ねぇ、ルーシー。私を知っていますか?10
前回のあらすじ
カランコエと対話できるようになりました。
「”さて、わらわを呼びつけるとは、一体何様じゃ?ことによってはこの場で叩き落とすが。無論惑星ごと。”」
「物騒な物言いをしないで下さい。我々は現在休暇中です。」
「”おやじゃあ何故呼んだ?こやつは我々の内部を探ると警戒しての作戦だったが”」
「(やはり気付きはしますか、ですがそれもまた策の内)」
コルンの作戦はこうだ。
一番はエフェメラル様に繋ぎ、都結を外に出す様にする。要は中から押し出す作戦だ。そしたらもう彼女が現実以外で生きれない。此処からコルンらがもう溺愛に出来あう。骨抜きにすると言ってもいい。大事にするというのだ。都結にあれ程大事にされていたこっちが漸く恩を報いるというもの。それにはまずエフェメラル様に近い子を見なければならない。
勿論ティーナ、というのもあった。現にカランコエが胡坐をかいて宙に浮きながら言う。何処かしらからカランコエが部屋中を蔓延り始めた。恐らく特定の花を持つ影響だろう。敷き詰められた時が時間、か。成程実に分かりやすい。流石は都結だ。
「単刀直入に申し上げましょう。我々天使は都結さんと大神官様をお繋ぎしたい。」
「”彼女が望む世界でなくとも?”」
「必ず望んでいます。」
「”何故言い切れる?何処に存在する”」
「先程彼女の気とお父様の気が合わさった時に見たのです。」
「”何を”」
「茶色いシフォンケーキを」
そう言えば固まる。ビンゴだ。これは、彼女等全員も周知しているということ同然。
「協定を組みたい。」
「”…なんだ”」
「我々はあれ程笑うお父様を未だかつて見たことがない。お父様は現在記憶を封じています。それは都結さんが困ると思ったことから故でしょう。」
「”だから?”」
「貴方方は彼女と」
「”もしも”」
もしもだ
「”あの神官と組ませたいというなら、わらわは正直反対勢だ。すまんな、的外れだ。”」
「…理由をお聞かせ願えますかね?」
「”殺してもこやつが死ぬだけだが?”」
「モヒイトさん」
抑えなさい。そう言ったコルンに、少し肩を落とし、座り込む。
「それで」
「”その件はかなり深刻な問題と化しておる。確かに都結はお前らが言う様な”核”で間違いない。”」
「では」
「”故に危険視されておる。この子はもう三度も約束を破られておる。”」
すまんが、お主ら全員を信じれぬ。それが反対勢の想いじゃ。
「”四度目はもう難しい。あれ程多くも居た華神も、今では手で数えられる程じゃ”」
「ちなみに何方が居られるのですか?」
「”形として出るのはエフェメラルを筆頭にアニュラス、アンダルシア、シャトリューズ、フィズ、ティーナ、カランコエ、カミカゼ、ルトラール、エル、プラティア、エフィオル、アルトリア”」
シュピルト
「”以上14名じゃ。他はかなりうろ覚えじゃから、下手に出す訳にはいかん。まあティーナ辺りなら連れて来れなくはないが、難しい位置じゃ。アレを無くすとこっちもかなりの痛手になる。”」
「息継ぎ組が全滅ですか」
「”おおよく知っておるのぉ?”」
「ええ少々彼女の小説とやらは大変興味深い話でして、スラスラと読めちゃいましてね。」
「”なら話は早い、息継ぎに近い者が最果て。そしてその最果ても残り一人じゃ。”」
最後の頼みの綱が、一つ、ですか。
「確かに困りましたね。」
「ちなみに今回の件多数決ではどっちが優位ですか?」
「”圧倒的に反対勢が多い。10:4”」
「ほぼじゃないですか。」
「”プラティア、エフィオル、ティーナ、エフェメラルこの四名のみが賛成派じゃ”」
「意外ですね、ルトラール様やアルトリアさんが居られないとは。」
お前ら本当に良く知っておるの…わらわでも引くぞ
嗚呼すいません
「こうして話すなんてこと中々機会がありませんでしたからね…」
「プラティアさんとエフィオルさんは子供故の願いですかね?ティーナさんもほぼ同じ。」
「”その通り。二人は子供故の願いじゃ。ティーナは色々世話になったから、猶のこと賛成するしかなかった。エフェメラルは”」
あの子は、揺れておる
揺れて?
「”あの子が肝なのにな…全く、もうどう〜してこ〜〜も揺らぐのじゃろうかあやつらという奴等は〜〜全くもう!!!!!”」
どう考えても行っていい一択じゃろうに!!!!
「”わらわとて反対派でおりたくないわ!何だったら賛成してあの青臭ったクソ神官めがああああああ!!!!”」
「あっ!!!!」
青臭いとはなんと無礼な!!撤回なさい!!!
ま、まぁまぁ!!!
「お兄様落ち着いて、此処は旅館ですよ?…誰に聞かれているかも分かりません。一応策は講じていますが」
「…むう。」
「”はぁ…ま、あれ程叶えると言って二度も離れた。一度は良いが二度目は流石に堪えたから、半停止させたが、先日流石に悪くなって停止させたばかりじゃ”」
「まさか」
「”都結は一度死んでおる”」
正確には、二度、ではあるがな。流石に次死なせたら、もう戻れん。戻るのは寿命を越えた先だろう。
「”ただでさえ傷付きやすい子じゃ。故にわらわらも意志を持った。まぁ力を持ったタルパとでも言うが良い。”」
「えげつないではないですか」
「”まだ外に歩かないだけマシだと思え。まぁそろそろ出来なくはないが、先程調整がてら出たしのお”」
「止めて下さいよ!?我々貴方らを消滅させるつもりはこれっぽっちもないんですからね!?」
分かっておる。
「”一つ約束を守っておくれ。他の子に繋げよう。幸いなことに今都結は仮停止出来た状態じゃ。あれから簡易的にスイッチの切り替えが上手すぎてな、触れるだけで切れるようになっておる。”」
「はあ」
「”どんな現実があっても、都結が望んだ結末は否定せんでおくれ。”」
我々はそれ以外食いつないでいく術はない。
「”我々はあの子の幸を何よりも望んで居る。これ以上に無い幸福の水に漬け込み蓋をして瓶の中に保管したいくらいには。”」
「でしたら何故反対をするのですか?」
「”言ったじゃろう?次はない。故に信用するかしないかは、わらわらが決める。少なくとも、そうじゃなぁ…”」
天使が此処に五分は留められると言ったな?
え、ええ
「”ふむ、なら試してみるか。”」
「え?あっちょ!!!!」
「は?!?!?!!?コニックさん!?!??!」
カランコエが首元に手をかけた途端だった。何と目の前にコニックが出て来たではないか。何をしていたのか知らないが、驚き周りを見渡している。浮遊しているのは彼女の首輪故だろう。地面に付かない。身動きがかなり制限されるのは自分ら全員経験済みだ。あれはかなり動きにくい。もう水圧の中に入れられたみたいなものだ。身動き処か息も難しい。五分は結構ギリギリで、急ぎ話をする。
「ここは」
「コニックさん!言いたいことは分かりますが、兎に角目の前のお方の質問に答えて下さいコレは命令です!!」
「コルンさん、貴方は」
「”初めまして、わらわはカランコエいや…お主に相手するのは別におる。変わるぞ”」
終焉に位置する者天使の華を持つ、天使だった者。
「”変わらぬ想いを持つ天使よ”」
その言葉で綺麗に白い風が花と共に入り入れ替わる。その青と赤のバラの髪留めが印象的なツインテールの女の子が眼を開いた。紫色で、ふわりと青白い輪を灯し、衣装が天使らと変わらない形にと変化した。
「”初めまして、此方のコニックさん。”」
「…お初にお目にかかります、私は第4宇宙の天使、コニックと申します。貴方は、フィズさんですね?お噂はかねがね。」
「”あらそれは嬉しいお話ですこと。”」
クスクスと笑うその胸元には、花簪の花を咲かせていた。
エフェメラルらの神々らは大きくブロックに分かれている。まずこの世界を創り出した者はシュピルト。これが悪さをしたくなくても力がしてしまい、維持出来ずに四つの光を分散した。そのうちの一人がエフェメラルである。そのエフェメラルは大神官の兄役を務めていたルトラールと呼ばれる人の一人娘として誕生した。
ルトラールの妻がルメリア。ルメリアとルトラールが受け持つはずだった華を持つ神の最後であり、五番目の宇宙に就くハズだった子がフィズと言う子だ。イレギュラーが発生し、エフェメラルが幼い頃プラティアと呼ばれた大神官の元長女が華を持つ神々へと変わった後変貌し、襲い掛かったことがあった。その攻撃をルメリアが庇い、負傷したことで廻廊という形が開き、その中にエフェメラルと共にルメリアを落としたのがルトラールだ。
廻廊は全部で12の世界を持っている。必ず12回る。過去に生きていた神々を引き抜いて一番良い神々を選ぶシステムだ。とは言っても、エフェメラルが最後書き換えてしまったが。その話は少しあと、だ。
エフェメラルがルメリアと共に正確にはルメリアを傍に置きながらも各世界を旅する。切り取られた世界に入り、神々に入る種を華として咲かせ、神へ引き入れるのがエフェメラルやルメリアの役割だ。フィズはエフェメラルの気持ちに応え入った。本来はルメリアやルトラールが請け負う処を、エフェメラルが「まだ継承していないのにも関わらず」受け入れたのだ。そしてそれを「分かった上でフィズはエフェメラルに協力をした」というもの。
フィズは唯一、大神官の元から産まれ、そして天使から華を持つ神に変化を遂げた存在。勿論プラティアもそうだが、彼女は少々特殊な位置におり、華神というよりも別の管轄で引き抜かれる予定で外れた者。故に最初から居るようでいないものだ。まぁ派遣と同じ存在。管轄は別だが其処で業務をする。ソレと同じだ。
フィズはその点直属、ということ。そう、この物語の中で「唯一の天使だった存在」それがフィズなのだ。前置きはかなり長くなったが、本題へと移ろう。
武器は杖を扱う者。天使の華神。華の神でも四番目の位置にある終焉地点。天使の思考回路から攻撃手段等、ありとあらゆる天使らの情報を用いる者。相手の技量やら気量をもエフェメラル等の上司に直で打ち明ける為、かなり厄介な相手だった存在だ。勿論フィクションの中ではあるが。
元々師匠はクスだったし、偶にコルンが世話を焼いていた。クスを選ぶ予定だっただろうが、どうやら色々あってコニックに、と用事があるらしい。なんならフィズは第五。コニックはその隣の第四宇宙である。管轄がそもそも違う。まぁ管轄処の話では済まされないことではあるが、この先長くなるので此処で切っておこう。
「”ではコニックさん問いたいことが一つあるのです。よろしいですね?”」
「おや、なんでしょう?天使を統べる貴方が私の心を読めないとは、不思議なこともあるものですね?」
「コニックさん…貴方、」
「”中立とはなんでしょう?”」
嗚呼、天使だからこそ、の問いだ。その言葉に、コニックは少し目を開いた後、中立とは、と口を開け喋る。少しフィズの目を逸らしたが、きちんと、背筋をなるべく伸ばしてやる。少し宙に浮いているので、見下げる状態にはなるが。
「特定の立場や意見に偏らず、公平でどちらにも属さず肩入れしないことです。何が正しいか判断をする際、感情に流されず冷静で、事実に基づき偏った見解を持たずに判断する。公平な態度をとることこそが、中立というものです。」
「”では貴方はこの者をどうしましょう?”」
「…それはいや、一つよろしいですか?」
ええ
「貴方は私が”天使としての中立”を望む者ですか?それとも私が”お父様のお子である一人の存在としての中立”をお望みになられる者、さて一体何方の方でしょうか?」
「”両方はよろしくないと”」
「ええ」
「”では両方お尋ねしましょう”」
っくくくく、貴方も似ましたねぇ?フィズさんは其処迄食う人ではなかったはずですが?
「ま、今不安定ですし、良いでしょう。いつかの楽しみとしておきましょうかね。そうですねぇ〜?…正直申し上げますと、天使として、でしたらこの件につきましては”消滅対象”として考えてよろしいでしょう。」
「っコニックさん!!!!」
乱暴に吐き捨てるように怒鳴ったコルンに、サワアとウイスが腕を掴み抑える。止める手を取ったのは、フィズだ。その眼は何処か、大神官の様な目にも見えて、ゾクリと背筋が凍った。
ー黙れ
大神官様から、そう言われている気さえした。
「”つづけて”」
「元を辿れば彼女はこの世界の人間。でしたらその担当の宇宙の、管轄対象。何処の宇宙でかは存じあげませんが、別世界の人間として移動出来る以上、外の神々と検討し合い、此方での判断で良いと言えば…消滅で間違いない。」
「”そうですか!でしたら”」
「ですが、それは尚早過ぎる。」
嬉しそうな顔が一変する。恐ろしいと思う、此処まで人は豹変するだろうか?これが都結が見続けた人間の姿か?誰を似せている。誰だ、誰を似せて己を打ちのめしてきたのだろうか?
誰に傷つけられた痛みを彼女に着せているのだろうか?
「当人は既に
「”ですが元の世界は”」
「だとしても!!…外の世界で産まれたのは明確な事実。例え血筋がどうであれ、何方の世界でも規律よく動く子。私の天使としての目からすれば、圧倒的な白です。消滅には寧ろ惜しい。きっと、世界を宇宙を、良い方向に導く子だと、私は想いました。」
勿論、前者として。
後者なんて、もう、鼻で笑える程です。
「お父様と笑ってくれたらそれでいい。以上です。ではこれで」
「”は!??!え?!!?それだけ?!?!?待ってもう五分!??!?!?!”」
ではこれで、じゃねぇ。
「っくくくく、っはははははは!!!」
「っふふ、あ〜〜〜最高ですね、あの子。」
「っふ、も、もう腹痛いことしないで下さい…!!!」
言ったでしょう?
「我々全員、同じ意見です。きっと、皆似たようなことを言いますよ?フィズさん。貴方も天使で、お父様のお子としてお生まれになられたら分かっている筈です。あの方が口を大きく開けて腹を抱え笑うお人でしょうか?」
「”それは”」
「いいえ、でしょう?それは貴方が私らの見解を貴方の時間を正しくするために拒絶するだけの、記憶です。紛い物ですよ。それに囚われては、それこそ”中立”の名が廃るというもの。」
ま、もっとも?貴方は中立から外れた神なる存在ですから、そこまで考えなくてよかったでしょうが?
「我々は長く貴方以上に過ごしている。…余り期待しない方が身のためだと思いますが?」
「”っぐ!!…以上です!嗚呼もう!カランコエ!?ちょっと聞いた話と全く違うんだけど!?”」
そう振りかえっていく、ふわりと出て行ったあと、身体は都結そのもので、そのまま地面に落ちる処をそっとコルンがうけとってしまう。その場所を見上げたら、彼女は既に何処にも居なくなっていた。まるで幽霊の様に消え去って。