逢いたい図案は頭の中6



「も〜!ネヴァったら何時もそんな形して!もっと寝るならベットで寝てって何時まで言ったら分かるの!?」
『ええ〜〜だってここきもちいいから…』

そう言ってぐったりと寝ているのは、真っ白な髪色をした子だ。目は透き通った青い目をしていて、神の力を持った子、その者だった。青い髪色青い瞳を持った子が、乱暴に白い髪の毛の服を掴んで引きずりだそうとするが、重さを増しているのかびくともしない。

息切れる中、ケタケタと笑っている。も〜ネヴァと叫ぶ子に、メルが怒った〜と笑いだすネヴァと呼ばれた女性。走り出した子の先には、それよりも深い青を染めた男性が居て。

「おっと、っふふふ、元気そうでなによりだね。ネヴァネセント。」
『あ!メルのお父さん!こにゃにゃちわ!』
「っはは、こにゃにゃちわ!随分と古い挨拶を覚えているんだね?それも親友に使うことを分かった前提で言うとは。」

君も可愛げがあるものだ。
えへへ!っきゃ〜〜〜!!!
全くもう、父様!?

「彼女を甘やかさないで下さいませ!その子ったら気を抜いたらすぐにでも元に戻るんですよ!」
「まぁいいじゃないか。これくらい可愛げがあった方が、きっと愛する者に愛され続けられることだろう。」
『あいさするもの?』
「愛する者、だよ。君のことをずーっと見てくれる子のことを言うんだよ。」
『此処に居るよ?』
「まぁ親御さんは分かるが、また違うものだよ。」

僕やエフェメラルみたいなものとも、ね。
ふーん

『まぁいいか!私に今は関係ないってことでしょう?ルトラール様!』
「…嗚呼、勿論。”今は”だけれどもね。」

いずれはその世界に入り込むことになるというのに、この子は全く点で分かっていない。分かろうともしていない以上、それ以上言うことはないだろう。ルトラールと呼ばれた男性はため息と同時に肩も降ろした。今日は良い天気で、散歩にはもってこいだった。そんな日を狙ってか、この神様は下界に降りて来る。

「それにしても次世代の王女がそんなにも心配かい?折角神様になったんだからこんな惑星から早く出て行けばいいものを。」
『そう言う訳にもいかんのですわ。向こうで仕事しても暇が長いとね、窮屈で仕方がなくって。』
「ホームシック治療がてらの休息、か。」

そう言うことだ。身体を地面に突っ伏せていたと思いきや伸ばし始める。起き上がる準備運動だ。彼女の心掛けている小さな頃からの動きらしい。全く、これで起きれるとは意外なものだ。これでなくとも起きて欲しいものだが。

「だけどまさか”自慢の妹”が神様になるとは思わなかったよ。」
『言わないでよそんなこと。家で言われて外でも言われて私は缶詰になりそうだよ。』
「外に出ようともしない奴が一体何を言う。」

エフェメラルとエヴァネセントとは姉妹。エフェメラルがお姉ちゃんで、エヴァネセントが妹だった。目の色は互いに青い、それは確かに血の繋がりを示し合っていた。輪なんて持たない者達の集い。輪を持つのは、あくまでも彼女の中でのみの、世界であったのが示される程に、此処は現実存在していた。


そう、エフェメラルらは現実に生きていたかつての仲間でもあり、家族だったのだ。


「だが私も意外だったな。するならエフェメラルが早いと思っていたんだが。」
「天使様らも狡いよね〜選別掛け方。」
「明らか貴方の場合外に出たら二度と帰って来そうにありませんからね。」
『ルメリア母様!』
「お元気そうでなによりですよ、エヴァネセント。」

息災ようで、そう声をかけて勢いで身体を起こし走って駆け寄るエヴァネセントに、余り急ぐんじゃないと注意をするルメリア。白い髪の毛の彼女はふふっと笑って、赤い瞳を光らせていた。

「それにしてもノヴァ・ネラとしてよい働きをしていると神官様らからも承っておりますよ?この調子でいけば、時期全王の腹心として力になって頂きたいものだ、とも。」
『ふっ腹心!?!??!?!?!』

腹心、とは、主にリーダーが特に信頼する側近のことだ。偉い人の傍に仕える助言は勿論のこと、攻撃やらの手を任せる、相棒の上下関係位置とも言える場。信頼がないと意味を成せない、報復なんて考えないだろうという者こそが、その位置にいれる。

「えぇ、ノヴァーリス・クラフトとして、非常に感銘高いお言葉を頂いております。」

どんな姿も世界も変化させ、見せていける種族。かなり知性も高く、時には人を欺き、その力を本当に与えて良いのかどうかを判別し、良い者のみ心を開き世界を見せれる、高い気を持った上に力を持つ者達だ。実際王族ではない。

「だがアプリシティ様の組み合わせだろう?光栄極まりないことだろう。」
『嗚呼アイティのことか!!』
「「だからアプリシティだって言ってるでしょう/だろうが!」」

そう両親に怒鳴られたエヴァネセントはそそくさとエフェメラルの影に隠れてしまう。そっと目だけ見ている彼女を他所に、ため息を吐いて頭を掻きむしりながらも、背中を壁に付け話を続けた。

「にしても未だに信じれんな。あの古来から受け継がれている王家の妹君とお前が合瀬をしていたとは。」
『あいしてた?』
「合瀬。妹よ合瀬だって。お姉ちゃん泣くよ?」
『泣き喚けばいいと思いますですはい。』
「何処でそう言う言葉を覚えてくるんだお前は。」

そしてアプリシティ様に言っていない…訳もないか、嗚呼もう胃が痛い。

泣き出すルトラールに、ルメリアやエフェメラルは苦笑いをするしかない。

「それにしてもお前まだ力が宿らないのか?」
『…うん。それで迷惑かけちゃってて、それで。』
「儀式ではとんでもない形出ちゃったから、そのままだったしねぇ〜。」

儀式、それは種族ノヴァーリス・クラフトらが成人の日に行われる時のもの。次の世界そのまた次の世界での大体三回くらいでの未来を見据えた力を示すもの。神からの信託と言っても過言ではない特別な儀式での、結果を話していた。エフェメラルが出した答えは「刹那に生き抜く者、故に攻撃と回復」の加護を授かった。本来二つでも異常であり、本来ならば彼女が選ばれる者になり得るハズだった、が。それの上をいった者が、この目の前に居る者だ。

「まさか全部当てはまるどころか、過渡期に位置するとは…」
『過剰過ぎるこの身余る不思議なもんだよ。』
「あんたの言葉が既に不思議だよ……」

まぁ言いたいことは分かる。要は「自分なんてそんな恐れ多い。」と言いたいのだろう。色々な感情が最初から入って言葉として成り立たない。まるで泡のようなものだ。すぐに出ては消える。言葉にまでしなくていいのにも関わらず、だ。まぁこの子の場合言葉にして泡としてはじけさせ、脳内から消し去るのが目的なのだろうが、余りそれに頼ってばかりでは、成長どころか未熟で終われば良い処だろう。


「だが、まさかお前が最後の力である〈維持〉を持っていたとは。」


エヴァネセントは攻撃は勿論のこと、防御、回復だけでなく〈維持〉を兼ね揃えた存在だったのだ。

『別に隠し持ってたわけじゃないよ?泥棒でもあるまいし。』
「いや何も其処迄は言っていないが…」
「本来王家が〜とか言いますが、我々辿っても王家の血筋なんてこれっぽっちも持っていなかった筈ですからね。」
「とは言っても書面だけでしょ?記憶廻廊石や廻廊樹林の中に入っても正確なことは言えない。彼等の方が知識も力も上だった筈だし、隠されていることだって」
「エフェメラル」

それ以上はいけない。そう言いたかったのか、ルトラールが言えばごめんなさいでしょげ何も言わなくなる。模索は厳禁だ。

「維持は防御や攻撃らを凌駕する存在。一つでも異常なんだが…お前の場合全部揃った上での、だからなぁ〜〜〜〜。」
『特別なんて要らないもん…私はただ、皆と一緒に居られたらそれだけで、それだけで良かったのに。』
「…大丈夫、もしも辛い時は私を思い出して?そうだ!父様や母様も思い出してよ!この小さな”コルン”も一緒に!」

そう言えば白黒の子犬がワンと吠える。頬が茶色に染まっており、何処かしらに茶色も混じったその子は、走ってエヴァネセントにとびかかって来た。元気だねぇと言って戯れているのを見て、ルトラールとルメリアは互いに見合わせて肩を落として笑い合った。

『も〜エフェメラル違うよこの子は”コロン”だよ!ころころコロン!ころんくん!!!!』
「最初パピの助とかどえらい名前を付けようとした馬鹿は一体どいつなんだか。」
『こいつです!!!!』
「違うそっちは犬だろうが。お前だよお前。馬鹿じゃないのか。」

馬鹿でいいのにな。

『そしたら神様も選ばなかったのに。』
「エヴァネセント…」
『…帰りたくないよ。』
「…また帰って来てよ。此処が、帰る場所。ソレで良いでしょ?」

其処じゃなくていい。そう言ったエフェメラルに抱きしめられて、うんとしか言えなかった。小さな子犬を抱きしめた力が少し強まった。いつもならば嫌がる子犬も、何処か察していたのか何も言わないでじっとしてくれている。暫くして、離れてしまえば、犬もばたばたと暴れて腕の中から解放されたがる。広げれば下にトンと音を立て降り何処かへと移動した。もう大丈夫だと思ったのだろうか。

『わかった』
「ふふっ、まだまだ甘えたちゃんね?」
『煩い煩い煩いやい!甘えるだけでも有難いと思いやがれ!』
「だから一体誰から教わるのそういう言葉。」
『大体あっちから』
「方角言われても」
「あ〜アンバーか?」
「それで何故分かる。」

しかもアンバーとは、ルトラールの親友でもあり、エフェメラルらが小さい頃に面倒を時々見ていた子だ。男性で、良い近所のお兄ちゃんだと思っていた彼女等でも特にエヴァネセントが懐いていた者。確かに彼は少々口が悪いので、知らない処で言っていてもおかしくないし、まぁ喋っている状況を思い出しながら噛み砕いて覚えたのだろうから、彼は実質被害者で間違ってはいない。まぁこのままいけば被害者よりも酷い惨劇になりかねないが、


面白そうなので放置あるのみ。


そう思ったルメリアは、案外悪魔でもあった。この後勿論、酷い結末に行くし、それに高みの見物で「またお姉さん酷いことをする!!!」ってアンバーからの悲鳴を被ることになるのだが、それはまた、別の話である。


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「次は何時の帰りになりそう?」
『分からない。力が出るまで棺桶に入るかもしれない。』
「ちょ、かんおけ、て。縁起でもないこと言わないでよ。」
『でも…覚悟はしておいてね。エフェメラル。』
「…うん。勿論。」

この世界は何時だって分からない。次何が起きるかも、だ。指を立て、契りを交わす。ポーンっと言った音が立てば成立だ。ぷちっと何かが千切れた音は約束が果たせれない音。何方かが約束を破り、罰を受けるというものになる。この仕来りはかなり怖いもので、来世やらを続けていくため、正直してはいけない禁忌であった。

だが、していないといけない気がした。そんな時に、決まりきってエヴァネセントはしていたのだ。妹の可愛らしい頼みとあらば、そんな禁忌も快く承るというもの。エフェメラルは今までの記憶を思い起こしながら彼女の背中を見届けていた。王家の子が来たのだ。軽く話をして、会釈をし、会話をするも端的だ。

次は出来るようになるまで帰らない話が出る。顔が曇る。あの力は精神状態が良くないと出来ないのだ。正確には、「その受け持った場所の位置に正しく認知した上で辿り着くこと」で初めて効果が発揮される。一見此方からではただの石ころの群れに見えても、場所を変えれば大きな花を咲かせたように見える。場所を移動して、初めてその美しさを知ることが出来るのと同じようなこと。

特にエヴァネセントは両親らからの期待も決して低くはなかった。儚い時間の名前はこの種族での決まりきった名前でもあった。何時誰かに拉致られるかわかりゃしない。まだ神官様らの力により、守られているベールもいつまで持つかわかりゃしないが、外の世界では基本的に帰る子は限られていた。1人で出た子は、未だかつて帰った子など人っ子一人いやしないのが、現状。

「それでは我々はこれで。」
「ええ、おやすみなさい。」
「そちらも…良い夢見を。」
「ええ、良い夢見を。」

見送るなんてしない、それが王家だ。遠い背中に、アプリシティは何もみない。彼女もきっと、上手くいっていないのだろう。此方側から言えることなんてない。だから言わない。ソレで良いのだ。


維持はしていいもの。


エフェメラルはそう思いながら、じゃあねと手を振った。


「またね」
『…うん、また。』

ねぇと言われて足を止め振り返る。其処には寂しそうな何時もの妹の姿が見えた。手を伸ばした先が宙に浮いていて止まっている。

『また会っても良い?怒らない?』
「…えぇ勿論。何時だって、貴方の中に生きてあげるわ。」

それは本心だった。貴方がもしも死にたくなくて死にかけているならば、私は救いの手だって差し伸べてやる覚悟はあるし、なんならその身を庇う覚悟だってある。だがそれをすれば、生き残る貴方は泣いて縋り続けてしまうだろうから。だからしない。だから遠くから見守ってやることしかしないのだ。姉はひもじい思いをしながら細々と暮らす。それでいい。その時間を、妹にもさせてやりたかったのだが…そうは上手くいかなかった。それだけなのに。


それだけなのに、どうしてこんなにも胸がざわつくのだろうか?


『…そっ、か。うん、わかった!じゃあまたね!』
「っあ、ちょっと」


そう言っても彼女の耳には入らなかったのだろう。行こうと言ってちらりと彼女が此方を見たが、目線を逸らしたことで良いと判断されたらしい。次の瞬間は誰もいなかった。



「…エヴァ、お願い。神様…どうか、彼女を守って。」


最古に生きていたであろう神々に、星に祈りを捧げる事しか出来ない。この惑星に初めて生まれたであろう神様。兄弟の神様だ。兄と妹の組み合わせであり、感情等の精神を司る者と、物体的等の体感を司る二手に分かれていた。その二人が初めて一つに合わさった時こそが、本来の神として選ばれし存在であり、我々の力はその授かった一欠けらの紛い物に近しい者になっていた。




「”ノエシス”様そして”ノエマ”様」



どうか妹を、そして王家である彼女を、守り導いて欲しい。居るかどうか分からない神に暫く祈りを捧げたあと、エフェメラルは家に帰ろうと後ろを振り返った途端だった。

「何処へ行こうというのだね」
「うっっっわ!!!!!!!!!!!」

嗚呼其処迄驚かせるつもりはなかったが…すまん。
い、っえ???

「は???え????あ???????んん?????????????」
「理解が追い付かないのか。可哀想に。一体誰がこんなことをしたというのだ。」
「お前だよお前。まごうことなきお前だよ。」
「ブルータスお前もか」
「それはお前の親友だろうが。」

そう声が聞こえて来た場所は、先程まで見ていた方向からだ。しりもちをついた状態で振り返れば、身長は自分と同じか、下手したら低いくらいの女性が出て来たではないか。対して先程見ていたのは結構それなりに身長は高かった。こっちがノエシスかと思えばどうやらこっちがノエマらしい。しかも男性だという。い〜〜〜や、ややこしぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。

「っははははは!!!お前良いキャラしてるじゃないか!…気に入った。」
「気に入られちゃった〜〜〜〜って追い付いてないからほら落ち着くよ。」
「嗚呼すまんすまん。急に出て来て悪かったな。ってこれは言ったか。」

いえいえ、と答えを返すしか出来ない。立ち上がれるかと手を出したので、ご厚意に甘えるしか出来ないというか、拒絶なんてしたら罰当たりも良い処だろう。エフェメラルはそっと手を取り起き上がって礼を言えば、いいと笑って返された。

「身長が高かろうが低かろうがどっちにでも成れるから正直私はノエマでもあるし、ノエシスでもある。初めましてお嬢さん。我々の力を引き継ぐ可愛らしい人に紛れた神の天使よ。」
「神の天使、て。」
「おや気付いてなかったか。君の末は元天使と神の間だよ。」
「は!?!??!?!」
「なんだったら神は元人間だしね。」

まぁそんな話をしに来たわけじゃあない。

「短く言えば、君の妹さんには恩がある。正確には君に、ではあるし、その君の生まれ変わる前のそのまた前のまた前だけどね。」
「三回忌、」
「おおよく知っているね?そう、三回忌だ。」

…祖母から聞いたことがある。その昔、神々との連携が親密だった頃の話だ。約束を誓うというのも難しい為、じゃあ魂に刻み込み時間になったら願いを叶えるシステムを作ったのだそうだ。例えば一度目の子がAという子だとしよう。その子がBを助けたとする。Bは恩があると言ってもAが幾ら言っても言うことを聞きやしない。

其処で「何時かその日が来るまで恩を維持してもらう」というシステムを作ったのだ。なんともまぁとんでもない贈り物である。出来れば忘れ去って欲しいし、其処迄するならその場で適当に願いを叶えて貰えよと思いもするが、それ程で事足りないからというシステムでもあるのだ。致し方無いというべきか否か…。

一度千切れば、二度目の人生でも、三度目の人生でも別に何時だって願いを言えばいい。ただこれには限度と、後は意味があった筈だ。


「…あの、私は其処迄持っていなかった筈、単なる願いごとでした。ましてや儀式上のことはしていない。」


そう、流石に願いが何処か分からないので、必ず「儀式をしたうえでの頼み事」でのみ反映されるというものだった。それにその日は新月と満月の間に位置する半月で、真夜中に位置して居なければいけないし、惑星の中心と中心の半分の位置に設立されている建設物のど真ん中に居なければならなかったはずだ。

「あの移動は一体何で行われている?」
「え?あ、あの移動?テレポーテーションのことですか?」
「ああ」
「えっと、たしか意識を深く念じて別の所に…」
「もっと簡単に。」

もっと?どういうことだろうか?そもそも何故この者達が出て来たのかすら分からないのにそんな問題今考えている暇も余裕も一欠けらどころか微塵もないのに、何を言い出すのだろう。

「場所の移動?意思?い、」
「確かに僕らは最古の神々だ。」


違う、合っている。

しくった、此処から王家がすぐに撤退するのは意味があったのだ。どうして今迄気付かなかったのだろうか?愛想が無いのではなく、彼女らに負担をかけないようにしていたのだろう。何時だって願いは何処にだって生きれるとは限らない。人の命がいつ終わるかも分からないように、願いだって何時までも持ち続ける訳でもないのだ。


嗚呼、しくった。

なんてことを、してしまったんだ私は。




此処は神々が本来願いを捧げていた中央だったのだ。





「…前言撤回させて頂きたい。」
「駄目だ。儀式は常に中立公正を保つ者。故にそのような感情論一つで却下など出来ない。」

まぁそれもそうか。だが腹をくくるには、だが、だがなにを…

嬉しそうな顔を見た。目をキラキラと輝かせて、ねぇと私の名前を短くも呼んでくれる温かな声。嗚呼あの声がもう一度聞けるならば。






貴方がもう一度起き上がれる光になれるならば





「…ならば、願いがあります。これ以上の願いなんて何処にも生きれない。最大級の願いです。もう誰もの願いを叶えたくない程の結末をお見せ出来ることになりましょう。」
「ほぉ?それはそれは…期待できるねぇ?」

そうにやりと笑い、頬に手をかけてくる。びくりと反応しても、その願いは決めたものだ。元からそのつもりだったし、それが早まったというか、現実になってしまっただけのこと。












「”私を彼女の再起動リブートに活かして下さい。”」






それだけだ。三回忌、一体何時何処でどうなるか分からないが…嗚呼、ごめんね、エヴァネセント。約束なんて、果たせれなかった。


再起動。それは、元々在るものを再度始動させることだ。使用し過ぎると元の場所が「壊れてしまう」可能性がある為、何もない状態で再起動をしてはいけない。何かがある時にのみ生きて、そして何もない時にはそっと消える存在。それが私の位置で良いというのだ。それに、ニヤリと深い笑みを得た。




嗚呼、決まってしまった。



何処か安堵する自分が憎たらしくて、たまりゃしない。













泡沫の白昼夢


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