Novel - Carla | Kerry

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愛はいつも計算3

act 7.


徐々に消えていく中…
メルはふわふわと心が浮いていた。

「…おい」

そう言われてびくりと
身体を震わせて顔を向ける。
カルエゴの目は決して見ずに。

怖い。それが前に出る。
前は此処まで恐怖を持つわけでは無かった。

だが…

『(知識を知るたびに思い出す)』

灰色の世界が色見を帯び始めているのだ。
そのことはリルやダリにすら言っていない。

余りにも突発的でかつ記憶に残らないのだ。
今もカルエゴを怖いと思ったから思い出しただけであって。

…いや、不安なのだ。

ダリとスージーが仲良くしているのを見たくない。
二人が大好きなのに、嫌だと思う自分が居る。
駄目だ駄目だ。抑えて抑えて。


…そうして首を

「メル」

『っ!』

「…先に行こう。振り返るな。」

首を絞めて終われるなら、どれ程良かっただろう。

メルはコクリと頷いて
傍に歩み寄り前を進めることにした。


「(光り満ちる場所とお題が…)」


そうカサリとお題の書いた用紙を見るカルエゴ
中には「お互いの好きな物を贈り合う」だ。
それには…

「おい」

そう言うとまた身体がびくりと跳ねる。
いや、そんなに怖いか……?
というか

「お前、何時もの威勢はどうした?」

『…』

まぁ静かな分には別に構わんが…
こうも何時も騒がしそうにする者が
スンと落ち着いて隣を歩いているのも気分が悪い

まるで

「…誰かを思い出しているのか」

『ちがうよ』

食いついた。間違いないだろう。
…その俯いてただ隣を歩くだけの表情。
笑顔が張り付いて綺麗なのがまた、

「私の目を侮るな。
そんな完璧な笑顔でも見抜くわ。」

『メル、楽しいよ?』

阿呆誰がそんな笑顔で楽しいと言うのだ。
そんなのまるで

まるで?

「(…リルよ、貴様この気持ちを?)」

諦めて傍に居る子。
自分の願いなど関係なしに。
ただ傍に笑って機嫌を取るだけの子。

バレない様に、気付かない様に。
息を殺して言うのは…
イルマよりも何倍も上手い。

メルは無邪気で、明るく…たまに寂しそうに笑う。
その笑顔が何よりも可憐だと思う。

それは、その感情を騙すために作ったのだろう?


恐怖を。気付かせないように。ただ自分を騙して。

本音をひた隠しにしてまでして、
貴様が願った望んだ場所は叶わないと言うのに?


「…お前の好きな物はなんだ」

『…私の?』

光がゆっくりと変わる。
それが余りにも滑らかで集中しないと気付かない程。
…こいつ、感情操作を無意識でしている。

魔樹に選ばれただけはある。
誰にも気づかれない様に、変化している。

『私は文房具とか本とか好きですよ…
あと、前は花とか。』

「…花?」

意外だな。と思った。
それが分かったのか意外でしょと笑ってくる。


…その笑顔は、本当に素直な姿かどうか。

分からない程に完璧で。

「嗚呼、貴様のことだからてっきり奴を言うかと」

っ!しまった。失言だったか。
そうそっとメルの方を見るが

『あはは!やだなぁ〜
流石にダリ先生物じゃないですよ〜!』

そうケラケラとダリと呼んだ奴と同じように笑うメル
…お前は、そうやって無理をし続けてきたのか?


リルはそれをずっと背中で感じながら守ってきたのか?

「強がるな」

そう言ったカルエゴにメルの笑顔がぴたりと止まる
まるで人形のように、
録画していたテレビ番組を停止した様に。
時間が止まったかのように、ぴたりと止めた。

「普通にしてくれ。怖がるなら怖いで良いから。」

『…でも、きっと貴方は』

「構わん。寧ろ無理させた後のお前を返した後が怖い。」

主にダリとその元保護者であるリルの二人…いや
恐らく数えだしたらきりがないだろう。
何だかんだ職員もメルには弱い。

「楽しむなら粛々とだ。
さぁ言え、お前の好きな物は?」

『…本当は、花とか、アクセサリーが好きです。』

でも、枯らしちゃうし、
無くしちゃうから
頭の中だけで終わらしてるんです。

そう言ったメルに分かったと答えた。

「俺はサボテンが好きだ。」

『…サボテン?え?あのサボテン?』

何だサボテン以外に何があるというのだ。

『茎の切り口で畳や衣服の汚れをふき取り、
樹液を石鹸として使ってシャボテンと
異名が付いたことのある
あの棘のある乾燥地帯に
生えているあのサボテン???』

「待て待て待て待て
その話ちょっと気になるのが悔しい」

そう彼女の言葉から
とんでもなく貴重な言葉が聞こえた気がする。


おい、その話詳しく聞かせろ。


「貴様の方では石鹸にしてたのか?」

『あっいや、歴史本というか
うんちくと言いますか
本を読んだ時に載ってたので。』

私お花好きなんですよ。
元気で走り回っているのは見せているフリで。
そう言ったメルに何となく納得する。

彼女は元気そうに振舞うが
実際は大人しいのであろう。

加えて初めての場所や人が多い場所は苦手。
先程リルの目の前で身体を震わせて
ぎゅっと縮こまっていたのを見て判断した。

それを隠すには…反対の性格でないと難しい。
明るくただ無邪気な彼女
…の化けの皮が剝がれて見えた。

『乾燥地で見られるのが
一般的ですが案外熱帯の森林地帯で
樹木や岩石上に着生して育つ種や高山に生える種
気温の低くても湿潤な温帯や冷帯に育つ種もあり
サボテンと言っても一概にイコール
乾燥地帯にしかないとは言えないあの?』

「ほぉ………よく其処まで知っているな。」

えへへ

『サボテン私も好きですよ。
良いですよね。』

まさか意外なことが判明するとは。

…成る程、確かに奴が手を出すだけはある。
悪魔によって交流を変えるのも悪くはない。

「そうだ。そのサボテンで間違いない。」

『カルエゴ先生の
好きなサボテンってどんな形です?
あ、形でなくても感覚でもいいですよ?』


「そうだな…
これだと思った物を購入している。
実際に見て回るのが好きだからな。」


『へぇ〜なら生息地に取りに〜は〜…』


「その通り、多忙の為難しい。」


ですよねーそう苦笑いするメル。
ふむ、幼稚過ぎると言うわけでもないのか。
そこら辺はスイッチがあるらしい。


「サボテンは暑い気候を
好むばかりと誤解されがちで
その分布域の気候は様々だ。
低温に弱いものもあれば
氷点下になっても生存できるのもある。」


『こうこの種類が好き!とかではなくて、
もうサボテン丸ごと好き的な感じですかね?』


「まぁそうだな」


『はぇ〜あ、さっきスージー先生達と
見に行った場所があるんですが
そちら見に行きます?』


「だが貴様の方は?」


『私は後で構いませんので。』


そうニコリと笑うメルにスッと目が細まる。
無理をしているのは分かったが

…これ以上前に出す訳にもいかん。

カルエゴはそっと目を逸らし

ダリへの鬱憤晴らしを兼ねて
メルの言った場所に向かう事にした。


+++++++++++++++


「此処が来た場所か」


『ええ!』


「(奴らを探して警戒しているな
…心休まることはない、か。)」


せめてこういう機会なので楽しめばよいものを。


恐らくダリと二人きりでも
そわそわしたのだろうな。


そう思いつつ、
カルエゴは
サボテンコーナーに足を運ぶ。


「ほぉ…これは」


割と好みが揃っている。


「おい」


『はい?』


「選べ」


『選べ…ん?選べ?えらべぇ!?』


「嗚呼」


『え!?良いんですか!?』


「でないとお題の意味がないだろう。」


相手の好きな物を贈り合う。
つまり、自分で選んで送ると意味が違う。
ああとメルはようやく納得をする。

いやいやいやいやでも
と汗を物凄い勢いで流すメルに
此方も冷や汗がたらりと流れる。


貴様…本当にこのままだと
精神不安定で死亡しないか心配なのだが。


『えぇ…カルエゴ先生が好きそうなサボテン
カルエゴ先生が好きそうなサボテン』


「安心しろ。
購入すればちゃんと飼ってやる。」


『余計にそれが重荷なんですが!?』


待って?!そう焦るメルに
何時もの様に見えて鼻で笑ってしまった。


…ったく調子が狂うな。魔樹の効果か?


『う〜ん、私が選ぶ、選ぶ選ぶ…』


「…そんなに難しいなら
自分の好きな物を選べ。」


そう言ったカルエゴに
メルは首を傾げる。すき?


「ん?コレが良いとか思わんのか?」


『…正直、好きがよくわからなくて。
私、全部記憶通り
見た物を写して動いてるので。』


こうやって振舞うのも、メルではないのです。


そう寂しそうに笑う


…それが、本心なのだろう。

カルエゴは息を吐いて、応える。



「選んでいく中で目が止まる
引き寄せられる物を探せ。
選択肢を徐々に狭めていくと
自分の好みが分かる。」


そう言ったカルエゴに
メルはコクリと頷いて
サボテンをまじまじと見始める。


チラリとカルエゴは外から入ってきた者を見る。
ダリがスージーと中に入ってきたのだ。


流石に集中モードに入った彼女が
何も喋らない彼らのことに気付くとはーー

そうメルの方を向くと
スッと目の色が落ちたのが見えた。



一瞬でこの場に居ると感づいたらしい。


凄まじい直感力…流石魔樹。


根を張って悪魔を察知すると言われる者だ。



…その分、彼女にしては今回、厄介だろう。



「止まったらすぐに次だ。
早くしろ。狙うは優勝。」


『っ!』


びくりと跳ねた身体の後、何も言わず首を縦に振る。


全く、恐ろしい位に無口になるなこいつ





…まさかひょっとして


元々無口だが
割と無理して笑って居るだけ
だとかいうんじゃ。


「(いかん、あり得そう
というかもう
それ以外思いつかん)」


全く、こんなことに巻き込むな。面倒臭い!!


それも…恐らく気付いているんだろうな。


そうカルエゴが思ったことにふるりと身体が揺れる。


その動きに目線が合ってない。
不安が出ることで生まれる動きだ。


…恐ろしい位に敏感だなこいつ。



一体どんな生活をすればこうまで敏感になる。

イルマと言い貴様といい…厄介だな。



扱いがどうも面倒で。





…一度触れてしまうと、壊れてしまいそうな程脆い。




『…ん』


「それか」


『…でも』


「いい、貴様が選んだのだ。
ほら買いに行くぞ。」


そう前を歩きだすカルエゴは
そっとメルを背中に寄らせ
ダリに見せないようにする。

奴と目が合った瞬間、
殺意が見えたがニヤリと笑ってみる。


すると目を丸めた後
鋭い殺意がこっちに一瞬かかって来た。


…はっ、精々苛立っているが良い。


こっちはもう終わるからな。



『私に買わせて下さい』


「だが」


『贈り合うなら、ね?』


そうニヤリと笑うメルは財布を出す。
まぁかなり安い値段だから…良いか。
そう納得し、カルエゴはメルと店を後にする。


「…気になりますか?」


「いや?スーとデートなのに
他の奴を見る暇なんてないよ。」


そうニコリと笑うダリに、スージーは少し照れた。


「(…メルさん、もし貴方が
ダリ先生を必要としないのなら、
本当に奪ってしまいますよ?)」


それでも、本当に良いんですか?





貴方は…その世界で。



あの真っ白な服に
赤い血を染めて生きる世界でしか
生きれないんですか?



「スー?」


「ふいっ…ダリ先生」


「何時もの様にダリって呼んでいいよ」


「ふいっ!?ですが」


「ね」


そう言ったダリに、スージーはコクリと頷いた。
ふわりと熱が燃え上がっていく。
女子生徒に噂されたのを聞いた時は…正直嬉しかった。


自分が今までそうやってダリに好意を寄せていたから。
でも、メルが来てから彼の中心は変わった。
メルがずっと傍に居るから。



…でも、彼女は



「ダリ、貴方
あの子のことを
どう思ってるんですか?」


「…スー買い物しよ」


「ねぇ教えて?」


そう言ったスージーに
ダリは少し息を吐いて答える


「ただの飼い主だよ…他は何でもない。」


「…そう、ですか。」



+++++++++++++++





ーただの飼い主だよ…他は何でもない。


その言葉に気付いていないメルではなかった。


魔樹は魔界の地に根を張り
その場に駆け付けることが出来るように
音を聴いてその方角から場所を絞り出し移動する。


覚醒して、リルを
作り出してからと言うものの
その成長が大きく跳ねあがっていた。


ダリに話をしていなかったのは…


ただ驚かせようとしていた。


もう少し確実にしたら
助けてみたいと思って。



隠していた…だけなのだ。




だから少し気になって、聞いた私は。


悪い子だ。


『(忘れろ)』



その首を絞めさせてよ。

この痛みを…嗚呼、分かり切っていた。


ぐにゃりと影が揺れる…

でも、まだ夢を見させてくれる。



彼が肌を重ねてくれるのは





…私が暴走しない為。


ただ、それだけだ。





それだけだから。







いつの間にこんな欲塗れになっていたのだろう。





好きだなんてありえる筈がないのに。





私は彼らの食事でしかない。



人間なのだから。






カルエゴ先生はかなり敏感で、綺麗に塞いでもバレる。
なら記憶を流してしまえばいい。
そうして、後で思い出してしまえばいい。

…もし、気になるのならであるが。


そう言えば、

ダリが周囲の話で一度も
「恋人」としてと言ったことがない。


よく考えたらプロポーズも無かった。

それを考えたら…やはり
欲情してしまいヤっただけの関係。


気付くな。忘れろ。

息を整える。

吸って吐く。


それ以上はダメだ。


踏み込んではいけない。



本当に戻れなくなる時は…まだ、まだ良い。




よし。落ち着いた。




「待たせたな」


『いいえ』


トイレ休憩で待っていたカルエゴの元に
メルは歩み寄る。


何か知らないが割とこういう時は緩まるのだ。



本当にご都合よすぎて笑うな。



いっそのこと。


…いっそのこと



忘れられたらどれ程良いだろう。



『(…次行こう)』


「さて、花は…良いか、
アクセサリーと言ったな。」


『あ、はい』


「此処に来る間に
気になる場所があった。
向かうぞ。」


『あえ?!あっ!手て!!』


「見せつければいい」


『…え?』


「そんなに不安なら嫉妬させて覚えさせたらいい。
貴様は誰にでも奪える者であるということをな。」




そうしても、私は




『(私はもう少ない時間しか居れないと言うのに?)』




そんなことをして、何になるというのだろう。





「ほら」



『はわぁ!!!!』


そう現金なもので。


メルは凄く高そうな場所に
連れて来られていた。


『え?ま?たかく、たっっかいですよね?』


値札がないのは間違いなく高い証拠。
これでも安いと言った彼。

いや止めろ。

私が付けれない。

申し訳がない。


そのアクセサリーも


君の金額も。







…私が付けられるのは


ただの、ちゃっちい花冠だけでいい。



そう、無邪気な自分だけで良い。


その場所だけで、良いのだ。



それが、お似合いだ。




ずきりと、痛みが深く刺さる感じがする。




今日は…とても痛い事ばかりだな。




「…んコレが良い」


『これ?』


そう手に取ったのはバイオレット色の髪留めだ。
綺麗な紫色に目が吸い寄せられる。



『…きれい』


「気に入ったか」


『えっ!?あっいや!!』


「目を奪われるということはそう言う事だ。」


それを悪魔は気に入ると言う。
そう言ったカルエゴが即決で購入した。



いや値段よ。


あともう少し選ばない?


茶色と黄土色のアクセサリーが
ちらりと目に入って止まる。



「行くぞ」


『あっ』


手を取られてその場を後にする。
もう少し見たかった…


「気にしなくていい」


『え?』


なんでもないと言われ、さてと声を掛けられた。


「貴様、今まで何もしていないとは言わせないぞ?」


そろそろ吐いてもらおうかそう言ったカルエゴに
メルはきょとんとする。


「集合場所くらい、
もう目処はついているのだろう?」

貴様を後にした理由を知るのに時間がかかったが。
そう言ったカルエゴにメルはニヤリと笑い

カルエゴから貰った
バイオレット色の花をモチーフにした髪留めを
付けていたゴムを外して付けなおした。


『えぇ…勿論…
流石カルエゴ先生ですね』


「はっそのいけ好かん笑顔の
仮面の奥が面倒過ぎるんだ」


『おやおや、そりゃ失礼しました。』


そう深くおじぎするメルに
カルエゴはじっと見た。



その目は何処か遠くを見ているように見える。



『此方でしょう。急ぎますよ。』



もう向かっている者が居ます。
そう言ったメルは走り出すのに腕を引いた


『んぐあ』


「方角を教えろ。飛ばすぞ。」


そう言ってメルを姫抱きにした
カルエゴが翼を広げたのだ
それにはメルも目を丸くした。

『…はっ、目標北西200m!紫チームの方です!!』

ヒントもう見えないけど多分合ってる!
そう言ったメルに
カルエゴはニヤリと笑い空を飛び立った

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