放課後
授業が終わるチャイムが鳴り響く
ザカザカと砂利が鳴る音を立てながら
メルは森の中歩いていた。
此処は東校舎…の離れにある森みたいな場所。
黒い髪の毛の影と茶色の影に気付いて足を歩めた。
「やっと来た」
『すいません。ひたすら動いてたんですが…』
「分かりにくかったでしょ。」
はい、と頷いた。
ダリとイフリートは二人して
煙草を吸って待っていたらしい。
丁度切れる所だったので
良かったと言って
ダリは煙草をポケット灰皿に入れて消す。
「じゃあ説明しようか…ね?魔樹さん?」
『魔樹!?』
「いいわよ〜此処で見ているから。」
そう木の上にいつの間に居たのか、
魔樹が手を振って木の幹で腰を降ろしている。
いや前から居たのだろう。
全く気付かなかったのが駄目だ。
「そ、気付いた通り魔樹さんの場所が
気付かなかった位、君は危機感がない。」
『っ!!』
「…こんな風に、
攻撃に反応が時間がかかる。」
瞬発力が無い。
そう言い切るダリにメルは頷いた。
それは自分でも思っている。
「君の一番弱い所は“諦める速さ”だ。
諦めるのだけは異様にはやいが…
それを今回二週間で叩きあげる。」
ついて来なよ。
じゃないと生き残れないから。
そう言って目を開けるダリに
メルは睨み返した。
「まずは僕の指示通りに動くこと。
君の拒否権は無い。
必ず僕の指示に動いてね。
勿論意思を持った上で動きなよ?」
『…わかりました。』
最初から諦めてかかろうなんて。
楽しようなんて思うな。
そう言われている気がする。
「よし、なら今から炎しか使わずに、エイト先生と戦って♪」
『っえ゙っ』
「どん位で行けばいいですか?」
「ん〜死なない程度が良いんだけど。
最初の火力が見たいから、緩くでいいよ。」
「了解♪」
そうにやりと笑うイフリートにメルは首を横に振る。
ちょ、ダリ先生と戦うつもりでと思っていたメルに
おやとダリは驚いた。
「僕が出る迄でもないよ。
君の彼氏とんでもなく強いから。」
「僕に傷一つ、いや指一つでも
当てられたら今日はおしまいにしたげる。」
『〜〜〜〜っ、やりますよ。
やりゃーいいんでしょ!!』
そうメルは手に力を込め、
赤い炎を揺らし始めた。
それににやりとダリは笑い
そっと翼を広げ宙に舞い、
大きな木の幹に降り立った
「じゃ、開始」
その直後、メルは身体を低くし前に走り出す
『(遠距離駄目だし近距離に慣らすしかない!!)』
そう思い、右手を顔に持って行くが
甘いのかスッと避けられる
左に避けられたので左に旋回し、
そのまま勢いで足を上げる
「おっと」
『っ!!(まだ!!)』
まだ指示はない。
なら連続で火炎を入れる!!
メルは足に付けていた炎を
更に手で出し飛ばせるのに
ダリが声を上げる
ー下がれ
『(っ!諦めるな!!引くだけ!!距離取る!!!)』
指示に従い、メルは少し距離を取る。
危ない危ないとイフリートが背中を動かしながら
肩をぽきぽきと鳴らして言う。
「僕だって君の動き分かると思ってたんだけど、
割と意外な動きしてくるね。」
『(聞くな、集中しろ。周りを相手を)』
集中なら人間得意だろ。
メルはそう自分に言い聞かせる。
ダリの指示を待ちつつ、
イフリートの攻撃をとにかく避ける。
チリッと火が頬に触れるのに目を閉じる。
駄目だ怯むのは諦めが入っている。
必死になって目を開ける為、
顔がどうしても歪む
メルは距離を取り息を整える。
「…これにやる意味は?」
「まず体力の底上げですね。
彼女食欲がないのは動いてないから。」
忙しい時は比較的食べますよ。
そう言ったダリにほぉと魔樹は答えた。
今はメルに指示を自由に動き続けろ。
とさせている為とにかく動いている。
そして敵の感覚を掴ませると言ったダリ
それには魔樹も驚きの声を上げた
「相手が好きな人である可能性だってある。
まぁそっちよりも人選的に彼女が手を抜かず
且つ威力を上げて食事を取れる者が
彼しかいなかったという所ですがね。」
「考えているねぇ…」
家系魔術を使って特訓を入れるメルだが
如何せん家系魔術の内容が内容だ。
彼女にはもっともっと、
使えるようになって欲しい。
たとえそれが別の悪魔の魔力を使った
人間だとしても。
「(君が此処に望んだということは、
それ程この場所に希望が見えると言うこと。)」
それはそちらの世界よりも甘美であるということ。
それは本当だろうか?事実だろうか?正しいだろうか?
分からないからこそ、
今はどちらに向かっても構わない様に。
ただ特訓を入れてやっているだけだ。
正直魔関署に叩きだしても良いとは思った。
それは彼女を何も知らなければ。の話だ。
彼女はメルは臆病で逃げる欲のない子だと言う。
だが自分はそうは思えないのだ。
彼女以上に欲の深いモノは居ないと。
彼女以上に理知的に動きやすいモノは居ないと。
「ただ、化けたらとんでもなく脅威になる。とは思いますよ。」
そう言ったダリに魔樹も頷いた。
「私達の力は悪魔の力を
最大限に引き上げて攻撃が可能。
…だから相手の事を知るのが一番。」
触れてただ使えるというのは初期なだけで
割と効果は無限大になっている。
遠くに指令として出すのも良し、移動も良し。
何なら一日中出して尾行するのも良し。
ー家系魔術を使って攻撃をしろ。
そう言ったダリにメルは声を上げる
『っ“幻想の箱庭”っ!!
イフリート・ジン・エイト!!』
そう叫ぶメルに
エイトそっくりの姿が出てくる。
彼の目はただ紫に光り輝いていた。
炎を出すのにイフリートもニヤリと笑い力を出す。
お互い互角の威力を出すのには少しだけダリも驚いた。
これ程見ているとは、
割と焦って見た目以上に
見えてないと思っていたのだ。
「…ほぉ?やるねぇ」
「面白いでしょ?あの子。」
君気付いてるだろうけど。
「っ…ええ。とても面白いですよ。」
そうメルがイフリートを出して
攻撃をしている中ダリは答える。
未だに彼の身体に一度もメルは触れていない。
「退屈凌ぎには持ってこいですが…
少しはしゃぎすぎると後が痛そうです。」
「それは、玩具が離れた時に苦しいということか?」
「ええ勿論」
「そうだな…それは仕方がないが、
お前は彼女を買って、これを渡したんだろう?」
なら私はこれ以上言う事はない。
そう言って魔樹は消えて居なくなる。
どうやら他の方を見に行ったらしい。
彼には
中間報告係として移動させているのだ。
今頃皆必死になってしがみついているだろう。
まぁそんな中、彼女も必死になってしがみつかせるが。
この魔界に、生き残るなら、
相当の覚悟を持ってもらう為に。
+++++++++++++++++
「今日は此処まで。帰るよ。」
『(っ、一瞬も触れさせなかった)』
自分の体格が妬ましいとこれ程思ったことはない。
メルは悔しい気持ちを抱きつつ首を横に振る。
駄目だ、そんな気持ち抱くなと
脳内が急に切り替え指令を出そうとする。
直後ダリからデコピンをされた
痛さに声も出ない
「こらだーめ。
その気持ちは持ち続けなさい。」
その為の特訓なんだから。捨てたら怒るよ。
そう言ったダリにメルはこくりと頷いた。
身体はもうボロボロで
出来るなら身体を動かしたくない。
だが命令は命令だ。
使い魔の時に命令できるからって
彼、吹っ切れすぎてない?
そう思いつつも、
メルは痛みを抱えつつ
足を引きずってでも動かす。
『(反省点的には割と合ってた。
意識はまぁ上出来。)』
呼吸が乱れたり、次の動きが鈍かったり。
集中し過ぎて周りが見えなくなってたり。
そう先程の反省を上げていくのに
ダリとイフリートは半目で
メルを睨んだのは苦笑いするしかなかった。
それ位分かって何故出来ないと言いたいのだろう。
私は日常的に高位魔術を使うとは言えど、
それはあくまでも
被害がない場合の威力まで下げたり
範囲を広げたりしているだけであって。
本来の高位魔術を
その通りに高威力に使った試しは正直一度もない。
それにはダリだけでなく
イフリートも許せなくて。
今回で高位魔術を
キチンと出せるようになることも
目標の一つに入ってしまった。
「ちゃんと食事は写真撮って送ってね?
一応監視も付けてるけど。」
『っ、分かってますよ。
ちゃんと調理して食べます。』
勿論逃げたら分かるよね?
そう感情を切るのに慣れていたメルに
ダリは指示をし、メルも首を縦に振る。
一応感情を切り取れば食べられるし
別に栄養として入れられる。
だがそれでは流石に不味い。
というかそれも直すために居るのだ。
メルは重い足を何とか動かす。
今日は直近で帰るだけで良い。
にしても
『(イフリート先生マジで強すぎ)』
ちょっと頑張っても
息がまぁ切れない切れない。
私がひぃひぃ言っている間
少し大きく息を吐いてふぅで終わりだ。
もう差が半端ない。
こんな体力なかったのか私。
駄目だな。
早朝マラソン、これ入れた方が良いな。
メニューも前に使っていたのを入れよう。
筋トレというよりかは体幹を9割にして…
「メルちゃんそれじゃまた明日ね」
「気を付けて帰れよ」
『はい…ご指導ありがとうございました。
おやすみなさい』
そうお礼を言って痛みを抱えながら
メルは帰り道を一人で歩く。
『(えーっとメニューあれかな、
腹筋はいれるけど
踏ん張りとかの感じと
速度からして腕の筋肉と動きを早くする…)』
何があったかな、
多分基礎からで良いよな。
そう思いつつ
メルは痛みを少し和らげるために
休憩で少し地面に身体を降ろした。
『…っふ、っ、ん』
痛い。普通に痛い。
絶対明日筋肉痛になる。
これはオーバーしてる。
そう身体の悲鳴を感じつつ、
メルは痛みを緩和するために
筋肉を少しほぐし伸ばしていた。
これをするしないで後が楽なのだ。
お風呂入った時にもしよう。
絶対夜寝る前もしないと
明日は激痛でこれ以上はしんどい。
そう感じつつ、
一通り身体を柔らかくした後
メルは食事を作るためにも
食材を買ってから寮に戻った。
+++++++++++++++++
次の日
昨日の夜寝る前にも
ストレッチをしたおかげで痛みはほぼ無い。
だが痛い所は多分
日を追うごとに出てくることを考慮して
割とビタミンが取れるものをちゃんと取る…前に。
身体が起きれるようにストレッチと運動。
軽いダッシュを早朝に組み込んだ。
『はっ、はっ、はっ
(足の踏切りが遅い。
多分これ影響するな。)』
今日の特訓に。
多分想像以上に引っ張る。
昨日のことを思い出しながら動かしつつ、
準備運動を行い
体幹の練習をしてから食事にする。
これを二週間毎日欠かさずすれば
流石に多少の筋肉も付くし
割と動けるようにはなってくるだろう。
事務をしていた自分とは打って違う。
二か月程前の自分と比べたら
色々違って面白いだろうな。
そう食事を終えて手を合わせ
ごちそうさまを言う。
食器を片付けて
荷物を部屋で入れ替えてから移動だ。
メルは急いで動くのに
降りて来たスージーとすれ違う。
『っおはようございますスージー先生!』
「ふぃっおはようございます。
朝から元気ですねぇ〜特訓ですか?」
『ええ…流石に言い渡されたメニューだと
身体が追い付かないのでこっそり追加で。』
「ふいっ!あらあら〜」
『まぁ倒れない程度にします!
それではまた学校で!!』
そう言って走って行ったメルに、
モモノキが声を掛ける。
「メル先生、元気そうですね。」
「ふいっ、そうですねぇ。」
今日も一日頑張りますか。
そう言ったスージーに
モモノキはコクリと頷いた
+++++++++++++++++
『っいっ、と!!!』
「うおっ!?」
「そこまで!!メルちゃん
この3日で良く其処まで上げたねぇ〜」
『へへ、やれば出来んですよ。やれば。』
そう息を切らせながらの為か
声を上げるメルに
イフリートはそれでもと声を上げた。
「初日よりかは
断然今の動きの方が良い。
何か裏でやってる?」
『まぁ…まぁ?』
「へぇ〜何してんの?」
そう休憩に水を渡してきたダリに
メルは受け取り水を飲み干した後
口を腕で拭い答える。
『っぱ…はっ……
そうですね基本体幹ですよ。』
「たい?」
『え゙っ体幹あれある気が…
あ゙〜えーっとですね』
そうだ悪魔とは言えども、翼が羽管がある
背中を筋肉を此処がこうだから
と言う指示が出来ない。
なにせ体の仕組みが違うのだ。
仕方がない。
『体幹って言うのは、
身体の軸がブレにくくするんですよ。』
「へぇ、そんなのあるの」
『軸が安定することで
筋肉をスムーズに動かすことができて
頭で思い描いた動きと実際の動きとの
ギャップを埋めることができます』
「あ、昔やってたやつ?」
そう閃いたように
イフリートが身体を動かして
メルに見せる様にする。
それにメルは
それと頷いて指を指した。
『筋肉付けるよりも体幹を上げた方が
瞬発力も上がりやすくて後の効果が良いんですよ。』
勿論ストレッチもしてますよ。
そう言ったメルにおおとダリが唸る
「へぇ…君そこの知識もあったんだ。」
『言いませんでしたし、
それに私足は速いですからね。』
逃げ足に近いがな。
そう思いつつメルは答える。
この間に
痛みが出て来そうな場所を
ストレッチする。
今の姿はほぼ動きが出来る様に
バビルスの服装のままだ。
動きやすい方が良いのだが、
瞬発力で困るのは服装。
動いた時に
前と違う速さに
違和感を持ちたくない。
メルは動いて
とにかく直感を
鈍らせないことを優先した。
おかげ様なのか、
二人から今日初めて褒められた。
正直実力の半分以下で
動いて貰っている為
嬉しいと喜ぶべきか、
悲しむべきか迷っている。
「ん〜判断凄い悪くないからねぇ〜
そのほかがついてきたら最高なんだよね。」
『そうなんですね…
私其処まで判断良いかな…』
「少なくとも僕が唸るって中々ないからね?」
毎回唸ってるけど。
君意外過ぎる攻撃仕掛けるから困ってる。
そう煙草をふくイフリートにメルは苦笑いする。
確かに冴えた時は割と良い動きで今日初めて
イフリートの髪の毛に触ったのだ。
少し本気出そうかなとか言われたので
割と困って泣きそうになったが。
まぁこのまま続けて居れば問題ないだろう。
最近考えることもそんな多くないし。
「…メルちゃんはさ、
どうして魔術を使いたいって願ったの?」
『私、ですか?』
「うん。ほら悪魔って
魔力あれば使えるじゃない。
君は魔力を使ってっても
他の悪魔の力を使ってまでしている。」
それって割と凄いことなんだよ。
そう言ったダリに
イフリートもそれは思ったと答えた。
「確かに何で魔術なの?
他に欲あったんじゃ?」
『…………私の親、
何時も怒ってばっかだったんです。』
そう体育座りになって
頭を膝の中に、太ももに押しやりいう。
『何しても怒って笑ってくれて
手を繋いでくれる世界は何処にもない。
それなら笑わせる位の力があれば良いのにって。
魔法位つかえたら、驚いて笑ってくれるかなって。』
人間だから。魔法なんて使えない。
でももし使えるのなら。
貴方の笑顔を私は見て見たかった。
まぁそんな魔法は無かったし
それに私はその願いは二度と叶わない。
『(もう過ぎた前世の願いなのだから)』
悪魔辞典を読みあさっていたのも
全部魔法で解決しようとしていた
浅はかな自分が居たのだ。
本当は分かっていた。
自分が動かないと怒っているのだと。
動けない自分に怒ってくれているのだと。
でも、それでも仲良くしてくれない世界に
何時しか諦めが手が伸びなくなった。
これは仕方がないことなのだと。
言い聞かせて夢の中に押しやらないと
自分がどうにかなりそうで。
「…そう」
『でも、もう叶わないんです…
それでも願ってやまない。』
そう言ってメルは顔を上げ両手を前に出す。
その中からは淡い光と共に
炎がキラキラと光り輝き始める。
『何度だって夢を見て
何度だって褒めて貰う。
…でもそこにあの人達は居ないし
其処が終着点でもない。』
だからこそ困っている。
この願いがどうか終わらないで欲しいと。
この願いがどうか、叶わないで欲しいと。
首を横に振り両手に現れた光は大きくなり
ただメルは身体を使って抱きしめて笑う
『私はこの時間を愛した。
愛してしまった…から、
それならいっそのこと魔法を使えれば。』
そうしたら、全てが叶って終わってしまう。
それでいい。それでよかった。それなら。
そうあるならどれ程良かったのだろう。
『魔法という使えない自分の手が使えたら。
叶って欲しくない夢が叶う。
矛盾したこの気持ちすら』
…愛してしまったから。
だから喜ばれた。悪魔に。彼に。
そう言ってメルは指を鳴らす。
そこに現れたのは全く自分と同じ姿。
でも、衣服は違って、何処かの世界の服装で。
『私は君に、ただ笑って欲しかった。』
だから私は魔法を願った。
ただ愛されたくて。そうだ、私は
『君が…愛されて欲しかったから。
魔術を使いたかった。けど』
そんなことしなくたって、叶えられたし。
その時間を貴方は
ただ、嬉しく抑え込んで笑ってくれた。
それだけで…私はもう、満足して良かったのだ。
手を伸ばしそっと頬に摺り寄せる。
嗚呼、温かい光が
ただ貴方を照らし続けて居れば良い。
日向の中で
何処までも
ずっと笑って居られたら。
たとえそれが地獄のような世界でも。
『…君を、望んだ。
だから私はこうやって居る。』
「叶わなくても?」
そう叶わなくても。
『魔術は私にとって、光だと思ったから。
結果的には光になってるけど…
今思えば魔術を必要としなくたって良かった。』
だってこんな傍に貴方はずっと居てくれた。
そう手を取り笑うメルに
少女もまた笑った。
嬉しそうにただ、嬉しそうに。
ー**!
『っ!!!』
声に出さずに、ただ呼ぶ一声。
その声が、何よりも愛おしい。
嗚呼、私は好きだったのだ。
あの世界が。
愛おしいからこそ、帰りたくなる。
でも、帰れない。
帰ってはいけない。
『私がどうして此処まで想うのか…
正直自分でも不思議なんですが、
ただ一つ分かってる。』
「なに?」
『私は確かに、愛されていたこと!』
だからお礼に、誰かに対して愛してあげたい。
これが例え魔術でなくて見えない魔法を使っても。
ただあの魔法少女のように
笑顔で誰かを救えたら。
沢山泣いて閉じこもっていた私を
救ってくれた魔法少女の様に。
…誰かを助けられたらどれ程良いだろうか。
「…成る程ね、確かに魔樹さんが可愛いっていう訳だ。」
「…ほんと」
『へ?うわあっちょこら!』
そう少女がメルに抱き着いて笑い始めたのに
メルは驚くもただ嬉しそうにするのに
つられて笑ってしまった
「(ただ叶わない願いを望み続けた人間…
だからこそ魔力が無限に手に入るのだろう)」
ダリは確信を突いていた。
魔樹が底知れない魔力を
人間にそれもメルに
渡す訳がないと思っていたのだ。
悪魔に永遠を望んで、
いや叶わない願いを望んだ。
だからこそ、ずっとずっと生き続けて居る。
メルの願いはかなっている様で叶わない。
その間がどれ程の甘美な甘い感情か。
ダリは少し彼女に恐怖を抱いた。
これは、確かに。
離れられなくなる中毒になると。
まぁ、叶わない願いを望み続けた末路は
そう遠くない未来良くない方向に向く。
それだけは…避けてあげたいものだ。
だからこそ、今こうやって体力を付けさせている。
どうか、どうか彼女がこれ以上不幸にならないように。
そう望むしか、ダリはなかった。