「ほんとさぁ…メルちゃん???」
『だからごめんって謝ってるじゃんかぁ』
そう終わった後、事後…
ダリはシーツをそっとメルの身体にかけて
横になったまま説教をしていた。
「ほっっっと危ないの牙は!!」
『分かった分かった
ってばもーしないって!!』
「ったく、信用できないなぁ…
君欲深いからすぐ約束破りそう。」
『あ!言ったなぁ?
メル“約束”は守る方だもん!!
これでも新魔樹だもんね!!』
「おうおう言いますねぇ?
僕の言いつけ守れずに
元の場所に戻ろうとする子が
よく言うよ。」
そうひくひくと眉が動くダリに
メルはむぅと頬を膨らませた
『だってぇ…居心地良い
って思わせたんだもん。』
「…此処は
そんなに居心地悪いかい?」
そっとメルの髪の毛を後ろに寄せ頭を撫でる
それにううんと首を横に振った
『居心地よすぎて怖い』
「そりゃよかった」
『メルね…
昔から人と関わらなかったの
どうしてか知ってる?』
「え?」
そう前世の記憶か
前のメルか分からない話を
急に振ってくるメルに
ダリは一瞬声を出して止まった
『ママはメルを置いてごめんね
って言って離れちゃったから。
だから皆生きとし生ける者は
例え強く信頼しても
この場所から離れていく。』
それがメルの一番の絶望
そう言ったメルはそっと
ダリの手を取り頬に摺り寄せる
『ごめんねって言って欲しくなかった…
ほんとは楽しかったって言って欲しかった…
でもメルは良い子だった…
いや悪い子だったから。』
離れていくのに、
追いかけてはいけないって。
言い聞かせていたの。
そう涙がぽろりと零れるのを
そっと舌で掬い取る
『ママのように
全てを捧げても置いてかれるのなら。
メルはメルだけを愛してしまえと願った。』
「…メル」
『きっと貴方も置いてってしまう。
そう思わないとね、困るの。』
同じ様に堕ちて長い眠りにつきそうで。
そう言ったメルに大丈夫と首を横に振ったダリ
「ずっと一緒にいるよ」
『嘘つき』
「なぁにひょっとして未来見たの?」
『へへ!』
「君が置いてく方でしょうが…
ね知ってる?悪魔の寿命。」
『…知ってるよ』
だからだよ。
そう言ってメルは
そっとダリの頭を胸に抱きしめた
トクトクと心臓が鳴っている。
たった一つしかない
小さい音でも強く鳴って。
『だから会いたくなかった。
大事にしてはいけないの。
壊れて戻らなくなる世界は
…もうママのあの場所だけでいい。』
青い世界ただ澄み渡ったあの時間だけで。
そう言うメルに、
そっとダリは背中に腕を回し
ぎゅっと抱きしめる
「大丈夫、僕は人間じゃない。悪魔だ。」
『悪魔も人間も同じだよ』
「僕はダリだよ」
『それでも生きとし生ける者…
出会いがあれば必ず別れがある。』
それが繰り返されるから、強くなれる。
そう微笑むメルにダリはサラリという
「…やっぱり君根っからの教師だよ。
向いてるって。」
『あはは!!無理無理〜!!
メルまだまだ幼稚だもん!!!』
「そういう心は育てようとしても育たないんだよ。
…君は本当に素直で純粋で、綺麗すぎて、稀有だ。」
『…私はダリの方が稀有だと思うよ?』
そう言うとダリは
きょとんとして目を丸くして言う
「…僕が?」
『うん!』
「え?何処にでも居そうじゃない?」
『それを言ったらメルも何処にでもいるよ。
人間界行ったらメルみたいなの沢山いるよ?』
「いやいやいやそりゃそうかもだけどさ」
『どうして真っ白に
ただ絶望を繰り返したか。それはね?
確かに出会いたい者に触れたかったから。』
メルは、この場所が好きだよ。
貴方が要るから、この場所が好き。
『そう思わせてくれる貴方こそ』
稀有なんだよ。ダリ
「……君、ほんと破壊力底知れないね。」
『へへ!ダリが育てました!!』
「はいはい僕が育てましたよ。」
そうポンポンと
背中を叩いて知るその触り心地に
ああ!と声を上げて起き上がるダリに
何々?とメルが起き上がる
「ちょ!背中背中!!!」
『へ?どうなってる?』
「綺麗になってる!!!!」
『おおおおおおおおお』
「はぁーーーーー
良かったーーーーー」
『へへ!まぁ治るよ!
だってそのつもりで
しばいたんだもん!』
「…こっちは気が気じゃないのよ。」
ごめんねそうそっと抱きしめるメルに
ポンポンと背中を叩いた
『(ママはきっとメルを見てくれない)』
でも…ダリが見てくれたら。
それだけで…それだけでいいよ。
たとえ
『(この痛みが一回きりになってもいいよ)』
ママを見て望んでいた青い世界
とても澄んでいて綺麗な世界
笑ってくれたあの世界は
…夢で幻で何もない。
なのに、振り返るとダリが
こっちを見て立ってくれている。
ふわりふわりと奥に皆浮かび上がって
両手を出して言ってくれる。
ーおいで
その言葉にメルは何よりも嬉しくて。
そして悲しいの。
さようなら、お母さん。
ありがとう、お母さん。
メルの心をただ素直に真っ白にしてくれていた。
貴方が居てくれたから、貴方を望んだから。
だからメルはダリに会えたんだよ。
あの痛みは決して苦ではなかった。
痛いのを快楽として良かった。
…良かった。
そう、良かったの。
そのままで。
切り替えてしまわなければ良かったと
私は、後悔したの。
+++++++++++++++
ある晴れた日だった
仕事もして、何時も通りに出かけて
週に3回学校に軽くお手伝いに
行けるようにしてくれて。
生徒の話を聞いただけなの。
ーダリ先生スージー先生と付き合ってるんだって!!
その言葉にメルは心を落っことしてしまったの。
コトリ、何かが落ちた音がした。
その瞬間、音が色が一気に消えた。
まるでスイッチを切ったように。
色が一瞬で消えてしまったの。
…ねぇ、何処にあるの?
ー**
痛みで声が聞こえて来た
嗚呼、これは不味い。
『ーーーけほっ』
口からぺちゃり
黒く綺麗な
百合の花が口から出てきて
嗚呼、メルは思ったのです。
この心は呪われているのだと。
沢山愛されて沢山想われて
それでも、また離れてしまう。
そうやってると
流石に相手も呆れてくる。
………ついつい喧嘩した。
最初はメルが悪かった。
出来るって出来ない事を言ってたから
強めに言ったダリについ、むきになった。
ーメルだってできるもん!!
ーっ!じゃあやってみればいいじゃん!!
その声が、あの人と同じように聞こえて。
分かったとしか言えなくて。
最近は女子寮で寝泊まりしてるの。
仕事上どうしても会うから、それが苦しい。
そんな時に聞いちゃった。
『(そうだよね…メル悪い子だもの…)』
置いてかれる。
置いてかれるに決まっている。
この身体は心は呪われている。
手放したあの心を取り戻したい。
そう言えば悪周期になったら
周りを傷つけないって言ってたな。
それって…ひょっとして
『…やってみる価値ある。』
今なら、還れる気がする。
確実に…やれる。
『(隠せ、今までの集大成だ)』
さくりと殺して見えないようにする。
そうだ…そう、やればできる。
『(とても身体が痛い胸が凄く痛い…
久しぶりだからだ。きっと一過性のモノ。)』
彼のことは…忘れてしまえばいい。
いや違う忘れないでほしい。
嗚呼でも嫌だ。
この気持ちを捨てたくない…なら
壊して小さくしてしまえばいい。
この愛も恋も好きも全て。
ーえ?ほんとなの??
ーメル先生が誘惑して〜
『(してないよ…してないけど、いいの)』
それでもいいよ。
メルは演技できるから。
とっても天才子役者だから。
あの青空の世界に戻れるのなら。
あの鳥籠の中に入れるのなら。
…みんなが
『(貴方が望むのなら良いよ)』
やってやるよ。
あれ、
『…此処、どうやってきたっけ?』
廊下を歩いていた筈が
いつの間にか講堂に来ていたようだ。
何時もは賑わったりする講堂も
今日は誰一人もいない
なのに真ん中に黒い影がいる
…嗚呼、お迎えが来た。
帰らなければいけない。
すっと身体が軽くなって、前に行く
駄目だという警告音が鳴るのに、行かなきゃいけなくて。
行かないと、この痛みは晴れない気がして。
この痛みを晴らしてよ。
私は彼の元に居るべき存在ではないと。
私は彼に相応しい存在ではないと。
だから私はこの場所に戻って来たのだと。
此処が私の居場所なのだと。
いつの間にか影は私を覆い隠す程
大きく上から私を見下ろしていて
それが何よりも心地よくて
涙が出てきそうだ
ー絶望無謀やっぱりそうだ
いた
ーそうだそうだ!そこにいる!!
君に会いたかった
ーおいでおいで、こっちへおいで
行くよ、今行く。
ー『そうして再び繰り返す』
講堂の中央で影がメルの頭に黒い冠を置く
するとメルの金色に光り輝いていた目は
光を落とし、すっと影に抱き着いた
嗚呼此処だ、此処がメルの
…本当の居場所。
ー嗚呼!0時の鐘が鳴り響く!お帰りお還り!君の世界!!
青い空が徐々に世界を包み込んでいく
そうだ、メルは悪い子だから。
…誰も居ない草原の下、ふわりと浮かぶ白い姿
『…ころさなきゃ』
すっと刃物を持ち身体を動かす
バビルスだった服装が動いたことで
変わり動きやすい服装に変わる
白いワンピースに
下にズボンがぴっちりとくっついてる
目の前の自分にさくりと胸に一突きした
『っ!!!っ!!
ぐっ、ごほっ、げほっがほっ』
口から出てくる吐き気に嘔吐。
痛みに身体が倒れて息を何とか吐く
ー痛みに長く離れてた!その分その分!!!
『……ころ、さなきゃ』
徐々に世界が包み込んでいく中。
幾つかの少女が地面から
起き上がって此方に向かってくる
一人、また一人、
傷つける度に切った所が痛みを知らせる
…なのに、切れば切るほど、
痛みが消えて落ち着いていく。
それと同時に
速度も考える手段も切り取られていく
目が座り、ただ目の前の少女に走る
好きな君を殺せ
笑った君を殺せ
愛した君を**
キーンと音が鳴る、
なんだなんだ攻撃が来る
炎?紫?何色だ?
「ーっ!!!メルっ!!!!」
青い世界に侵入者…排除排除、その前に
鳥籠の中に捕らえてそのまま放置しておく
メルは指を鳴らし侵入者を鳥籠の中に入れる
何かを言っているが、考えなくて良い。
見せしめにすればいい。
少女が走って来たのに抵抗もせず
さくっと腹に一突き入れる
ぐっと引き抜いた後足でけり落とす
ゴロゴロと転がる少女が痛みを叫ぶ
うるさい
『うるさいかってにしんでしまえばいいものを』
そう言ってメルはあっさりと
腹を切り少女を消し去る
振り返った場所から少女が走ってくる。
ー嗚呼、おいでおいで。此方へ、オイデ
『ほらほら、はやく、もっと!!ハヤク!!!』
少女の攻撃が強まると同時に
メルも腰を落とし
勢いよく蹴り上げ
今度は肺の方に突き刺した
初めて突いたところだから
痛みがこっちにもダイレクトに来る
『っぐ、ああああああ、っ、
はっ、だい、じょぶ、まだ
…行ける、殺せ』
ころせ。
ただ自分に指令を言い渡せる。
徐々に思考が落ち着き、
目の前に来る少女を切りまくる
一体、二体、三体、四体
避けながら殺して
消えていく死体に痛みも消えていく
嗚呼…この感覚、何で忘れていたんだろう。
ー**
嗚呼!!
『〜〜〜っ!!嗚呼…ああ!!
やっ、とやっと!!!会えた…』
黒髪の女性、少女を殺していたらやってくる愛おしい人
私の名前を呼んでくれて、微笑んでくれる。
嗚呼!!嬉しい…嬉しい嬉しい嬉しい!!!!
何よりも嬉しい気持ちが胸から溢れて止まらなくて
走って走って、その場所に飛びつくの
『あのね!!私ーー』
でも決まり切って言うの
ーごめんね
その声に痛みが走る
胸に一突き痛みが来る
嗚呼……嗚呼、違う違う、
違う違う違う貴方ではない!!!
ー**、一緒に居られなくてごめんね
『…いわないで、どうして、分かった!
メルまだダメだったんだね!!
待ってて!!今やってくる!!』
そう笑ってメルは後ろを振り返り
母親らしき女性に白いシーツを
被せて見せないようにする
ころせ、ころせ、少女を殺せ
襲い掛かってくる少女を剣で捌く
右へ左へ避けて飛んで貫いて
『っ!これ!!これなら!!!』
そうバッと白いシーツを剥がす
ーごめんね
ちがう
『な、んで…?ねぇ、まだ?まだなの…?
嗚呼、ごめん、メル馬鹿だったもんね』
あったよ。倒さないといけないもの。
『
貴方は私を置いていってしまったのね』
なら!
何か叫び声がする。
嗚呼…邪魔だな…
『ごめんね、ママ。今雑音消してくるね。
テレビの音なんて消さないと怒られちゃうね。』
貴方が頭を撫でてくれるあの時間を。
あの雑音を消したらくれるでしょう?
なら。
『…ころしてあげる』
目をぎろりと睨んだ