「メルちゃんの家系魔術って
最大どれくらいまで出せるんです?」
「嗚呼、まぁ流石に脳がパンクするまでよ。
彼女の場合だと3人が限界じゃないかしら?」
まぁ私は5人程出せるけどね。
そう言って魔樹は指を鳴らす。
いつの間にボディータッチしたのか
一瞬でダリ達を出して動かす。
ちなみにお互いを殺し合う事も
可能で、血もリアルにでる。
それには拷問学のマルバス先生もワクワクで…
「ちょちょちょちょちょ!メルちゃん!!!」
『嫌ですよ!?流石に作り出した
我が子を出荷しませんよ!?!?!?』
そうイフリートを作り出して
両手を横に広げ守る形で
メルは首を横にブンブン振った。
出て来たイフリートも
メルの肩に両手を添えて
後ろで縮こまって首を横に振っている。
震える互いにいやだなぁーとマルバス先生は
一体何処から出して来たのか
ハサミをシャキシャキ音を立てている。
「ちょっと借りるだけだよ〜ね?ね?」
『ちょっとが怖いんですが!!!
その一瞬で
「いや〜ちょっと」
「流石に僕も許可出しませんよ?マルバス先生。」
「えぇ?君がお手伝いするわけじゃないでしょ?
ちょっと外野は黙ってて?」
「いや本人の許可要りますよね?
普通に
そうメルの前に本体と言うか
ご本人が全面的に却下している。
と言うか
「まぁ…そんな
泣きそうな顔されたら、
流石に無理は言わないよ。」
本当に涙をこらえる
一歩手前のメルを見て
流石のマルバスも鬼ではない。
何処から出して来た
デカいハサミを白衣の中にしまった。
待って?
そこ四次元ポケットなの?
待って待って?
青い猫型ロボットじゃなくて
白い白衣の拷問先生って
R指定待ったなしじゃない?
勿論G指定前提の。
『ああ、そうだダリ先生』
「うん?どうした?」
『魔樹が此方に住むのであれば一応
一通りの物は揃えたいので
彼を連れて出かけても?』
「いいよ〜♪あ量買うなら
何人か暇な奴ら連れてってもいいよ♪」
なんなら僕行こうか?
そう自分を指さすダリに
いいえとメルは首を横に振った
『昨日今日で暴れに暴れて
多分大人しくなるでしょうし
此処は二人きりで
ちょっとお話をと思いまして。』
「…まぁ付き添いは
一人は欲しいかな?」
流石にダメか。そう苦笑いしたメルは、
ではエイト先生連れて行きますと答えた。
++++++++++++++++++
「にしてもちゃっちい所ねぇ〜
メル貴方こんな所で満足してたの??」
『はいはい満足してましたよ〜
ほら背中向ける!!』
「…あしらいが凄い」
そう駆り出されたエイトは一人ぼやく。
現在魔樹の日常生活品を買い出しに来ているのだ。
勿論ダリからは監視役として駆り出された。
「(にしてもちょくちょく分からない様に
こそこそ会話しているのは分かる…が、
何を言ってるのか分からないな。)」
エイトはダリから「何か情報あったら教えて」
とも言われている為、
出来れば持ち帰りたいのだが…
如何せん口が見えても声が聞こえても
何かを意図して言っている止まりで。
その為、意図した中身さえ
分かったら全て納得するのだが…
上辺を聞いている分には特に支障はない。
いたって普通過ぎる会話で、
段々彼らに裏がない気がしてきた。
というか先程から距離が近すぎやしないか?
そう最近やっとお付き合いに踏み込めて
未だに触れるようなキスと手を繋ぐ位しか
進めていないもどかしさの苛立ちを
イフリートは遠くから見守り
煙草に押し当てた。
現在は時刻10時。
メルが起きて来た
9時頃から少し過ぎた時間。
開店とほぼ同時に来た為か、
人通りが少なく
割と買い物にはサクサクと進む。
…ひょっとしてオリアス先生の家系魔術あたり
何処かに出して使ってる?
って位にはサクサク買い物が上手くいく。
あれ?本当に出してない?
でも言葉使ってなかったし
いやいやでも…
『ーん!エイトさん!!』
「っ!!ああ、ごめんごめん何々?」
そう深く考えていたイフリートに
メルが声を掛けていたことすら気付かなかった。
詫びていると、どうやら次の所に向かうとのこと。
魔術で物を小さくして
コンパクトにしている所
本当に二人だけで用事は済むらしい。
店内で吸える訳もないので
ちゃんと店の外で待って
煙草を吸って待っていたのだ。
イフリートは煙草の火を
近くの吸い殻入れに入れて
次の場所に向かうメルの元に歩み寄った。
「もう買うものないんじゃない?」
『馬鹿、風呂の物あるだろ。
洗わないで生きるつもりか。』
「あ〜〜〜確かに」
「え゙今まで洗わなかったんですか?」
「あら、私樹になれるから
そもそも栄養分は
地面から吸収してたのよ?」
それに悪魔と出会う機会も殆どなかったし。
そう言った魔樹にイフリートは納得した。
確かにそれはそうだ。
悪魔は無駄なことを嫌うし。
「にしても年月が経てば
色んな小物が増えるのねぇ〜
昔はこんなものなかったのに。」
『へぇーそうなんだ。
ああ、あそこ入ろうか。』
そう魔樹の手をさり気なく取ったメルに
少しムッと気持ちがもやるのを押し込み
イフリートは外で待つようにメルに伝える。
それにこくりと頷いて
『ほら待たせるから早く行く!!』
と苛立ちを前にだして
魔樹の手を強く引っ張って
店内に入って行った。
全く、その勢いをまんまではなくても
少しくらい僕にも分けてほしいものだが…
イフリートはそんな気持ちも知らない彼女を
ただ眺めてまた新しい煙草に火をつけるのだった。
++++++++++++++++++
主人公サイド
いやー買う物が多い多い。
馬鹿じゃないの。
日用雑貨は馬鹿にならないから。
ペンとかメモ用紙とかは勿論
着物とか一週間程度は
まぁ買って、タオルもまぁ買って。
そう初期何が必要になるのか分からないが
ひとまず前世で生きていた記憶を頼りに
荷物を買っていくメルに
「良いの?」と魔樹が声を掛けた。
『ん?』
「あの子、放置してて」
『…ベタな話を聞かせるつもり?』
そう言ったメルに
魔樹はいいえと首を横に振った。
彼も彼とて面倒事は嫌いらしい。
魔関署に捕らえられた話を聞いたが
どうやら魔関署が
出来る前から行っていた行事らしく
なんならこの事を知るのは
もう魔樹と前の魔王位だとか。
サリバンは話を聞いたことが
あるかもしれないけど
憶えているかどうか定かではないらしい。
ちなみに友人にポロちゃんという悪魔が居るとか。
…いや、誰だよポロちゃん。
彼とは音が合うらしく仲良しで
ずっと会話していく中で
いつの間にか口調が移ったらしい。
…つまり私はずっとポロちゃんと
会話していると言っても
過言ではないのでは????
そう不思議に思っているメルに
魔樹がコレが良いと荷物をかごに入れていく
『…そういや魔術を使うのにあたって
「貴方の想像通りよ。」
つまり通常の長さということか。
成る程、まぁ予想よりも短く設定して…
えーーっとだな、日本人の
女性平均寿命って何歳だったっけ〜〜
87?92?65?
いや流石に最後は無いな。ないない。
でも魔術を使って身体を酷使していくから
多少の消耗はあって当然と仮定したら…
『(40年…か)』
割と長い時間ではあるが、
悪魔からしたら一瞬だろう。
軽くのんびりしていたら
割と即死ではないだろうか?
エイト…と、その時は。
『(私は伝えられるかな)』
本物の人間だと。
すぐに消えて居なくなる者だと。
貴方を置いて世界から消えてしまうと。
…それは、余りにも酷というものではないのか?
魔術を使いたかっただけであって
恋をするつもりはなかった。
そんなつもりはなかったのだ。
…でも
長く居続ければ人間は
欲がでるもので
『(でも永久に生きたいとは絶対思わない。)』
人間は短い寿命があってこそ、
考えられないものを
思いついて成すことが出来るのだ。
それで化学は発展し、
空も一人で飛べるわけもないのに
飛行機を作って飛べるようにしたし。
何なら宇宙にだって行けるように
ロケットをバンバカ打ち上げている位には
人間界は発展している。
魔界に宇宙があるかどうかは定かではないが
人間の探求心が世界を広げているような気がするのだ。
そう、人間には探求心という
欲が存在するから。
『(私は…そんな欲は、ない。)』
臆病で、縮こまって、その場でしか息をしない。
渡された場所だけでただずっと息をするだけ。
自分から手を伸ばすことを…
掴んでも叶わないのだと知り、
諦めてしまったのは
一体、何時からだっただろう。
「…何を考えてるのか大体想像つくけど。
貴方の人生なのよ。メル。」
『…うん。』
「貴方が望んで貴方が掴んだものが此処よ。
それをとやかく言う者は
今何処にも存在していない。」
ーしたほうがいい!
そう言って自分の道を塞いで
行ったもの達は居ない。
だからそうしなくていい。
そうしなくていいのだ。
でも、それでも…
しがらみは消えるわけでは無い。
一生、記憶として存在している限り
決して離れることはないのだ。
『ありがと』
「いいえ。貴方のその音も、とても綺麗で
…中毒性があり過ぎて困るけどね。」
このどうしようもない感情が?
人間界に帰りたいと願う思いが?
その帰った先は、
例え地獄だったとしても?
そして帰りたいと願う反面
帰りたくないとも思う
この矛盾した感情が?
それにコクリと頷いてくれた魔樹。
嗚呼…確かに、
貴方の傍に帰れたら、どれ程幸せだろうか?
だが
『(もう…戻ることは許されない。)』
愛してしまった。
恋をしてしまった。
好きになってしまった。
だからこの場所にいる。
息をしている。
たとえ人間であっても。
私は、私はこの場所に生きたいと願ってしまった。
だからなるべく迷惑をかけないで
自分の力で前を切り開いていきたいとは、
思うようになった。
それには魔樹も否定してくれていない。
ありがたい話だ。
振り返ると痛々しい思い出ばかりが蘇る。
彼が多くの感情を抱えてくれていたらしい。
…全く、頭が本当に上がらないな。
この感情が帰ってきたことに
喜びを感じてしまう程。
私はとても黒くて
白いものとは
かけ離れているというのに。
「貴方の力は凄まじい。
プチ悪周期になった時
思った通りに力は発揮される。」
『なるほど、だから耐性を付けてたのね。』
小さい頃から。
それなら食事位も耐性つけなさいよ。
そう言ったメルに
ソレは無理と魔樹が断言した。
「食事は欲だからね。
貴方が望まないと食事は出来ないわ。
…まぁだからこそ此処に残らせるのよ。」
『…あれ?ひょっとして
私が食べる様になって
不思議で見に来てくれたってこと?』
そう言うと目を丸くした後そっぽを向いた。
こんな表情は初めてであって…
メルはへぇー?とニヤニヤして魔樹を見た。
うんうん。
可愛らしい所もあっていいじゃない。
「っな…そうよ、悪い?」
『ううん!嬉しい!!』
「…あいつが変えてくれたのね。
貴方のその力を。」
『へ?』
「何でもないわ。
次の場所に移動しましょう?」
そうだ、次いでだから〜
そう先程の仕返しをするかのように
悪い顔になった魔樹に
メルはこの後
後悔することになった。