Novel - Carla | Kerry

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纏う朝の切れ端をもらって2

act 2.




「…で、一応此処が僕の部屋ね。」



そうパタンと扉を閉めてダリはメルに話す。


冷蔵庫や食器などの固有名詞は分かるらしく
うんうんと頷いていた。

本当に感情的な部分だけが幼稚になっており
それ以外は前の知識が引き継がれているらしい。



「…あ゙そういえば“メル”、君人間?」

『にんげん?』

「僕以外に人間って言ったらダメだよ。絶対駄目。」



そうだメルは今まで
ダリ以外に人間と伝えていない。


幸いなことに
あのイフリートも気付いていないとか。


…このままだと普通に破局になるのだが
それについてさらっと聞いたら
「それはそれ」と案外あっさりしていた。



まぁメルが望めばそっちに任せるとのこと。
あんまり引っこ抜いて、下手に触って
飛んでもない魔力を
放出された方が困ると言ったのには
流石に自分も頷いてしまった。



『なんで?』

「んー…人間は魔界に存在しないんだよ。」

『そうなの…寂しいね。』

「え?」

『人間居たら寂しくなっちゃう。
あでも悪魔さんお友達になれる?』

「いや人間って言ったらダメだからね?」

『むー?分かった人間言わない。』

「ほんと?僕以外ダメだよ?」

僕と君二人きりって意味ね?
そう言ったダリにメルは頷いた。

『半径3mに魔力が検知しなければ
人間って言ったらダメ!!』

「…なんか凄くううんまぁ良いか。
それで良いよ。」


折れたダリにメルは嬉しそうに微笑む。


全く、確かに欲しいとは思ったが
まさか記憶喪失で最初からとは聞いていない。



+++++++++++++++++



サリバンがダリの元に来た際



魔樹は最初に願った者の傍に居続ける習性がある。
メルちゃんはきっと
ダリ先生のことが好きだったんだねぇ。


そう言ったサリバンにダリは目を丸くした。



「そう、なんですか?
でも彼女エイト先生のことが」

「多分揺れてたんだろうね。
ほら使い魔である血もあるし…
それ以上に見て貰ってるって
分かったのが嬉しかったんだろうけどね。」


イルマと手遊びをして
今は共有スペースで笑って遊んでいる。
イルマは「オトモダチになりませんか!!」
と言った時にはダリもサリバンも驚いたが
メルは嬉しそうに笑ってうんと答えた。


それからずっと遊び相手になってもらっている。



「そう…ですか。」

「ん?嫌なら
まだ新しい方だから
記憶操作も簡単だけど。」

「いえ!!それは」

「…ダリ先生、
どうしてメルちゃんを
君に任せたと思う?」

「え?」

「メルちゃんが器にもなっていない頃ね。
君の名前を一発で覚えたんだよ。」

彼女、名前覚えるの遅いんだよね。
そう言って指を指して笑い話す。


ー不思議、なんか気になる。


「魔樹は一つの悪魔に執着する性質がある。
イフリート先生にくっついたのは
単純に……恋なんだろうね。」



アイと言った時
ダリ先生に突撃してたじゃん。

つまり、君は前から選んでいたってことだよ。


そう言ったサリバンに
ダリはそっぽを向いた。


今顔を余り見られたくなかったからだ。
それにはサリバンもふふっと
嬉しそうに花を咲かせて笑った。



「ふふっ…魔樹は文字通り魔の樹木。
封じて木になる事だって可能だし
…代わりを連れて来るのも出来る。」


そこはもう君が見た通りだよ。
古い魔樹は新しい魔樹に
バトンを渡して消えて無くなる。


勿論あの時ポロ君だって気付いたからね。
魔樹が交代することに
…無駄に約束しちゃってね。


そう言ったサリバンに
そうですかとダリは答えた。


メルはあの時、嫌だ嫌だと静かに泣いていた。


誰にも目の前で見せたことがない泣き顔に
流石のダリも笑わせることは出来なかった。


ただ、綺麗に無邪気に笑って泣いて。
前からあの姿になるのを
メルちゃんは気付いていたのか…?


もし気付いて嫌がっていたのなら泣かないで。
と抱きしめてあげられたのは…


きっと彼女自身で。


一体どれ程の時間を費やせば

それ程の優しさが無垢が
得られるのだろうか。



「最初に言ったように、
魔樹の翼は覚醒した時の感情だ。
…君のことがとっても好きなんだねぇ。」


綺麗な白い翼に
青い空に白い雲を映し出す世界。
その中にダリは選ばれていたということだ。


「…全く、とんだ子を育ててしまいましたね」


全くだ。

まさか化けるとは考えてはいたが
空想生物の天使の翼を広げて魔力を持つとは


誰も想像することは出来なかっただろう。


ダリは深いため息を吐きながら
がくりと肩を落とし顔も落とした。

メルが気付いたのか
首を傾げてダリの方を見ている。
それにサリバンはメルに手を振って
大丈夫な事を知らせる。

メルは気付いたのか
またイルマの方を向いて遊び始める。


「ふふっ、そうだね。
ま、魔樹の力は君が知っている通り
触れた者の力を使う事が可能。」

翼の形で悪周期の効果が違うとは聞いているよ。
前の魔樹は「醜い感情で産まれたからあんな翼なんだ」
ってそう彼が言っていたけどね。

そう言ったサリバンにそうかと
ダリは考えて言葉にしなかった。


悪周期になった時、
話を聞いた中では
エイト先生の声も通じず
ただ飛びイルマ君の元で
何とか落ち着きを取り戻した。


自分は人間だと思い込ませて。

意識が微睡む中、
黒と白のワンピース姿の少女達を
笑って抱きしめてあげていたことも。


変化することを分かっていて。
メルちゃんはイルマ君に言ったのだろう。


「記憶が消えても尚この場所に居続けたい。
その時きっとトモダチも居ない世界は寂しい。
だからどうかトモダチになって欲しい。」と。

勿論その約束をイルマ君は
真摯しんしに受け止め

現在天使の翼を生やしたメルと
お友達になってくれて
無事トモダチとして話してくれている。



…ほんと、凄いな。色々。

情報量が多すぎる。




「きっと悪周期面白い事が起きそうだね。」

「…なるべくさせないようにしますよ。」


ダリは礼を言った。

サリバンにも流石に
メルの事を聞くのを渋ったのに


「あ、そう言えばメルちゃんって
今人間なの?天使なの?」

「ちょ!?理事長!?!?」

『ん?どしたの〜おサリー。』

ちょこら。理事長にそれはと言ったダリに
いいよとサリバンは嬉しそうに笑って止める。

『ん〜…』

「…いいよ。今は許可する。」

そう言ったダリにメルはこくりと頷いて言う。

『メル、今の状態分からない。』

「分からない?」

『うん。天使さん白い翼生えるけど
輪っかあるはず』

「ああそれは僕も思いました。
悪魔は翼と角と尻尾があるのに対して
天使は翼と頭の上に輪っかがあるはずなんですが。」


イルマ君?そうダリが首を傾げて問う。
えらく博識だなと聞いたダリに
サリバンがイルマ君に色々教えたんだよ。

バラム君がそう言ったのに納得する。
彼ならしかねない。
というかしたんだろうな。


『だから分からない。
天使なのか
はたまた堕天使なのか。』

「…堕天使」

「ん、確かに可能性はあるね。」

「堕天使?」

『天から落とされた天使の事だよ。
悪魔の大元にもなってる。』

「僕達の悪魔のご先祖様が
堕天使ではないか
って言い伝えもある位だからね。」



そう知識を教えるダリに
へぇとイルマが唸る。

まぁ学年が上がれば
そこら辺の調べる授業も
する予定ではあるし。

二年生の中盤位だろうが。


『可能性があるのは堕天使。
でも…うーん』

「どうしたの?」

『いや…堕天使だともっと
こ〜わる!って感じすると
思うんだけど。』


メル今とってもハッピーだから。

そう手を叩いて花を作り出し花冠を出すメル。


いやそれだけじゃないだろうに。
そうダリはさり気なく突っ込んだ。



「兎にも角にも
人間なら香水を渡しておくけど」

「…すいませんお願いします。」

「ん!あるに越したことはないもんね!!」

「あの、メル先生はこれからどうなるんですか?」



そう聞いたイルマに不安そうな顔をさせたのに
ダリは今の所は保留と返した。



メルはダリの傍でちょこんと座り
首を傾げながら聞いている。




「記憶が戻ったりする可能性もあるからね。
これでもかなり有能な子だったんだよ。
流石に使えないからクビはないよ。」

「そうそう♪あっ何なら
問題児アブノーマルクラスにいれてみる?」

「楽しそうとは思いますが
…流石にやめておきます。」



彼らは騒ぎの渦中にある者達。


そんな中に更に天使のような
無垢なメルを入れてみろ。


まぁカルエゴの
胃痛と頭痛は増えるだろうし
何なら一部の教員も心配で
胃痛を訴えだす可能性もある。


勿論ダリもそのうちの一人である。


「メルちゃんは暫く寮で生活するよ。
もし寂しそうにしていたら理事長に連絡して
遊びに来てもらっても良いかな?」

「はい!ダリ先生や友達のお願いじゃなくても!
いつでもお待ちしてます!!」


うんうん。いい返事だ。

そうダリはイルマの頭をよしよしと撫でる。
ただメルは不思議そうに首を傾げる。
ん?何かを察知したようだけど…
一体何だろうか。


「さ。イルマ君今日はお暇しようか。
あ、そう言えば文字って読めるの?」

『声だけ魔術で変えて
文字は前から覚えた!!』


メル天才なの!


そうキリッと自慢げに言うメルに
そこら辺の記憶もあるなら
知能というか精神的な成長も
止めたまま変わって欲しかった
と願うダリだった。



+++++++++++++++++


「メルちゃん」

『んー…わっ!!』

「こらこら…そんな花出さないの。」

そう白い花を作り出して
花冠をダリの頭にのせるメル


イルマ君達が帰ってから数十分後


メルは先程作っていた花冠を
ダリの頭に合うように作って
ダリの頭にそっと置いた。

形を上手く出せないのか
床はボロボロの花冠が散らかしており
流石に汚いとは言えず…


つい柔らかく指摘した自分に
少し甘やかしすぎだなと反省する。


なんでー?
と大きく首をというか身体を曲げる。

…数日前のメルちゃんが見ると
赤面というかショックで寝込みそうだな。



そう前の事を考えつつダリは
資料に向けていたペンを置いて
メルの方を向いて答える。


「それはメルちゃんの力なんだよ。
メルちゃんの力をわる〜い事に使う
悪魔だっているんだ。」


『???皆とっても綺麗な目してるから大丈夫だよ?』

「いやそう言うんじゃなくてねぇ…」



そうきょとんとした顔で返された。
ダリは片手頭を抱えて大きなため息を吐いた。

駄目だ、前のメルちゃんよりも話が全く通じない


メルちゃんが恋しくなってくるな
…駄目だ駄目だ。
彼女もメルである。と言うか…


「…こっちが本質の可能性もあるのか。」

『???』


そうか。
元々メルは抑え込んでいた。


こうなるのを分かっていて
「気付かないふりをしていた」のであれば?

それならメルの初心さも純粋さも頷けるし

相手の心情を思って
幾分か動けたメルが本心を見せるのを
嫌がっていたのも頷ける話である。


確かにこれは…見せたくないだろう。



ただただ無垢な彼女。
黒い澱んだこの気持ちを込めて見ても尚
彼女は純粋にただ目をキラキラとさせ
黄金の目をぱちくりとして見ている。



ー魔樹は最初に抱いた感情が





「…っ〜あー休憩しよ。」



そう言ったサリバンの言葉を考えるのを止め
ダリは冷蔵庫にある魔茶を取って
コップに入れて飲み干した。

スージー先生から聞いた内容によると
ひたすら『やぁ…ダリ…ダリ…』
と泣いていたそうで…



ふっっっつうに恥ずかしいから止めてと思った。



スージー先生からそのあと
「あのダリ先生がメル先生に
此処まで動揺するとはふいっ」

となんだか別の意味で
恐ろしいものを握られた気がする。



「…ん?何欲しい?」



そう冷たい魔茶を飲むダリに
メルはこくこくと頷く。


白い翼はたたむことは出来ても
羽管の中にしまうのは分からないらしく。


バラム先生曰く
「羽管の仕組みさえ見たら
分かると思いますよ」
だそうだ。




いや、

…みせろと。





まぁこのままベットに翼を込みで
入れられても困るし…

勿論メルがちゃんとベットで寝てくれればの話だ。


暫くは自分がソファーで寝れば良いし
ちゃんとベットを理解して一人で寝れば…だ。

だがダリが部屋にわざわざメルを
飼う勢いで連れて来たのにも理由がある。



まず一つ

メルは人間だ。

それを知る者はダリ本人とサリバン…
下手すればアムドゥスキアス様の三名のみ。


まぁイルマ君やバラム先生が
知っているかは知らない。


ただ悪魔しかいない筈の魔界に人間が
それも無垢な何も知らない彼女が
他の悪魔に「自分は人間です」と
絶対言わないという約束は多分叶わない。

不可能だろう。




二つ

メルの精神が一定よりも
かなり幼稚であること。


意思疎通は可能であるが
一人称はメルであるし
知識があっても
返答の仕方で相手を怒らせるのは
まぁ間違いなくあり得る。



三つ

寂しがり屋で甘えん坊。

此処が一番のネックだ。

恐らく彼女、本当に寂しいと
ベットの中にでも潜り込んで抱き枕にして寝かねない。


…というかスージーからのタレコミだ。

夜泣いた後スージーの胸に
寄り添ったらようやく寝たらしく。


魔力を感知してダリの場所に
何度か行こうとしていたらしい。



その状態で寮でも夜一人にさせてみろ。


間違いなく安心する魔力の方に歩いて
朝になったら胸の中か…

少なくともベットの中に
メルがうずくまって寝ているのを
女性ならまだしも男性が見つけたら
朝から目覚めが悪いだろう。


流石に教員に其処までの対応はさせたくないので
上司であり使い魔である僕、ダンダリオン・ダリが
率先して彼女を引き受けた。という訳だ。



まぁ翼をたたむことはまだ分かってくれて嬉しいが…


如何せんこのまま
ソファーに寝ようがベットに寝ようが
入り込まれると考えたら


…絶対に寝る場所はない。


そう考えたら必然的に
ダリの名前を呼び泣く位なら
部屋に連れ込んで飼うなんてことは
ダリとしてもするつもりは更々なかったのだ。



…ちなみに余談ではあるが
エイト先生にも相談した。

彼は「間違いなくダリ先生の方が適任ですよ。」
と返してくれた。


エイト先生の事はメルちゃん曰く
『熱い』と少し照れて距離を取る。


やはり前の記憶は
ちゃんと身体が理解しているらしく
少し頬を染める姿は可愛らしかった。


…まぁ自分の背中に隠れられるのも困るし
出来ることならエイト先生に
この役を押し付けたかったのだが。
まぁ彼が望まないのであれば、仕方がない。



話は戻るが

メルが人間であり、無知であり
一人で生活するのに困難で
かつダリのことを想って泣いて夜を明かすレベル
と言うことが判明した為
ダリは渋々部屋で一緒に住むことにしたのだ。


一応部屋も広いから
二人分の翼を広げるには支障ない。

部屋にもノックあればいいか。
そうダリは今までの状況を整理し
考えてから「良し」と言ってメルの名前を呼ぶ。

「メルちゃん翼のお勉強をしようか。」



少なくとも今日の晩は安眠したい。

ダリは提案をメルに
人差し指を立てて笑って聞いてみせた。


何時も彼女の前でやっているように。


嗚呼、君ではなく過去の君に
会いたいと願っている自分に
君は無垢な君はどうか気付かないだろう。



…どうか、気付いて欲しくないのに。


そんな目をさせたくないのに。
何処か気付いた目を
一瞬して寂しそうに笑ってくる。



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