Novel - Carla | Kerry

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For the Love of Mercy3

act 3.

「探し物ですか?」

「そ!何でも事務で落とし物の内容と
上がってきてる物が一致しなくて困ってるらしくてさ。」

『ダリ先生に相談したら
オリアス先生の家系魔術ならって…』

「別にそんなのお安い御用ですよ。場所は?」

『あっ!こっちです!!』

そうトテトテと歩いていく
メルの後を追う様にオリアスも移動する。


職員室を出て事務の更に隣にある
小部屋に入り電気をつけた。


『半年に一度整理をするんですが
…まぁ今回ちょっと予想以上に多くてですね。』

「うわぁー…こりゃ大変だね。」

そう帽子を上げて驚き言うオリアスの前には
山を描くように物があふれかえっていた。


書類も結構山積みになっており
空き時間が無いと
片付けられない状態が続いて
このありさまだ。


通常ならちょこちょこ見て片付けていたのだが
今年は例年よりイレギュラー(主に特待生のトラブル)
が立て続けに発生してしまい
中々手が空く時間がなかったのだ。


『オリアス先生手汚れない様に手袋渡しますよ。』

「いやいや良いよ。一応替えあるし。」

『なら、いいんですが…』

「それに俺の家系能力があればサクサクっといくさ!」


そうペンと紙を持って言うオリアスに
メルは首を傾げた。

よくよく見たら積まれていた用紙の一枚だった。
ペンをことりと落として伝える。

「多分そっちの方角にあるよ。色は黄色」

『えっ…ドコドコ?』

「ん〜難しいなら交代する?
君が教えて?俺が探すよ。」


そっちの方が多分早い、ほらみっけ!
そう言って出してきた黄色のキーホルダーに
嘘嘘とメルが目を丸くした。


「ね?言った通りでしょ?」

『〜っ!分かりました。すいません
お手数かけますがよろしくお願いします!!』

了解!そう言って笑うオリアスは位置についた


++++++++++++++++++

「んーとりあえず此処までにしようか。」

『はい…(凄い甘く見過ぎてた占星ラッキーハッピー)』



なんと開始から2時間で半分以上の落とし物と用紙が一致したのだ。
もう残りは3分の1に近づいていたが、
メルの集中が切れかけていたので
無理させてはいけないと感じたオリアスは休憩を申し出た。


確かにメルが言った通り
オリアスの手は予想以上に汚れており
こんなの自分の魔術で綺麗になるのではあるが、
メルは流石に申し訳ないと言って
魔術を使って洗うと言い出した。


「じゃあ…お願いしようかな?」


そう言えば高位魔術を自在に操れるという噂もあったし
お手並み拝見するには持ってこいの状況ではある。

メルは切れのある良い返事をして
オリアスの前に座った。


失礼します。と言って手袋を外し
中まで割と汚い事になっているのに
オリアスは顔をゆがめた。


流石に悪いと思ったが、
メルが目を閉じて
口を少し開けながら
いや何かを言っているのを見た。


何かが分からず
ただ口パクで音として聞こえない。

だが確実にメルの中に
水が生まれだし浮遊していた水は
そのままオリアスの手に触れる。

触れた水は徐々に汚れを落としていき、
なんなら手袋の汚れまで落としだす。

そしてそのまま水は消えてなくなり、
ただ少し濡れた手と
びしょびしょの手袋が浮かぶ。



『…よし、次は』


これをこう!そう言って
指をひょいひょいっと左右に振ったメル
手袋が一瞬で乾く。


すいません手触れても?
と言ったメルにどうぞと答えた。



『ん〜傷もなさそうですね。
あー悪魔に使ったの初めてだったんで
何もなさそうで良かったです…』

「凄いね…噂通り
本当に高位魔術をいとも簡単に」


『え?あっ…いや?
アレは高位魔術じゃないですよ???』

「いや嘘つけ、あの水の量と
汚れを落とすだけの技術は
中々出来ないって。」


そう流石に言い逃れしようとする
メルの言葉に突っ込む。


何も言わずに
優しく洗い流してくれたのだ。


「ありがとね。
使ってた時よりも
綺麗にしてくれて。」


『いえいえ!前から綺麗だったと思いますよ?』


「いや流石に長く使ってくと
取れない汚れとかついちゃうから。」


ああそうですね。そう笑うメルは
それ位で良ければやりますよと答える。

いやいや流石にそんなこと
させる訳にもいかないので
丁寧に断っておいた。


『それにしても意外です。
私に触れさせてくれるとか。
オリアス先生って
物に触れるの嫌で手袋してる物だと。』


「あー間違っては、いないけど
…君高位魔術使えるって噂聞いたの覚えてる?」


『ええばっちり』

「高位魔術を無口頭で言えるの
この目で見たかったからって言うだけだよ」

『ああ!それなら言って下さいよ〜!
もー!魔術使うの私好きなんですよー!!』

「っうぇ?そうなの??」

予想外の答えに思わず変な声が出たオリアスに
メルは何も反応せずただそうですよと答える。


『私あらゆる魔術も使える
超優秀な悪魔になってみたいと思ってまして!
なのでモモノキ先生とか超羨ましくて…』

「声かけたげればいいじゃない…」

『いやモモノキ先生近寄りがたいと言うか
…こう私が話して能力落ちたら申し訳なくて。』



そんなので効果落ちる
家系魔術があった方が恐ろしいわ。

そう思いつつオリアスは手袋をキュッと
音をさせながら手につける。


うん、肌触りが良い。
細かい粒子まで洗い流したんだな。
あの一瞬で。




あの一瞬で。


そう改めて彼女の無口頭魔術(高位魔術)が
如何に器用でとんでもなく高難易度なのかが
手に取って初めて分かった。
オリアスは一瞬ぞっとした。
額から脂汗がどっと出る。


『ではあと一息ガンバリマスか!!』

「って言いたい所だけど、用紙実はもう無いんだよね。」

『え゛…じゃあ残りはアレですか。』

「もう処分して置いたら?悪魔も忘れっぽいし。」

『うーん、そうですねぇ。
もうちょいだけ保存して
駄目なら処分しますよ。』


今日はありがとうございました!
そう笑顔で言うメルに
いえいえとオリアスは答える


「あ、今度から直接触れたい時はちゃんと口で言ってね?」


『…………え゙っ!!??』



「君のお願いなら触れさせてあげるから」


そうにやりと弧を描いた口元に
人差し指を指してウインクするオリアス
扉の前まで歩いていくのに対して

メルは顔を青くして部屋の奥に
あとずさりながら『何で』と言いたそうにする。

何時からと言ったメルの声は届いていないのか
オリアスは手をヒラヒラさせて歩いて消えた。



『………アレ、これ
オリアス先生ひょっとして
結構前から気付いてた?』




そう止まらない冷や汗に
ひとまず持ち主のクラス分けを
しなければと意気込むことに
メルは意識を切り替えたのだった。


++++++++++++++++++

それから更に2時間後
ようやく忘れ物が整理出来て
今3年2年と上から順に
落とし物が入ったかごを
職員室に移動している。


それを見つけたのか
目に止まったのか声を掛けられた


「安名先生
どうしたんですか?
そのかご」


『ああマルバス先生こんにちわ。
ああ今年前半期の落とし物ですよ。
ちょっと溜まってしまって
担当の先生には悪いのですが
お返しして欲しくて。』


こんにちわ。

そう返したマルバスは
手伝いますよと言って
メルの持っていたかごを持つ
女性が持つには少し

いや結構多い量だ。


重力操作フラクタル
使用していたとしても
かなりの量にはなっている。


『いえいえ!悪いですよ!!』

「いや何時もお世話になっていますし
これ位お手伝いさせて下さい。」


何時もの礼、恩返しとして。
そう笑うマルバスに
メルはそれではお言葉に甘えてと笑って返す。


『それは2年のです。まだ1年のがあって』

「了解。用紙の貼ってある先生所に
置いて来ればいいんだよね?」


そうマルバスは持っていた所に
貼ってあった用紙を見て答える。
それにメルはそうですと
コクリ縦に一つ頷いた。


『すいませんお手数かけますが
よろしくお願いします。』


「いえいえ、それではおいてきますね。」


そう言って踵を返すマルバスにメルは急いで
他のかごを持ってくることにした。


小部屋に入って次々と重力操作フラクタルを掛ける。
これ位一度にかけても造作もないことだが
何にかけたのか分からなくなるので
持てるものだけかけるようにしている。


『よし、あとは』

「コレ運んだらいいの?」

『っうぇ!?びっっっくりしたぁ』

「ごめんごめん!驚かせちゃったね…」


そう手を叩いて手を合わせ
謝るのは警備担当のイフリート先生だ。

背後の気配が全くしなかったため
驚いて身体が浮いた後
数メートル引いたメルに
イフリートが謝った。


『いえいえ、私も気付かなかったの
悪いですし…ってえ?今何て?』

「え?コレ運んだらいいの?って」

『いやそうですけど、いや…?』

「あ!イフリート先生じゃないですか。
お手伝いですか?」

そう入ってきたマルバス先生に
イフリートはええと答える。


「女性が重力操作フラクタルを使っているとは言えども
この量を往復させるのはちょっと羽が折れると思いまして。」


それは骨が折れると言うのではないのか。骨が。


「ですよね〜もーメル先生
教員の一人や二人
とっ掴まえて働かせても損ないよ?」

『いっいや、ですが皆さん忙しそうですし…』

「手空いてるかどうかは本人次第だからね。
それに空いてなくても
これ位ならすぐ手伝えば終わるし。」

よっとそう言って荷物を持つマルバスに
メルは待って下さいと駆け寄り
重力操作フラクタルをかける


「っえ?いや大丈夫なのに
…ってか今まで全部使ってて疲れないの?」

『え?疲れません…よ?これ位
3倍あっても多分疲れない』


と思います。

そう言ったメルにええええとマルバスは驚く。

例え使い勝手のいい魔術でも
魔力消費は馬鹿にならない。

それを連続で
しかも大量の量を相手に使用して
尚疲れないし


何なら魔力の底が尽きないと来たのだ。


まぁ高位魔術を無口頭で言える時点で
余程の力の持ち主ではあるのだが。


彼らはまだメルの本気を見たことがない為
其処まで気付いていなかった。



「…凄いね、流石に羽折れると思うんだけど」

『いやー皆さん巻き込んで迷惑かけるよりも
自分でやった方が良いかなって思いまして!』

そう両手に荷物を持ったメルが
とことこと部屋を出ると同時に
イフリート達も荷物を持って廊下に出た

「いやいや普通に凄いって
…メル先生他に何が出来るの?」

『何って…そりゃあ水に風に火に土に?』

「火!?炎出せるの!?」

『…あ、イフリート先生炎の家系でしたっけ?』

そう言えば確かにそう言ったメルに
そうだよとイフリートは答える。

今度見せてよーと、からかうつもりで言った
イフリートにメルはあっさり良いですよと答える。

「っえ?」

「いいの???」

『え?良いですよ?
お手伝いしてもらったお礼ですよ。』

「いや何時もお世話になってるから
お礼に手伝ってるだけなんだけど」


そう言ったイフリートに話を聞いていないのか
メルが職員室に入り
用紙を見て先生の机に物を置き始める。

それに引き続き
イフリートやマルバスも
机に置いていく。


『いやいや、皆さんのサポートを
するのが私の役目ですから…』

「そうは言うけどね〜
あんまり抱え込み過ぎちゃ駄目ですよ?」


現に今も結構な量じゃないですか。
と言うマルバスにメルはうっと唸る。

彼女の悪い癖でもある
「抱え込み」は
自身も良く良く分かっている。



「そうそう、悪周期になって
倒れたらどうするんですか。」


『…いやー、別にそこまでは。』


というか実を言うと、
悪周期にぶっちゃけるとこの方なったことがない。



いや正確には無くはないが
…ただ転生したことを知ったのが
ほぼ赤ん坊の時からであって






おかげ様で割と苦労しました。





血生臭い戦いから逃れるようにうまくなったし
実は未だに食事が苦手で割と困難である。

前途多難大いに結構なこの世界。


まぁ唯一の救いは周りのひきが異常に良い所。

周囲の寄ってくれる悪魔は
比較的温厚で優しい悪魔達ばかりだ。

だからこそ私はこの場所に居させてくれてありがとう。
と言う気持ちでこの場所で仕事をさせてもらっている。



「それとも、僕達じゃ役不足?」

『〜〜っ!!ちちちちがっ!!!』

「ふふっ、じょーだん冗談!
少しずつで良いからさ、頼ること覚えよ?」

そう言ったイフリートに
むぅと膨れたメル。


『…私、この学校が好きなんです。』



皆仲良くてとても居心地がいい。


勿論忙しくて嫌な時だってあるけど
それ以上に皆と居られるこの時間が
ずっと長く、続けばいいのにって。

そう言うメルにイフリート達は
顔を見合わせてくすりと笑う

「安名先生がそう思ってくれるから
皆さん動くんですよ。」

『…私が?』

「ええ、真面目で集中したら止まらない
悪魔らしくない悪魔の貴方を
放置して置く悪魔が居る筈もないですよ。」


えっ私そんな通り名というかついてたの!?
そう驚くメルにうんうんとマルバスが頷く


「もうちょい肩の荷を降ろしても良いんですよ。」


ほらもう終わり。
そう言ったマルバスにメルも小部屋を見る。

話しているとあっという間に片付いた部屋に
目をキラキラさせて『おお…』
と声を漏らしつつドアを掴んで言うメルに
ね?とマルバスは答えた


「皆でやったら早いでしょ?」

『〜っ!ありがとうございました!!』

「いえいえ」


そうニコニコ笑って答え手を振るマルバスに
メルは勢いよくぺこりとおじぎをした。

「そいじゃ、安名せーんせ。
付き合ってくれるよね?」

『…へ?』



++++++++++++++++++


『え〜っと、本当に良いんですか???』

「良いよって言ってるじゃん…」


そう何度目かの承諾に
イフリートは軽く呆れて答える。

放課後、師団も賑わい終わった後だ。

皆帰っていくのを見守りつつ
生徒が居なくなった所で
メルの魔術を見ると同時に自分の炎を見せる


いわば見せ合いっこをする
約束を果たす為に中庭に移動していた。


「って言うか、安名先生
暗くなっても大丈夫なの?」


僕としてはそっちが心配なんだけど。
そう言ったイフリートに
メルは『はい』と首を縦に振る


『私女子寮で生活しているので
特に問題ありません!』


「へぇ!そうなんだ、俺と同じだ。」


『イフリート先生も寮生活なんですか?』


そうだよ。

そう言って少し距離を離れ
煙草に火をつけ煙草を吸い始めるイフリートに
メルはふぅんと声を上げた。

「あ、煙草の煙いくでしょ。」

『あいや煙草は特に嫌いじゃないですよ。吸いませんが。』

「へぇ、意外。安名先生苦手かと思ってた。」



だから凄い距離離したのに
そう言ったイフリートに
メルは良く言われます
と言って近づいた。


『煙も操作出来たら面白いなって思って、
小さい頃良く森で焚火した煙を使って
お絵描きしてたんですよ!』

「えっ、何それなんだか
凄い危ないことしてない??」


小さい子が森の中で
しかも火を使うとは
教育どうやってるんだろうと不思議に思う。


怪しんだイフリートに
メルは訂正を入れる。


『ああ勿論水バケツも完備してましたよ!
…ってことでイフリート先生
その煙使っても!!!』

「ふふっ、良いよ。」


そう言ったイフリートは少し笑った後
メルの目線から外れ
煙草を吸い空に解き放つ


それを見たメルは礼を言った後
両手を使って煙を捕らえる
そのまま線を描き円を描き始めた。


「おお、やるねぇ…それは、花?」

『へへ!!お花ですよ!じゃあこれは?』

そうニヤニヤしながら
指を空になぞるように動かすメルに
イフリートは「んー」と言いながら答える。


「あ、分かった!ダリ先生!!」

『正解!ほら吸って吸って!!』

「ちょ、待ってって」


急かせるメルに少し慌てるイフリート
確かにこれだと煙草の煙ではすぐに消えてしまうだろう。

焚火程の煙があれば余裕でお絵描きは出来る。


…だがそんなのに魔力を使うなんて
勿体ないと思う自分も何処かにあった。

が、彼女が嬉しそうに
目をキラキラさせて言うものだから
それ以上言うのも悪いと思った。



それに



「(…そんなキラキラした目で見られたら、ねぇ?)」


何時もは明るく元気そうな姿で
いつぞやツムル先生が初対面と実際会話して
仲良くなった悪魔で印象変わったの誰?

と聞いていた際、「メル先生」
とダリ先生が答えたのが
意外と思って皆ワイワイしていた。



「彼女見た目明るくて元気なんだけど
話せば話す程縮こまって弄って楽しいんだよね。」

という話を酒の入った前で言っていた。


かなり酔っていたから
恐らく酒が入っていないと
言わないことだろう。


確かに初対面会った時は
ちょっと元気過ぎるかなぁとは思った。

ツムル先生が
「ストラス先生とロビン先生足して2で割った位」
と言った時は聞いていたその場に居た全員が
「嗚呼ー」と声を一致させた位だ。


これは憶測だが
多分根はoffのオリアス先生と変わらないだろう。
彼も押しに弱いし
何ならONの時はキラキラしているのに
OFFは暗く印象が逆転する。

そう考えたら
彼女は言うなら女性版のオリアス先生だ。
まぁ憶測にすぎない為
OFFでも元気な可能性はあるが…



『んーイフリート先生
炎って先に見ても構いませんか?』

「ん?良いよ。ほら」


そう言って片手人差し指を立てて出した炎に
メルは目をキラキラと輝かせる。


『おおおおお!!!!
凄い凄い凄い!!凄いです!!』

「そ、そう…?そんな喜ばれるとは思ってなかったな。」


『いやいや!めっっちゃくちゃ
綺麗な紫色の炎じゃないですか!!
え〜!いいなぁ〜〜!!!凄い!
えっ凄い!!!中々こんな
透き通った色見れない、ってか
見た事ないです!
うわぁ〜!きれい〜〜!!!』



おお、凄い褒めてくる
…この子テンションハイになると
もうロビン先生と変わらないな。


『えっどうやって火力維持してるんだろ…
普通バーナーだと周り赤色になって中青くなるから
でもこの炎外も中もほぼ紫だからもうこれは同じでは?
えっこの小ささで?火力維持して綺麗なの出せるの凄すぎ』


「ちょちょ、待って待って、とりあえず落ち着こうか。」


流石に褒められ慣れてもない為
其処までガッチガチに褒められると
此方としても照れるものがある。


イフリートは片手を前に出して
メルに止まるよう指示を入れる。


すると気付いたのか
ああごめんなさいと
頭をかきながら笑い距離を取る。


「いや気を悪くしないでね?
ちょっと勢い強くて驚いただけだから」

『いえいえ、私もちょっと興奮し過ぎました
…すいません。』


そうおじぎする彼女に
此方こそごめんと答える。

確かに、ダリ先生が言っていたように
彼女は知れば知るほど不思議な子だ。

先生に声をかけず
ただ事務作業をしているので
会話をしている所を見かけるのは
割とレアな現場だったりする。



それ程彼女は教員と会話をしている所を見ないし

まぁ見れたとしても
恒例のダリ先生が安名先生を
教員に引っ張り入れる
痴話話が巻き起こる位だ。


「にしてもこの炎そんなに綺麗?」

『ええ!少なくとも私は出せません。ほら』


そう言って出した彼女の火は
両手にいっぱいの炎が広がる

無口頭で出した割には
かなりの高火力な気がする。


と言うかこう自分が言うのもなんだが
…素手で大丈夫なのか熱くない???


流石に熱いらしく
数秒でアツアツあっっつ!!と言って
両手をブンブン手を振って
そこら辺をウロウロし始める

確かポケットに
とスカートに手を突っ込んだメルに
それは?とイフリートが指を指した。



『ああ、魔術を使う時に使用する手袋です。
耐火性抜群の超お気に入り手袋なんですよ!』


そう言ったメルが出して付けるのは
指の部分に覆いがない
フィンガーレス・グローブだ。


薬指に金のリングが付いており
金のリングを中心として
左右に広がる黒の布は
彼女の手にピッタリと馴染み
まるでタイツの様に密着していた。


「へぇー珍しい形だね。
それだと熱くないの?」

『寧ろ指出さないと何か嫌で、
きっちり付けてる悪魔
見ると凄いなぁって
尊敬の目で見てます。』

「あーオリアス先生とか?」

『そうですそうです!!此間わけあって
手見せて貰ったんですが滅茶苦茶綺麗でしたよ。』

「え?ちょっと、待って?待って?
ちょっと待って?あのオリアス先生が?!」



あの潔癖症を疑うオリアス先生が!?

そう驚いたイフリートに
メルは、はいとコクリ頷く。


『ちょっとわけあって手汚しちゃったときに
見せて貰ったんですよ。』

「あ〜なるほど、びっっくりした、
てっきりオリアス先生が
手袋外して何か触れたかと思った。」



彼offならまだしもONの時
完璧な位きっちりしているからな。

そんな悪魔が手を見せるなんて中々ない。
と言うか激レアにも程がある。


水に濡れたとしても
手袋を外さない彼なのだが…


『いや〜そんなことないですよ〜!
あっほらこれとかどうです?
良い感じに炎出せましたよ!』


そう切り替えて言うメルに
イフリートは目を合わせた

確かに先程よりも
綺麗な赤色の炎を出している。



「へぇ〜確かに、綺麗だね。」

『へっ!?わ、私の
この炎綺麗です、かね?』

「え?うん。綺麗だよ?だってさ」



そう手を触れ炎をそっと
すくい取り自分の魔力を注ぐ


「こんな温かい炎は中々作り出せない。」


魔力を入れても赤は尚赤く輝き、うすっすらと
周りを紫が囲むも中心はずっと赤く光り輝いてる。


でも見た目よりも熱は無く
まるで誰かに触れても良いかの様に。



「僕の魔力を注いでも芯がしっかりしている。
炎を使う家系の僕が言うんだ。これは凄く綺麗だよ。」


『〜っ!…へへっ!ありがとうございます!!』

「っ!」

そう嬉しそうに笑うメルに少し驚いた
無邪気に笑うメル、キラキラとした目で
イフリートの手からまた炎を受け取り
大事そうに両手で頬に近づけて笑う


『ふふっ!温かい〜』

「こらこら、むやみに顔を近づけるんじゃない」

『大丈夫ですよ、イフリート先生も
触れられるように抑えてくれたの分かったので。』


え?そう言ったイフリートに
メルはクスリと笑った。


『にしても綺麗ですね〜!
でも炎はやっぱり…赤が良いなぁ。』

そう言ったメルは両手をバッと広げて見せる
するとその両手から大きな赤い花が咲き誇る。

花弁が細く何重にも外側を開く彼岸花のような姿で
花弁の下茎の部分には緑色の光も放っていたのに
此処までの技術があるのかと驚いた。



『へへ!綺麗だったなぁ〜!!
イフリート先生ありがとう!
また見せて…はっ!』


すいません!ついテンションハイが続くと
敬語抜けちゃって。

そう焦り両手で口を塞いで後ろを向くメルに
イフリートは先程の彼岸花が
頭にいっぱいでそれどころではなかった。


「へ?あ、うん、いや…いいよ
敬語抜きで話してくれた方が
僕も話しやすいし。」

『…え?いい、ん、の?』

「くくっ、どっちでも良いよ。
僕は敬語抜きの方がいいけど?」

そうにやりと言ったイフリートに
ズルいと頬を膨らませて言うメル

全く、ズルいのは一体どちらだろうか。
君の方がずっとずっとズルいと思うが。


『じゃあ、はい!』

「ん?何この手」

『えっと、敬語抜きの…印?』


握手しましょ。そう言って手を出した
メルにイフリートは手を取った。

「よろしくね、メルちゃんって呼んでも?」

『構いませんよ!私はエイト先生って
呼んだらいいですかね?』

「いいよいいよ!
何なら呼び捨てでもいいよ?」

『それは彼女さんの特権でしょう。』



おやそれは流石に駄目か。
そう言ったイフリートに
私のことどう思ってるんですか?
とむきになり言うメルについ笑ってしまった。

つられてメルも笑いお互い笑いあった


「はー、にしても
こんな君が面白い子だとは思わなかったよ。
もっと早く声を掛けるんだったな。」

『そうですか?
私そこまで面白い子じゃないで…よ?』

「くくっ、いいよ、慣れてきたらで。
流れに乗って敬語抜いてる所見るし。」


こっちが楽にしてたら
君も楽に喋り出すでしょ。

そう言ったイフリートに
メルはそれもそうですけどと答える。
どうやら不服らしい。


「もう時間も遅いし送るよ」

『いや女子寮ですし!
それにもう放課後ですし
人居ないから』


「だーめ。そんな時こそ怖いんだよ。
確かにバビルスは安全な場所ではあるけど
侵入者が全く入ってきていない訳ではないんだから。」


えっ居るんですか。
そう固まるメルに
イフリートはうんと頷いた。


『ちなみに血なまぐさいことも…?』

「まぁ…そりゃあ相手が駄々こねたら」

『ひぃっ!!』


ぞっと青ざめる彼女
どうやら血生臭いことは駄目らしい。


マルバス先生の授業を知ったら
彼女どうするんだろう。


逃げるかな?それともそのまま居るかな…?


まぁそんなことはどうでもいい。
ひとまずこの場から外れるか。


「ほらそんな薄暗い所に
取り残されたくなかったら早くおいで」

『ああああ待って待って待って待って下さい!!
やめておいてかないで!!!』



そう荷物を無理やり掴んでイフリートの近くに
急いで走り込んできたメルに冗談冗談と
口の笑みを隠すように手で覆い笑うイフリート



『もー!意地悪するんだから…』

「ごめんって」

『こここれでもバビルスの一員ですから
ててて敵が入ってきてもわわわ私の高位魔術があれば』

「怖がってるの丸わかりだからね?」

そんなことないもん!?と叫ぶメルに
久しぶりにこんな笑ったと
イフリートは考えていたのだった






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