「…どうです?」
「メル先生の魔力を頼りに狙ったとされます」
「主犯は」
「他の悪魔です。
どうやら2年の生徒から
場所の情報を得てたようでして。」
「成る程…ねぇ?」
ふぅんとメルがすやりと寝ている外で
ダリは扉の前でマルバスとこっそり話をしていた
今ダリの部屋のベットで寂しがるメルに
スージーが付き添いで寝てくれている。
あれから即逮捕し時間をかけて吐かせている中
メルはボロボロと泣きながら
自分が悪いと謝っていた
それを何度もなだめ、
ダリとスージーでよしよしと頭を撫でて
ようやく先程眠りにつき始めたばかりだ
「メルちゃんの様子は?」
「ちょっと怖いかも」
「そうですか…にしても使い魔でも
家系魔術でもありませんでした。」
「え?」
「メル先生に声かけただけで
ああなったそうです」
「…じゃあ、」
「ええ、彼女の悪周期だそうで。
声を掛けたらそのまま狙って
冠を付け連れ出せれば
成功だとか聞いたようで。」
「誰から」
「現在それを調査中です。」
中々吐かなくて。
そう困るマルバスに了解とダリは答えた
「にしても悪周期が何処までなのか…」
「全てですよ。
聞こえてきた影の声も全て
メル先生の心の闇だそうです。」
「…え?」
「彼女の思った通りでして、
敵対している悪魔に乗り移ったそうで
連れ出した後は…その。」
「教えて」
「…売春にかけようとしていたようでして」
ダリ先生。お静かに。
そう今にでも悪周期になるかと思うぐらい
異様な声を殺意を出すダリに
マルバスは冷静に答える
「メルちゃんが怯えますよ」
「っ……ごめん」
「いえいえ。ですが流石に
それだけの理由ではなさそうなので
一応他の理由も含めて現在調査中です♪」
「あれ?ってかマルバス先生今奴一人に?」
「あっはは♪する訳ないじゃないですかぁ♪
今交代でエイト先生と
オリアス先生にバトンタッチしてます♪」
いやー今死んでないか心配なんですよー
と嬉しそうに笑うマルバスに
本当に敵に回したくねぇなとダリは苦笑いした
「まぁ彼女の悪周期を何処から聞いて
何故彼女がいるタイミングで言い出したのか。
色々不明はありますがひとまず伝えに来ました。」
「ありがとう。引き続き頼むよ。」
「いえいえ♪我らの秘宝に触れたんですよ。
それも魔王の器と同じ者を傷つけた。」
「…そうだね。死なせないようにしてよ?」
死んだら地獄は見れないからね。
そう言ったダリにええとマルバスは答える
んっともそもそベットが動き
メルが起き上がるのを見て
ダリはじゃあと
マルバスに手を振り中に入った
『…ダリ?』
「いるよ…ああほらどうしたの?」
「…ふいっ?メル?」
「ごめんねスー、起こしちゃったね」
いえいえ。そう言ってベットから
起き上がりメルの傍に寄るスージーに
ダリはペコリと謝罪する
「ダリ先生も私も此処にいますよぉ〜」
『…うん。』
「少しずつでいいから。
ほら泣かない泣かない。」
『ふっ、うっ、ん…ひっ』
そう泣きだしてスージーの胸に抱き着くのに
スージーはポンポンと背中を叩いた
メルの背中は翼がもがれたまま維持されており
何時もなら消えて
泡となり背中の羽管が消えるのだが
今回精神的なショックも
肉体的なショックも大きく
血が固まったまま惨い状態になっていた
ブエルからの治療で痛みも
なんとか引き落ち着いてはいるものの
翼をもう一度出すことは叶わないと聞いている。
『っ、ごめ、メル、悪い子だから』
「ふいっ?メルは悪い子じゃないですよ。」
『ほんと?』
「ええ。それより背中は痛まないですか?」
『ん。多分?…痛みに慣れ過ぎて分かんない』
そう寂しそうに笑うメルに
ダリは少し聞いてみることにした
「ねぇメルちゃん、悪周期って分かる?」
『…ん』
「さっき聞いたんだけど
アレ最初悪周期だったって?」
『っ!?…え?あれ、が?』
やはり気付いてなかったか。
では誰が?
「うん。最初どうだった?
どんな感じした?」
『えっと…こう、
すっっごく不安になって、
ここいちゃだめかなって…』
「何度でも言うけど、
君は此処に居ていいし
寧ろ君がどうしても
出て行きたいって言っても
僕手放すつもりないし♪」
『?????』
「悪周期前になると
何かしらのきっかけで起きるから
とりあえずモヤモヤしたりするなら教えて?」
『でも…』
「槍出したのってメルちゃん
あの世界でやってたの?」
『っ!!それ、は……』
「反論があったら言ってくれた方が嬉しかったかなぁ」
『うっ』
「ダリ先生?」
「っ、いやいや責めてないからね?」
そう今にでも植物を出して
攻撃しかねないスージーに
ダリは首を全力で横に振った
「あんな風に自分を殺してたんだよね?」
『っ!!…ん』
「痛いでしょ?あんな数刺しちゃったら」
『…痛み、分かんないから、悪いから、』
「だからって量を増やせばいいものじゃないよ〜
君出来る子なんだから〜出来なくても責めないよ。」
アレ、よくやってるんだよね。
そう言ったダリにメルはコクリと頷く
『メルああやって自分殺してたの。
でも殺しても足りない時は責めてた。
何でどうしてって。』
「うん」
『そうして心臓一突きしてやっと終わるけど
ここ現実でダリ達に見せちゃって怖くてごめん』
守れなくて。傷付けちゃって。
だから還らないとって思って。
でも還れなくて。此処は現実で。
「あんまり溜め込まないでほしいって思ったかな。
君はあの場所でそうやって生きて来たかもだけど。」
『…うん。』
「ん!何か食べる?」
『…スーの、スープ食べたい』
「ふいっ♪作りますよ♪」
ダリ先生メルをと言って
メルを前に出すスージーに
了解とダリはニコリ
メルを受け取った
カチャカチャと音を立てて料理を作り出すのに
ほんのりと灯りがキッチンから光が部屋を包み込む
その間ダリはメルを抱きしめつつ
ベットの上でスージーの料理を待っていた
壁に持たれかけダリは
メルの背中にそっと手をさする
「…ごめんね、守れなくて」
『っ!いやっ!メルの方こそ!!』
「ううん、アレは確実に僕の方だよ。
気付かなかったとは不甲斐ない。」
君を傷物にもしたし。
『メルもダリの胸、傷つけた』
「アレはほぼ敵からの攻撃に近いよ。」
『でも元々メルが…その』
「でも傷の深さは君の方がずっと大きい。」
『大丈夫だよ!メル、メルまた翼だせっぐ』
「っ!!メル!!!」
背中に手を出すメルにダリが声を上げる
『っ!!はっ、ぐっ、だい、
じょ、ぶっ…また、つば、さだせ』
「いい!!今は止めて!!!」
『でも…つば、さ、ないと、迷惑』
「かけないから!!…ったく、
無理して出そうともしなくていいよ。」
焦るわ
『でも…』
「翼が仮に出せたとしても
その傷から出そうとするんでしょ?
絶対駄目。少なくとも
傷がふさがってから出して。分かった?」
『うん…分かった。』
もう…ほんと心臓が何個あっても足りない。
一度翼をもぎ取られた時
もう最期かと思ってしまった。
沢山血を流して、ダリの手を取って
そのまま手が落ちて
瞼も閉じてしまわないかと
気が気じゃなかった。
「…ほっ、んと、生きてて良かった……」
そう抱きしめるダリに
メルはメルもと答え抱きしめる
『あ、でもこれで堕天使になったりして〜!』
「っ!あのさぁ〜君
ちょいと楽観的過ぎやしない?」
『えへへ!だってダリの笑顔好きだもん!!』
「あ〜はいはい分かった分かったから」
「ふいっ♪仲良しですねぇ♪羨ましいですよ♪」
「スー…そう思うなら助けてくれる?」
何をですか?
そう笑うスージーにダリは苦笑いした
「(にしても…あんな多量の血液を出しても
血の匂いがしなかったのは
どうやら本当に精神的な傷だったらしいな。)」
メルの悪周期は
自分自身に傷をつけて悪く言うこと。
という周囲の判断であって、
メル自身よくわかっていなかった。
あの周囲に出来ていた影たちが
メルの作り出していたダリ達だったとすれば
まぁ悪周期の暴走と考えれば分からなくはないが…
何処まで彼女の悪周期で
敵の思惑かが分からない以上
まだこの話に触れるにはいかないか。
『っあち』
「あらあら、大丈夫ですか…?」
『うん!…美味しいから
早く飲みたくなってつい』
えへへと笑うメルにスージーは
おかわり沢山ありますよとほほ笑んだ
「はいダリ」
「ん。ありがと。スー」
『…?』
「ふいっ?」
「メル?どうかした?」
『…??……?????』
首を傾げながら
コップを前に出し
手前に戻す動作をし
ただひたすら首を左右に傾げるのに
スージーとダリも脂汗が出る
『多分なんでもない?
ん言葉分からない。』
「…そっか」
そうくシャリと笑ったダリに
メルは微笑んだ
+++++++++++++++++
スーちゃんとダリの手が触れて目と目が合った時
とっても胸が痛んだ。
ずきずきして、息が出来なかった。
何時もなら怖いとか嫌いとかで痛むから
それを抑えるのに
自分の心臓突き刺して殺すから出来るけど。
『(そんなこと出来なかった)』
ただ息が出来なくて
ただお似合いだと思って
ああそうだ
お似合いだと思った
『っけほっ、こほっ』
何か咳が多いな、なんでだろ。
風邪かなって思ったんだよ。
でもすぐにダリと居ると落ち着くから。
何にもないと思った。
黒い影はメルに冠を置いた時
全てもうどうでもよくなった。
あの痛みが一瞬で消えたのに
何処か落ち着いて、怖かった。
痛みをメルは消していたのに
慣れ過ぎていたのに
いつの間にか、
この現実に居ることに慣れてしまった。
『けほっ、けほっ』
駄目だな…ダリの所帰ろう。
そう思いメルは歩いてダリの元に行く。
シンと静まる場所に姿が見えた
雪がちらりと落ちる所
『ーだ』
声を出して前に手を出す
その間にふわりと
スージーの手がダリの頭に触れ
座った所とスージーの頭が隠れて
頭の中が一つ答えを導いた
『…(逃げなきゃ)』
知らない。知らない。
知らない知らない知らない。
足音を消して走るなんて
メルは良い子で出来る子だから。
そう言えば昔もこんなことがあったな。
あれ何時の事だっけ
『っげほっ、けほっ、ごほっっ、かはっ』
喉を抑えて座り込む
遠くまで来たからどうか聞こえてないでほしい。
『ごほっ…な、に?これ』
口と言うか喉から花弁が出て来た。
さっきの事を思い出すとどうしても出てくる。
白い花、綺麗でキラキラしている花。
何だろう?何故ダリとスーちゃんのことっ
『ごほっ、ごほっ、ぐっ、』
駄目だ…考えたら考える程咳が辛くなる。
なんで?いやだ、考えさせて。
『ごほっ、けほっ、ごほっ、ぐ』
ハラハラと落ちていく白い花
コレが嫉妬なのかな?
ー例えばダリ先生と肌に触れるとか
『ぐっ、ごほっ、けほっ』
駄目だ…考えるのは…と言うか、
『(これ多分バレたら不味い)』
と言うことは…
『(逃げようまずは寮から出なきゃ)』
ダリにこんな姿見られたくないし…
あの場所に居るのを想像するだけでも咳が止まらない
『へほっ、ひとっ、ぐごほっ、まずっ』
花びらを回収して、此処から出なきゃ。
オトジャンさんに知られないように
まだ日は明るいし、バビルス位かな。
『ダリっ、げほっ、ごほっ、』
駄目考えたらどんどん出てくる。まずは走る。
よしそうだ、思考を切り替えて…
『…ほっ』
良かった。落ち着いた。
『まずは向こうだな…』
オリアス先生達が喋っているのを見つけてそっと逃げる
エイト先生達にも会うのは避けた方が良い。
『(なら…イポス!!)』
そう作り出したイポスに歩かせ、奥に行かせる。
「あ!イチョウ〜!!」
『(っ!?やっぱそうなるよね!!
イポス!!飛んで角で私飛ばして!!)』
そう思っているとすぐに移動し
誰も居ないことを確認したイポスが
メルを家系魔術で飛ばす
『(よし!戻って!!)』
「あれ?イチョウ〜?」
「ツムル?どうした」
「あ!イチョウがさっき通って行ったの見かけて」
「俺が?」
+++++++++++++++++
『…(此処まで来ればもう追って来ない)』
バビルスに来る方向憶えて置いて良かった。
足…痛いけど、大丈夫。あ、
足跡でバレちゃいそうだけど。まぁ良いか。
『…(スーちゃんのこと好きならお似合いだなって)』
そう思うとまた喉の奥から零れ出す。
代償と言っていたが…まさかコレか?
『(嘘だ嘘だ嘘だ…やめてお願い)』
ダリの事を想うと正確には
スージーと一緒に居ることを
考えるだけでも咳が止まらなくなってきた。
不味いこれは不味い。
時間が過ぎれば咳は
し過ぎると血を吐き出す。
魔界で吐血は割と死亡フラグだ。
血の匂いでも悪魔は怖いのに。
『…(とにかく逃げなきゃ)』
パタパタと足音を立てて、
メルは記憶を頼りに走る
きぃと音を立ててメルは扉を開けた
「やぁメルちゃんどうしたの…
ってメルちゃん!?君裸足で…ダリ先生は!?」
『っダリっごほっ、ごほっ』
そう膝をついて咳をし始めたメルにバラムは固まった
はらりと落ちた綺麗な白い光る花に聞いたことがあった
「………メルちゃん、
ゆっくりでいいよ。
今考えた事忘れて?」
『けほっ、けほ、けほっ、
ん、ごほっ、か、はっ』
「ごめんね…よしよし、
彼には連絡しておくよ。」
『っだ、ごほっ、かはっ、んめ、だから』
「でも今頃「バラム先生メルちゃんが
居なくなってそっち居ます!?」ほら」
だめ、言わないで。花が咲いちゃう。
膝をついて咳をしていた
メルがぱたりと床に身体を横たえる
「あーダリ先生一応保護してるので
今はだいじょっ!?安名ちゃん!!!」
『っげほっ、ごほっ…ぐっ、ごほっ!!』
ぴちゃりと音が入る
駄目だ…考えるな…
『っぐ…!!』
「っ!馬鹿駄目だ!!!」
力を使って胸に刺そうとしたのを
バラムに止められる
その手に血の色が見えて
「っ!?…ダリ先生これま
…ってもう切ってる。」
これは秒で来るな。…にしても、
このむせかえる匂いはなんだ?
よだれが少し出てしまう…が、血か。
『げほっ、ごほっ、か、はっ』
「…カルエゴ君今来れる?
ちょっとメルちゃんが花吐いた」
その言葉にカルエゴに連絡していた
通話から「はぁ!?」という声が上がる
ヒューヒューと音を立てるだけで
息をするメルが顔を上げるも
まだ肩を使って息をするのを
そっとバラムはメルの背中を撫でながら答える
「うん。うん。ダリ先生も呼んでる。うん。」
ピッと音が鳴った後、
メルは目を閉じて息をするのに必死で
「メルちゃん、立てる?」
それに首を少しフルフルと横に振った後
咳し始めるメル
顔がどんどん青ざめていくのに、
不味いなとバラム
『っ………あ、っ、バラムっせんせ』
「メルちゃんどう?」
『大分楽になった…ごめん急に来て』
「ううん。起こすよ、
ちょっと奥に居て置いてね。
大丈夫守ってあげるから。」
『ごめんなさい』
「いいいい。
何なら寝てて良いからね。
聞かなくていいし。」
『…うん』
そうコクリ頷いて
バラムが休憩している方のベットに
そっとメルを降ろす
丸まって息を必死にしていた姿から
すぐに落ち着いた所バラムは確信する。