Novel - Carla | Kerry

HOME > 花畑のモルグ2 > NOVEL

Novel

空が見たいと言われたから

act 4.






ピコンとなる携帯にダリは連絡を入れる。


「(経過は特に異常なし…と)」

ツムルが心配して
「メル先生どうですか?」
と聞いて来た。


その為、特に不穏な動きや
動作はなく異常はないと返す。

音に反応したのか
メルがびくりと音に
身体をぎゅんと勢いよく向けた。


「ス魔ホの音だよ。」

『誰から?』

「ツムル先生」

『ツムルせんせー!元気元気!?』

「おわっ…何々?通話する?」

『するする!!!』


分かった分かったから
離れてそう両手を上げるダリに
メルはすっと離れる。
おっ聞き分けが良いね。


「ごめんツムル先生夜分遅くに」

「いえいえ〜メル先生はどうで」

『ツムツムだああああああ』

「こーらこらこらこらこら!!」


駄目でしょうが!!
そうメルの首根っこをひっつかみ
ダリは笑いながら画面から遠ざける。

メルは数時間前に会った筈のツムルを見つけると
一目散に画面に張り付く勢いで顔を近づけたのだ。


近い近い近い!とダリが言うのに

メルは首根っこを掴まれたまま
『え゙〜〜〜???』と嫌そうに答える。

それにはツムルも苦笑いで答えた。
どうやら部屋からの中継らしい。
メルに向けて手を振ってくれる。

「あ、あはは
…確かに元気そうですね。」

「うん。こんな感じです。」

『ツムツム元気!?
メル元気!!!』


「うん俺も元気だよ〜」


「ごめんね…忙しいでしょ」


「いいえ、なんか
可愛い妹分が出来た気分で。」


最後ちょっと
笑顔が引きつって心配してたんです。

そう言ったツムルにメルの表情が急変する。


笑って居た顔がスンと真顔になるのに
ダリも見ていたツムルもぎょっとする。


『…』


「…変えなくて良い大丈夫だから」


そう戻ったのに
メルが首を横に振り距離を取り出す
それにダリは良いと
否定せずに「おいで」と手をこまねく。

申し訳なさそうにメルはチラチラと
ツムルを見つつ
そっとダリの近くで体育座りをした。


『…メルのこと
よーーーーく見てる。
危険悪魔。』


シャーと音を立てて警戒するメルに
「あれ、やらかした?」
とツムルが冷や汗を流す。
ダリは大丈夫と声を出した。


「違う違うツムル先生は
メルの事を心配してるんだよ。」

「…随分仲良くなりましたね。ダリ先生」

「いや前の記憶をメルちゃんで
今を呼び捨てにしてるだけだよ。」

そうしないとこんがらがるから。

そう訂正したダリに
ツムルは成る程と返した。


『ほんと?悪い悪魔違う?
メルの事掬い取らない?』

「掬い取らないよ」

『…………わかった。
ツムツム良い悪魔。』

「ほっ…良かった。」

「まぁこんな感じで、
僕以外割と警戒心強くてさ。

さっきバラム先生が
部屋まで来てくれてたんだけど
メルちゃんが警戒して
魔術撃ちそうになって焦った。」


「本当に大きな念子ねこですね……」


助けて。


そう心の悲鳴が上がるダリに
助けられる所まで
助けようと心に誓うツムル


「まぁ最後に会った時よりも
かなり表情よさそうでよかったです。
安心しきってるっぽそうですし。」

『ん〜〜』

「ん?どうした」

『ツムと遊びたい…でも』


うつらうつらと目をこすりながら
頭をかくかくと落とすメルに
眠気が来たと察知したダリは嗚呼と答えた。


「メル先生、また明日遊ぼ〜」

「ごめんね。ほんと」


「いえいえ困った時はお互い様ですよ!
それじゃあまた何かあれば連絡下さい!」


そう手を振って笑ったまま切ったツムルに
ダリは明日礼を言うついでに
会わせることに決め
明日の予定に男子寮に行くことに決めた。


「メルはベットで寝な。
僕はソファーで寝るから。」


『ん〜……分かった。』


「(お、やけに大人しいな)」


まぁ部屋の中にいるだけで安心するのだろう。


そう思い込み、少し早いが電気を消して
ソファーの中に身体をシーツに挟んで目を閉じた。


大分疲れが来ているらしい。
そりゃあ大きな念子ねこを相手してたら疲れるだろう。


意識がふつりと落ちていった。



+++++++++++++++++



メル。二回目の夜。


現在とても落ち着いています。


…でも。



『(呼吸音共に一定…多分寝てる。
起こさない方が良い。)』



メルは眠れていなかった。



あんなに動きまくって
落ち着いては居たものの


触れられる場所に
いざ近づくと
直接触れるのはしない。



と言うかしていいのか分からなくなる。

したいと言ったら困った顔で濁される。

多分異性だから。



悪魔と人間でも多分出来るし。


『(汗かいたら迷惑かけちゃうし)』



食べて良いよ。

そう言ったらとっても怒られた。

凄い剣幕で。

怒られちゃった。

…なんか覚えている。



怒られるのはダメ。悪い子。




『っ、(頭痛い…空気、吸いたい)』



そっと身体を起こし、

とにかく音を立てないように歩く。

かなり迷惑をかけたから起きても
ドアの音で起きる程度だろう。


トイレに行ったとでも思わせれば良い。


音を極力鳴らすことがなく、
何とか外に出れた。


まだ外はちらほら灯りが見えるし
よくよく耳を澄ませれば音が聞こえる。


音をなるべく立てずに暗い廊下を歩く。


何か光が見える?


それは誰?




『…会いたい、会いたいよ。』



時々声が聞こえる貴方。


何処にいるの?

呼んでくれたのに。

会いたいって、強く願ってくれたのに。


貴方は手を取って、私の前から消えて。


私はたった独りぼっちで

この場所に降り立って。




知ってる者も消えて居なくなって。


暗い場所に取り残されて。


こうなるなら、こうするのなら。


いっそのこと何も知らないまま

鳥籠の中に膝を抱えて

ただ願い眠っていた方がまだマシで。



痛い痛い心が痛みを抱えている。


外に出れず、ただ暗い廊下を歩く



草がふわふわして気持ちがいい、
あの場所に帰りたいの。






…会いたい、会いたいの。

あの場所に還してよ…

どうしてこの場所に降ろしたの…



貴方と居られた時間に戻してよ…






夢の中だけで良いのに。


あの時間に


笑っていた


貴方だけが良いのに。



私はそれ以外を望まないというのに。


全て捨てて投げ落としたというのに。


この場所に落とされたら


そんなの、


こんな場所は



地獄とそう、かわらなくて。



『…会いたい、やだ…!
さびしい!!“やだ”!!!』


ーメル



そう聞こえた声にメルは振り返る
なのにそこには光がふわりと上がるだけで




やだ



やだ



おいていかないで



足を歩める速度が上がる

その場所にその先に

貴方が居るのなら

私は私は!!



『“いかないで”』



胸の奥がぞわりと熱を帯びる

翼が広がり身体を包み込んで。




胸が痛い胸が痛い。



身体を上手く維持出来なくて

メルはばたりと倒れる。


「ーっ!?メルちゃん!?」



その声にメルはびくりと身体をはねた

いやだ、今誰も見たくない。


会いたいのは貴方じゃないの!!




この奥底から生まれる感情に
名前があるのなら
どうか私に教えて欲しい。



「あっちょ!待って!!」

「ダリ先生は!?」

「今鬼電してる!!!」



いやだいやだ捕まえないで。


この場所から連れ出して。



メル



そう呼んでくれた貴方に会いたい。

胸がチクチクと痛みを

ずっと悲鳴を上げている。


優しい声色に呼んでくれた声は。



私の記憶から剥がれ落ちていくのがただ怖くて。





嫌だ嫌だ、おいていかないで。


私を置いて、そのまま独りにしないで。


『なっで、傍に!!!』


いてくれないの


『ずっと一緒って!!!
言ってくれたのに!!!!』



視界が揺らいで、目の前が熱くなる

痛い痛い苦しい苦しい!!!


「っ!!“メル”っ!!!」


ーメル



そう呼んでくれた声が聞こえる。


振り返ると、汗を流しながら
飛び出して来たダリせんせー…の後ろ、



いる。


微笑んで、ただにっこりと笑って



『っ!!なんで!!
なんでいてくれないの!!!』



なんで今出てくるの

なんでこんな
真っ暗な場所で泣かないと出ないの




どうして貴方は私を置いて消えて



『…っ、還して、還してっ…うっ、うっ』


ーメル


『っ!やぁだ!やだやだやだ!!
知らない!!知りたくない!!
知ったら!知ったら貴方は!!!』


そう前を向く
身体に力が入らなくて
腰を落として顔を上にバッと上げた

ただ寂しそうに
悲しそうに微笑んで
頬をとってくれる。



ーいるよ。傍に。



『っ!見えないもん…
昼も夜も朝もずっとがいい、
みえっ、ってよ…』


あの温かな場所に。

私を還してよ。



知ったら貴方は消えて私の前に現れなくなる。


それだけが私が一番恐怖していることだ。


だから還りたい。


少なくともあの温かな陽だまりの中にいれば
貴方を忘れることなんて決してないのだから。



ーいるよ。ずっと。ここにいる。


『…っ、みえっ、ないと、
やぁ、だっ…っく、ふっ、っく』


ー貴方が会いたいと思えば会えるよ。
現に見えているでしょ?


『でもっ…っ、ふっ、うぁあ、あっ、ふっ』



ーいるよ。ずっと…ずーっと、貴方の此処にいる。



『…ほん、と?』


ーだから私の大切な人達を悲しませないで。


『……っ、ふっ、…ん。』


ー貴方が生きれるように私は還えしただけなのよ。



『…っ!!やだ違う!!!
違う違う違う!!
貴方が、貴方が…此処に
、居るべき、なの。』



皆音がそう言ってる。



『貴方の帰りを待ってる!
私は此処じゃない!!
還して…お願い…居たくないもう、現実なんて。
あんな手放すことしか出来ない世界に置いてかないで。』


「…メルちゃん、」


『嫌だ、もう一度繰り返すなんて嫌だ。
繰り返さないで努力しても結果は全部決まってて。
貴方が成したことは全て上手くいった。』


だから私は自分で自分を閉じ込めた。
首に手を置いて首を横に振る。


『何度も何度も殺したって戻ってくる。
自分の胸を切り刻んだ筈なのに
隣に転がる死体の山々。』


鳥籠から出なかったのは

貴方に愛されていたあの場所が居たかったから。



こんな痛みを続けて居られるなら。


『還してよ…ねぇ…なんで…?
何で…私なの?
なんで生まれたのが
君じゃないの?なんで??』


私はずっと心の中で息をすればよかった。


多少の息苦しさが心地よい程で。

あの不安の中に浸されて。



落ち着いた空の下木漏れ日の下で
鳥籠の中微睡みに揺られて落ちた感覚を
ずっと味わったままで居たかった。




『どうして…?どうして、呼んでくれたの?
貴方は此処に存在しないと分かっていて。』



ねぇメル。お願い。


昨日寝ても暗い世界に閉じ込められて。

目を覚ましたの。悪い夢だったって。


でも目を覚ましても醒ましても


青い世界は鳥籠の中には戻って来れなくて。


『私は…貴方に、なれない。』


貴方が例え私になれたとしても。

私は…貴方になれない。




+++++++++++++++++




「…一種の解離現象ですね。
辛い時期に体験した経験が
一人で抱え込める量をオーバーし、
二人いると錯覚させた。というか居た。」


そうメルが意識を失い
そのまま眠ったのを抱き上げ

近くのソファーに寝かせるダリに
ツムルは説明する。


「恐らく音楽祭で問題児かれらが奏でた音が
彼女のもう一人の人格が彼女を呼び
閉じ込めていた状態を呼び覚ました…というか」


閉じ込めるしか方法がない程の辛い経験を
彼女は体験していた


ということに見つけ、
何とか抑えようとした者達はメルから
そっと視線を外した。

「ダリ先生の背後もしくは
前に恐らく居たんでしょうね。
安心したのは彼女を守っていた人格が
ダリ先生に似ていた。」


「成る程だからダリ先生に引っ付いてたのか。」


「…寝る時、離れたの原因入る?」

「…この感じだったら入りますね。」

「…あ゙〜〜〜了解。」

「あはは、何なら皆で雑魚寝して寝ます?
俺、布団持ってきますよ。」

「お、それいいね。
一人で見るより
休みもちょっと長いし
今日くらいは良いでしょ。」


ね。と言ったマルバスに
ダリはコクリと頷くしかなかった。

それなら女性陣に任せた方がとも思ったが
こうも暴れることを考えると
まだ動ける男性陣の方が良い。


それに力は理事長が抑えさせたとはいえど
流石魔樹が言っていたように理事長よりも上。


少し力んで強く願い放つと
まぁ魔力を開放するする。


一瞬死ぬかなって思ってしまったが
すぐに振り返った後の目の色が悲しみを帯び
魔力を徐々に落としたのにはちょっと驚いた。


ダリはマルバスやイチョウ達に任せ
ツムルと共にメルを監視する事にした。


現在夜中の1時



一体何時起きたのかは知らないが
と言うか下手したら寝てないのかもしれない。


「…ったく、寂しいなら
一緒に寝て位言やぁ良いのに。」


「あはは、流石にそれは無理があるかと…
あの暴れ方からして余程大事にしてたっぽいですし。」


「ならメルちゃんの躾がなってないだけだね。
ほんっっと今度会ったら一度しばこうかな。」


もうツムルは苦笑いするしかなかった。
まさか本当に暴走するとは思いもしなくて。


「…凄い、泣いてましたね。」

「うん、会いたいって。かえしてって。」


鳥籠の中、微睡む中で温かい声を掛けて。


ずっと居るよ。ずっと一緒。大丈夫。



それを繰り返す泡沫の夢世界。



その場所に核を閉じ込めないと
生き残れない世界とは、一体何処の世界だ。




「会えてたらいいですね。」


「うん…そうしないと
夢にまで行って
説教しないとね。」


ちゃんと見とけって。

仕事しろって。

そう言ったダリにツムルは

そうですねと笑って答えた。

/utakata3/novel/73/?index=1泡沫の白昼夢