全部抱きしめて、ずるいよ、それは2
「…腹心、で、すか。」
「”嗚呼腹心だ。漢字は間違っちゃいないし、誤字でもない。勿論発言も間違っていない。”」
我々ら種族は、本来最終的な位置として全王様の腹心として活動する予定だった。その下に破壊神らが居たが、あんなものは同僚に近い部下みたいなものだからな。別に其処まで気にしちゃいなかった。
「”今の腹心は?もう世代も数百は越えてるだろうし、流石に俺の知る者は「いませんよ」は?”」
「その様なお方は何処にもおられません。」
「少なくとも、私が生まれた時からは、もう。」
「”…そ、うか…そら、すまなかった、な……。”」
じゃあアイツも知らないまま生きて居るのか。それはそれは、残酷なことをさせているな。
全王様ですか?
「”嗚呼、俺達は栞。ある意味では絵本や読み聞かせ、いや普通に物語の中に入り込んで道案内をしたりするのが仕事だったんだよ。”」
「ほぉ、それは随分と面白そうなお仕事で。」
「”だろぉ!?平民も教育対象で、子供を見つけ次第拉致って教育してたところだからな!”」
「それはそれでいかがなものかと……」
流石に子供が可哀想だ。確かに良い人材が最終的に全王様の腹心になるとはいえども、だ。
「ですがそのようなお話聞いたことも見たこともありませんが…」
「”聞いたよ。惑星に生息していた種族ノヴァーリス・クラフトらが全滅していたんだって?しかもこいつがその末裔で、色々カモフラージュさせられ蓋を開けたらコイツ自体が血統書付きの子だった、だろ?”」
「…まぁ精神体ならば共有も容易いですか。その通りですよ?」
「”それなら力を持ったノヴァ・ネラが絶滅し、腹心が出ないのも頷けるな。代替品があれば話が別だが…”」
「失礼だと思いますが、その当時神官様と言ったお方はおられたのでしょうか?」
「”いたぞ。それこそ神官だ。大はついていないが…そういや子を持った子が大神官と名乗っていたな?”」
嗚呼お前達もだから大神官様とお呼びしているんだろうが、少なくとも俺が生きていた時には大神官と神官二人が生きていた。
ほぉ、それは実に興味深いお話ですねぇ?
「もう少し詳しくお聞かせ願えたり等出来ませんか?」
「”これ以上はない。まぁ言っても良いが、一つ提案がある。”」
「なんでしょう?」
「”栞を完成させればお前の望む未来を見せてやらんでもない。”」
おかしなことを言うのですねぇ?
「”みせてやらんでもない”とはまた随分と曖昧なことで。」
「”…なら、こう言えばいいのか?”」
我々の片割れを全て見つければ、お前の知る者達が笑うことになる。
「”と、ね?”」
「随分とまぁ、いいですか。えぇ、そのお話承りましょう。」
存じておられると思いますが改めて。私の名前はウイス、第七宇宙の天使ガイドを務めております。天使のウイス、と申します。ウイスとお呼びして頂けても構いませんし、ウイスさん、とでも別に問題ありませんよ?
じゃあ俺はウイスと呼ぼうか。
おほほほほ、どうぞ?ご自由に。
「貴方とは随分と長い付き合いになりそうですからねぇ」
「”あっと言う間に過ぎ去るかもしれんぞ?”」
「おやおや、そんなことがあり得たらとんでもないですねぇ?」
全王様の腹心になれるお方が、それ程一瞬で消え去るなんてあってはたまりません。
「出来れば末永く、お付きして頂ければと。」
「”うひゃ〜お前も腹黒いとか言われねぇか?”」
「流石に言われませんよ。」
にしても、厄介ですねぇ…消滅ですか。
「”いや消滅場所によっては蘇生可能だ。ただ、その蘇生する人物自体がだなぁ〜現在行方不明で届け出を出したいが何処にだそうか…俺は困っているんだ。”」
「…でしたらば、お手伝いしても?」
「”頼む。”」
お名前は?どのような姿でしょう?我々は見える範疇でしょうかね?
名前はオルロージュ。
「”蘇生に導く
「ぶっ」
げほっごほっ
だ、大丈夫か?
「げほっ、えっ、んんっ…ええ、すみません。」
「”知り合いか?”」
「知り合いと申しますか〜その」
「”はああああああ?!?!?!?混濁者になってるだああああああ?!?!?!?!?!”」
う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜わ、ま〜〜〜〜〜〜〜〜〜じか。そんな、ええぇ。外側、ええ?????
「灯台下暗しとはこのようなことを言うんでしょうねぇ〜」
「”いや後でそいつをとっちめるとして、だ…いや、混濁者か、これまた厄介な位置に来たな…”」
「何か問題が?」
「”混濁者は文字通り混濁。まだ糸が絡んだ程度なら形も保持されるが、如何せん”混ざった”となれば話が別なんだよ。”」
しかも混濁者は元々居る者達を合成したものに過ぎない。それも引き剥がせるだろう時間に位置するものこそが、だ。蘇生を導くという名前の通り、一度生きていた者であればどんな状態でも元に生きていたであろう場所に戻せる。物は勿論だが人も、である。消滅した場所が余り人通りも少なく、尚且つ形も維持も場所もとにかくその当時のままであることが前提条件ではあるが…。
そうでなかったとしても、大体三日間くらいだったらすぐに蘇生可能なのだ。それは天使らも然り、ただ消滅とあれば話が別問題であり、特定の状態でなければ蘇生出来ないことを伝えたら「まぁ上位互換品だと思ってくれて構わない」とサラリ告げる。
「”元々は俺達が管轄していたのをお前達に譲り渡したに等しいだろうからな。此処まで出来るようにしたら、もしも万が一天使が他の悪い奴等に力を奪われでもしたらひとたまりもないだろう”」
「それはそっくりそのままお返ししましょう。貴方らこそが、危険というもの。今はまだ構いませんが、今後その可能性だって拭えない。」
「”其処は心配ご無用。栞が五つ正確には本来四つだが、この位置が一番強固とされているんだ。一度腹心に上がれば余程のことがない限り外されることもないし、ましてや唆されるなんてことは前代未聞だ。”」
プライドが伊達に高いだけではない。力も充分持っているし、力を貸すとなっても必ず上の反応は取っていた筈。まぁ人には性格が付き物だから、甘く見て唆されちゃいました〜っていう最終的な位置に持っていかれて居たら、もうこっちも言うことがないが。
「”基本的に絶対裏切らないだろう人格を育てあげられる。血族ならば猶のことだ。こいつが良い例だろう?”」
「まぁ」
確かに都結は利口だ。人の言うことは聞く子だし、確かに聞かない時も多いだろうが、それはやりたいことや成し遂げたいことを優先しているだけであり、決して一度も聞かない。というわけではないのだ。それを天使らは分かっているし、大神官も以前暮らしていたのであれば充分理解していたことであろう。そうでなければ、此処まで完璧とも言える程の記憶を封じて対応なんてするわけもない。
都結は絶対に「大神官が中立を保つ位置のみ」でなければ生きていけないだろう。此方としては有難いことだが、だからと言って互いに傷付かれているばかりでは、少々見るに耐えないというもの。だからこそこうやって周りからチクチクと突いては様子を伺ってしまっている現状であるのだ。
出来る事ならば二人を部屋に閉じ込めて監禁し、仲良くなるまで出さないなんて強制的なことが出来ればいいのだが、そうはいかないし、仮にそれで話が解決したら、此処まで面倒なことになんてなる訳もない。
「”にしてもそうか…あのルーシーが、其処に…”」
「貴方方は都結さんが創り出されたとお聞きしていますが」
「”ん?嗚呼、正確には元々13名居たからな。”」
「では」
「”だがそれはあくまでも…外部の情報がない状態で、の話。俺達が出来た頃にはもう”」
呪いの範疇だった、ということか。
「”それ故未完成であるんだ。ましてやその状態で混濁と来たら…”」
「完成から遠ざかる。…その子が生きれる術は」
「”ほぼないに等しい、が。勿論救いようはある。その為のシステムだ。”」
そこで必要なのが本来であれば蘇生。だがその蘇生が生きて居ないということは一度”再起動”させてしまえばいいということだ。
「”ルーシーに直接覚醒石の「期待」がかざされていたら問題ないんだが〜流石に数十億年も放置され、今では製作者らも居ないだろうし、もうお手あ”」
「あの、先日その「期待」である石にかざされたのですが。」
そう言えば綺麗に消え去った。あ、という声は何処かへ飛んで行ったようだ。
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「っっだあああああああああああああああああああああああああああああああああああい!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「い!!!!!!!!!!!!!!!!」
ったいなにすんのよ!!!!この赤髪ぐるぐる男!!!
ぐるぐるしてねぇ!それにこれは朱色だ!馬鹿垂れ!!!
「おっっまえルーシー!!一体何処ほっつき歩いてたんだ!!!俺探したんだぞ!?!??!?!」
「えっ何々恋人?」
「「違う誰がこんな奴といちゃいちゃラブラブドタバタ劇場共に歩まなきゃなんないのよ/ねぇんだよ!!!!!」」
うわぁー息、ぴったりぃ〜〜〜〜。
「今大変なことになってんだぞ!?リッカートが消滅してる!」
「知ってる」
「知ってるでなら」
「でも、あの子は私を”混濁者”として知り得た。」
それが現実。分かる?
…れは、
「もう少し意識を落ち着かせて。確かに”ヨア・ダイト”がいないのは苦しいけれども。」
「ああ?なんだって?よだれいと???」
「「”ヨア・ダイト”!!!!!」」
まぁ別名ヨダレイトと言ってた頃もあるし、もうそっちでもいいけどさぁ〜
あったんだ。
言ってたんだ。
「ヨアが居ないと言っても、自分達でなんとかするしかないでしょう?そもそも今はまぁ混濁者とは言っても三名いるし…」
「だとしても未完成状態からの、だ。これが正式な完成させる前提条件での組み合わせならまだしも、鼻から違う状態で、と言えば話が違ってくるだろう?」
アイツが居ないと話にならない。直撃で来るこっちも防ぐことが結構難儀しているんだ。おかげ様でこのありさま。
いい!?!?!?
「
「ならそもそも話さなきゃいいじゃないの。彼らに伝えない、話を流す、というのも手でしょう?」
「そ・れ・が・あ・い・つ・の!!!役割だっただろうがよ!!!!!!」
今のご時世全員が出来ないと生きていけない。出来なければ死あるのみ。違う?
っぐ、、い、やだが…な。
「だとしても人を頼り生きていくのは決して間違っていやしない。…そのためにも防御は確実にいる。居なければお前が、蘇生が居ないとあいつの身体が持つわけもないの、お前が一番分かっているだろう?」
「……、例え望まれない道に走ろうとも?それでも私達は、彼女の”中立”を望み続けなければならないのに?」
「それが役目だ。俺達の望みは、ただ一つ。」
そしてあの子もまた…此方に眼を向けているから、あの中に眠り続けている。
あんなの傷付くのを恐れた子じゃない。
「我儘言ってばっかで行動もしない。愛する人の元に行こうとさ!!」
「っアプルさん!!!!」
「…もう一度言ってみろ。あいつがなんだって?」
「ぺっ…言ってやりましょうか?””我儘言ってばかりで行動も碌にしない。だから愛するお人は貴方を見ないで誰もが離れるのだ”とね!!!!」
眉間に皺がより、次の手が入る。炎のような赤い光が手に込みあがり、ルーシーはその手を受け止めるように緑色の光を輝かせて受け止めて。何もないのは、彼女が蘇生の、回復の位置にいるから。防御と回復は、太刀打ちできないのだ。攻撃は彼女等の位置に到底辿り着くなんてことは出来ない。
「…お前はあいつを傍でずっと見ていなかったからそう言える。」
「それはそっくりそのまま貴方に言い返してやるわ!!外の期待ばかり見て走って、傷付くことなんて構うものかって、私達が幾ら頑張っても傷付くばかりの、あの子の顔を見たことがある!?」
色を失っては光を取り戻すその顔を。これしかないと暗闇から一筋光を見つけた時の期待の眼差しを。そして、その期待を切られ、落ちゆく身体を抱きしめることすら忘れ、手を落とし動かすことも忘れてしまったあの子の世界を。
「貴方は知らないでしょうね?だって貴方は外側で走り続けていた子だもの。”少しおどけて笑っている可愛い子”に位置するのだから、その裏に隠された怒りを貴方の本性自体を、受け入れられる為だけに作った人形を!!!!」
そうして…あの子は守って来たのに。貴方が受け止められなかったものを、私達が守って蘇生させ、何度も何度もしてあげた。でも、もう無理なの。これ以上蘇生すると、本当に自我にヒビが入る、というか。既に入っているから、あんな状態なのよ?
「最初は綺麗な翼を広げていた。きっとこのまま綺麗に飛び立てるんだって、言ってたのに…ああなったんだもの。それに外の世界はこの我々が肝になってくる。私達の動きで、彼女の力も操作されやすいとあれば、話が別問題違う?」
「…だからと言って、何も動かない。というのは駄目だろう。それこそ管轄外だ。」
「傷付くことを見せるのが怖いのは誰しもそうだよ。核の者よ。」
そう言ったのはルトラールだ。上から見ていたのか、下に降りて来た彼が話を続ける。
「幸いなことに此処は補助が幾つも生きて居る。僕が行って助けに成れるかは別だが」
「…余り気は載らない上に、勧めは出来ないな。お前もあの手の人間だったならば、分かっている筈だ。」
「だからこそだよ。もう覚悟はとうの昔に出来上がっている。」
あれが願ったその日には、ね。
「…分かった。ではルトラール。仮ではあるが、お前を任用する。外の者にも伝えてくるから、一度攻撃の型やら何やらを教えておく。手本はお前が分かっているな?」
「勿論。」
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と、言う訳で。
「”やるぞ。おい、起きろ。この万年引きこもり大馬鹿娘が。”」
『あぶあ〜〜〜あ〜〜〜〜〜〜!!!!!!』
赤子の様に泣き叫ぶな。まぁ気持ちは分かるが。
「”防御が消滅したと言っても過言ではない。現に帰ってこない以上、消失とみなして今回からルトラールを任用する。”」
『…分かった。許可する。』
都結はそう言って両手を合わせ、手に力を籠める。青い光が広がり、その先に、とルトラールへ渡す様に前に出せば。彼もまた手を出し、受け取り光を広げる。姿はほぼアプリコット・コンポートと同じで、色違いな処だけ、と言った処だろう。
「”防御は本来壁ではない。波の様に動き続ける。俺が身勝手の極意を習得したような感じだし、お前も一応手を付けていただろう?”」
「”それはあくまでも彼女の中での話。元はしていないよ。”」
「”なら現役に教えを乞うか。”」
「ならばその役目、どうか私に任せて頂けないでしょうか?」
そう言って来てくれたのは
『わわ!クス様!!!』
「お久しぶりですね、都結さん。それと…」
「”…奮闘に藻掻く
「”ルトラール・ノヴァ・メートランドです。以後お見知りおきを。”」
「どうも。第十宇宙の天使ガイドを務めていますクスです。此方は破壊神のラムーシ様と界王神様のゴワス様。」
「よろしく」
「どうも」
「”早速ですが彼にご教授を。恐らくすぐに習得できると思います。”」
お主の方はしないのか?そう聞いたラムーシに都結が眼をぱちくりとして首を傾げくるりとアプリコットの方を向いた。すると嗚呼と笑ってラムーシの方を向き説明する。
「彼女はあくまでも核ですからね。意志を持たせなければ話になりません。動きはこっち側、意識は向こう側の管轄です。」
『出来るよ。』
え?
やってみる?
『一度やってみたいことがあって、試したい。』
試してみたいの。
そう言って準備をしたのは、スマートフォンとヘッドフォンだ。ブルマの伝手で買いに行き、実際買って貰って礼も言って来た。曲は出来れば自分の知っている曲が良かったが、どれもこれも、やはり知らない曲ばかりだった。ポチポチと押して無理なら曲を作るしかない、正確には元々知っていた曲を思い出しながら、だ。
タンタンとシャーペンを机の端に打ち続ける。高い音や低い音を出し、右手で宙をまるで何か糸があるかのように指を動かし引いては押してを繰り返す。
『落ちて落ちて落ちて落ちて落ちて落ちて落ちてもっと落ち続けて』
意識を落とす。正確には現実世界と少々切り離すことをする。目の前には敵がいる。その手前に、一人人がいる。そうそう、そうだ、良い子だ。良い子だねぇ?首元に手などかけなくていい。大事な大事な宝箱に可愛い可愛いコレを仕舞って。いつかが開く日がやってくる。その日は何処だい?
今ではないかい?
『あ〜した天気になぁ〜れ?』
落ちた。カチンと音が鳴った途端、都結の背後から蔦が飛びだしていったではないか。その蔦はルトラールらの足を掴もうとするのか、それともただ暴れているだけなのか。クスの元迄到達するも、彼女も危険を察知してか距離を取り、空中に逃げた途端だった。背後から裂いた場所から蔦がクスを捕らえようと来たではないか。
「っ!?!?!?」
本当に間髪言わずに避けれたからまだいいが、一切と言っても良い程、
「どうして…?身勝手が、」
「…身勝手が発動しなかった?いや、そんなあり得ない。」
クスが、ましてや長女がそんな失態を犯す訳もない。そう思っていたウイスはふと都結の方を見た。彼女はずっとずーっと、前を見続け、笑い続けている。その笑顔の裏に隠された者は、一体誰が位置しているのだろうか?それともこの目の前にいる子こそが・・いや、全部が彼女の自演、だとしたら?
それで笑えたらいい者だが。
「身勝手の極意は危険を察知しなければ発動致しません。敵意を、どんな脅威をも完璧に避け切れますが、逆に言えば敵意さえなければ発動しないのです。故に武術を怠ればその分の溝は出来ますし、勿論ミスに直結。」
そして傷を、力を奪われる可能性だって高まってしまいます。
「ですので我々は訓練を怠らないのですよ。」
「している様に一切見えないが…」
「おや、そうお思いでしたらそうなんでしょうねえ?もっとも、彼女は我々を理解した上で、目を向けていらっしゃられる。」
本当に、此方の心をよく其処迄気持ちよくさせる。落ちる処まで、落とす為に?その絶望を見たいが為だけに?と言えば、これ程恐ろしい子は何処を探したっていやしないだろう。例え彼女自らが動いていなかったとしても、だ。ルトラール自体、既に彼女の体内での人間。彼もまた、彼女の力その者なのだ。きちんとズルなんてしていないし…なんだったら、こっちがズル、しているようなものだ。
彼女に一度だって本性を見せていないのだから。
本当は見せてやってもいいのだが、そんなことをしてみろ。した日にはもう、どんな厄災が降り注ぐか溜まったもんじゃないのだ!大神官は何度も言うが、あくまでも自分から封印しただけのこと。それが開いたらもう終わりだし、恐らく開いた以降というか、封じていた頃の記憶はきちんと残していることだろう。
もしも本性を見せ、一度でも手籠めにしていろ。
彼の怒りを買うことになるだろう。それも、一生では解消されない程の時間、で、だ。
「音を聴きながら思考を強制的に切り替えるとは…また考えましたねぇ。」
「だががら空きにならないか?」
「だからこその補助、というものでしょうね?」
背後から攻撃を、と瞬時に移動してきたクスのことが既に分かっていたらしい。顔を少し動かし、下から上を見上げるように目だけ移動したその目付きが、厭らしい程に酷く似ていた。
怒りを静かに用い抱いた大神官その者に
「っ!!!!」
『動くな、そう…いいこだねぇ?』
まるで言い聞かせだ。ニヤリと笑って、攻撃をされたからと言って防御を取ったのだ。初めて彼女が自ら動いて防御を取った。避けることはすれども、面と向かって防いだのはこれが初めてのこと。でも、それは間違いだと言い聞かせているようにしか聞こえない。違うというも、それでも攻撃は止めないのが、ルトラール。
杖を使って攻撃を入れた彼に、杖を使い受け止め下がり上にと逃げ距離を取る、が。追いかけられ押し入ろうとする。最初は角ばった動きをしていたが、今は緩やかになっている。まるで波を…
「(波…?まさか、これって!!!)」
「”ひ〜みつしったら、ど〜する?”」
『”おすきなかたちにしておくれ”』
ルルルル、刻み音を鳴らし始める。腹から出し、胡坐をかいたりと、少々行儀が悪い処も見受けられるが、それでも目はずっとずっと、クスだけを見続けていた。勿論リキールが手を出そうとすれば、軽く別の物が出て来て受け止めてくる。だけでない
「っ、(何も手出しせずとも、いい…と。)」
手を取り耳元にシーと音を立て言ってから溶け消える。まるで幻、煙を見ていたかのように、煙に紛れて居なくなるのだ。都結の方を見て戻れば、ルトラールらと同じような衣服に着飾っていた。色はその子達の力を指示しているのだろう。ルトラールは防御、青い色を染め上げ、アプリコット、アプルは赤色、攻撃を示している。
とあれば、回復を示すだろう蘇生は緑色を。では答えを知る者は?
そして全ての核は、一体何色に染まりあがる?
『ま〜だ』
そう言えば服の色が綺麗に落ちていく。明らか、色は暗かったが…それが彼女の色なのだろうか?
『答えは応えは堪えてしまえ、何処にも其処にもな〜いよ』
笑った後、フィンガーレスグローブを付けた。その色は黄色ではあったが、色が落ちてしまう。まるで彼女が色を落としているかのように…まて、先程最初なんて言っていた?
落ちて落ちて落ちて落ちて
その、落ちは、一体「何に対しての落ちていく」ものだった?
さぁ、決めましょう、藍しましょう、嗚呼逃げましょう!!!