「バラム先生!!!メルは!!!!」
そう血相を変えて扉を強く開けたダリに
お茶を入れているバラム
まぁまずは座って下さいと促すバラムに
いやいやと首を横に振りながら中に入る
「メル此処に居るでしょ
何処に隠しているんですか」
「その前にカルエゴ君に
説明聞いて貰えます?」
「は!?ちょ今それどころじゃ」
あのぐったりして咳こんでいた所
熱が出たのか何なのか
最近ダリの仕事を邪魔しているのが悪いと思ったのか
バラムの所に押し掛けているとは気付かなかった
「貴様が他の悪魔に手を出すとは」
そう言って入ってきたカルエゴに挟まれ
ダリはバラムの方向から
扉の方に身体を向けて答える
「はぁっ!?ちょ何言ってんの!?」
「奴が花を吐く理由は」
『いいカルエゴ先生
メルがっげほっごほっ』
「っ!メルちゃん駄目だよ!!」
こっちに来ちゃそう言って
バラムが奥の部屋で寝かしていたメルが
肩で息をしながら首に手を当て扉を開けてきていた。
だがダリをみてすぐに目を閉じ
そのまま咳しながらゆっくりと
その場に座り込んだのに
急いで駆け付けるバラムに
「っ!メルちゃん!!」
「待て!」
「ちょっ!カルエゴ君!!」
ダリも駆け付けようとするのに
カルエゴが腕を掴んで離さない
離せと腕を引っ張るが
カルエゴからの言葉に動きが止まる
「今近づくのは」
『っ』
「駄目だメルちゃん…っ、ごめん!!」
そうメルがダリの方に動き咳で呼吸が
しにくくなりそうなのに気付いたバラムは
強く謝り、メルの首に手刀を入れ意識を飛ばす。
ぱたりとバラムの腕の中で
意識を飛ばした彼女をそっと抱き上げ
部屋の奥にそっと置き扉を閉めた
「貴様が他の女悪魔に手を出すとは」
「いやいやいやいや
僕メルちゃん一途なの
もう分かってるでしょ
何馬鹿なこと言ってんの?
ふざけないでくれる?」
「いたって真面目ですよ…カルエゴ君」
ああすまん。そう言って
カルエゴとダリの前にバラムがお茶を出す
軽く礼を言ったカルエゴ、
そして会釈するダリに一呼吸置き
それで?とダリが聞く。
「ああ…ナベリウス家で貴族として
たまに会合があり参加していた時に
聞いた話ですが」
「貴族会議?」
「ええ上流階級だけでの。
あくまでも噂ではありますが…
魔樹が失恋をしたら花を吐くとか」
「はぁ!?ちょ今すぐ言い聞かせて」
「待て待て待て待て待て」
そう手を上げて首を横に振るカルエゴと
ダリが動き出したのにバラムが
ダリの前に立ち
両手を前に出して首を横に振った
「話を最後まできけ!!」
「…分かった」
「新しい魔樹が誕生したと言う
噂がもう魔界中に広まっている。
そこで守ろうという派閥と奪いたい…
前の魔樹を生き返らせるという
派閥があってだな。」
「っ!!…詳しく聞こうか。」
そう目付が変わったダリに
カルエゴがまぁ座れと促す
「古い文献を漁ったりもしたが、
魔樹特有の病気があり
そもそも魔樹自体
恋をする体質ではないそうだ。」
「どういう?」
「魔樹の魔力は代々引き継がれてきた者の
蓄積とされているらしくてですね。
その力を維持するのにこうしたい
ああしたいという気持ちに振り回されると
魔力を漏らして最終的に枯れ果てるそうで。」
「……は?え、まってつまり」
「メルの記憶を消去し、
一刻も早く元の場所に戻さないと命に関わる。」
それは事実上の…追放になる。
「恋煩いが花になり、
開花し始めている途中でしょうが
まだ花弁だけで喉に詰まっていませんが
そのうち大きくなる。」
「……まだ沢山
彼女には教えるものがある」
「ええ、私達もそう思っています。
このまま元の場所に戻せば
敵対側の悪魔に拉致されるでしょう。」
「なら!!」
「そこで提案がある」
そう言ってカルエゴが前に出た
「要は花を咲かせなければいい。」
「…?どういう??」
「ダリ先生、カルエゴ君はメルちゃんを
このままバビルスに置いておくんだ
って言ってるんですよ。」
え?さっきと言っていること違うよね??
そう首を傾げていうダリ
「シチロウ」
「うん調査済みだよ。
マルバス先生達にも協力してもらってね。
此間の侵入者から新しい情報を貰ったんだよ。」
そう書類を何処に置いたかな
と探し出したバラムに
それで?とダリがカルエゴに聞く
「上層部しか知らない情報を僕に教えていいの?」
「流石に処罰されるかもしれんが、
あんな離れたくもないのに離れようと
藻掻いているのを目のあたりにして
誰が言わないでおけるか…」
そう頭を抱えたカルエゴに
ダリは目を丸くする
「本当はカルエゴ君ダリ先生
困らせようと黙ってたんですよ」
「はぁ!?ちょ!僕だけなら
まだしもメルの話になると
ちょっと」
「分かってる分かってるだから
仕事も投げ捨ててこっちに
駆け付けたんでしょうが…!」
「カルエゴ君が教えてくれた通り
新魔樹になった時の初期症状らしいよ。
ただ失恋って所がちょっと違ってて…」
ちょっと?
そうカルエゴが頭を上げて
バラムを見て聞くのに
うんと頷きバラムが
自身のマスクに手を当てて答える
「生物上に必要はないんだけど、
ほら嫉妬ってあるでしょ?
アレ感じると出るんだって…花」
「は!?」
「え?ってことは…
嫉妬拗らせ過ぎると花咲くって?」
「ん〜語弊があるなぁ。」
『っ、だからメル
説明するって、言ってるのに』
「ちょ!!メルちゃん!!!」
「メル!」
起きてこないでって言ってるでしょと向かうバラムに
メルも聞きたいしとニヤリ笑いつつ
地べたに座るメル
そっと抱き上げ近くに蔦を生やし、
メルをそのままツタの椅子に座らせる
『失恋だの嫉妬だの訳わからないことを
言わないでほしっごほっごほっ』
「こらこら本調子じゃないんだから…」
「まぁ噂の範疇だから
正確なことは判明しなくても充分だし。
それで?バラム先生お話の続き
聞かせてもらえます?」
「ああ、要は情の濃度が溢れすぎて、
崩壊するとこうなるらしくて。
きっかけは悪周期でして…
どちらにせよ放さないといけないように
仕向けるために此処に来たそうで。」
「反対側の勢力が此処に来たと言うことだ」
『…メル、やっぱり』
そうしょげるメルに嫌だとダリがいう。
何か他にやれることがと言うのに思い出し
ダリはカルエゴに聞く
「そういや方法があるって言ってたけど」
「嗚呼、そいつの情を一定以上
上げなければ良いと言うことだ」
「…???」
「新魔樹の花は薬にもなって、
場合によっては死んだ悪魔を
蘇生する事だって可能だそうだ。」
メルお前も新魔樹になったんだから聞いておけ
そう言ったカルエゴがメルの方を向く
メルは咳こみつつもこくりと頷く
「拗らせないように
一定の情を注げば自然と落ち着く」
「…つまりメルちゃん
誰かに取られると思って
嫉妬して花が咲いたって?」
まぁそういうことだ。
そう言ったカルエゴに
ダリは大きなため息を吐いた
「はぁ〜〜〜〜、ってことは
言い聞かせてやれば良いって事でしょ?」
「ダリ先生…メルちゃん
照れてますもうそこまでに」
「シチロウ資料の話を」
あ、そうだった。
そう言って
バラムは資料を取り話を進める。
「メルちゃん…新魔樹として
覚醒した状態から一年間は
不安定状態らしくて
その間の環境で今後の魔界や魔力が
大きく変わるそうです。」
愛情を注げば優しい魔界に
逆に体罰や精神的苦痛を与えれば厳しい魔界に
その分レベルも力も変化するらしい
「なのでこの一年間反発側は
奪ってメルちゃんを…その」
『メルの事を殺して壊して魔界を強く
もしくは前の魔樹にさせるってことでしょ。』
そんなの大体想像ついてた。
そう真面目な顔をして答えるメルに
気付いてたの!?とバラムが驚き聞く
それに何となくねとメルは答える
『メルは悪い子だからって
言い聞かせるのも最悪の現実が来たときに
完全に崩壊しないようにするためであって、
流石に自分を責めるのに限度は持ってるつもりだよ。』
「いやどう考えても
やり過ぎなのは見えてるんだけど…」
『こんなのでやり過ぎって思う方が
甘い気がするけどまぁいいや。それで?』
「ああ、魔樹が一年過ぎると
そのまま一定に保つそうで其処からは
暴走して封じ込めない限りは基本的に無害だし
なんならその一年で魔界への効果が変わるんだって。」
翼の色が無くなれば無くなるほど
周りへの被害は少なくなるとか。
「でもそれだと職員室で起きたのは」
「カルエゴ先生」
『いいよ。メルも無駄に絶望に慣れさせてないから。
むやみに放された方がストレスたまる。やめてダリ。』
「うっ…わかった」
『前のメルが現実でも
心臓突き刺したら駄目って言ってたのは
多分この一年元の場所に戻れないから
っていうことだろうし。』
それで突き刺そうとしてたの
君死のうとしてた?
そう言ったバラムに
あの時は忘れてたと笑ったメル
『それに…地位は変わらない。
メルはこの場所に残りたいと思ったから。
願った…それを否定する奴らのことは
…気にしなくて良い。でしょ?』
「そう、だけど…」
『要は感情を一定にすればいい。
無駄な思考回路を切り落とせば
別に生き残れるよ。』
「っ!!それは…」
『…あの子がメルを愛していた理由が
やっとわかった気がする。』
周りに迷惑をかけない為だったんだね。
そう言ってメルは
席から立ち前に歩くと
ふわり右手を広げながら指を鳴らす
すると目の前に真っ白な少女が現れる
『君がメルを繋ぎ止めるなら
メルだって繋ぎ止めたよ。』
「っ!?」
『でもごめんね
君をもう愛せなくて。』
ジジジと音を立てて少女が形を崩す
壊れていくのが余りにも綺麗で
見ていた者はその姿に目を奪われる
ただ嬉しそうに少女はメルの頬に摺り寄せる
嗚呼と言ってメルは嬉しそうに目を閉じて笑う
『君はメルを守ってくれたから。
メルはこの場所に居て守るよ。』
だから還っておいで。
その場所にいつか帰った時の為に。
そう言ったメルに
少女がふわりと笑い溶けて消える。
いつの間にか咳も花も止まっていた。
+++++++++++++++++
パタンとドアを閉め、
メルはダリに抱きかかえられたまま
廊下を歩いて貰っていた。
「全く…で?誰に嫉妬したの??」
『へ!?あっいやーその』
「こらこら暴れない。
こんなに愛しているのに伝わっていないとは。
今日分かるまで放すつもりないから
覚悟しておくんだね。」
まぁ居なくなって足跡が残ってた時は
ゾッとしたけどね。
急に居なくならないでそう言ったダリに
メルはごめんと謝り
ダリの胸の中に身体を擦りつけた
それを見てふうとため息を吐いてダリは
メルの姿をみて安心した
+++++++++++++++++
「ダリ先生メルちゃん
居なくなったら
仕事出来なくなりそうだよね。」
「あの溺愛ぶりは異常な」
「あはは」
そうメルの状況的にも
もう返して大丈夫と判断したバラムは
無事メルをダリがお持ち帰りしてから
カルエゴとダリの魔茶を片付けていた
「でも少しずつね、メルちゃん
僕達に打ち解けていってるんだよ。」
嘘、少しずつ消えて
波紋もなくなっていってる。
そう言ったバラムに
カルエゴはそうかと目を閉じて答えた。
「今はダリ先生好きでつきまわってるけど
そのうちダリ先生が追いかけまわしそうだよね。」
「そうなったら苦情入れてやる。
お前の相手が騒がしくて
業務妨害を起こすとな。」
「あはは、新魔樹様に
苦情入れられるなんて
良い度胸しているって
言われそうだけどね。」
「勝手に言わせとけそんなもの。」
そう言ったカルエゴに
勿論とバラムはにこりと微笑んだ
互いの笑みは目にないが。
「人騒がせしおって…まぁこれで落ち着くだろ」
「そうなら…いいんだけどねぇ。」