何せ話すの長いんでね?』

そう外にいる悪魔に名前を出さずに
お互い思っている事を一致させ笑う


「それで?僕にどうしてそのことを?」


『んー背中を見せた途端慌てたので
…入間君、彼人間ですよね?』


そう言ったのにぴたりと止まったバラム。
うん、正解だな。


『悪周期というか暴走した時に
一瞬覚えていることがあって
人間の匂いというか直感で思ったんです。』



嗚呼、此処に人間が生きている。魔界に。今。


そう言ったメルにバラムが目を丸める


『勿論もし人間だったら秘密はお守りします。
それに彼には助けて貰った恩がありますから。』



暴走して気が狂ったことは何度もある。



「…君、今まで悪周期になったことないって聞いてるけど」


『……嗚呼言うのなら、幼少期はありましたよ。
家系魔術で自分の姿を映し出して
翼や角をもぎ取って形とろうとしたら終わりです。』


その前まで滅茶苦茶暴れますけどね!
そう三日三晩フルコースノンストップで!
そう笑うメルに
あの時入間が居て本当に良かったと
バラムは心から思った。


そうでなければ誰にも止められなかったらしい。


例え好きな相手であるイフリートの声ですら聞こえなくなるのだ。




「あ、でも」



コンコンとノックが入る
それにもう良いかな?とダリが聞いて来たのに
此処からなら良いですよーとメルが答える。


『話の続きですが、
幼少期からあんなのは良くあって
小さい頃は森焼き尽くしちゃって
更地にしちゃったりしてたんですよ。』


ほらイポス先生達
私を追いかけた時
妙に変な更地無かったです?

と言ったメルに
まぁ確かに?と答える。


「無駄に広くて、でも
そんなもんかと思ってたけど」


『あそこら辺一体
全部私が暴れた後なんですよ〜!
いやーまーーだ残っていて
私記憶ちょっと戻ってからビビりました!!』


「っえ゛っ!!!!」


小さいのから大きいのまで
確かに転々とあるのは不思議ではあったが
まさか全てと言われると
その暴れん坊には驚きが隠せず
つい身体に出てしまった。



『あ!でもちゃんと
翼も角ももぎ取ったら終わるんで!
最後はちゃーんと
綺麗に閉じるんですよね〜!!』

「…メルちゃんだから一人で歩く時
家系魔術ちょこちょこ使ってたんだ」


『あそれとは…まぁ関係するか、
え?言う?いや』


うーんと唸るメルに
何々と冷や汗ながらダリが聞く


『いや、暗闇の中に一つ光が見えて』

「光?」


そうダリが目を出して聞くのに
メルがコクリと頷いた


『そうなんですよ〜。
いやー暗闇の中に何か
自分がむき出しになる感じがして
傍に悪魔でも何でもいないと
連れて行かれる感じがして
嫌なので出してるだけでして。』


「いやいやいやいや…
そういうの超絶大事じゃん…」


『あはは!まさか本当に
暴走するとは思ってなかったので!!
…それに、ダリ先生言ったじゃないですか。』


受け止めてくれるって。
そう言ったメルに
ダリはいつぞやの縁談を思い出した。


彼女に言ったのも、どうやら覚えているようだ。



「もちろん…君が暴れてもちゃんと止まったっぽいし?」


『まぁアレも結構危ない橋なんですよね。
下手すると増幅させちゃうので。
悪周期とは違ってただの暴走でしょうし。』


あれ違いますよね。そう言ったのに
ダリはまぁそうだけどと答えた。


「にしても一体何故ああなるんです?」

『んーそれが分かれば話は早くも…いや、シッテル。』



そう言うメルに一同がぴたりと静止する。
暴走した時のような仕草に警戒したのだ。



『…シッテル、けど。言わない。
君達も充分気付いてると思いますが?』

「そりゃ…まぁ」

「いい、もう充分だよ。
悪魔目ひとめが付かない時位は使って良いよ。」



って言うか使え。何なら全校生徒に
君の家系魔術教えてあげようか?
そう言ったダリに
いやいや其処まではと苦笑いする。


ストレスが溜まって居なくても
実はこれ、発動するのだ。



その為悪周期ではなく、
単純に呑まれるか呑まれないかの瀬戸際であって。



『(嗚呼きっと元祖返りに近いんだろうな)』



行ったり来たり。

人間と悪魔を。

悪魔と元祖返りを。


宙ぶらりんになったこの身体を、

繋ぎ止められているのは





前世の自分の生きていた記憶と


『(君との“約束”を果たすためだけ)』


その“約束”が消えてしまえば


私を止められる人は一体、何処に存在するのだろうか?

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