逢いたい図案は頭の中4
「お身体はどうですか?」
『程々に』
「…そうですか。」
これは何色に見えますか?
茶色
…すいません、今茶色ではないんですよ。
『うそだあ』
「嘘です」
『だあああああああっちょ、コルンさん!?お兄さん何嘘ついてんですか!』
「貴方を笑わせる為の、と申し上げたらどうですか?」
なにを、
…ほんと、不甲斐ないですね。
「私は約束を守る方なんですがね。」
『え?』
「先に謝罪します。すみません、都結様。」
彼はきっと、記憶を取り戻すことはないでしょう。
…うん、
『しってたよ?大丈夫、だい』
「…っそれと、彼から伝言を。」
言わない自分を、狡い自分をどうか許して欲しい。額に指を置いた後、先程の通告を映像と共に伝えてしまえば、嗚呼と笑って嬉しそうにはにかんでくれた。
ああ、
「すいません…もっと早く、私が早く動いていたら」
『いいんだよ?いいんだよ。これが、これでこそ、一番良い。』
何一つ良くない。任せられたことからか、受け入れるのか、彼女が手を頬に置いて笑ってくれるものだから、手に力なんていれられやしない。握り締めたい気持ちを抑えつける。彼女が壊れてしまう。いや、もう既に
『なにしようかな〜お絵描き最近思いつかないからなぁ〜』
「外に出ますか?」
え?
私の元に来ますか?
「そうすれば此処に居る事なんてありませんし、彼は貴方を見ないと言っていましたからね。いずれにせよ此方におられる意味も必要性だってなくなるでしょう。貴方の業務的には其処迄焦るものでもありませんし」
そもそも今は言葉を覚えている途中ですからね。まだ、当てずっぽうな言葉だって幾らでもあるでしょう?貴方は誤魔化すのが上手いですからね。ご自身を守るための、いや…我々を守る為だけに作られてしまう、可愛らしくも残酷な嘘で。貴方自身が傷付くものではない。
そうは言ってもきっと、分かってくれやしないだろう。だから言わない。言う訳がない。こんな、
ー別に仕事さえして頂けたら構いませんからね。
こんな酷い夢は最早悪夢だ。さっさと目覚めさせてしまわねばならない。
『…そう、しよう、かな。でも』
「ええ、此方も準備しますので、数日後またお迎えに上がります。」
『明日でいいよ』
「…いえ、ですが」
『明日がいい。』
「………分かりました。では今から帰ります。時間が来ましたらお父様から、…いえ、此方を置いて置きます。光れば二回タップして下さい。そしたら私との通話が可能になります。そちらの首輪でも交流が可能でしょうが、こっちの方が早いので。」
…では、きちんとお休みしてくださいね。
そう言ってコルンが消えた場所を見て、ぼろりと涙が零れ落ちた。
『っふ、っ…っ、』
嗚呼、彼は私が思った通りのお人だった。
あんな綺麗な世界になんて、彼は入れるわけもない。ありふれた時間の中で、輪を持たずに一緒に歩いてくれるようなお人じゃないことくらい、最初から分かっていたことだろうに。どうして最初から見ないと思わなかったのだろうか。どうして彼の為にと動いてしまったのだろうか。人間じゃないから、って、みたのか。嗚呼違う
あの人が好きだったのだ、今も尚、好きで堪らないというのに。
『(あいたい)』
貴方に会いたい。あの日に生きていた、貴方だけに、私は生きたいと強く想うようになっていく。嗚呼今の大神官様をみてやりたいのに、彼はよろしくとコルンに伝えたのだ。それは事実上の、別れそのものであって。色も見えなくなった、きっとこれからお荷物になるだろう。何故私を消滅させてくれないのだろうか?天使らが止めたから?
こんなに痛いのならば、消えてしまえばいいのに。
”そんなにソレが要らないのならば”
『…?』
”私に寄越して貰えないだろうか?”
誰だろうか?白髪の長い女性が手を前に出してきた。横髪が鬱陶しくて前に落ちて来ているので良く見えないが、誰だろう。
”可哀想に…それ程苦しんで、胸も痛いと悲鳴を上げ続けている”
一つくらい楽になってもという彼女に、それは出来ないと突っぱねてしまう。要らないのではない、彼の中で眠らせて欲しいだけなのだ。これは”まだ使えるモノ”なのだ。私が使うものなのだ。
”ネヴァネセント”
『…ネヴァネセント?』
まるでエフェメラルみたいな名前だな、とふと思ったので聞き返してしまった。嫌な予感がする。手を口に当て抑えても意味がない。ニヤリと笑みが弧を描いた。身体が動かない、いや、動きたくないと言って言うことを聞いてくれない。いや、私が動きたくないんだ。彼女の言いなりになった方が楽だと、諦めている。
肩の力が抜けて、頭を上に上げることしか出来ない。腰が落ちて、座り込み上を向くだけの、状態。まるで誰かに呼ばれたかのように
【”おいでネヴァネセント情け深い中立を保つ支配者よ”】
手が伸びてくる。ゆっくりと、その手に眼をゆっくりと閉じてしまう。もう彼が何処にも生きて居ないならば、私がこの世界に生きる必要性はない。
「おや、紅茶が切れてしまいましたね。買いに行きましょうか。」
ふと思いついたかのように言った彼の言葉が脳裏を横切った。
嗚呼、彼が言う。
”何のつもりだ”
『…ご生憎様。……私は”まだ”其方側に行くなんて許されないらしい。』
まだ生きて居て下さい。私は必ず、貴方の元に戻りますから。
そんな声が聞こえてしまっては、一度待ってみる、というものだ。何度だって約束を破られたって、そんなの私の方がはるかに多いだろう。桁数を間違えられてしまっては困るというものだ。それに、エフェメラルもエヴァネセントも何方だって「儚い」という意味合いではあるが、中身のニュアンスが違うもの。
エフェメラルは一瞬ではないが、それでも長くは続かないものに対して使用される。例えば一日だけ咲く花(朝顔とかね)や短命な昆虫(カゲロウとか)にもよく使われるものだ。「短命だけど、ある程度の時間は存在する。」それがエフェメラル。だから彼女は一瞬と言える様な時間でも生きていた。
それは天使らが、という位置であるものであって、人間としたらかなりの長生きではある。とはいっても、恋愛しかも好きな人とめぐり廻って、となったら一瞬が続いていけば永遠とも言える長い時間に生きたと言ってもおかしくない。まさに一瞬が永遠となった意味の分からない終着点に降り立ったとんでも神様なのだ。一応天使と人間のハーフだったはずなのだが、だな。
それに対してエヴァネセントは、一瞬のうちに消えてしまうものに対して使用される。例えば霧や煙、虹のような「ふわっと現れてすぐに消えるもの」のイメージだ。虹は儚く、現れたと思ったら視界からすぐに消え去ってしまう。煙や霧だって、やがて消えて溶けてなくなってしまう。全体としても、個々の形としても見わけも付かなければ、ずっと維持なんてしてやしない。ましてやあの類は永遠に維持しない。度重なる事情がぴたりと一致したことで初めて現れたもの。それこそがエヴァネセントなのだ。
もう一度言う。
「短命だけど、ある程度の時間は存在する者」がエフェメラル。
「ふわっと現れて、すぐに消え去る者」がエヴァネセントなのだ。
『私は未だ”エフェメラル”なんだよ。』
腕を手で掴み、髪色が変化する。青い瞳青い髪色、まさしく、彼女の生き写しかと思える程の形を保った。そして声も変化する。
『”名の在るだろう神の一欠けらよ、何故この者を狙う。何故この者の感情を喰らおうとする。”』
「”…それを知ってお前は何がしたい。何をしようとしている。そうしても其処に居ることは分かり切っておるというのに”」
『”我々は【タルパ】で在る存在の末路。この子を傷つける者は誰一人として許しはしない”』
「”自分で食らうから守るの違いでは?”」
まぁいい。
「”今はノエシスの方だ。ノエマは現在眠っておるがな。”」
お前の状態に寄りけりで二人は現れる。もうイエローカードが出ている以上、戻れるなんて許されはしないがな。それでもお前は戻ろうと願って止まずに其処に存在し続ける。憐れな者だ、二度と叶えられない事情を今も抱き続け泣き叫ぶことなく静かに息だけし続けているとは。仮停止とは浅はかにも程があるものだ。
生きても無意味ならば、明け渡してしまえばいいものを。
そしたら楽になって何一つ考えなくて済むというのに!
『”この子は生きようとしている”』
「”はっ!その状態ででか?…あやかしいことを言うでない。嘆かわしいにも程がある。”」
『”例え約束を破られようとも例え忘れ去られようともそれでもこの子は此処に生きて居るし生きようとしている。貴方の場所から逃げなかったのは、貴方と少しでも会話がしたかったから。”』
「”だが出来ていない。お前が出て来て引っ込んだ。それが現実そのもの。”」
『”今は無理。でも間違いなく先は見据えている。その為の私であり、その為の時間ならば。私はこの子の身代わりにだってなってやるとさえ思えている。”』
「”まるで今迄嫌だったと思っている言いぶりじゃな?”」
だってそうだもの
『”私は余り外に出ないようにしているの。正確には此方側では、の話だけれども。”』
「”色が、か…ふむ……”」
『”ひとまず外れてくれない?流石に子供達が凄く凄く、警戒し続けていて困ってしまうの。”』
外も、中も。
そう言えばため息を吐いた神らしき人物が分かったと肩を落とし消え去ってしまう。
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「…お帰りエフェメラル。良く追い返してやったね。」
「…いえ、良い動きとは決して言えません。」
すみません、もう少し感情を抑え対処が出来て居れば良かったのですが、如何せん自我が強すぎて、彼女よりも前のめりになってしまいます。
いやいや、それでいいんだよ。彼女も穏やかに眠れている。
「タルパとしては充分な働きだろう。勿論こっちが乗っ取るのは掟破りにはなるが、それでも意思があるかないで大きく違う。」
「…そう言って頂き光栄です。ルトラール様。」
「堅苦しくしなくていいよ。今はパパでもなんでも言ってくれたらいい。」
じゃあるとるとかれー
はたくぞ???
「っはははは、まぁまぁ良い出来じゃない?」
「とは言っても現状何一つ変わっていませんよ?」
都結自体は存在していますが、それでも彼女自ら名付けされました。正確には”元々の名前が露わになった”という意味合いではありますがね。
「いずれにせよ危険信号で間違いはありません。…余り彼女を外に出したくないのですが、」
「天使らがソレを許しませんから、ねぇ?」
コルン
…こっちに聞かれても困ります。
「我々はあくまでもこの子の意識に居る者達。故に貴方方と同じ【タルパ】でほぼ間違いないのですからね。」
「とは言っても彼等の言い分は分かりますよ。このままこの子自身が外に出なければ、一体生きて居るのかどうかすら分からなくて不安な処がおありと見受けられました。」
貴方がしたことも、彼等は知っているでしょうからね。
「分かってる。恐らくこのままいけばコルン様辺りか、或いは誰か天使が来て事情を誰かに、いや話さず様子をみるだろうしね。」
「いずれにせよ、此方で動くなんてことはしない方が良い。ましてや我らが主の眠りは浅いですからね。回復が出来ないまま動き続けては目覚めてを繰り返している間に動いて居たら、彼女もたまったもんじゃないでしょう。」
「寝たいのに周りが煩すぎて寝れない、とあればストレスもたまるでしょう。」
「そう言う問題じゃあない気がするが…」
まぁいいか。
「ところで、例の件は順調かい?サワア。」
「ん?…嗚呼、例の件でしたらもうほぼ完璧になっています。後は時期を見計らって出してやるくらいでしょう。この子は大変感受性に長けたお優しいお子ですからね。」
きっと良い方向に向かう事でしょう。向こう側の我々もきちんと面倒を見てくれていることですからね。
「此方の心配はご無用ですよ。消えてしまったとしても、また戻ってきます。」
「それはまるで、儚い一瞬に生きる春のように?」
「いえいえ、春はもう過ぎ去り夏になっています。」
そして秋が来て、今は冬ですかね?何処に居るのか私も検討がつきませんが。
「少なくとも此処は春だなんて遥か遠く離れた場所であることは間違いありませんし、きっと到着地点は春なんて場所に収まることは出来ないでしょう。」
「今迄がデモンストレーションだった、ということか?」
「その可能性は拭えませんね。」
春が来る。貴方と共に春を過ごす。サワアと一緒に過ごしていたエフェメラルが、サワアに対して腕を組み会話していたが、エフェメラルがそっと組んでいた腕を腰に当てると、ちらりと眼だけ見ていたサワアも他の者に眼を向けた。
「我々天使らは依然として彼女をケアに動きます。貴方方は」
「勿論攻撃するぞ!!!!」
「だから攻撃をする前に考えろと……」
「まぁまぁ」
頭を抱えるというか、ぱちりと音を立て、頭を手で打ってため息を吐いたコルンに、背中に手を伸ばし軽く叩いてやるしか出来ないサワア。この世界ではコルンの方が弟だが、現実世界ではコルンの方がお兄ちゃんだったこともあり、少々此方の感覚も変わってきつつはあるが、それでも維持されているのは、何より都結が望んでいるからこそのこと。
この白い世界のど真ん中で、エフェメラル達は直立立ちをしたまま会話していたのだ。
「とりあえずエフェメラルはこのまま外の人間と交流を図って下さい。何かあれば我々の伝言もお伝え願えると助かります。」
「分かった。」
「アニュラス様は周辺の警備を。場合によっては侵入者や敵を感知したら攻撃をしかけても構いません。」
「了解。」
「彼女自体を守るのはエフェメラルを筆頭として、付随するのはルトラール様とカランコエ様お二人にお願いします。」
「ん?エフィオルやプラティアじゃないのか。」
「お二人にはエフェメラルが交代で見られている時間が長ければ反応を示す信号を司って頂ければと。」
「嗚呼それなら構わない。」
「フィズ、ティーナ、エル、アンダルシア以上の四名は攻撃の型に付随させます。攻撃にはティーナ、防御にはフィズ、回復にはアンダルシア、一時的な脳の切り替えにはエルが担当なさって下さい。」
「それは別にいいが、切り替えが必要か?」
「あくまでも一時的な判断です。」
この子が出来れば貴方方も捌けて貰って構いませんが、恐らく繋げた方がより手を打つのが早いでしょう。
「シャトリューズさんは此方側の管轄に回って頂きます。伝言役と言う処ですね。本来ならばフィズさんと交代、としたいのですが」
「如何せんシャトリューズとしての回復がイマイチ、か。」
「そういうことですね。後は単純に華を持ったフィズさんの時間が長いですし、戦力としたらそっちの方が楽かと。」
「アルトリアやカミカゼ、シュピルト様は?」
「アルトリア様とカミカゼさんは外側と内側の管轄をお願いしたい。アルトリア様は内側のケア、誰かしらに何かを言われたらすぐに対応なさって下さい。大丈夫だと辛抱強く声をかけて頂けるだけで充分です。手を出すとあればエフェメラルらに一声かけてやって下さい。」
「わかりました。」
「カミカゼさんは逆に外側のケアに。回復を回す子らのサポートですね。後は攻撃の型、ですかね。貴方は天使でもあります。身勝手の極意を一度でも習得したこの子の型は天使に属していた貴方がもっとも適任。」
「他の子は天使としての業務はほぼ携わっていなかったから、か。」
「ええ」
ならいい。
「ではシュピルト様は」
「危険信号を強く出し、尚且つ此処に居る全員がほぼ全滅、エフェメラルも半分を切った緊急状態のみ活動する。」
最終手段の奥の手。
「場合によっては此方自らが攻撃をし、殺害をも顧みない位置に、ということですね?」
「…お手を煩わせるつもりはありませんが、そのお考えで。」
「分かった。」
では解散。そう言ったサワアの言葉により、サワアらも綺麗に消えて居なくなり、残されたのはエフェメラルやティーナ、ルトラールそしてシュピルトの四名だけになった。
「それにしても面白い話になってきたな。こいつ起きてるんだろう?」
「えぇ、現在も寝ていません、寝たら我々活動範囲外ですからね。」
「【タルパ】とはいえ、知っているものの識別が少々違う様なきもするが、イマジナリーフレンドか?」
「いいえ、そっちはまた別ですからね。」
イマジナリーフレンドという言葉があるが、これは幼少期にそれも自然に生まれ出ることが大前提であり、気が付いたら其処に居た、というものが対象者になる。会話や遊び相手としての役割を持ち、あくまでも本人の完全なコントロール下にいるものだ。想像すれば自由に動かせる。ただ幼少期に、というのが肝であり、エフェメラルらは此処に管轄されていない。
先程ティーナが言ったタルパとは、自分で自分の中に架空の人物を作った者の名前だ。例えば現実世界に居ない孫悟空を心の中に作り出す、これも立派なタルパという位置付けで間違っていない。孫悟空を会話させたり、自由に動かしたりする。これがタルパだ。そしてこれが自分から動き、自分という自我を殺し乗っ取る、という危険なこともあり、本来タルパは推奨されない。
意図的に作られ、独立した意識を持つとされる存在。それがタルパなのだ。
故にエフェメラルらはタルパに位置している。
「ルーシーらが若干タルパ未満って所でしょうかね。故に掟からは離れているようにも見えた。」
訓練して育て上げる、まぁ意識的に育てる為大人向けイマジナリーフレンドと言ってもまぁ間違ってはいないだろうが、者が違う。こっちは自律性があり、作り手の思考から独立した行動を取ったりする。今みたいな状態も、割とタルパ的な活動と言ったものだ。それに消えにくい。意識的に消さない限りは存在し続けたりする。テレビのリモコンでスイッチをきちんと切って貰わないと、何時まで経っても電気代が浮いてくれやしないのと同じで、エフェメラルらが維持すれば都結の精神がすり減り続けてしまう。
その為本来は切って欲しいのだが、それ以上に傷付いている以上、テレビのリモコンを切ったら泣く赤子同然の状態ではあった。一部の人間はタルパと会話すると自分とは別の人格が応答すると感じることもあるらしく、その作用を使ってエフェメラルらは動いている。
「”乗っ取らない”」
この都結の中で作られた者達が全員守らねばならないもの、掟がある。このタルパでの掟だ。言うならば「タルパの掟」とでも名付けてしまえばいいものだろう。
「【”創造主を殺害及び完全な乗っ取り”】ということだろう?」
「ええ、後は【”中立”】というものですよ。」
こっちはあくまでも彼女が信号を出してから動く者。勿論エフェメラルが出たのは都結自身が信号を出したからです。咄嗟とは言えど、出なかったわけでもない。都結自身が眠っているのが証拠だ。本来元気だったら起きているし、人が来たら切り替わって対応をし、こっちは軽く消えて居なくなれてしまう。
元々タルパはいない方が良い。現実世界で生き抜けられないから作られた所謂精神状態を保つ為の精神安定剤なのだ。あればいいが、長く持って良いというものでもない。いずれは自我を忘れる原因にだってなり得るのだ。それにタルパ自体、現実世界でおすすめされないのは、この掟由来というのもある。
タルパはゆくゆく自我を乗っ取ってしまう。
それが現実起きているのだから、タルパ作りは推奨されない。精神医が進めないのはその危険性をよく知っているからだ。攻撃性がなかった子が、攻撃的になったりする。それはタルパ由来だから、というのが現実あるのだ。故に推奨しない。言わないで知らないままで、を貫き通す。まぁ気持ちは分かる。だが、この子は賢過ぎた。
周りを見渡し、自分との距離を測り続け、見誤る程にまで、分析をし続ける子なのだ。
「我々はあくまでも精神に位置する者達。確かに彼等に呼ばれでもしたら信号を受取り、外に出て会話も出来ましょう。ですがそれに慣らしたら」
「あいつが出なくなる、か。」
「場合によっては二度と醒めない可能性だって考慮されます。エフェメラルが一番良い状態ですし、何より他の子達に良く思われやすい性格をしていますからね。」
「隠れ蓑になっていたのが、本当に隠れ過ぎて忘れ去られる、なんてあってはなりません。」
あの子は良い子だ。それを外側の人間らも分かっているので、其処迄心配はしていない。寧ろ都結を外に出してくれるなんて子は今まで居なかった。自然と目を醒まし、自然と歩いて外に出る。それが出来るのに、どれ程こっちが苦労したことか…
「あんなにあっさりされると、骨折り損のくたびれ儲けとやらになってしまって此方としては遺憾ですがねぇ〜〜〜」
「まぁやってきたからこその今、でしょう?余り深く考えない方が賢明ですよ、ルトラール様」
「恐れ多いことを申されないで下さいシュピルト様。我らの創造主でもあろうお方が一体何を仰る。」
「こっちは後付けみたいな者。君こそが創造主とも言えるのでは?」
君は元からいた。この中で最年長、違わないだろう?
…それはま、そうですが
「なら君の指示に従う。先程はサワアさんが自ら名乗り出ないと話が進みそうになかったから態々言ってくれただろうが」
「…善処します。余り期待はなさらないで頂けると。」
「それこそ善処しよう。では私もこれで、エフェメラル」
「なあに我らの主」
「会わないようにしような」
そう言って軽く額にキスを落とし、本当に消えて行った彼女。それに対しそうだねぇと間延びを返してやるしかエフェメラルは出来なかった。