視界が広がる…あれ、ここ。
「あれ?俺達、なんで」
そう身体を動かして今まであったことを思い出す
そうだ、急に寝てたらアトリの襲撃にあって、それで
「イチョ!おい起きろ!!お」
そうぴちゃりという音が聞こえてそっちを見たのがいけなかったのか。
心臓を突き刺して嬉しそうに笑ってひざ元に身体を乗せている彼女から
目が離せなくて
「……っは」
一瞬息をするのを忘れてしまっていた。
そこに行こうにも、この場所が卵型のガラスに覆われており
一つにつき二人入っているようで
右隣にはバラム先生とカルエゴ先生、左隣にはマルバス先生とエイト先生
その奥にはロビン先生とオリアス先生が眠っている
「っ!皆さん起きて下さい!!カルエゴ先生!バラム先生!」
「ん゛…こ、こ…」
「マルバス先生!」
ダンと音を立ててツムルが叫ぶそれに目を覚ましたのか声を上げるのに
ぴちゃりとまた音が入る。
「あれ、ここ、僕…っ!そうだツムル先生そっちにアトリが!!」
「…っ」
「あれ?おりあすせんせ?何そんなおどろー」
そうロビンが起きたオリアスの目が絶望しているのに気になってその方向をみて一気に目を覚ます
「…だ、り、せん、せ?」
「メル、ちゃ?う、そ…だろ?」
「っ!ケロベロビュート!!」
そうカルエゴの声にガラスの卵は割れずただ魔力を吸収していくのに舌打ちをしガラスの卵に手を大きく叩いて打つ
「カルエゴ君離れて!」
そう言って横に離れたカルエゴにバラムが攻撃を入れるが、物理攻撃も一切効果が無いらしい。
ただヒビすらも入らないのに手をぶらぶらとして駄目だねとバラムは答えた。
「…あれは、夢か」
「カルエゴ君…」
メルらしき奴があの馬鹿を寝かせているなんて。
それも馬鹿の暗器が綺麗に心臓に突き刺さったまま放置とは
「これ、ゆ、めだよ!そうそう!流石カルエゴ先生!!これ」
『ゆめじゃないよ』
「っ!!」
一瞬何が起きたか分からなかった。
遠くに居た筈なのに真横に聞こえる声に一瞬身体が固まる
『花は散り元ある場所に還るだけだよ』
「メル、ちゃん…?何を」
『ああ…其処にずっと在ったのに…
どうして気付かなかったんだろう!』
私はずーっとこんな大事なことを忘れていたなんて!
そう笑うメルのその清々しさが酷く恐ろしかった。
それにあれれ?どうして悲しそうにするの?と首を傾げる。
「…貴様、何者だ」
「ちょカルエゴ先生?」
「メルちゃん答えてくれる?…君がその人をやったの?」
『…それにこたえてどうするの?』
「場合によってはこの場で粛清対象だ」
『…へぇ、それで私を殺してくれるんだ』
そう顎を引いて笑うメルの瞳に赤い炎が宿っていて
真っ黒な髪の毛は真っ白にさらさらと透明にも見える程
綺麗な髪の毛に白い肌に…真っ赤な血すらも付いていないのに
キッと睨むカルエゴにニヤリと笑みが深まるメル
『処刑されるなら…身内の方がいいよなぁ?』
まぁでもまだ起きてない奴もいるしそのままでいいや。
そうカルエゴ達の逆の方を見るメルに、カルエゴが視線を向ける
其処にはモモノキとスージーが卵の中に眠っており
その奥にはイルマとアスモデウス、クララとサブノックが眠っていた
「っ!!…まさか貴様、生徒にまでやらせるつもりか?」
『…せいと?』
「っ…!?」
『私はこの場所に戻って来ただけだよ。
生徒だろうが教師だろうが関係ない。
…彼を殺さないと行けなかったのは悲しかったが。』
嬉しそうに笑ってくれてるから私も嬉しいんだぁ。
そうニコリとほほ笑むメルに吐き気がする。
「…元祖返りめ」
『昔ママも同じように殺したんだよね』
「は?」
『あの時も不思議そうにしていた
…嗚呼勿論夢の中だけだよ!
だから私は処刑された
…同じようにその場所で願いを問われたんだ』
“君の願いは何だい?”
『だから私は願ったの!
“パパとママが仲良く暮らせますように”
って…そんなの』
私が殺したから二度と叶わないのにねぇ!
心の中で殺した者に、触れられるとかありえない。
「……っ!!きっさま…最初からっ」
『言っただろ…白は黒になるのだと。』
戻せるなら戻してみるがいい。
『そのトリガーを壊した今…
貴様らがこの花を散らすことなど
不可能なことくらい』
分かり切っておるだろう?
そうにやりと崩した笑みに
カルエゴが大きく舌打ちをする
メルの心臓には黒い花が咲き誇っていた
その周りには緑の葉が
風車のように三か所に散っており、
その下からいばらのようなものが
蔦を這わせて身体に巻きついている。
耳元を這った先、王冠を被る様に、
メルの額の上には蔦の生え、
黒と白の花を咲き誇らせるカチューシャが被さっており、
中央には青い花を三つ程小さな花を咲かせていた。
外側は黒く、内側は白い翼を
大きく羽ばたかせたあと、ゆっくりと閉じていく
翼の縁には同じようにツタが這っており、
白と黒、そして青い花が咲き乱れていた。
これが…本来の……魔樹の姿。
本当に、なってしまった。
魔樹の姿。
愛する者を…殺してなる…姿なのだ。
「…んっ、」
「っ!スージー先生!モモノキ先生!!」
「っここは、」
「駄目だみるな」
「え?…っ!!!」
そう言ったカルエゴにモモノキは
目を丸めた後スージーの顔に
手を触れようとしたが遅かった。
目を丸くしてその場を見ていた
「…メル、さん貴方なにを」
「なにをしたかわかっているのか」
そう言ったのはアスモデウスだ
強い目を光らせて言うのにニヤリとメルは微笑んだ
『魔界が緩いと聞いていたが
…本当に緩いんだろうなぁと思っていたが。』
まさか一匹の悪魔だけで此処までだとは
「っ!!!きっさまああああああ!!」
「アズ君駄目!!まずは…この場所から出ないと」
そうイルマの言う通りこの場所から出ないと話にならない。
バラムやカルエゴが本気を出しても出れない程の
強固なガラスの卵をどうやって割らせるのか。
「でもどうやっ」
!?
「っな!」
「い、イルマくん!?」
そうイルマがコンコンとノックをしただけでひび割れ
何ならガラスの卵が割れてしまったのだ
「えええええええええええええええええええ」
『っ!?なっ!馬鹿な!そのガラスの卵を割れるのは私と同じ魔王の…まさか!その黄金の指輪!』
そう言ったメルが距離を取りダリの亡骸を蔦に這わせて宙に閉じ込め始める
それに不味いと思ったイルマは殻から飛び出し先にバラムやカルエゴそして
ロビンとオリアスの元に行って殻を割る
「っありがとイルマくん!」
『っぐ!!』
「はっ!さっきの威勢はどうした!!」
そう攻撃を止めないカルエゴの間にバラムがダリを救出する
それにメルが怒りカルエゴの身体に突き刺そうとした瞬間消えるのに目を丸くした
「っ!!」
「すいません!でもこうするしか!」
「いやでかした」
アレは流石に喰らうしかなかったそう言ったカルエゴに
イルマはホッと息を吐いた
「ダリ先生!」
「僅かですが呼吸があります!!」
心臓も突き刺してるはずなんですが動いています!
そう言ったスージーに全員が安堵する
「いいかお前ら!全力で叩きのめせ!」
そう言ったカルエゴに全員が応と意気込む
ギロリと睨んだメルの目は殺意を込めたままだ
++++++++
「っぐはっ!」
「が、はっ…っぐ!!」
「イチョウ先生!つっぐ!」
「ロビン先生!!」
そう次々と攻撃を入れるのに、全く歯が立たない。
あのカルエゴやバラムが
本気を出しても互角にすら立っていないのだ。
女性には優しいのか
急所を狙って意識を飛ばして落とすのは
まだメルの優しさが感じ取れなくもない。
攻撃をいれてもバタバタと倒れていく
メルは急所を入れて悪魔の動きを
鈍らせて振り落としていたのだ
その動きは
「っぐ…ほん、と、とことんまで、ヤツの動きににおって…」
動きにくいときたらありゃしない
「っはは、まぁ、僕と、ダリ先生、仕込みです、からっぐ」
そう倒れているエイトが言うのにハッとカルエゴが吐き捨てる
『…ふむ、やはり所詮この程度か。弱い奴らを好きになったものだな。』
私こんなに弱いの好きだったか。そうふむと顎に手を置いて考えるメル
黒い花は揺れるのにそっと嬉しそうに笑って微笑む。
「(シチロウ聞こえるか)」
「(うん言いたい事は分かってる)」
「(隙を狙ってアレを仕留める)」
そう先程から、ダリに心臓を突いてからというものの
メルの髪の毛が白くなり目を赤く光らせているのは
あの黒い花が心臓に咲いている所からだ。
恐らくあの花を散らせばメルの状態は元に戻るし
ダリも息を吹き返すことが出来るだろうが…ただ
それは
「(彼女の死を意味するのと同じで…っ!)」
でもこのまま野放しにすれば、
間違いなく魔界は混沌と化す
それなら
それなら?
「(っ!!それが君の…君の望んだことか!?)」
その試合をもし、
メルの心臓に突けば、
きっとメルはそのまま死んで
ダリの心臓に魔樹の力を宿し
暴走を遂げていただろう。
そうならないために、彼女は
メルは自分で自ら愛する者の、
ダリの心臓を突き刺し
肉体に魂に最後の一欠けらであった力を
吸い込ませ、完成させたのだ。
全ては愛する者に、一つも苦しめないように。
「っ…むごすぎる…なんで、君達なんだ」
花が咲くように笑って居たメルの傍で
クスリとただ嬉しそうに微笑み笑うダリ
その姿はバビルスのお似合いカップルとして
温かく見守られている程だった。
その火蓋を切ったのは一体誰だったか。
それを、彼女は泣くのだろうか。
『…ほんと、どうして悪魔に生まれなかったんだろうね』
すっとメルがダリの髪に頬を摺り寄せて呟く
いつの間に彼の傍に居たのか、周りは驚き動くが
すぐにメルのツタにやられて身体を飛ばされる
『…君と同じ悪魔だったら、
私はこんな結末にならなかっただろうに。』
そして君はこんな末路になっていなかっただろうに。
『ごめんね』
そう泣きそうな声で謝るメルになんでと声が上がる
「なぁんで?ねぇ、メルメルぅ、帰って来てよぉ」
「アホクララ…」
「っ!メル先生!!ねぇ目覚まして!!」
「無駄だ奴にそんなことを言っても!!」
もう完成された魔樹に…綺麗な意思など持ち合わせておらん。
そう言い切ったカルエゴに目を見開いて嘘だとクララは首を横に振る
『はぁ…本当に悪魔って角生えてるし欲に忠実なくせに…そんな弱いとは。』
「っぐ!!!ああああああ!!!」
「エイト先生!!」
急に叫び胸を掴んで暴れるエイトにツムルとイチョウが駆け寄るが
彼らも叫び始め悶え苦しみだす
『ふむ…これでそんな叫ぶのか…耳障りな』
「っきっさまぁぁ!!なにっぐ!」
「カルエゴ先生!!メル先生なにを!!」
『ただ夢を見せているだけだよ…私と同じようなね』
「…私と?」
そう言ったイルマにメルはコクリと頷く
『君に見せても何ら意味ないし見せないよ。
…それとも、君ももう一度絶望したいの?』
「っ!!」
「やめろ!生徒には手をだすな!!」
『…ふむ、なら』
君らにもっと与えないとな。
そう言ってメルが指を振るが
ー**
『…?』
ぴたりと身体が止まったのにメルが首を傾げる
なんだ、何で固まった?
何かが聞こえて、なんか思考が止まった気がした。
ブーブーとブザーが鳴る。
そこにボトリと落ちて来たのに
「っな!?」
「アトリ!?」
「…あ゛んだここ」
『っ!…はっ、なるほど』
そう言ってメルは前に歩き大きな木の槍を作り出し前と後ろをくるくると回した後
ブンと風を切る様に音を立てて構える
「お前…まさかメルちゃんか?」
『そうだよ…お久しぶりだねアトリ』
「っぇへぇ〜!こっち側にきたんだぁ〜♪」
『ちがうよ』
「あ?」
『私は元祖返りじゃないよ』
「いやどう見たって元祖返りだろ」
『私は魔樹だ。そんな陳腐な物に成り下がる必要性はない。』
「あぁ〜そーですかっ!!」
そう切りかかって来たアトリの姿にメルは槍で攻撃を受け止めた
蜘蛛のような手を華麗に交わし、槍をそのままアトリの心臓に投げる
それを手で交わした後槍は二つに分身しアトリに向いて飛ぶのに
驚きスッと避ける
すると今度は二つが四つに分身し、なっ!とアトリは声を上げた
『君は物理的な悪夢の方が良いと思ってね?
気にってくれるといいんだけれども。』
「ひゅ〜〜〜!容赦ねぇ〜〜!!これだよこれこれ!!」
コレが魔界に足りねぇんだよ!!
そう嬉しそうに笑って攻撃をかわしつつメルに攻撃を入れる
それにメルは軽くかわした後アトリの背中に攻撃をぶち込み
槍をどんどん量産していく
「っぐ、や、めろ、メル、ちゃ」
「だ、り、せん、せ、め…っ、さめっぐ!」
脳に直接語りかけて来る夢幻に
頭を抱えながらもエイトやツムルは
ダリとメルに声を掛ける
だがダリはピクリとも動かないし
メルはアトリと戦闘に夢中であり
もうこのまま彼女は飛び立ってしまうのかと不安で仕方がない。
メルは合格してしまったのだと。
試験を、クリアしてしまったのだと。
魔樹として、生きることを選んだのだ。
そんな彼女の攻撃を、アトリが全て受け取れるわけもなくて
徐々に増えて言った槍は数千とも数近くになり
彼の身体をずたずたに切り裂いていく
その度にメルの服や白い肌が赤く染まっていく
虚ろなその赤い目が更に赤く光る様になるのに
見て居られるわけもなくて
…もし、
「バラム先生…メル先生の花って、散ったらどうなるんですか?」
「…酷なことをいうけど、恐らく、死ぬだろうね」
「っ!!」
「何か手段は!!」
「アレは心臓だけじゃない脳や様々な気管に張り巡らせている。
それだけじゃない魂にすら張り巡らせているその蔦を燃やしたり
枯らしたりしても必ず破片が残る。」
そうしたらそこからまた再生され、あの通りになるだろう。
「でも全部消したら!」
「それは不可能に近い。魂にほぼ溶け込んでいる状態だから…
彼女の花を散らしても死んでしまうし…それに蔦を消した所で」
彼女の記憶が姿が維持されるかと言えるか…!!
そう苦いものを噛んだ様に嫌そうな顔になったバラムに
そんなと入間が泣きそうな顔でメルをみた
メルは嬉しそうにただアトリと攻撃を楽しんでいた
その姿は確かに怖いとは思うのに
イルマ達生徒に危害を食わない所
やはりメルらしくて、優しいものだなとしる。
「…寿命は」
「…聞いた話だけど持って10数年」
「っ!!」
「消しても40年程度とは聞いてるよ」
「そん、な…悪魔にとって一瞬ではないですか!!!」
「っ!!だからっ!!…だから今必死に考えてるんだよ。」
勝負は一瞬、その中で彼女が記憶を持ったまま
いやもう戻らなくてもいいから、
彼女が長く生き残れるような
そんな世界になる
一つの希望の光を今考えているのだ。
何かないのか。
なにか!!!
「…っ、」
『〜〜〜っ』
声が聞こえた。
そう振り返るメルに、確かに心臓を突き刺していたダリの目が開いていた
身体を動かして前に手を出すダリに背後から黒い影が見えて
ーにげろ
ブチリ
そう何かが千切れる音がした