もしもし、神様?いるんでしょう?14



明け方に付いた。荷物を纏めていると、大神官は疲れたので寝るという。風呂にも入って来たばかりで大丈夫かというが、大丈夫じゃあない。でも寝るというので、まぁ心配だが放置することにした。こっちは荷物を整理するので手一杯だ。

一応二週間後辺りには荷物が届くらしい。送る内容と共に画像が送られてきたので返信を返す。続いて店長にも礼を送れば、直ぐにいいよと返って来た。よし、明後日仕事だし、荷物もしておこう。洗濯は今日のうちに干しておきたいので綺麗にしておく。今動かないと暫く動けない気がしたから。

そうだ、明日の準備をしよう。

午後に紅茶を飲むのだ。あれは正夢だったのかもしれない。正確には違うが、きっとお告げだ。昨日は飲めなかったから、明日に持ち越しという意味だろう。ケトルを洗って、綺麗にしておく。洗剤が残っていたら殺人事件が起きてしまうからね。ダメだよ駄目だよ。客人だしね。丁重にもてなさないと。

会社用の荷物も纏め、自分の部屋に荷物も入れる。飾れるものは飾って、服も買って貰ったものが後で送られてくる。嗚呼、服も楽しみだ。浅葱色のパジャマを見つけたのだ。夏にも使えそうな材質。肌触りのいい、少し綿が強めのものだ。向こうでタオルケットを新調出来た。浅葱色の優しい色合いだ。もう推しに包まれる勢いだ。まぁ本人居るから怒られるかもしれないが。

紅茶用のカップを食洗器に入れて洗う。明日には出来上がってることだろう。とは言っても明日の夜まで寝れない。職場で昼夜逆転だけは避けたいところ。今日の夜は寝ないといけない。というか、正確には今明け方なのだからこれから寝たらいけない。

そんなことを言っているとスマホを手に取る。嗚呼SNSに乗せていたものが評価されていたのか。海外に行ったことを言えば、皆がどうだった?とか言ってくれて反応を返していたら、気付けば洗濯も終わっていた。干してしまって、綺麗にする。そう言えば今日は満月だ。貰ったものを説明するのに苦労したのだから、塗ってしまおう。部屋に入ってしまえば、大神官が横になっていた。良かった。生きて居る。

きっと私のことで疲れている事だろう。これが終わったらゆっくり休ませておきたい。少し温かな本におや、とも思ったが、使ってくれていることの喜びが勝った。メモを置いて綺麗に塗ってしまう。明け方に、綺麗に朝陽が本に命を吹き込むかのように、色を変える。今日が始まる。水曜日だ。

荷物は整理したし、他の返信も終わった。予想以上にやることがないので、絵を見返してみれば、割と新しい。新鮮だなと思っていると、ドイツ語で何かを書き留めた場所が見えた。写真を撮ってチャットで検索を掛けた。

Liebe verleiht Flügel.
「愛は翼を与える」

という言葉で、意味は恋をすると、まるで羽が生えたように、どこへでも飛んでいける気がする。というものだろう。「恋は人を成長させる」や「恋する人は大胆になる」に通じるものか。はー誰が?私が?いや、大神官様がってなったら猶のことあり得ないだろ。というか誰だこの字は。

そういや大神官様の字見ないな。明日というか今日見て見るか。嗚呼あと教えてない日本語にも着手するか。恋愛の話は避けていたけど、あの人本当に人のこと傷つけそうだし人間の教養くらい嗜んでおかないと。後は


『あとは』

ぱたりと涙が出る。今日は駄目だな。向こうに行ってからではあるが。原因は分かっている。寝たら戻る。今から寝たらいけないのに、瞼が重い。音がなる。寝てはいけない。でも、我慢できない。起きたら大神官様に声を掛けよう。彼の好きなご飯は準備が出来ている。もう全てが完璧だ。何一つとしてミスはない。



そうしていつの間にか目を閉じてしまった。温もり。
























「ごめんなさい何時までも愛しています。都結私の」
































目を醒ました。

扉を開けた場所には、誰もいなかった。

綺麗なシーツは、誰も最初から居なかったかのように告げて。





























『嘘つき』

そう言って視界ははっきりとしていた。パタパタと音が鳴った。外は雨が降って来たのだ。時刻は午後二時を示していた。



何一つ完璧じゃあない。

貴方が居なければ完成なんてしない。

私はその場に崩れ落ち、ただただ息をして吐いた。


抱いた記憶をも吐き出したかったのに、私は許さなかった。




































































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ケトルは沸いた
買って来た紅茶は入ったまま床に置く
二つ置いて貴方の好きな食べ物を添えた


貴方は居ない。



私を置いて、貴方は居なくなった。


外に出て行っていると思いたかった。でも靴はある。貴方が此処に居た証拠が残されていた。とてもじゃないが、明日職場に行ける気持ちは何一つとてない。幸いなことに有給もある。明日と明後日を休みにさせてもらって、もう少し休んでしまおう。いるって言ってくれた。いるって、傍にいるって。


『うそつき』


ほら言ったとおりだ。私が見れば、貴方は居なくなる。私が、私が前を向けば、誰もいない。だから閉じていたのに。あれ程塞いでいたのに。あれ程頑丈に誰も知られないようにしたのに。夢だからと浮かれていた。馬鹿だ、とんでもない大馬鹿者だ。あれ程痛みを前に知っておいて、二度もするのか。


『うそつきだよ』


早く戻って来て。太陽が昇っている間に。月が見えて、また昇れば、もういない。首に手をかけようとして止めた。最近はしていなかった。緊急用の薬に手をかける。精神が管理出来ないと判断したら強制的に落とすものだ。使ったら次の診察は声を掛けないといけない。嗚呼、溜めている金がまた吹き飛ぶな。まぁ良いけど。

流し台になんていれてやれない。先に大神官様に渡す筈の紅茶を取って飲んでみた。嗚呼苦い。甘いよりも苦い。ダージリンティー。意味は追憶と純愛。今の私にピッタリではないだろうか?貴方が居なくなって理解する。遅い、遅すぎる。でも、これでいい。貴方が居ない、この穴が痛みを理解する。


『うそつき、』


一緒にいると言ってくれた。愛してると言ってくれた。謝らないで欲しい。謝るくらいならば私を嫌いだと突き放して欲しい。私を嫌いにさせて欲しい。なのに笑って触れて、傍にいるって言った。離れていくのを分かっていて。線引きをしていて。最後は?彼はきっと記憶を消されることだろう。遅かれ早かれ判断は出来なくなる。私は忘れられる。私は”わたし”はいない。


『ごめんね、ごめん』


貴方を守ってやれない。ボロボロと泣きだした。今日だけは今だけは戻させて欲しい。カラー落としで綺麗に髪の色を落とし切った。綺麗な白髪に戻り、目の中に入れていた特注のコンタクトレンズも外す。白い髪色に、赤い瞳。彼が言っていたそっくりは、私だ。





私はアイティ。貴方に触れてたお人だよ。






『***』

貴方の名前を呼んだのに、貴方は来てくれない。ねぇ、此処にいるよ?此処にいる。ねぇ、会わせて神様。どうして会わせてくれないの?この場所に居させてよ。この小さな箱庭なら息出来るのに。此処も駄目なら、私は一体何処で息をすればいいの?ねぇ、教えてよ神様。いるんでしょう?

呼んでも来ない、此処は届かない場所だから。ならば私も。


ー泣かないで下さい


生きて。そう言ってくれる。此処に居る。この、心に、息づいてくれている。ソレを知っただけで、息が軽くなるのだから不思議なものだ。電話をかけ、出た人に声を掛けた。

『すいません飲みました』

一時間後救急隊が駆け付けた。白い箱の中に元通りだ。

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「会社には一年くらい休暇をと連絡を通している。事情も知っていたが、急がなくていいからっても。」
『』
「こればかりはどうしようもないからね。ゆっくりしよう。」

私の身体は少々特殊で、幼い頃髪の毛を染め忘れたままお医者さんの所で血液検査をした時目を付けられた。それ以降特定の病院でしか診察が出来ていない。正確にはしてはいけないらしい。血液の型が良くないらしいのだ。加えて幼い頃家庭内崩壊もしている。因みに父親は生きて居るし、この事実は今横に居て話をしている。

「最近は落ち着いてたのにな。何かあったか、そりゃそうならないとな。」
『 』
「旅行に行ってたんだろう?さっき白鳥さんから教えて貰った。三日様子見してから家に帰ろう。」

そう言えば首を横に振る。あの家が良い。何時か帰ってくるかもしれない。そうだ、また来る可能性だってある。本は13冊。そのうち一つは彼が持った。あの中に何か書かれているかもしれない。読み解かなければ。動く私に抑えブザーを鳴らす。落ち着いてねと言われる、落ち着いている。私は正常だ。異常ではない。賢い子だ。ちょっと髪色が白くて目が赤いだけだ。夜には青に染まる。朝と夕方のみ紫色に変化する、ちょっと特殊な目の色を持った不思議な子だ。え?充分過ぎるって?煩い煩いつべこべいうな。消滅させられたいのか貴様。

あの場所が良い。荷物も届くし、文通も始めたばかりだ。従妹がいたの。お母さん方の。ねぇお父さん知ってたの?私を置いて知ってたの?ねぇ、どうして?どうしてお母さんはおいてったの?私が化け物だから?真っ白で真っ赤な怖い子だから?目の色が変わる子だから?ねぇ、ほんとのわたしを、置いてかないで。

眠たい。これが夢だったら良いのに。



目を醒ましたら、何時もの部屋だった。髪の毛を少し崩した大神官様が床に座っている。待っていましたと嬉しそうに笑った。顔が歪んだ。目元が黒く塗りつぶされて分からない。紅茶に手を付けた。味がしない。誰かが遠くから声を掛けてくれる。それは何か分からない。でも目の前の人は言った。



「大丈夫、何時も此処にいますよ。」


貴方の顔も分からないのに?



目を今度こそ覚ます。バイタルはという声に涙を零していたことに気付いた今は何時だろうか?正常に安定し始めたことに周りがざわつく。

「…嘘でしょ?何したの高田さん。」
「いや私してないです。というか」
『帰りたい』
「え?」
『帰りたい』

貴方の元に帰りたい。此処に居るって言ってくれる分かってるコレは私の作り出した幻だ。分かっている。理解している。お話がしたいの。お医者さんと。ほんとの私と。

『お願いかんごしさん。お話させて。ほんとの私と、おいしゃさんと。』









「…成程、そういう。」
『でもじじつ。げんじつてきしょうこがこれ。』
「……証言もある、ううん。仮にだよ?都結ちゃん、もしも仮にその大神官様って子が本当だとしたら、いやだとしても危険だろう。その家自体帰らせる訳にはいかない。」
『じゃあひとりじゃなければいい?』
「まぁそりゃあ」
『じゃあすこしずつわたしがでてもいい?』
「…そのための療法、だからね。別に居ても良いんだよ。君の自由にすべきだ。出て来たいなら出てくる。いたくないならいない。ただ誰かが傷付いたからといって引っ込んだら悲しんでしまう。だからと言って君がどうこうすればいいという正解はない。」

君がしたいように、する。勿論殺害とかは無しだよ?

「自分も、ね。今回電話してくれて助かった。君は生きて居る。」
『いきてる?しんだのに?』
「嗚呼、そうだよ。」
『きっとだきしめてくれない。』
「帰ってくるかもしれないのに?帰りたいんだろう?お家に。帰らしてあげる。」

ほんと?

「明後日帰ろう。約束は無しだ。そしたら叶う。そうだろう?」

そう言えば本当に帰る話になった。外には白鳥さんが来てくれていた。







「暫く、というか一年間俺が面倒みる。そう警戒されるのも無理はないが、お前が知っている俺は危害を加えるか?」
『』
「…ま、猛獣扱いには幸い慣れてる。ある程度はしてやれるが、仕事にというか車のキーは没収だ。」
『あ!なんで!!』
「そりゃその精神で人身事故起こされても溜まったもんじゃないからな。幸いこっちも仕事で外に出る。面倒見れない時はお前も来い。部屋は、駄目か。」

其処は彼が居た所だ。彼の座るべき、場所なのだ。リビングで仕方がなく寝泊りしてくれることになった。幸いなことにソファーは一人で寝れる用の簡易ベット式なのだ。身体が痛くなることはほぼないだろう。床に置かれた紅茶に手をかけようとして止めた白鳥はそっとする。何一つ付けられていないわけではない。口が付いているのは分かった。リップを付けていたからだ。

片方のカップだけ飲み干されていた。もう片方は綺麗なまま。相手の為に?それとも相手の分を?だとしたら

「ちっ、もう少し殴ってりゃよかった」

置いてった後始末が酷すぎる。三日後、と言わずしてまさかの即日退院をしてしまった都結。白鳥は事情を説明し、職業も面倒も見れると公開すればお願いをされたくらいだ。まぁ父親とは面識が其処迄なかったが。あるとしたら都結が酔っ払って親に電話して変わられた時だ。流石に肝が冷えた。

ーごめんね、娘の面倒を見て貰って。本当は面倒を見てやるべきなんだけどね、仕事もあって難しくてね。
ーいえいえ、寧ろ私で務まるべきか…よろしいんですか?可愛らしい娘さんを私なんかが
ーふはっそう言ってくれる子があの子を泣かすなんてことしないだろう?
ー…もしも泣かした人が居るとしたら。元凶を知っていたらどうします?
ーでも殴った。違わないだろう?

センサーでもこいつらは付けているのだろうか。事実を述べたら大丈夫だと言ってくれて頭を撫でてくれた。年齢は親子だろうが、頼むのでしないで欲しい。食費とかの経費も送ってくれることらしい。いや本当に頭が上がらない。全く、男に恵まれない娘さんで困る。こっちが手を出したらどうするつもりだ。

「(誰が出せるか)」

明らか失恋だ。其処からのトラウマが引き起こされたというものだろう。一応精神が保っていた状態で薬を飲んでしまったことで、ごくわずかに残っていた正常値の状態が救急車を呼んでなんとかなったが、これで何もなかったらいや考えるのは良そう。とにかく状態は彼女が移動させなければ維持を前提にだ。まさか寝泊りした次の日に帰らされるとは思いもよらなかったがな。

『しらさんここいた』
「嗚呼居るよいるいる〜」
『なにしてるの?』
「ん〜なんでも〜」

ふーんと言って隣に座ってくる。前から幼い動きをしていたが、名前はと言えば”アイティ”と声を出す。その言葉は覚えていた。あの忌々しい神に仕える神官の口から出て来た言葉だ。

『アイティだよ。ほんとは都結なんだけど、僕達は交換っ子で生きているの。』
「…交換?どういうことだい?」
『そのままだよ。時々交換するの。トカゲのしっぽ切りみたいな感じ。ほんとは都結だったんだけど、アイティって今はいってる。本当のアイティが駄目だって。都結はね、此処で生きれないって。守ってやるから、此処に居てって。』
「そっか(乗っ取られている訳、ではないのか。この状態をよく耐えていたなお前、ほんと凄いよ)」

頭を撫でられるのは嬉しいらしく、定期的に撫でれば嬉しそうに背を少しだけ伸ばす。感覚的には妹気分だ。

『今迄アイティとして都結は居たから、外に出なくてよかった。誰も傷つけない。傷付く前に私は居ないから。』
「…つまり、俺と会った時もアイティが対話して居てくれた?」
『…こうしたらわかるでしょう?』

突如目の色が髪色も変わる。流石に何もしないで色が変わったのには驚いたからだ。普段はこうならないように染めているのだそう。マジか、そんな奴だったのかお前。

『私達は二人で一つ。一つは二人に別れて行動してるの。』
「解離性同一性障害か?」
『違う。ほぼ元からの状態だから下手したら魂自体が二つあるのかもしれない。まぁ近い話の可能性もあるけどね、流石に目の色や髪色まで変わる解離性同一性障害者見たことある?』
「あってたまるか。」
『でしょう?改めまして”初めまして”私の名前はアイティ。都結を守る為に出来た一時的なお友達なの。』
「…白鳥。白鳥慶一だ。」
『よろしくね。白鳥さん。ようこそ”此方側”へ。』

今日から奇妙な生活が始まることになった。






もしもし神様、いるんでしょう?


はやくこいつを迎えに来てくれないか。




















泡沫の白昼夢


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