もしもし、神様?いるんでしょう?12




ショッピングモールで幾つか小物やお土産を買う。その間に良い子にした子はシールを、だ。何を買ってもらうか悩む子達に、可愛いと思っているとお昼のチャイムが鳴った。そろそろ時間か。ご両親と合流し、食事も取った後。もう帰る頃合いだろう。洋服も見て見たかったが、それはいつかに回してしまおうか。そう思っていると、大神官がアメリに声を掛けた。

暫くすると行きましょうと声を掛けられる。え?待って。

『なんで?』
「なんでって、自由行動ですよ。三時頃まで回って良いらしいです。」
『いやでも』
「今回は付き合って下さい。」

そう手を引かれ、連れてこられた場所は、だ。小さな洋服屋。中はシンプルなものもあるが、割とフリルの付いた服もある。いやまって金額分かんないんですけど。こっち日本円で暮らしてる。もしかしてお兄さんユーロ換算分かってらっしゃる???そう思っているとニヤリ笑みを深め「仕返しですよ」と言われた。…あ!!!待ってグル!?!??!

『幾ら貰ったの!ねぇ待って!!』

今更気付いた。大体本の謝礼として、金銭を貰う。古い本で、尚且つあのセット。かなりの値段がするハズ。一応こっちには知らせないようにと嘘をついているだろうが、ゼロなんてことはない。その本の金銭をもしも割合が少しでもこっちに来ていたら、一体どれ程の値段になっているのか。洒落にならない。

本の謝礼となれば話が別問題だったことを今更ながら思いつくも、もう遅いですよ。なんて言われる。少なくとも数か月はここら辺で暮らせるらしい。マジで言ってる?

「マジですし、何でしたら給料として支給されちゃいましたからね。」
『何故そうなった』
「そもそも本の持ち主は一人だと限られているらしいのです。それ相応の対価を渡し、初めて成立するのだとか。」
『本も渡して金も払って無一文にさせるつもりか。』
「そう言ったのですがね、寧ろ受け取らないと帰さないと脅されちゃいましてね。」
『やりかねんなぁ〜〜〜〜〜』

血は争えない。割と本気だったら困りものだ。此処から空港から104キロも離れた場所なら猶のこと。何なら今居るショッピングモールはもっと遠い。手はあるとしても、大体向こうに知られていたら先回りされるがオチだろう。見つかったら一巻の終わりである。

「ですので、ね。此方も貴方から頂いてばかりで心苦しいのです。出来ればこれに懲りて下さい。」
『やり過ぎだと。』
「ええ。」
『そんなことないのにな〜大神官様。』
「私は其処迄良い人じゃないですよ。そもそも私は人ではないですし。」

日本語が一切通用しないことを良いことに外で会話する。

『いやこれちょっと綺麗過ぎない?』
「ですがお似合いですよ?”彼女にこれをあとこっちもお願いします。サイズは同じでしょう?”」
「”畏まりました。でしたら目を付けられていたお品物も構いませんか?”」
「”ええ構いませんよ。”」
『待ってドイツ語で話をすすめないで。』

だから味わって下さいって。
骨の髄までかよ。
おや、良いのですか?

「私が味わって」
『…もうほんと勘弁して。』
「っくくくくく、私の勝ち、ということで宜しいですね?」
『もう宜しいです〜うえぇ〜ん。』

はいはい泣くのは後ですよ。ほら。そう言って見せてくれたのは先程着ていた服とあれまって増えてる増えてる増えてる増えてる。あれ私こんなことしたわしてたわ。前科あったわ。一犯してたわ。なにこれ罰?相応の罰?????

「それ相応の対価で支払わないと、ね?」
『もう好きにしろよもう。』
「っふふふ、では行きましょうか。」
『待ってまだ行くの!?』
「おや、私言いましたよね?」

今回は付き合って下さい、と。

そうにやりと目を細めた彼の瞳に、ゾワリとした。その後はもう、ご想像通りである。私の好きなものを見つけては買っていく。マジでサンチがピンチである。嬉しいし使うからいいけれども。

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家に帰宅した時にはクタクタだ。荷物を置いてくるだけで三往復はした。後で輸送したいものは下に置いて来いと言われたくらいだ。全部は上げていないが、上げた一部も出来れば輸送したいものもある。画材も一応輸送にしようか。何なら服も一旦輸送で良いかもしれない。

『私なんもしてねぇ〜よ〜〜〜なんでだよ。』
「誰か救った徳でも返って来たんじゃないんですかね?」
『そうだとしても釣り合わない。私救ってないよ。確かに困ってる人何人か助けたけど、あれは私からというより人伝いだよ。』
「それが出来る位置に貴方は居た。それだけでも救いだったと思いますよ?」

良い行いをしていること、分かりますからね。
あうあうあうあう〜〜〜〜〜

「夕食は手伝いますか?」
『流石にね。大神官様もします?』
「これだけされて何もしない、な訳ないでしょう?勿論行きますよ。気分が優れないならば寝ていてよろしいですよ?どうせかえっても一日しかお休み取れませんし。」
『良いの良いの。』
「あのお方の真似事でしたら、似ていませんが?」
『わあ〜だめかぁ』
「駄目に決まっているでしょう。何してるんですか。」

仮にも王である。いや、その言い方はちとまずいか。

『今日はシチューかな。匂い的に。本場は食ったことないから分からんが。』
「そうなのですか?」
『本場のシチューは確かこっちの方だった気がする。いや違うかな。』

そんな話をしながら下に降りていく。カードを持って見て見てと手を上げていた子に気付き、嗚呼と声が掛かった。

「君の仕業か。」
『すいません、やり過ぎちゃいましたかね?』
「いやいや、充分過ぎるよ。教師か何かか?」
『ただの製造業です。』
「それで!?うそだろ!?」
『えっそれで??????』

どうやら私の見た目的に小学生メインの教員だと思われていたらしい。いやマジか。

『私小さい頃の記憶が余りなくて、年甲斐にも無いことですが、シールを貰ったり貼ったりするのが好きでしてね。溜めて何かを成し遂げるってことは今もしてることでしたから。お気に召したら良かったです。』
「そうだったのか。それは済まないことを聞いたね。」
『いえいえ』

食材を切っていく。手を洗って、ついでに洗ったものを絞っていた父親であるレミエルの食材を、都結は手に取り水をふき取る。大神官が包丁を使うらしい。マジで大丈夫かあの神官。いや全王様そもそも食事食うの????ねぇ其処ら辺知らないんだけど。ねぇまって。そんな任せろ見たいな顔しないで。確かに家の家事君に任せてるけれどもね。私に家事をさせないつもりかこの天使。

「今何してるんだい?」
『製造で一人暮らしを。まぁ前に男もいましたが。今は音信不通、って所ですかね。昔はいい子だったんだけどなぁ、互いに。』
「そうか。」
『優しくて、一緒に居て楽しかった。苦しいこともあって、それでも乗り越えれた。だからと思ったんですがね、やっぱり私は私でしたから。』

幾ら磨いても本質が脆ければ意味がない。芯がない。彼も言っていた言葉だ。雲みたいで、形は遠くから見たらはっきりする癖して、近付いたら何もない。広く散らばっていて、物がないというのだ。ソレが私。それが、私なのだ。本質を知って、彼は出て行った。もう耐えられないと言って。ごめんと置手紙だけを置いて。今でも残している。額に飾って?いいや、引き出しの奥に。

もう見てられなかったから。綺麗にふさいで。

「でも彼と付き合ってるんだろう?」
『まさか!付き合うどころか好き合ってもないですよ。』
「本当に?あんな子が傍に近くに居ても?」
『それに私は一人繋いでますから。新しいものではない。』
「気持ち、が大事だろう?君が子供達にしたように。」

違わないか?そう言われて、それはそうだと答える。でも、違う、違うのだ。

『彼は私を見なくて良い。知らないでいい。』
「まるで知らない方が幸せみたいな言い方だね?」
『事実そうですよ。この世の人間全員が知って何処かに行きました。私はもう置いて行かれるのはうんざりなのです。』
「だから好きにならない、と。」

そうだ。もうこれ以上人を見ない。

痛みを知って、前に進みたくない。そう思う。

「…そっか。でもそれって寂しくない?」
『え?』
「だって君は人が好きなんだろう?好きを殺しているように見える。殺さなくて良い処もダメージを負って、その好きな人が傷付かない訳もない。」

そうだろうか?

『でも、彼はいずれ何処かに、いや帰らねばならない。』
「引き留める枷に成る訳にはならない、と。」
『…きっと私この世界にも入れません。』
「何故そう思える?」
『計算上はそういう状態なんです。実際まだ言っていませんが、元カレが居なくなる時も予知夢を見たんです。草原の上に、この世界ではない者が言った。』

”もう戻れないよ”

その言葉に、目を細める。

『あれはこの世界に戻れないという意味に近い。現に環境も少しずつ変化してるんです。余りにもおかしい。忘れない人がですよ?私を忘れていたんです。』
「誰だって忘れたりするさ。」
『例え昨日会っていた人だとしても?』

それだけじゃない。自分の周りが徐々に変化している。その小さい歪は、何時しか大きくなる。先手を打って当然だ。精神は命。大事な肝になる。其処を回し、兎に角耐えれる様にする。それが私の今迄生きて来た成果だ。

「仮に彼がこっちに戻って来ても、君は此処にいない。何処にもいない処に、一人生きらせたくない。だから応える訳にはいかない、と。」
『それもですし、私は釣り合わない。』
「そうかな?割と似合っている気がするが。」
『はっ、そういう風に見せてるだけですよ。互いが互いに生き延びる為のです。本質は違う。きっと、違う。』

私の気持ちが違っていたら、それだけで辛い。こっちは今額に入れられないのだ。これは一気に身体中へ沁み込んで汚染される。今までの成果が水の泡になってしまうほどに、効果は出てしまうだろう。そうなったら、私の人生も終わりを迎える。

『私は遠くから眺められたらそれだけでいいんです』

あの人達は眺められることすら、出来なかった。夢幻でも、姿を見せてくれない。いっそのこと幻覚でも見れたら良かった。そしたらその時間だけでも幸せだっただろうに。その後の絶望も、計り知れないものだろうが。

『あの人に見れれなかった私が居るべきは此処。』

彼の隣なんて、どれ程の徳を積んだって、きっと合わない。此方から願い下げだ。例え二人の愛が同じだったとしても、だ。ルールはルール。決められた場所は、厳格に、だ。此方では釣り合わない。異世界人の人間だぞ。中立を重んじる大神官が扱えるものじゃあない。管轄外だし、ルール違反も良い処だ。消滅させずに償わせるというなら、そうなる前に断ち切る。

だから距離を置くのだ。でも、今だけ、今だけは。その時間を覚えたい。そういうしたいことと、しなければならないだろう気持ちに揺れまくっている。いっそのこと人間だったらよかった。

『あの人がいっそのこと普通の何処にでもいる人間だったらよかったのに。』

そしたら私はこの想いを貫けたというのに。でも、良かった。

『あの人が天使で良かった。』

だから私は諦められる。人間である私は、天使になんてなれやしない。なるべきは、ないのだから。

「…好きならば、ずっとその時間を求める。それすらも許さないのは、何故だい?そんな地位が邪魔?それともいや、何もかもを拭い去った後、君は彼をどう思う?」
『一緒に居たい。あの家に、午後の紅茶を楽しむんです。さっき約束をした。』

その時間を続けるだけでいい。五分や十分程度の短い時間だろう。でも、私にとっては何時間何年かけたって、到底辿り着くことの出来ない幸福が、其処に待ち続けてくれている。ありふれた日常を繰り返したい。私はそれだけでいい。それこそが、人の幸福だと思っているからだ。

『私は人としての幸せをあの人と分かち合う時間に息したいだけなのです。』

それだけ出来れば、もう、何も要らない。必要なんてしてはいけない。求めてはいけない。


「あ〜若いねぇ〜〜〜〜」
「はいはい、吸うな吸うな。穢れるだろ。」
「えぇ〜?そんなご無体な。君だって吸うだけ吸った癖に。僕だけ駄目なのかい?」
「天罰食らっても助けてやれないよ。」
「嗚呼そら御免被りたいね。仕方がないか。」

背後の殺気を取ったのか、両手を上げるレミエル。それに都結は首を傾げた。


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風呂が終わり、また夜だ。2日連続なんて申し訳なくて、間に鹿を挟んでいる。今日買った縫いぐるみだ。神話コーナーでどちゃくそ可愛いアルテミス鹿を手に入れたのだ。狩猟の神アルテミスに仕えた鹿らしい。因みに優雅・純粋・森の守護神としての意味があるらしい。もうぴったりだろこいつに。むすっと不貞腐れた顔でこっちを見てくる。どうやら鹿が邪魔らしい。ぽいとよそに放り捨てられる。嗚呼私の守り神が〜〜〜〜。ベットの端になんて、なんて酷いことを!取りに行こうとしたら腕を掴まれ倒されてしまった。

「全く、本当は言うつもり無かったんですがね。貴方がそう言うことをなさるならば話が変わります。」
『へ?何々何。』
「こうしてどう思いますか?」
『別に?』
「…ならこうしても?」
『っ!』

馬乗りになった彼が手をベットに置いて耳元に囁き近づく。流石にと後ろへ下がろうと思ったが耳元で囁いていた手が邪魔で上に上がれない。横に移動しようとしても片側の手が邪魔で、下にと下がれば、彼の膝が股に当たって動けない。あれ、これ詰んだ?

「ほら、どうです?」
『っあ、ちょ、ど、どきどきする…』
「それで?」
『待ってヤダ、いやだ』

知りたくない。嬉しそうに笑ったあの時間が崩れ去るなんて、したくない。きっと想いは一緒だ。睨んだ目はまるで獲物を見定めた鷹の目だ。射抜かれる、その眼が、好きなのだ。嗚呼、違う、好きじゃない。怖い、そう、怖いだ。怖いでいい。今は、良い。私は怖いのだ。貴方との時間が崩れ去るのが。

『やだ、いつもの、いつものがいい』
「何時ものって何です?こうして触れていたのに?」
『っ触れ方、違う…!』
「何時だって同じですよ。違うのは貴方の心です。」

そう言われて、肌が触れ合う。心臓の音が届きそうで怖い。知りたくない言葉を、脳裏が横切って煩い。でも、知ってはいけない。知ったら後戻りできない。神様は言っていた。もう戻れないよ。なんて、酷いことを。でも、戻りたい。私は少しでも縋りたいのだ。



あの日の時間に会えるならば。



私は。

『やだ、いつもが、いいの!!!』

そう胸を押して起き上がる。何処か嫌な予感がした。はっとして彼の顔を見た。灯りは小さく、近くに居るのに、何処か見えない。暗闇から月明かりが少し見えて、顔が見えた。見えなければ良かった。知らないままが良かった。


「そうですか、それもそうですよね。」


貴方を傷つける。


それ以降、彼が私に触れる事なんてことは無かった。布越しですら。触れないことで、気付いた。嗚呼知らないままが良かった。スケッチブックが良い。鉛筆に色取られない、白い用紙に戻したい。消しゴムで消しても、痕が残って元になんて戻らない。嗚呼、知らないままが良かった。眼の中に入れては、合うことはない。こっちを、向いてくれるなんて、もう、


『っ!!!(夢…?)』

ばっと起き上がったら、まだ明け方だった。隣で寝ている。夢だっただろうか?本当に?怖い、あれ程詰められると、恐怖が押し寄せてくる。都結さん?なんて声を掛けてくれる。いつも通りだ、良かった。あんな愛おしそうに囁く声じゃない。良かった。何時もだ。何時もがある、それが何よりも嬉しくて、涙が出て来た。

此処に来てから泣いてばかりだ。

泣きたい時に泣いて良いんですよなんて言ってくれる。優しい、この優しさに甘えたいのに。甘えてはいけない。甘えたら現実が待ち受けている。貴方の居ない世界で、生き延びなければならなくなる。それだけは嫌だ。それだけは、頼むから、それだけは許して欲しい。どうか、それだけは。

『(知らない、私、賢くないよ)』



馬鹿でいい。そしたら貴方が居ない世界でも生きていられるのにね?



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次の日、触れ合う形に熱を覚え出した。髪の毛が降りてたら耳にかけてくれる。ぬかるんでそうなところに手を取って引っ張ってくれる。背中を押して前に出してくれる。いや最後は要らないけど、でも、何処に触れても熱を覚える。彼は違う、なのに、嗚呼そうだ、今だ今だけ。




『いまだけ』



今だけなら、許してくれるよね?神様。ねぇ、居てくるんでしょう?私を見てくれる、可愛い神様。



今日だけ。私は貴方を



『(っ出来ない…ごめん、出来ないよ)』

意気地なしだって言われてもいい臆病者だって言われてもいい。それでいい。貴方のことに、説明が付くのに、理由を言わない私を許さなくて良い。散歩してる彼の背中に陽射しが落ちる。過ごしやすそうな風が髪を撫でて、温かな陽だまりが私の身体を突き刺してくる。振り返る彼が、コッチを見てくれる。私だけを、見てくれる。嗚呼、私これ何て言うか知ってる。賢いから。賢い子だから。でもね、私は賢くなくなる方が良い。

「どうしました?少し疲れましたかね?」
『…うん、少しだけ。』

休憩しましょうか。そう笑った彼に、うんと頷く。手を見て触れてしまえば、気付いたのか触れて来た。一体何時から気付いていたのか。ふふっと笑った後、眉を上げ穏やかな顔で行きましょうと声を掛けてくれる。…嗚呼、この時間がずっと、ずっと。私の心に居続けてくれたらいいのに。開けた場所、草原の先には小さな木が育っていた。其処にシーツを被せ座らせてくれる。

先日買った紅茶だ。お試しで開けちゃったんです。と言って水筒に入れて来たのを開け、カップに入れてくれる。温かいのか湯気が出ていて。受取ったらその温もりが其処迄熱くないことを教えてくれる。

『ありがと』
「いえいえ。」

すっと互いに飲んでみる。温かな味が口に広がる。少し苦い味は、ダージリンか。美味しいですかと聞かれたので勿論だと答える。そっちはハニーティーらしい。下にはちみつを入れているが、これでは取り出せないただのティーである。でも中に入れているから、エセハニーティーの完成かもしれないなんて言えば笑ってくれた。嗚呼、このまま。

切り取れたらどれ程良いだろうか?

そう思っていると、声を掛けてくれる。現実に引き戻してくれる。私を夢の中になんて連れて行かせてくれない。私達は明後日旅立つ。今日は午前中に買い出しに行ったが店は休日だったから、スーパーに寄って帰ってきたばかりだ。明日1日休みだが、どうせ晴れるならこうした日を過ごしたいと提案してくれた。

「如何でしょうか?こんな広々とした場所でなんて中々味わえませんよね?」

素晴らしい提案だ。私も受け入れることにする。

『うん、明日此処でね。』

明日一日だけ、戻ってみよう。彼が私を受け入れてくれるのか。ソレを見定める。少しでも困ったら、この気持ちは、そうだ。抱きしめてやろう。そうだ、そうして、それから、あと、えっと、それから…。

「何をしましょうか。どうせなら持ってきた画材で何か描きますか?」
『そうだね、それもいいね。』

留めたい。あれ程留めたかったのに、留めたくなくなってしまった。気が進まない。それに気付いた大神官がどうしましょうか?と聞いてくれる。ねぇ、それなら、それが叶えられるならば。ねぇ、お願い。どうか、お願い。どうか、一緒に。


「え?なんて」
『いてよ』








『一緒に居てよ』







嗚呼言ってしまった。幻滅するだろう。そう思って、覚悟をして前を向いた。世界は全く違うもので。







「…っあ」






目を開いて、唖然としていた彼が居た。


「す、みません…いえ、構いませんよ。言われずともずっとお傍にいます。」
『ほんと?』
「えぇ」
『嘘つかない?』
「私が嘘付いたらとんでもないですよ。」
『ふふふっ、そうかな?』
「ええ、そうですよ。」

肩に頭を寄せれば、彼も寄せてくれる。ぐりぐりとはいかずとも、擦りつければ嬉しそうな笑みが零れ落ちる音が聞こえて来た。嗚呼、このまま居させて欲しい。このまま。どうか、お願い。視界がぼやける。止めて、醒めないで。気付いた大神官がそっと目尻にキスを落とす。水を吸い取ってくれるのだ。

「泣かせちゃいますね」
『違う』

明日が楽しみで仕方がないのだ。嗚呼漸く、きっと、漸くだ。受け入れてくれる。きっとこの人は、私を。私のことを。




私のことを?








































『あめだね』


最後の日は雨が降った。涼しい風が、開けた窓から頬に触る。






ほら、いったでしょう?
    (いくらのぞんだって、かなわないって。)







泡沫の白昼夢


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