Novel - Carla | Kerry

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楽園はここにあるんだよ2

act 31.

「分かりました。ではイルマ様達には内密に。」

「うんうん!」

そう言ってアスモデウスは次の授業に遅れないように
食事をした後そそくさと席を立った。
メルはその後を見ながら
ねぇとダリの人差し指にそっと手を絡めて聞く


『…私、我儘でいいのかなぁ。』

こんなに、良い様になって。
とっても悪い子だと思う。
悪魔が好きで魔法が使えて満足だからって
はいそうですかで消える訳がない。

代償は必ず付き物だ。

…でも、それでも。


「いいよ、その為に僕達は協力するんだよ」


私はこの時間をもう、
繰り返したくないと
願ってしまったのだ。

青い世界


広い花畑は葬儀モルグを迎えることになる。



これで。


これでいい。


私は…次の世界が見てみたいと思ったのだ。


この、茶色い髪の毛の悪魔と共に。


一人ではない。

もう。

その場所が一人になるのであれば。


私は



『(その選択肢を捻り潰す意思を持つことだって後悔なんて)』


きっとしない。


そう思ったメルは前を向いた。
とてもすがすがしい気持ちだ。

傍にずっと居られるようになれたらいいなって
最初は期待の眼差しで

何処かそれは叶わないと思い込んでいた。
でもね、それは私がただ願って「あったらいいな」
程度の気持ち程度だったから。


今は「なりたい」と思う「欲」として
この心の中で強く燃えて光り輝いている。

ゆらゆらと揺れる炎を消し去れる位の恐怖が来るものなら
どうか来てみて欲しいとさえ思ってしまう程。

今この瞬間何があっても強く生きれる自信があった。
…こんなに、強く思えるなんて、今まで無かったのに。

周りに決定権を委ね続けて十数年。
自分で強く願い強く傍に居たいと願ったのは
コレが初めてのことだった。


『(ああ!どうか…上手く行くように)』

努力しないと!そう思いながら
メルはダリの指を絡め
前後に腕を振って廊下を歩いていた


+++++++++++

「青い彼岸花を咲かせ満月の夜、
満ち足りし聖水零れ落ちる時
彼の者に与えられし
大いなる力を引き継がん…ねぇ」

そう言ったのはオリアス
時は過ぎ、現在男子寮の会議室。
ダリの傍にメルが座り寮のメンバーで会話をしていた。

「次の満月って何時ですっけ?」

「悲しい事に来月の最後です」

「っげ…一か月は先なのか」

つい一週間前なんですよ。
そう言ったオリアスに
ダリは参ったなと頭をボリボリかいた

「その“試験”って何か前触れとか無いんですか?」

「それがその内容自体で前触れが変わるらしくてね。
人それぞれなんだよねぇ〜〜〜」

「じゃあ本当に土壇場勝負ってなるんですか…」

『どんな内容になるのかは
何となく想像は付いてるけどねぇ〜』

「え!?想像つくものなの!?」

『だって魔樹の魔力そのものが
私の魂を喰らおうとしているのであればだよ?
もし私ならこんな温めまくった状態なら…
君達が関わる内容になるのは間違いないかな。』

たとえば

『ダリの心臓をこの手で貫くとか…ね』

「メルちゃん…」

『私ならそうする…
まぁそんなの嫌だから
間違いなく不合格になって
彼に喰われる運命なんだろうけど。』

「美味そうな物は
全部温めて喰っていたってことか?」

『恐らくはねぇ〜〜〜〜』

「どうにかして引き剥がしてやりたいですよね」

「魂を喰らうってなると…
出会いたくても出会えませんし」

そう、生まれ変わりが無くなってしまうのだ。
それ即ち、不合格が決定されたら
本当に二度と会えないお別れコースになってしまう。


それだけは…それだけは何としてでも避けたいメンバーに
メルはコクリと縦に首を振った


「何かメルちゃんもヒントないの?
こー前こんなことあったとか!」

『んうぅん!質問がとってもざっくりぃ!!』

そう苦笑いするメルにロビンはだってーと声を上げる

『でも…全員が“悪魔を好きだった”
って言うのは何かしら意味があるともう。』

「と、言うと?」

『何故魔樹が私達の願いを叶える必要があった?
というか私が願った感情は確かに…あ』

そうメルがぴたりと止まったのに
何?とエイトやツムルがメルの方を見る


『いや…やでも、』

「何々?何か思いついた?」

『いや、関係ないとは…おも、うんですが』

「いいよ」

『…最初に願い事をした時って
凄い深い感情に飲まれたんですよ』

「深い感情?」

ええ

まるでこのまま眠っても良いほどに
優しく深い水の中に落ちて眠れるように。

お願いごとに手を伸ばして、思ったんですよ。


『“どうかパパとママが仲良くなりますように”』

「…メルちゃん」

『私はそう強く願いました。
確固たるものではなく、
それは揺蕩う水の中に
身体を投げ込んだ後のように。』

身体を大きなもので
包み込んでいるような感覚
それは今も身体が憶えているものだ。


『それが関係するのなら…
でも仮に関係したとして
“試験”に直結するとは思えませんし』

「う〜〜〜ん、日記から見ても
the日常生活!
って感じばっかですしねぇ〜〜〜」

そうツムルがパラパラと
ダリが管理している日記を丁寧に捲りぼやく


『…あの』

「ん?」

『こういうのって、
私ゲームとか見過ぎだとは思うんですが』

「どうしたの?」

『ただ単純にこの文字を読むだけだと
同じ結末に行くんじゃないかな
って思ってるんです。』

「…と、いうと?」

『ほら良く単純な作業して罠だったとか
戦術でもあるじゃないですか』

「ああ誘い込みってこと?」

そう言ったイチョウに
そうそうとメルは指を一つ立てて答える

『その方法で今回のことを急いで取り掛かったとしても
私の寿命は切られるし、また同じように魔樹の生贄を
連れて来る可能性だって高いと思うんですよ。』

「えまさかメル、きみ」

『ええ…魔樹の力その者をぶちこわっぐっ!!!!』

「メルっ!!!!」

そう急に胸が締め付けられるような痛みが走り
ついその衝動で翼が広がってしまった
前のめりに倒れたのにダリが
そっと横について顔を伺ってくれる。

「大丈夫?息吸って…ほら」

『っ…ふ……すっ…』

「言葉も制限される…ってことか」

『…っで、すね…はっ、もう大丈夫』

ありがとそう微笑むメルに
ダリもまた安堵の息を吐いた

「ひとまずは情報共有感謝します。
俺達もちょっと探ってみますよ。」

「ごめんね、よろしく頼むよ。」

「いえ、これくらいで
お力になれるのなら
俺達だって光栄ですから。」

「メルちゃんが嫌っていうなら
引き剥がすしかねぇしな!!」

やるぞーー???
おーーー!!!!
そう言って騒ぐ男子たちにメルは
元気だなぁと苦笑いしていた

「ふぃっ、皆さんメルさんのことが
大好きなんですよぉ」

『そう…なの?』

「そうですよ。出ないと
悪魔は此処まで一致団結しませんから。」

『あはは…そこら辺
人間と違うんですねぇ〜。』

「ま、今日はひとまず解散ってことで。」

おやすみーそうツムル達に
手を振ってダリと手を繋いで別れるメルに
ぱたりとドアが閉まり
彼らが居なくなったのを見計らったツムルが
肩の力を抜いてはぁーと大きなため息を吐いた


「にしても…とんでもねぇ
罪を犯しそうになっている気が
しなくもないのは俺だけ?」

「いーーーや、間違っていない。
メルちゃんが言った時、
俺達の心臓も何かぎゅって
鷲掴まれた感じがした。」

それはメルだけの痛みではなかった。
全員その場にいた者に痛みが走った

「ふいっこっちもなりましたよぉ〜」

「此方もです…メル先生に
バレてなさそうで良かったですが」

「何だかんだ魔王の片割れですからね。
罪意識が悪魔の中にちゃんと本能として
拒絶反応を察知したんでしょう。」

「いずれにせよ…
一筋縄ではいかないのは分かったよね。」

うん。

そう頷く周りに、スージーは
ふとイルマが前に言っていたことを
思い出していた。


ー悪魔の伝承?

ーふいっ、メル先生からお話を
よくお聞かせしてもらっていると聞いて

ーそうですね…あメル先生で気になってたのが

ーふぃ?

ー山羊の角が生えたのを見たことがあるんですが

ーえぇ

ーあれ、人間が悪魔だと思った
モチーフとそっくりな姿だったんですよ。

ーふぃ?人間が悪魔を…


「(メルさんの悪周期がもし仮に
…魔樹のそのものの姿だとしたら
それはメルさんが人間ではなく
“悪魔として誕生する”ということ。)」


だとすれば?


それが成功したらまだ話は良いのだが…
ダリが図書師団と協力して読み解いた結果
どうも成功する確率はかなり低そうで


…なんなら

「(人間を好き好んで喰らっていたというのに…
悪魔として見過ごすことは不可能ですよ。)」

それも、純粋無垢で綺麗な心を持った
彼女であれば、尚更である。


誰もがメルの幸せを願い、
メルもまた周りの悪魔の幸せを願っている。

だからこそ、今回助けを求めるなんてことは
彼女の成長からして今まであり得ないことであって…


それが今回、起きたと言うことは
彼女が私達悪魔に、仲間として認めて
本当に必要としている欲に忠実になり
手を伸ばしてくれたということだ。


それは…それはとても


とても良い成長を遂げている。



…数時間前ツムル先生が大号泣していたのを
軽く引き気味にメルのことをスージーは見守っていた。

苦笑いをしつつも、引くなんてことはせずに
ただ笑ってまぁまぁとなだめたりする所
彼女のとても良い所の一つである。

…それにしても

「(仮に悪魔として誕生したとして
…寿命も残り少ない。
不合格にして喰らったとしても、
続けて魔力を溜め込んで
一体何に使うつもりなんでしょうか?)」


それこそ、平和な魔界を
本来の魔界に取り戻す位の
大きな大きな力を溜め込んでいるのでは…?

「…ふいっ、考え過ぎですよね」

そんなことがもし起きてしまったら…
きっと彼女のことだ。


自分の魂ごと使ってでも、
ダリ達の世界を守ってくれるだろう。


…そんなことは、絶対にさせないというのに。


+++++++++++

いや〜〜〜!結構皆手伝ってくれてそうで僕助かる!!
…でも、メルちゃんが言った内容は正直僕も気になっていた。

「(一筋縄ではいかないって言うのは
相場が決まっているからね)」

そりゃあ魔界一の魔力を保有している魔樹だ。
それはそれは、僕達の全力を出した所で
暴走してしまえば虫けらのように指で跳ねて潰されるだろう。


…そんな大きな力を身体の魂の内に秘めたまま
育っていく彼女に。

いや育ててしまった僕を、君が殺してくれるのなら。


「(本望だなんて言ったら…君はどんな顔をしてくれるんだろうね?)」

絶望に首を横に振って否定してくれる?
それとも、そんなことさせないって
強気なその金色の目の奥に宿る炎を燃やしてくれる?

…どれにせよ、僕は君に殺されるなら嬉しいって思ってしまうんだよ。
手塩にかけた子だからね。目に入れても痛くないんだから
きっと君の手でこの心臓が止まったとしても、痛くないまま
安らかに眠れることが出来るのならば。


君の居ない世界に一人生きなくても良いのであれば



それは僕にとって、とても嬉しいことであるんだよ。


…ねぇ、メル。


『ん?』

「…愛してるよ」

『んみゃっ!?なっななんな!!』

そう耳元で低い声で囁くと、
彼女は目を丸くして顔を赤らめて後ずさる。
…本当に、これがあと何回続けることが出来るんだろう。

君に甘いキスが出来るのも、あと何回なんだろうね。
そりゃあこんなこと、サクッと終わらせて
何時もの日常に戻るだけだとは思っているんだ。


…でも

「(君に似過ぎてしまったかなぁ〜…)」


不安がどうしても腹の奥底に残ってしまう。
まるで洗い残しのあるコップの底みたいに。
残ってしまっているんだよ。

それが気になって気になって仕方がない。


「(でも、僕は君を救いたいよ)」

たとえそれが、僕の命をかけて救えるというのなら。


君の居ない世界で生き続けるよりも
きっと僕にとって何よりの幸せになるのだろうから。


そう思いながら、メルの唇に深いキスを落とした。
そのまま、先程の記憶も全て持って行かれる位に
忘れられたらどれ程良いだろうと。


感傷に浸りながら、夜を明かしたのだった。

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