『はーーーいしつれーーーい』
そうドアをバンと音を立てて入った場所は
「なっ!?」
「メル先生!?」
『カルエゴ先生
私も入間君達の指導します
…と言うか
入間君の方の直指導ですね。』
「…元凶は」
『事の発端は魔樹先生ですが
願いは貴方の生徒さんですよ。』
ちなみに理事長や
泊まり込みというお話を聞いて寮にも許可を得て。
そう言ってきたメルに
カルエゴは仕方がないと首を横に振った。
「…わかった。
部屋を別にして指導するか。」
『隣借りますね…嗚呼
これから扉空けちゃ駄目ですよ。』
一応指導なんで。
そう言ったメルにカルエゴはコクリと頷いた。
パタンと扉を閉めたメルは
入間と二人きりになる。
一応魔術を使って、誰も聞こえないように。
「っ!?メル、先生?」
『はぁ〜〜〜〜ちょっっとごめん愚痴らせて。』
「はいっ!?」
『あ゛ーーーーマジであの馬鹿
上司何を企んだっっつか
魔樹も言うなよなほんと。
私がどれ程抑えて抑えて抑えて来たかを
知らねぇんだろうよ
あっの○○野郎ほんと○○野郎。』
「メル先生?!!?」
そうとてもじゃないが笑って元気なメルとは
また違う眉間にがっつり皺が寄って言うメルに
入間は驚き固まる。
すぐに嗚呼ごめんと言って
手を振りだしたのに
落ち着きを取り戻したらしい。
入間はホッと安堵の笑みを浮かべた。
「それにしてもメル先生
どうしてここに?」
『入間君…君、人間だよね?』
「えっ…と」
首振ってそう言ったメルに
入間は縦に首を振った。
良しならやっぱり適任だなとメルは踏む。
チェルーシルと指を鳴らし、
教師の服から
白いワンピース姿に切り替わる。
『…入間君、君は悪魔らしくない悪魔だ。』
それは私も同じ。
そうだね。
そう言ったメルに入間はコクリと頷いた。
『…私は人間だから。』
「っ!?…メル、先生…」
勿論ある程度
カルエゴ先生の指示もあるけど。
『だから君に教えにきた。
君の年頃なんて、
こんなの教えなくて良いとは
…思ったんだ、が。』
人間としてではなく。
悪魔として生きる。
同じ人間であるのであれば。
話は別であり。
『私が恋というか
…駆け引きを教えてあげる。
火を付けるけど、惚れないでね?』
まぁ私は貴方に絶対惚れないから。
惚れさせるつもりでおいで。
そう言ったメルに入間は
こくりと縦に頷いた。
嗚呼…それなら。
『“おいで”』
指を鳴らし、世界が一辺する。
メルが声を大きく叫びだした。
『“アアーーー其処は
そう足を叩いた後
メルの地面に草地が生える
キラキラと光り輝く世界に
入間は周りを見渡す。
空は青空と夜空が入り混じり
雲が回り始める。
『“彷徨い走り 辿り着いた場所に”』
そう言って指を指す場所
目の前には木下に誰かが手を振っていた。
黒髪の女性と男性で、
顔がクレヨンで塗りつぶされていて。
そこに白い服の少女が笑って
手を繋いで嬉しそうにして笑って居た。
『“君は居ないの”』
そう笑うメルに、
次の瞬間
少女は居なくなってしまった。
『“夢と現実時の狭間 虚ろな欠片に何を描く”』
歩き出したメルに
女性と男性がふわりと溶けて居なくなる。
世界が揺らぎだし、
ただ少女がぺたりと
腰を降ろして
身体を前に俯いていた
『“君は此処に居られない なんて声は知らない”』
そう手を切ったメルに
少女が顔を上げて
メルの方に手を伸ばしだす。
『“溺れかけた世界で 何を願うの 何を想うの”』
手を取ってメルは少女の背中に
手を回し踊り始める。
指を重ね合わせ少女に問いだす。
『“嗚呼そうだ 私は**でありたかったの”』
その言葉に、少女は涙を流し笑顔を見せた。
世界は変わり、無機質な白い部屋の中に変わる。
徐々に何処かの教室や、職員室。
バビルスではない世界が切り替わっていく。
それは…ここは。
『“このまま いたい 時を忘れて 永久に”』
そうメルは少女から手を離し
首を横に振りながら
両手を祈る様に合わせて顔を俯かせる。
少女は手を伸ばしたまま
小鳥が入る黒い牢獄に入ったまま
『“輪廻の中に 閉じ込めて 扉は開いたまま”』
メルはにやりと笑い、
少女は首を振りながら首に手を当てる。
チガウチガウと言ってそうに。
『“君は此処に 夢と現実時の狭間に”』
そっと手を出し、メルは少女を連れ出した。
すると目の前から
黒髪の白い角が生えた男性が現れる。
目をキラキラとさせて手を伸ばす少女に
そっと背中を押して行かせる。
『“溺れていくのに”』
メルの場所は崩れ落ち、
そのまま地面が
入間の所も落ち始める。
ただ男性に少女が…女性となり、
笑って居る姿に
ただ、手を伸ばして言うのだ。
『“嗚呼なんて狡いの”』
そのまま落ちていきながらも
メルは首を横に振って頭に両手を
まるで頭を抱えるようにして
『“貴方はこの場所にずっと”』
胸の中が光り輝いていく
嗚呼、と言ったメルは涙を零す
『…“帰れない深淵で眠っていたのね”』
それならどうかどうか。
と言って
光り輝いた光を抱えて頬を摺り寄せる。
『“それなら一緒に 眩い輝き永久を願い”』
手を作り出し、そして光は男性となる。
にこりと微笑んだ光に
メルは涙を流しながら笑う。
『“ずっと貴方と 醒めない夢を見て微睡むの”』
笑って、ただ嬉しそうに目を閉じて
最後が近いのか声が高くなる。
『“帰れない願いを 永久に抱いて”』
嗚呼そう叫んだ瞬間
光は泡となり消え
メルは手を伸ばしきった
…ところで
世界は戻ってきた。
「…すごい」
『…こんなもんかな。』
「凄い凄い凄いです!!!
メル先生今のは!?!?」
『っだ〜〜…私の心の中だよ。』
こうした方が手っ取り早いからね。
ちょっと魔術の応用で、
君を私の感情を共有してみた。
そう言ったメルに凄いと入間が叫ぶ。
『今の感じで…こう作り出すの。』
ほんとに居たかった場所を。
『でも、居たいと願った場所は変わって行く。
それに嫌気がさして、取れない。
手放さないといけない。』
そう思って、別の女性が近づいた時
崩れ落ちる所は失恋ね。
と言ったメル。
『嗚呼それなら手が届かないのであれば
この胸に光り燃え続ける痛みを
…抱きしめよう。』
それは恋それは愛。
このまま醒めないまま生きれればいい。
『ずっとチリチリと願い続ける痛み。
どうか続いてと願い、そして形となった。』
大好きな彼、愛おしい彼の姿。
そう言ったメルに
入間は黙って聞いているまま。
『その後は泡となって消えて、現実に戻る感じ。』
どう?そう言ったメルに
分からないと入間は言ったのに
メルはだよねーと苦笑いした。
『いやー流石に無理だって言ったんだけどねぇー』
「でも…」
『お?』
「ただ…温かくて」
とても悲しかった。
『…これが、好きなのに、
届かなくてもどかしいって気持ち。』
私も、ずっと忘れては思い出してを繰り返した。
駄目だ駄目だ抑えなきゃ。
そう言い聞かせていた感情。
それを入間に見せてあげた。
「綺麗で…届く距離なのに届かなくて。」
『そうだよ…うん。』
「この気持ちを!
伝えられたら…いいの、かなって」
『…うん。上出来だよ』
其処まで気付けるのなら。
そう言ったメルに
入間は首を傾げた。
「これで、いいんですか?」
『うん。』
後は火を付ける係は別だからね。
私は知らせるために教えにきた…のと。
『私はこれを何度も繰り返す。』
終わらないよ。
そうにやりと笑ったメルに
入間は目を丸くした。
『ねぇ、入間君』
女の恋は、一度燃えたら燃え続けるんだよ。
そう言うメルに入間は顔を赤らめた。
『どうか、気付いてあげて』
君の本当に好きな心を
そして愛してあげて
突き落とさないであげて
どうか
どうか。
『愛して』
+++++++++++++++++
「おいメル、お前何をした」
『何って〜人聞きの悪い〜〜〜』
「奴があんな恋路を分かる音をさせるか!!!」
あははー流石にやり過ぎたかなぁ。
中毒性あるからね恋心って。
『いや〜ちょーーっと
つついただけですよー!』
「ちょっとが3時間で
済むと思っているのか貴様!!!」
『あはは!!だってー!
それよりも音楽の指導はどうします?』
一応私も出来なくはないですよ。
そう言ったメルに良いとカルエゴは答えた。
どうやら彼だけでこれ以上は充分なようだ。
これ位したらラブレターの
一つや二つ位は書けるだろう。
メルは満足したので
そのまま帰るかどうか迷っていたが。
「泊るんだろう?」
そう言ったカルエゴに
仕方が無くメルは頷いた。
「
良いと思いますよメル先生。」
『そう?ご飯は美味しかったでしょ?』
「そりゃあ…ってか
あんな作れるんですね。」
『あはは…流石に
あのスピードは初めて。』
そう注文を入間がするのに
メルは自分の食事は
流石に自分でと言ったので、
食べる速度に急いで作った。
ちなみにつまみ食いをされて
入間はカルエゴに説教され、
メルは二度自分の食事を
作って食べ終えたばかりだった。
「入間君に何教えたんですか?破廉恥」
『ちょ!?してないよ!?』
「…ほんと、
ズルいですよね大人って。」
『あーそれは分かる。』
貴方大人ですよね。
そう言ったプルソンに
メルは
『まぁそうだけど』と答える。
『大人って案外子供のままで
成長しない…いやしたくないのよ。』
「そんなもんですか?」
『君も分かったりする時も
来るんじゃないかな。』
そのいつかは知らないけど。
そう笑うメルに、
プルソンはへぇと言う。
「イフリート先生と付き合ってるのに?」
『ぴぃっ!?』
あ、当たった。
そう言ったプルソンに
メルが赤面したまま首を横に振る。
「いや知ってますよ。
たまにイフリート先生
メル先生の頬にキスしますよね。」
『っう゛ぇ!?ちょなんっん!?』
「たまたま通りかかって。
メル先生カワイイ顔するんだなーって」
『はわわわわわわわ』
「プルソン!!!!」
「あバレた」
そうメルを困らせた罰と言うことで
プルソンもまた説教されることになった。
メルはメルで後日エイトに
誰が見ているか分からないので
キスはしないで下さいと言った。
が「キスじゃなければいいんだよね?」
と言って結局キスマークを付けられ
通じない話に悪魔って酷いと
頬を膨らませるのは
また別の話である。
+++++++++++++++++
「メルちゃん〜調子はどう?」
『…本当にするんですね。』
勿論。
そう目を開けてニヤリと笑うダリに
メルはため息を深く吐いた。
それは前にダリが職員室で
爆弾発言をしたことだ。
音楽祭
勿論メルは裏方で動くは動く…が
最後の最後に
あの審査委員の前で
全力を尽くせと言ったのだ。
ちなみに合格点は満点。
まず間違いなく無理。
本当に馬鹿なことするよな。
思いつくよな。
そう思う。
メルは休みを削ってまでして
ダリ特製の魔具を使って選曲していた。
記憶ヘッドホンと呼ばれるもので
装着した本人の記憶に眠っている音楽を
流してくれる優れものである。
メルはそれを装着したまま
どれが良いかとうんうんと唸っていた。
…そう、メルは人間
それも前世も人間。
今世も人間。
今回のテーマは「誰も聞いたことがない音楽」であり。
『(テーマ的にはまぁ楽勝なんだが…)』
選曲がどうしても出来ない。
どれもこれも好きで懐かし過ぎて
気付いたら聴きまくって
夜が明けているのだ。
仕方がないじゃないか。
音楽流しながら
走っていた時もあったんだから。
そうメルは自分に難癖をつけ、舌打ちした。
此処は寮
共有の施設3階にあるスペース。
メルは力を使って
音楽を流しながら
身体を動かし続けていた。
それに気づいたのか…
はたまた面白いのを
嗅ぎつけて来たのか知らないが。
ダリが扉の前でニヤニヤと
メルを見ながら
邪魔しに来たという訳だ。
「いや〜楽しみだね〜
そんな使ってくれるとは。」
『…一応助っ人として
大変ありがたいですよコレ。』
そうヘッドホンを外して答えるメルに
そりゃあどうも。
とダリは腕を組んだまま答えた。
「にしてもどんな曲あるの?
聴かせてよ〜〜」
『駄目ですよ。
戻れなくなっても知りませんから。』
「いいよ?溺れさせてくれるなら。」
別にそう言ったダリに
メルは『え?』と首を傾げる。
あ、次の音楽が鳴りだす。
止めようとしたのだが
あれ止める場所忘れた。
ダリに聞いたら
知らないと言い出した。
お前絶対聞きたいだけだろ。
空から現れる少女に首を横に振る。
今は駄目、今は。そう感じるメルに
少女は泣きながら笑って両手を広げる。
ー“****”
『っ!嗚呼…もぅ、知らないからね』
そう言ってメルは
ダリが居る前で少女に両手を広げた
少女の腕を掴んだ後引き上げられる身体
口から泡が出てくるのに
本当に海の中に入っているような感覚になる。
水の中に冷たく肌に染みわたる液体
涙を流してもきっとバレない
嗚呼でも貴方の前でなんて。
泣いたって無駄なのに。
メルは少女の額に
自身の額を合わせて摺り寄せる。
それに気づいたのか
少女も悲しそうに摺り寄せてくれる。
『(この世界が ずっと)』
続いたらいいのに。
そう願い首を絞めようとする。
世界が広がって、
草木が生い茂る世界に
身体が移動した。
目の前には巨木の下、
誰かが笑って居る声が聞こえて
手を伸ばす
嗚呼でも、
伸ばしたって無駄なのだ。
『(この時間が、何よりも愛おしくて)』
まさに溺れている。とは、この事を言う。
メルは指を鳴らしヘッドホンを外した。
『もー音楽が指を二回鳴らしたら消えるって
なんでダリ先生言ってくれなかっ…げ』
いつの間にか扉の前には
寮に暮らす教員が集合しており。
立ち入り禁止を
その後言い渡したメルだった。
「にしても綺麗だったよなメル先生の声」
「アレは大丈夫だろ」
「いーや無理かな」
そう言ったダリにええ?とツムルが言う。
それにはイフリートもこくりと頷いた。
「多分アレは無理。
まだ抑えてる…ってか
抑えてよくアレが出来るのが
凄いとは思うけどね。」
恥ずかしくないのかな。
そう言ったイフリートにダリは
きっと恥ずかしいけど
やってるんだよと答える。
「まぁ寮にこんな綺麗な音が
聞こえなくなるのは寂しいからなぁ…」
あそこメルちゃんに貸し出して放置させとく?
そう笑ったダリにそれは良い案と全員が頷いた。
勿論メルはそんなことはつゆ知らず。
誰も来なくなったのに
味をしめたメルは暫くの間
歌を其処でひたすら歌い続けるのであった。