Novel - Carla | Kerry

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纏う朝の切れ端をもらって3

act 3.






ダリせんせーは時々メルを見て寂しそうな目をする。


だから心配かけたくないから。
黒い翼を見ながらお勉強を頑張るの。



だって寂しそうな目をすると
どこか胸がキュッって痛むから。
この痛みを、メルは知っている。


知っているから、メルは隠すの。
どうかダリせんせーに迷惑かけませんように。


って、気持ちを込めて。
大丈夫だよって気持ちで。


メル。ダリダリ…
ダリせんせーから翼のお勉強をしています。
ダリせんせーは「見せた方が早そうだから」

と言って上の服を脱いで
半裸の状態で少し前かがみになり
そのまま黒い翼を広げてくれました。


『はわーーー………』

「これが翼を広げた状態ね。出来る?」

『んーーー…こう!!』

「そうそう。上手上手。」


そうダリせんせーが
翼を大きく広げて閉じてを繰り返してくれる。
見て身体を動かすと褒めてくれる。

嬉しい!!


「じゃあ今度は背中見てて。いくよ〜」

そう言ったダリに背中を見せてくれる。

大きな黒い翼は羽管の中に一気にしまわれた
しゅっと音を立てて。



「…分かった?」



そりゃあもうパニックです。


頭の中にクエスチョンマークが大きく浮かんで固まる。


メルに
「あ〜もう一度やるね?」
とダリは苦笑いして
背中を少し丸め、翼をバッと出す。



それに驚いて
メルは数歩下がって
首をブンブンと横に振った



無理無理無理無理。

それ早すぎて無理。

そして触った感じそんな細くない。

入らない絶対入らない。



そうメルが首を振りながら青ざめるのに
ダリがメルを見て噴き出すように笑った。


…あ、とってもキラキラしてる。

いいな。それ、メルがさせたんだ。


少しほわほわする。

これは嬉しいって気持ちだって
誰かが言ってる。誰だろう。


「あははっ!大丈夫大丈夫!!出来る出来る〜」

『ん…?』


右翼と左翼が身体と共に曲がる。

ダリの様にしまわれないのに
「こりゃ練習だな〜」とダリは笑った。


「よし!メルちゃん
今週翼をしまう練習しよか!!」


『ん〜〜〜〜』


「待て待て待て待て待て待て待て」


まだ僕捕まりたくない!!!

そうメルが紐を外して
そのままワンピースを脱ごうとしたのに
ダリはストップをかける


恐らくダリが今半裸の状態だから
自分も半裸になれば出来ると思ったのだろう。
まぁ確かにそれは分かるのだが…


流石にもしそれをするなら同じ性別の
スージー先生に頼む方がマシだ。

成人男女が半裸状態は
流石に色々不味いものがある。


ダリはそそくさと翼を入れて
シャツを着直した


『んーーーー』

「うん?どうしたのメルちゃん」

『服着たままメルも〜』


そうメルは翼を何とか入れようとするも
全くはいれなくて困って半泣き状態になる。


「ん〜…前ね
魔樹さんから
受け入りなんだけどさ。」


そうダリはメルが昔やっていたことを
思いだしながらメルに伝える。


「人間って思っていると
不思議と翼消えてたって言ってたよ♪」


まぁそんなことで上手くいく訳もないだろう。

気休め程度に彼女が泣く姿は正直見たくない。
ダリは適当に指を指して言ってメルを慰める。

するとメルは閃いたかのように
目を丸くした後

目を閉じて首を横に振り胸に
両手を置いてぎゅっと握り閉める。


「(…お?)」

暫くするとメルの背中にあった翼が
ふわりと泡のように溶けてなくなった。

どうやら人間と思い込んでいると姿は戻るらしい。


…流石に金色の瞳は戻らないか。
記憶も戻る訳もない。



『…不安?』

「ん?いいや。
それよりお腹空かない?
何か食べる?」


そう席を立つダリに
メルは何かを考えた後
あのねと答える。


『花冠には継ぎ目のない円を描いていることから
『永遠の幸せ』って言われているの。』


そう言ってメルは手から
ピンクや黄色の花を咲かせた花冠を作り出す。
嗚呼ほらまたそうやって。


ん?



「あ、そう言えば入間君達に送った
花冠って意味あるの?」


そう聞いたダリに
メルはあるよと答えた。



あっあるんだ。


『アレはシロツメクサの冠って言って
意味は3つあるの。』

「みっつ?」

『うん!「幸福」「忘れないで」
「私のものになって」』

嗚呼…
確かに純粋無垢と言われただけあるな……。



ん?忘れないで?


「忘れないで?」

『うん…折角会わせてくれたのに
忘れて欲しくないから。』


嗚呼そういう…


『まぁイルマ君達には
幸福って意味を込めて渡したの。』


「…じゃあ、これは?」


そうダリは先程メルがダリに送った
シロツメクサの冠を掴んで見せつける。




それに少し頬を赤らめて
『えと…』ともじもじし始める。





…あれ?




「…メル?」

『っ!?いっ、言わない、もん!!』

「聞きたいなぁ〜」

そうニヤリメルの顔を見ながら言う
ダリにメルは顔を赤くして首を横に
ブンブンと勢いよく振った。


まぁ可愛らしいのは健在なようで。


「(こんな白い君を
僕の色で染め上げられるのなら
…どう染まってくれるのかな?)」



そっとメルの頬に手を振れると
メルは嬉しそうに両手をダリの手を掴み
頬に摺り寄せている。


純白でただ無垢な少女のような女性。

その記憶はほぼ消えており
残っているのはただダリ達が
優しい悪魔ということだけ。

どす黒い感情が浮き上がってくるのを抑える。

嗚呼…君がもしその翼で天に帰るというのなら。
僕は君の翼をもぎ取って堕天使にだってさせるのに。





気付いた時、

君はそうやって今の様に

笑ってくれるだろうか?



「まぁいいや。じゃお勉強もしようか。」

『???』

「魔界に生き残るなら、これ位はしないとね♪」





そうニヤリと思いついたダリに
メルは首を傾げた。





+++++++++++++++++



小一時間、いや二時間が経過した辺りか。


「(文の解き方から色々知識は前のまま…と。)」


ダリが前にメルを魔歴史の教員として
採用しようとして
ほぼ無理矢理引っ張り込んでいたのだが。



その時に教えていた知識は残っており。

簡単な試験をしてみせたのだが、全問正解。


なんなら此間まで授業していた内容もスラスラ言えた。



「(知識や情報量の整理は完璧だな…
本当に感情というか精神的なものが幼稚化していると。)」



はは、こりゃツムル先生案件直行だな。



そうダリは苦笑いして
テストとして出していた用紙に
赤ペンで花丸を付けて上げた。


先程から花に関するものに異様に喜ぶので
ひょっとしたら花丸もと思い花を咲かせてみた。


すると的中で、まぁ持って喜ぶ喜ぶ。

メルちゃんが場所を用意したのか
部屋の隅で用紙をまとめて置き始めた。
まぁ…一応一人で住むには広いからなここ。


「メルちゃん、一人でお風呂とか入れる?」

『んー入れる多分』


多分つくのかなんだか不安なんだけど…
まぁ其処まで相手出来る程僕も暇じゃない。


「分かった。
じゃあお風呂入っておいで
その間にご飯用意しとくから。」


少し早いが食事にしておこう。
メルが何時寝付くかも分からないし

明日明後日とまだ休みはあるものの

彼女の荷物も少し位は
此方に持って来てもらった方がいい。

はぁいと言ったメルが風呂に向かうのを
確認するとダリは料理をしに調理場所に向かう。


するとノック音が聞こえダリは答える。


「はーいどちら様…ってスー!」

「ふいっ♪メル先生はどうですか〜」

「今お風呂に入らせてるよ。」

「あらついて行かなくてよろしいんですか?」

「…スー?」


ふいっ♪そういつもの癖が聞こえる。


「全く、僕はまだ捕まりたくないよ。」


「ふいっ?躾でしょうし
ノータッチでしょう。」


「…遊んでるだろ」


「えぇ♪此方メル先生のお着替えと
何かと必要になりそうなものを
一式持ってきました♪」


「…ごめんねありがとう」


そうお礼を言うダリに
いえいえとスージーは
首を横に振った。


「所で…大丈夫ですか?」

「ん?何がだい?」

「メル先生、ずっと泣いてましたので。」


嗚呼その様子だと結構心配をかけたんだろうな。
申し訳ない気持ちを前に出してごめんねと答えた。



「大丈夫。何かあれば連絡するから。
この借りは何時か返すよ。」

「ふいっわかりました♪
返さなくてもお話をきければ充分ですよ♪」



それはそれは…まぁ良いか。



ダリは半分諦めて分かったと答え
そっとスージーからの
荷物を受け取ると扉を閉めた。


「んー中身は…まぁそんな、うん?」



なんだこれ。

そう言ってダリは一冊の本を手に取る。


スージーからのメモ書きで

“ダリ先生へ。メル先生の日記です。
中身はまだ見ていませんが
何かヒントになればと思い
持ってきましたのでお暇な時に見て下さい♪”


と書かれていた。



うわぁ…多分これかな?
こっちの話をした方が良いんだろうな。

そう思いながら
まだ彼女がお風呂から上がらないのを良い気に
ダリはそっと日記をペラりとめくってみる。


「……ふん(本当に業務連絡の延長線上だな。)」


ツムル先生と仕事で手伝って喜んでもらえたーとか
オリアス先生とゲームするのに
エイト先生に買ってもらったとか…

まぁエイト先生とオリアス先生と
三人で遊ぶ予定を
密かに組んでいたらしい。


そんなバビルスでの関わりでの
話を書いているのに
ペラペラとめくっていると
一ページ気になる所を見つけた。


やけに厚みがあるのだ。


触ってようやく気付くレベルで
ペラペラめくり過ぎて
興味がないと多分気付かない。


いや興味があってみたわけではなくて
単純にこの状況のヒントになるものがだな。


そう誰かに説得するダリはため息交じりに
ペーパーナイフを取り出し
くっついたページを開いた


「…ん?読めないな、これ。」


そこは自分の読める範囲ではなかった。
恐らくだが人間語なんだろう。
間違いなく大事なことは分かった…が


「読ませるわけにもいかない…し…
あバラム先生?すいません
ちょっとお聞きしたいことが。ええ」


そうダリは思いつき、バラムに連絡をする。

なんですか?と
ビデオ通話にさせたのにも訳があった。


「これ、読めます?」

「んん?…これ!?ひょっとして!!!!」

「ええ、人間語じゃないかと思いまして。」

「これどこで!?」


「メルちゃんの日記の一ページです。
多分探せばまだありそうで、
バラム先生に翻訳を頼みたくて。」


「…ちょっと時間かかりそうですが
その日記お借りしても?」


「ええ構いませんよ。
何なら今から取りに来ます?」


そう興奮気味のバラムにいいんですか!?

と言われてダリは嬉しそうにええと答えた。


「ではお待ちしています。」


そう言ってダリはテレビ通話を切り
ようやく手が空いた所で
ガラリと風呂からの音がした。

おっと、作ると言っていて今からとは…


食材を取り出して軽く切り炒める。
今日は焼きそばにしてしまおう。
メルちゃんも一応食事克服してるし…

ふぅーと言いながら
メルがまだ髪を乾かしてないまま出てくる。


「あーこらこら髪乾かしっ!?」



なんだこの甘ったるい匂い…よだれが出る。

そう思ったダリにメルは
『ダリせんせ?』と首を傾げる。
駄目だ来るな…そうだ香水は?


本当に甘いんだな。

凄い食欲をそそる匂いに
脳が食べたいとヤメロ
そのサイレンが二つ鳴り響いて煩い。

それに気づいたのか、
メルがしょげた顔で此方を見る。



嗚呼、そんな顔をさせるつもりはなかったんだが。



『…くさい?』


「へ?ああ…ごめんね。逆。」


君のこと、食べたくなって。


そうぽろり言ってしまった自分に
しまったと口を手で塞いでも時すでに遅し

寂しそうに、諦めたように
メルは両手を広げてダリに向けて言う


『…いいよ。ダリなら食べても。』


「っ!!駄目だ!!!」


そう強く言うダリに
メルがびくりと反応する。



「いや…ごめんね急に怒鳴って。
そんな自分を軽く見て売らないの。」


分かった?
そう言ってダリは香水を手に取り
メルの髪や身体に吹きかける。


本当は身体全体にかけていたんだろうが…
これを毎日寮でやってたとは…
君もかなり大変だったんだな。



ごめんよ随分と使いまくって。

風呂に入らないで
汗をかいていた時も
そういえば香水を使っていたな。


あの時は速乾性用として使ってると言ってたが

どうやら人間の匂いが
汗で流れても構わないように
ふりかけていたらしい…


それに肌をほぼ露出しない制服を
それもズボンの方を着ていたのは

身体の細さを隠すのもあるだろうが
汗で人間の匂いを嗅ぐことがないようにの
二重対策だったのだろう。



…そう考えたら本当に大変だったんだな。


確かにそれは教員として仕事するにも
彼女に負担が結構かかったことだろう。


それでも彼女は嫌な顔一つもせず
なんなら泣き顔も涙一つも零さず
よくやってくれたと思う。


そんなところを好きになったんだと思っていると
ようやく匂いが落ち着いて理性も落ち着く。
…あ゛ーー良かった。


『その…ごめんなさい。』

「いいよ。でもお風呂あがったら
直接肌にこれ振りかけてくれる?」

僕のあんな姿見たくないでしょ?
そういうとこくりと縦に首を振り頷いたメル


『うん』


「よし。良い子だ。
…と悪いけど髪の毛乾かしておくね。」


そう指を鳴らし炎と風の魔術を応用して
髪の毛を一瞬で乾かす。
それにはメルも驚きで。


『はわ〜〜〜!!!』

「ははっ、昔も君これ位
余裕だったんだよ…ってごめん」


記憶が無い君に、
これはダメだった。

そう口に手を置いたダリに
良いよとメルは答える。


『メルのこと見てくれてた。
だからそうやって言ってくれる。』


きっと沢山頑張ったんだね。

そう寂しそうに微笑み距離を取るメル。


嗚呼…そうやって君は、離れていくのか。




『ね、ダリせんせ。教えて?
メルの知らないメルを。』

「…君が良いなら」



そんな寂しそうな顔をしないのであれば。


そう言いたかった言葉を飲み込んで


ダリはとりあえず
立て続けに起きたことを説明し
一緒に食事を作ることにした。



+++++++++++++++++


『もうたべれないー』


「お粗末様。よく食べれたね〜」


昔は君食べれなかったんだよ。

そう言ってダリは食器を下げるのに
そうなの?とメルが首を傾げる。


食事中頂きますと言った後
何を聞いても無口だった彼女。

というのも、
彼女の食べる速度が異常に速かった。


まぁ口に入っているのに突っ込むツッコむ。

絶対喉につっかえるだろ…ってか
誰も取らないよって言っても
首を横に振ってから
すぐに水を飲み答える。



『メルこうしないと食べれない』


そんなことはなかった筈だが…まぁ良いか。


ダリはそうと答えて食事をする。

結局成人男性と全く同じ量を彼女は平らげた。


少なめに作って出した筈なのだが…


余りをまさか一人で食べきるとは恐ろしい胃袋。


まぁ収穫祭の時の訓練の成果と思えば
まぁ輝かしいものとして見れる


…うん見れるとしよう。


『メル食べれなかったの?これ』


「うん?あ〜正確には
形が変わった物
食べれなかったんだよ。」

怖いって言って、
壁に摺り寄せて逃げてたんだよ!

へぇーとメルが言うのに、
これは覚えていないのかと
ふぅんと声が上がる。

「メルちゃんこれは怖い?」

そう言って果物を冷蔵庫から取り出す。

中身を空けると果汁が溢れて美味しいもので。
勿論前のメルなら少し距離をとっていた…が


『ううん…まぁほんのり
ヤバいって声が聞こえなくも』


嗚呼、本能は健在か…


そう苦笑いでダリは
メルがすすっと距離を取る所
本能的に拒否しているのだと知る



いやー可愛らしいねぇ〜ほんと。



「ま。大丈夫さ、
安名ちゃんの時
コレ克服してたし。」


『そうなの』


「そ」


メルちゃんと先程白い翼を目覚めた時から
前のメルちゃんの記憶指す時は
「安名ちゃん」

今現在の彼女の事を指す時は
「メルちゃん」
と名前を変えて話すと言ったダリに

コクコクとメルは縦に頷いてくれた。



今は食器を片付けてくれて
一緒に洗い物をしてくれている。


「昔は高位魔術を使って
皿を浮遊させてまでして
洗ってたんだよ。」


高位魔術は日常に使う程
やすやすと使うものじゃないんだけどね。

そう笑って言うダリにへぇとメルが言う。


こうやって話していると
徐々に前の彼女が思い出すから

…困ったものだ。



『安名ちゃんはとっても優しい子だったんだね。
…ならあの撫でて手を引っ張ってくれたのもあの子なのね。』


「え?…あ」


そうメルが頬に片手を当てその片手を
更に手で覆い嬉しそうに微笑み懐かしむメル。

メルが目覚めた瞬間
歌って踊って居る中で
鉄格子から白いワンピース姿の少女を
引っ張り出すシーンを思い出した。


ひょっとしてあの鉄格子の中の
…が、メルだとしたら?


最後、泡となって消えて溶けた子は…

「(融合…しているんだろうな)」


消えている訳がない。

あんな図太い子が消えるわけない。

燃やされて熱くなった心が
消える訳もないだろう。



『メルは嬉しかった。
笑ってくれた守ってくれた。
私は私って言ってくれた。
だから前のメルもメルだし
今のメルもメルで。』


記憶が無くてごめんね。

そうダリの方を向いて謝るメルに
ダリは首を手を横に振る

「いいよ…こっちこそごめんね」

『ううん。なるべく前の様に振舞うよ?』

「いや、それは良い。
君がしたい様に振舞って?」


きっと前のメルちゃんもそれを望んでる。

そうじゃないと鳥籠の中から引っ張り出してまでして
出て来て消えたメルちゃんの苦労は水の泡だ。

メルはそうダリが言うと

嬉しそうに分かったと微笑んだ。

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