逢いたい図案は頭の中3



「お帰りなさい」
『…ただいまもどり、ました。』
「事情、お聞かせ願えますね?」

そう言われ、こくりと頷く。


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「石、ですか。」
『最初近くに寄せられて痛くて、ちょっと怖かった。ドキドキしたけどまだ耐えて居られたけど、次痛くて、頭も割れそうで、首元が痛くて、胸も何かに締め付けられて、それで』
「もういいですよ。」

辛かったですね、すみません。そう言って背中をさすってくれて、安堵で涙がボロボロ出てくる。そう言っていると外からパタパタと音が鳴って扉が開く音がした。息を荒げたまま帰って来たのはアイティだ。

「都結襲われたってだ」
「…すみません、」
『あいて?』
「…うん、私だよ、都結。私、アイティ。」

分かるね?これは?

これは
んあ?????

『じゅ、に、じゅ?ん?????』
「せめて10以内になさいよ」
「えへへ数は見えるということは色だけか。という訳で全色取り揃えました。」

はいこの中で違う色はどれ?そう言って出すが、どれも同じだった。首を横に振って、ちらりと大神官の方を向いた都結は目を合わせた。彼の色だけは、彼だけは、残されていた。それだけで息を吐いてしまいそうになるのを止めた。

「(成程…ちょっと、どうしようかな。)」

事情は知った、恐らくというのもある。

「何か言われなかった?何かの血族とかなんとか」
『あ』
「あったんですか!?」
『似たような言葉は言ってたえとたしかノヴァ?』

”ノヴァ・ネラ”

「…ノヴァーリスがバレたかチッ流石にまずいか?いやだが」
「何かご存知で?」
「ノヴァ・ネラ。それは力を持った種族の名前です。正確には種族名はノヴァーリス・クラフト。新星なりし創造主とも言います。」
「…聞いたことがあります。かなり昔の話です、確かその種族はどんな姿も世界も変化させ、見せることが可能な種族だった筈。かなり知性も高く、人を欺き良い人のみ心を開いたかなり高い力を持った子達だった筈。」
「その通り。」
「ですが数十億年前に絶滅したと…まさか」
「我々はいや、正確にはこの子が血族としての生き残りであり、ノヴァーリス・クラフトの最古に伝わる王家の知り得る神に近しい存在それが」
「”ノヴァ・ネラ”、ですか」

そうだ

「ノヴァ・ネラは三種類に分かれる。攻撃・防御・回復、いずれかの特化に別れるけど、極々稀に全部扱える者がいて、その子は二分化されることが多い。余りにも力が強すぎてね。それでも偏りがでる。」
「今回は都結さんの方が偏っていた、ですか。」
「そういうこと。それに気付いた私は彼女からこういった類の記憶を抜き取った。所々穴が空いているのはその証拠。別に貴方に戻してもいいけど、それ程の精神状態で戻すと酷。」
「下手したら死にかねないから、出来なかった、と。」
「ですが何故我々らにも黙っておいでで?一度離れた以上伝えてもよろしかったのでは。こういった危険性も拭えなかったでしょう?」

それはそうだけども…

「もう遥か昔の話ってのは分かってたし、そんなコアなファン居ると思わなかったから」
「コアなファンて」
「それにノヴァ・ネラは貴方達で言う処のサイヤ人ゴッドの状態と変わらないの。少なくとも一人につき十二名程の力を持った子を」
「十二!?」
「流石に無理ですね。貴方達以外の生き残りは確認出来ていませんし、それ程の力であればもう誰かしらに使われてるが落ちでしょう。」
「完成されたノヴァ・ネラはどんなことも浄化できるし、どんなことでも叶えられる。生きた願い玉と言っても過言じゃあない。」

勿論代償は付き物になっちゃうけどね、それ故に奴隷化されちゃったのもある。

「攻撃系ならバフね。体力を強化したり、打撃の質を強化したり、継承もお手の物。防御系ならデバフ、相手に対しての効果を弱くするもの。回復系は」
「回復系は?」
「…消滅したものですら元に戻すことが出来る。」
「っそれは」
「だからこそ此方も管轄内、だった。」

じろりと睨まれた目にそっぽをむけた。

「消滅対象を易々と蘇生されたらたまったもんじゃないですからね。」
「惑星ごともされたらそら危険視もします、か。下手したら此方で処分も?」
「まぁ、それなりには。」
「引き取った処で精神面が強く強化されていたらいうことを聞かないからね。まぁ見たらわかると思うけど」

ああ〜〜〜〜
ちょ、なんでこっちみんだよ!!!

『こっちみんな!!!』
「いや貴方見て嗚呼と言わずしてなんといいましょうか。」
「ちなみに言うと、幼少期に時間止めて、とかの精神の保管もお手の物よ。」
「嗚呼貴方の場合は元々の種族からでの恩恵もあったんですね。そら上手い訳ですよ。」

こっちが手出ししにくいのも道理が分かるというものだ。

「ですが石は?」
「恐らく進化系のものかな?」
『何私何かの動物にでも進化するの????』
「そっちじゃないからね????」

でもにたようなものかな

「多分種族を書き換える者だと思う。色覚が出たってことはものによるけど、大体一色だけなら色が分かる筈。その色で大体の色占いが出来るんだけど。」
「何が見えますか?」
『いやだから見えないって』
「本当の特定された色だったりするし、それに起因する者によっても大きく左右される。例えばお父さんが好きだった石の赤色が、とかだったら父親の愛情とか、ね。」

目に見えないものや、大事にした想い出を主に力の源として受け取るから、その気持ちを持てば基本的にどんなことでも可能。

「攻撃特化なら身体の痛覚が。防御特化なら嗅覚が。回復特化なら味覚が。それぞれ異変が起き、一つだけのみ残される。」
「おや?目は?」
「ねぇ、都結」

貴方は何色が見える?

そう言われてそっぽを向く。もう答えは分かり切っていた。

『一つ聞いて良い?』
「いいよ」
『…、…それは、…それは』

そのエネルギーは消える?

「場合による。その子の質かな。元々個体値が高いならば消えにくいし、逆に小さいなら消えてなくなる可能性だってある。代償とするものだから、まぁいずれは消えてなくなるかもだけど……」
『”ダス・グリューンブラウ”』
「っあ」
『”どうしたらいいの?私、どうすればいいの?”』

何もドイツ語を全く分からない訳じゃなかった。都結は小さい頃から海外の言葉が気になっていた。だから少しずつ遊んで覚えてはいた。とは言っても流石に地方の方言混じりな言葉は分からなかったし、元々言葉も掻い摘んで聞いてた方なので、余り早い言葉は聞き取れはしない。

でも、ゆっくりならばわかるし、言える。

「”…いい?よく聞いて。それはね、冷静、自由、希望、儚さを象徴する者。清廉なる者の証なの。”」

真剣な表情のアイティが丁寧に話をしてくれる。本来色は赤や青と決まった色らしいのだが、浅葱色の様に混ざった色は特に特徴的で、決まりきった色なのだそう。

「”藍染は藍色に至る前まず浅葱色になる。このように浅葱色は「過渡期」「変化」「未来への希望」を示す者にもなる。”」


貴方の持つ場所はその位置。即ち、これは


「”貴方はノヴァーリスの変化になる希望の過渡期に位置するお子なの”」

それは、つまり


『私、エフェメラル、って、いえるって、こと?』
「都結」
『ねぇ、それって、さ?ほら、エルピスじゃない?ほら!あの子は希望を意味していた!ねぇ、全て繋がってる!!ほら、見て!ねぇみ』
「うん、見てる。見てるよ。」
『私、えらい?』

うん、偉いね。凄いよ。沢山見て来てそれでも一つを導いた。エフェメラルは、貴方の救世主だ。

『ねぇ、エフェメラル。やっぱり君は君だ。』

君は此処に居るべき存在だ。君こそが、この命その者でいい。そう言えば、違うとはっきり音がする。背後から、凛とした声がした。


「私は貴方でもあり貴方ではない。それは例えるなら月と地球のよう。一つだったものは二つになり軌道を描いてずっと位置するだけの存在。月明かりに照らしてやれるのは太陽があるから。貴方は太陽私は月なの。核は貴方。全ての惑星らは、貴方が居ないと成り立たない。軌道は全て太陽に引き寄せられるように描くから。」
『でも貴方は居ないと生きて居れない。』
「聞いて都結、ちゃんと話してやって。」
『”もっとも離れた私が?清廉とは遠くかけ離れたこの我がか?”』

浅はかだろうに。愚かだ。

『”これは私達の問題だ此処に居る者全員が違う”』
「…でも彼らは味方。1人で決して解決なんて出来ないのは貴方が一番分かっている筈よ。儚い瞬間すらも見つけた貴方が一番知っていること。」
『”でも”』
「怖いのは分かるよ。私だって怖かった…色が見えなくて、世界は真っ暗で。皆倒れちゃって、覚えてるでしょう?」

あの怖い日のこと。あれが生きれたのは貴方が光を見せてくれたから。

「今度は私が貴方を助ける番なの。私は灰色に染まりあがった貴方の色ともなるわ。儚いその瞬く間の間にだって入り込んでしまえるの。」
『そこにはないのに?』
「それは、」
『色が見えないままでいいのにね。』

そしたらいい。いずれにせよ石で変化は遂げている証拠だ。視覚それは、全てを知るというものだろう。恐らく攻撃・防御・回復を使え、他の四つ目の力だって持ち合わせる子なのだろう。その最後は分からないが。何処かそんな気がした。普通のありふれた人間でよかった。あの箱に戻りたい。あの時間が、いい。

選ばれなくてよかったのに。

そしたら貴方と共にまた息が出来たというのにな。

『…浅葱色が見えるよ。皆。』
「…浅葱色?」
『貴方の色なの』

ねえ、大神官様。

『』

口を開けて、ふと止めた。こんなことを言ったって、彼がどうなるか分からない。分からないことはしてはいけない。これは私の持ったルールだ。これを破るなんて、私には、出来ない。


記憶に残った彼が滲んでしまった。


ぼとぼとと、何かが落ちて行って、嗚呼、と嗚咽交じりに溶けていく



『(どうして私の記憶はこんなにも色鮮やかに残ってしまったの)』



貴方と共に、私も連れてって欲しかったのに。


そしたら私はこんなにも苦しくなんてなかっ

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「…落ち着きを取り戻して寝かせ付けてきました。」
「すみません、私が拭おうとすれば余計に泣かせてしまうので。」

いえ、そう言ったコルンに、大神官は少し困った様な笑みで礼を言った。先程の状態は、彼女の本心その者だった。泣きながら強く思った感情が、余りにも苦しくなって、思わず胸を掴んでしまいそうになったのを思い出して目を逸らした。いたたまれなくなったのだ。

記憶なんぞ、何時でも消せる。

それをきっと彼女も分かっている筈だろうが、もしも忘れていたら、どうかそのままでいて欲しいと思うものだ。此方に願われても許可なんて出せる訳がない。あれ程に鮮明で、あれ程に綺麗な世界を…この手で消し去るなんて、余りにも勿体なさ過ぎるというものだった。

どれもこれも煌びやかで、余りの綺麗さに思わず泣いてしまうかもしれないのを堪える程には。その世界はキラキラと光り輝く世界だった。大神官の表情も勿論見たことないのだが、都結の表情も見たことがない笑顔をしていた。眉を上げて、目をキラキラとさせ、これがいいあれがいいと指を指して手を取り歩く彼女。それに心を許し話をしながら歩いてくれる大神官。



もういっそのこと人間のままでよかったのに。

そのまま二度とこの世界に戻って来なかったら良かった。

そしたら何時までも二人は笑って手を繋いで居られただろうに。



そう思える程に、いつ見ても綺麗な世界だった。午後に差し掛かる雑木林の端を歩いていく二人の姿が、余りにも今すぐに消えそうで、でも目に焼き付けるには充分過ぎる程に鮮明で。都結の夢の中には出てこない癖して、彼女がふと思い出す時には鮮明に見えてくるのを、天使達は伝えていない。伝えたらきっと忘れると思ったから。

手を伸ばそうとして動かしては力を抜く。ひょっとしてその背中に手を伸ばそうとしたのですか?なら何故手を伸ばさないのですか。貴方の声は、彼に必ず届く筈。なのに貴方はその時間だけを大事にしてばかりで、未来に居る彼を追いかけるどころか声すら出さず、その場に手を伸ばすことさえしないまま生きて居る。

静かに泣いても彼は戻って来ませんよ。残念なことながら。


この目の前におられるお方は、私の知るお父様なのですから。

人の恋路なんて、知る由もないお人。それが


「…ですが、コルンさん?聞いていますか?」
「え?あ」

嗚呼、すみません。上の空でした…
気になりますか?

「え?」
「彼女のことです。随分と懐かれてますが」
「あ、嗚呼…そ、うですか、ね?」
「ええ」

余り考えているつもりはなかったのだが、嗚呼も真面目に真っすぐだと、こっちだって色々考えてしまうというものだ。最初は本を読めだのなんだの言うわ、なんなら重いだの言いながら何処かに連れていかれるのに驚いて階段からこけてしまったのを抱き留めてしまったりしたが…

そう言えば余り初対面では良い感じはなかった。

何だったら少し避けられたくらいだ。気分は大変悪かった。自分が何をしたのだと思って本も実は三日程読まなかったり飲み食いなんてしなかったが、流石に眩暈がした時は堪えた。一番堪えたのは彼女が真昼なのにボロボロと静かに泣きだした時だが…

午後の時間、決まった場所に座っては肩を落として静かに泣く。腹が痛いのかと問えば首を横に振り、何処が痛いのだと聞けばどこも痛くないのか、それとも言いたくない場所なのかは知らないが、ずっと首を横に振ってこっちを見なかった時だ。紅茶のカップと皿を置いて、横に座って浅葱色のタオルを肩に被って静かに泣くのだ。

空のティーカップに空の皿を置いた場所に。彼女は泣いた。真下には飲むだろうティーカップが涙を受け止めてくれていた。それが溢れそうになる頃には、その人が帰ってくるのを信じているのだろうか?もしくはそう願っていたのかもしれない。この器が満たされるまでは泣いてしまおうと。その先は?

その先貴方はそのお人を待つことはするのですか?

「随分と見入っている様に見えました。お好きなのですか?」
「すっ!?!??!」

馬鹿なことを言わないで欲しい。自分が見ていたのは、



みて、いたのは……




「…ええ、お慕いしておりますよ。」

貴方の傍に居た彼女の姿なだけであって。

私の隣ではないのですよ、お父様。

「貴方が手を引くというのならば、私が面倒を見ます。」






ねぇ、お父様。だから見てあげて下さい。





「そうですか、でしたら」




だからそんなことを、言ってあげないで下さい。





「よろしくお願いいたしますね。」






ぱたんと何かが閉じる音がした。それはまるで本を閉じるような


































































泡沫の白昼夢


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