全部抱きしめて、ずるいよ、それは3
「まさかあれ程の力を抑えているとはお見事ですね。流石は腹心に相応しいお方。」
『…まだ起きてたんだ。』
我々は寝ませんよ。人間でもあるまいし。
…それもそっか。
「寝れないのですか?」
『寝たくないの。』
「寝れば成長するから?進むから?それとも自我を維持するのに、難しいと思うから?全部ですかねぇ?」
『…どうして私を見るの?』
私は誰もが嫌がる子なのに。
おや、少なくとも私は好きですよ?
『うそ』
「嘘な訳ありますか。そうでなければこうして背後に入って貴方の様子を確認なんてするわけもないでしょう?」
ほら、貸しなさい。そうして居れば身体を傷つけてしまいますよ?彼らも泣いてしまいましょう。
あっ
『ちょ、ちょっと!私それくらいでき』
「させて下さい。どうか。」
『……ずるいよ、ほんと。』
っふふふふ、狡くて結構ですよ。
「貴方には沢山た〜くさん、狡いことされちゃってるのですから。そのお返し、というものです。」
『私そんなにしてないのに。』
「してましたよ。」
『してない!』
「してました〜」
っふふふふふ!
『えへへ、あ〜おかし、』
「余りお食事はとらない方がいいんですがねぇ。お腹が空いて寝れないのですか。」
『そうなの。インスタントは最悪ではあるけど手段としては選ぶ。』
でも基本的には胃に優しいものをってね!
買って来てもらっていたうどんの袋を開けて湯がいていたのだ。器に入れようと持っていたら軽く力を使われて引き剥がされ、そのまま磁石の様に手で鍋を取り、片手で器にさらさらといれられる。その姿を見つめ続けるしかない。
「楽しかったですか?」
『ん?』
「興奮して寝れないようにお見受け致しますが。」
『…ん〜〜、どうだろ?』
わからない!
そうですか。
「ではいつか分かればお教え下さい。」
『知ってどうするの?』
「知れば知る程嬉しいという者ですよ。何でしたらお父様にご報告したいです。」
『え〜?怒らない?』
「嫉妬されちゃいますねぇ〜、しょげちゃうかもしれません。」
『ふはっ、ウイスさんが?またまた〜』
「私だって落ち込んだりしますし、なんでしたらコルンお兄様だって落ち込まれることもありますよ?」
え〜そんな〜そう言って笑いつつもウイスが持った器を追いかけるように椅子へと座る。コトリと置いているものに、じっと見てからウイスを見た。ふはっと笑ってしまう。仕えている神はこんなことも考え付かずに食べきってしまうから。
「お〜いしいですねぇ〜!素うどんとやらは何もないのにこれで幾らでも食べれちゃいますよ〜!」
『じゃあ食べる?』
「そうしたら貴方の分がなくなるでしょう?」
『また作ってよ。』
「…ほんと、そうやって落としてきて、お父様も苦労されますねぇ〜。」
え?おと?え????
おやお気づきでないのでしたら…この場合はお伝えしない方がいいですかね?
「なんでもないですよ。」
そう、なんでもない。なんでもないのだ。
お腹が空いているから作っていたのに、ウイスにも渡すだなんて。作ってくれたらまた一緒に食べれるから、だから作っておくれだなんて。そもそも食べなくても良い自分にまで、腹の虫を鳴らさせる様なことを望むだなんて。
見える場所の世界だけを、望み続けるだなんて。
そんな可愛らしい子が、神様だなんて。ましてや全王様の腹心、とあればもうこの世も終わりだろう。強そうな人を傍に仕えてやるべきだ。そう大神官様の様なお方を、だ。ならばどうか其処に行けばいい。行きたいなら、猶のこと。きっと全天使は賛同することだろうし、何なら何名か無理矢理背中を押し飛ばしかねない人間と言うか天使はいるにはいるのだ。
自分で作れる分以上、作ってしまって。一体、何を言うのだろうか?この小娘は。
「(確かに中立なんて忘れ去ってしまいそうになりますねぇ〜これは、)」
大神官が封じたのも頷ける。これは間違いなく毒、だ。だからこそか、都結も距離をひたすらにとり続けようとする。勿論それが続ければいいのだが、そう言う訳にも行かない。元々人自体は好きらしいのか知らないが、近くで笑ってくれるので、笑い返せば更に笑って飛び跳ねてくれる。純粋に此方の気持ちを受取り、その気持ちで前を見ない。
自分だけを世界に居れて、その場所だけを”維持”し続けてくれる。
それが都結その者なのだ。それを知っていたからこそ…彼もまた、
「(やるせないですねぇ)」
偏るなんてあってはならないのに、偏りたくもなるような動きをするこの子が悪い。とは言っても、本人も分かっているのだろう。だからそれ以上踏み込まない。大神官の記憶を抉るなんてしない。傍に居ても深くなんて追求しない処か、それどころか自分らと交流している時は一切話も声も、かけないし、見つけ次第離れてしまう始末だ。
その時の大神官は、少し何処か、寂しそうにも見えて、いたたまれなかった。
此方の関係性を守ってくれるのは非常に有難いが、だとしても自分はきちんと存在している。画面越しで見ている時間とは大きく違っているのだ。貴方は此方側の人間になってしまっている。貴方の知るべき世界線とは大きく異なった場所に位置しているのを、彼女は未だに理解していない、いや
理解したら終わりなのだろう。だってそうしたら大神官の記憶をこじ開けに行きかねないだろうから。
それ程好きならば、いっそのことダメもとでこじ開けてしまえばいいのに。出来る範囲なら喜んで手伝おう。そりゃあもう、とびっきりの笑顔を貼り付けて、だ。これ程面白いことは恐らく生きて居る間で一度あるかないかだろうからな。面白いことはいいことだ。なので手伝うし、やる。それがウイスの、生き方だった。
だが、本人は望んでいない。それはつまり、こっちが手を出すことではない、ということで。
「(ですが、確実に、着実に変化はしている…それに心を追い付かせたくない、と言った処ですかね)」
都結は全く出来ない訳ではない。割と家事もやらせればそつなくこなす。まぁ身体が如何せん小さいので活動範囲やら速度は大分落ちるが、それでも集中してやっていればミスはない処か、綺麗にする。積み上げられた書類の山すら一ミリたりともずらさずにまっすぐに置くのだ。
そりゃあもう、これが本の一部です。と言っても良いくらいに、だ。なので時々余りにも綺麗過ぎて掴み損ねて落とすことだって出るので、最近はそれとなりに注意したばかりである。でも性格ゆえか、一ミリたりとも狂わせないようにやろうとして困っている姿は見えたがな。
掃除も綺麗にするが、どうしても自分の部屋と区切られたら逆転する。散らかすのは、自分の心も散らかっている証拠。綺麗にしたら大事なモノが見えますから…だからしないのでしょう?余り此方も強く言っていないのを、貴方はお気づきでしょうか?察しの良い貴方ですから、きっと気付かれておられることでしょう。
まだ知りたくないならば。まだ、知らなくて良いことだってある。
敵が近づいているだろうが、それでもこっちだって充分守れる範囲だった。あの時は力を抑えられていたが、ある程度自由に出来る事さえわかれば、こっちのものだ。敵意がないわけではないだろう。最悪彼女を大神官の元に戻しそして向こうの
『ごちそうさま』
パンと音を立て言う彼女に、思考が止まる。早過ぎません?と言ったウイスに、まだ彼が食べていたのは三口目だった。え〜そんなことないから追加〜と言っているが、普通にストップを入れる。心なしか赤い反応が出た気がする。まるで「もうやめろおまえは」とアプリコットが言っている様にさえ聞こえたのだ。恐らくそれは正しい反応であるだろう。だって都結の考えている心は読めたのだから。
「そのままにしておいて、もう貴方は部屋に戻って寝ておきなさい。」
『え〜〜〜????』
「誤魔化しても騙されませんよ、もう腹はある程度満たされているでしょう?それ以上食べても残されますし、別に残しても食べるので構いませんが、余りそう言った癖は付けない方が良いですよ?」
『そうだねぇ』
沢山作った方が美味しいから。つい。
そう言って彼女はご馳走になったと言って捌ける。ご馳走になったのはこっちのセリフだ。元々彼女が作っていたのを器に入れただけのことである。
「(甘いですねえ)」
残った汁はうどん一つを浮かべ、残されていた。
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それから、ルトラールらも外に出て訓練を積み上げていくこと日々が過ぎ去る中。書類を打ち込みタンと音を立て背伸びをしていたら身体が動かない。ううん、流石にやり過ぎたか。
「やり過ぎですよ。誰が六時間もぶっ通しで仕事をしろと言ったんですか。」
『おやま〜サワアさんだ。こんちわ』
「こんにちは。貴方今は此方にいらしているんですね?」
嫌になったわけではないが、クスの方に行こうと思ったりもした、が、だ。地球の食べ物が如何せん元の世界に近いというのもあり、此処を覚えたら此処以外移動出来なくてそれもそれで困っているのだ。多分このまま居座りそうで恐ろしさを覚えているくらいである。
「でしたら菜園とかお作りにならないので?貴方くらいでしたら、もう惑星を創造することだって容易いことでしょうし。」
『いやいや〜そ〜んなサワアさんったらおどけて褒め崇めても意味ないですって〜』
「色々違いますが、ま、まぁいいでしょう。それで、何故しないのですか?」
『普通に現存する惑星の子達に侵入されるの嫌ですし』
「それでしたら結界をはる、とかされないので?」
『しても良いですが、多分怒りますよ?』
「怒らせる様なことをされなければいいでしょうが…」
大体想像はつく。やるところまではとことんと。と言った主義の持ち主だろう都結のことだ。一度でいい結界を濃度を濃くして数百にも渡る壁を作り、太陽自体をシャットアウトさせかねないことをするのだろう。普通に出来ても三枚程度で良いのに、だ。重ねればいいというものでもないのを、彼女だって分かっている筈なのに、なのにやるのだこの子は。
因みに現在ヘレスは気になることがあると言ってフィズや他の子と話が盛り上がっていた。その間暇だったので、こうして気を辿り、ウイスの許可を得て都結の部屋に来ていた。あいも変わらずこじんまりした場所ばかりを好むのは、もう癖だろう。彼女の精神が一番その小さな空間だけを好んでいるようにも見えた。これでも広くなったほうだ、妥協した方だというが…もっと広くて良い筈なものを。
こういう何と言うべきか、謙虚さをも飛び越えた者というか…
『それにしてもヘレス様は』
「現在貴方のお知り合いと会話で夢中になられていまして。」
『嗚呼!消し去りましょうか?』
「けっ!…もうちょっと言い方何とかしてくれませんかね?」
こっちも驚きますから…
えへへ、ごめんなさい!
『でも呼び出したら一応声もかけれるし。』
「というか、貴方もう彼らを放置しているのですか?」
『一応外に出られたら音が鳴る様にとか色々工夫はしてるんですがね。ある程度の範囲といいますか、自分もどれ程出来るか技量が分からないので。』
嗚呼試しているのか。そう思えば分かったのかコクコクと首を縦に振ってこたえる。中に入れてくれたのでさらりと入っているが、都結こう見えても誰もを入れる訳でもない。天使でも割と警戒をしている子は入れなかったりする。此処に入れているのは現在サワアを外せばウイスと後はコルンくらいだ。他の子は依然として警戒されているし、まぁそういう気持ちは大変良いことであるので此方側も何一つ文句も言わないというもの。
紅茶でも?と言われてお構いなくというが、そう言う礼儀なのだろう。小さな部屋に入って行って暫くすれば紅茶やポットを置いたものを持ってくるが…いや、本当に危なっかしい。じっと見て歩くので下を見ないのだ。しかも動きが絶妙にぎこちない。席を立つサワアに、大丈夫と言うが、躓きそうになる。一応部屋は出来るだけ片付けている。それでも先程まで仕事をしていたというのもあってか、身体が思うように動かなかった。
「っぶない…!」
『ごめんなさい』
「いえ、重ければ手伝いますし、もう少しお声掛け頂きたいです。」
『あう』
きっと中でも酷く言われるのだろう、しょげる彼女の頭をそっと撫でてしまう。ちらりと見上げられたので、いけないと思いぱっと手を放す。嗚呼別に嫌っている訳ではないのですよ。分かっておいでだと思いますが。
「すみません、余り頭を撫でないようにと思っていたんですがつい」
『…お撫でになられたい?』
「いやまぁ撫でたい訳でもないと申しますか…」
余りにも落ち込むものだから、頭を撫でてやれば多少喜んでくれるかと思っただけのことだ。だとしても明らか下に見ているし、彼女には恩がある。恩人にそんな態度取れる訳もない。まぁしちゃったので、謝ったというのもあるんだが。
「寧ろ嫌ではないのですか?頭を撫でられて。」
『ん〜〜〜〜〜??????』
「それもですか…ほんと不思議ですねぇ〜。」
首を傾げるどころか身体ごと傾げ始めるものだから、笑ってしまう。そうしたら笑って返す。最近は専らこの繰り返しだった。分からない時は首を傾げ意思表示を示す。右も左も内容は同じだ。現に心の中はクエスチョンマークばかりだし、背景は宇宙が広がり何処を示しているのか見当も付かなかったからだ。
サワアは軽くため息を吐いて席に付く。紅茶の準備も、クッキーもあるからだ。それに都結もちょこんと椅子に座る。此方の椅子に合わせてくれているのは有難いが、彼女からしたら結構な高さだ。怖いのだろうか、机の端を両手で掴みきょろきょろとして前にあるものを眺める。
自分で用意したはずだろうに、まるで気持ちはサワアの部屋へ初めて遊びに来たみたいで。
「っくくくく」
『んん????』
「すみません、なんでもないですよ。此方頂いても?」
『どうぞ、召し上がって下さい。』
では。
さくりと音を立てクッキーを食べてみる。甘さが控えめで、とても美味しい。次も食べたいとふと思える程だったが、ヘレスにはきっと合わないだろう。そう思っていたらこっちは?と手で指し示す場所に目を向けた。自分が手に取ったのは厚みのあるサブレ生地に何かがスライスされ固められた四角いクッキーとやらだった。
対して手を差し伸べられ見た場所は、少々色鮮やかで。
『こっちはドレンチェリークッキーって言いまして、サクランボって果物を砂糖漬けにして、赤く着色したものを真ん中に入れて焼いたものです。』
「此方は?」
『嗚呼今お食べになられてる方はフロランタンってものです。確かそう…嗚呼そうそうあってますね。』
本を出して、というか自分が作った本なのだろう、ペラペラと何かに留めたものを捲る。一枚一枚好きな量入れて使う本なのだそう。発想がまた新しいと思い、是非とも使い方を教わりたいと思っている中、話が進んでいく。
『キャラメルをコーティングしたスライスアーモンドを乗せたクッキーです。』
「キャラメルを、ですか。」
『ええ…え゛っまさかお兄さん甘いの苦手でした?』
「いえ、寧ろ甘さ控えめで美味しいですが、少々ヘレス様にはお口に合わないかと思いまして。」
といいますか、何方かと言えばこっちの好みをドンピシャで当てに来ている貴方の察知能力と言いますか何と言いますか…暮らしていたことがあれど、其処迄見られていたと思えばゾクリと背筋が少し凍る想いなのだが。なんて言えるわけもない。
『あ〜〜〜あ〜〜〜〜あ〜〜〜〜〜〜〜…ヘレス様、えぇ〜独断と偏見とその他諸々混ぜ合わせた期待でしかない性癖の塊であれば是非ともこっちおすすめしたいんですが〜〜〜〜〜〜あ??????』
「いやいや、其処迄言わなくても伝わりますって…それで、此方は?」
『ドレンチェリークッキーをヒントにして、ステンドガラスクッキーというものを作ってみたんです。』
流石に試作品なので適当にってあああああああああああ
ん、おいひいでふね?
「…コレでしたらお喜びすると思います。」
『えぇ、マジで?食べれた?』
「え、ええ。食べてはいけませんでしたか?」
『嗚呼いや、食べても良いは良いんですが・・試作品でしたし、間違いなく不味い筈だったんですが。』
「意外と美味しかったですよ?」
そう言われて自分も食べてみればうまいはうまい、が。いだいと言う都結に大丈夫かという。嗚呼、そういうことか。このクッキー、他のと違う処は中央のカラフルな色は飴で出来ているのだ。それ故柔らかいクッキーと一緒に食べようとしたら、硬いし下手したら口の中を切りかねない。まぁその点最初に告げさえいれば、きっとこの菓子は好みだろう。
よくあの映像一つだけで見抜いているものだ。他のクッキーもきっと誰かの為に作っていたのだろう。最近は部屋で出来る事ばかりをしているらしく、使い勝手も昔住んでいた処と同じなのもあり、試して気分転換を続けている。戦った感じ、非常に安定しており、正直言えば破壊神として勧誘したいレベルではあった、が。場合が場合である。流石にこっちよりも上に仕えるべき存在だろう。
きっと全王様もこういったものはお喜びになることだろうし、此処で練習し、習得してから行けば、きっと彼等だけでなく付き人ら等も喜ぶことだろう。人が喜ぶその姿を何よりも嬉しがる子のことだ。きっと、楽しい時間が過ごせるだろう。その準備期間として、自分達がこうやって関わるのは非常に有難いことでもあった。
「口の中切らないで下さいね?」
『ふぁい』
「全くもう、危なっかしいのは変わりませんね?」
『大分落ち着いた方なんだけどなぁ〜心の中のコルン様&サワアさんを飼いならして以来は。』
「お待ちくださいなんていいました?????」
さらりとコルンだけでなく自分までも言い出したのでんっと紅茶を飲むことを止めてしまったではないか。まぁ気管に入ることはなかったので咽ることもなかったが。一応身体の中身は大分簡素ではあるも、一応人間に近しい状態ではある。その為変に食べると咽たりもする。人間の身体が一番破壊神らの味覚に近しいのだ。
変な話食べたものを消し去ってしまえば別に大差ない。それ故下のことなんて考えるものはない。都結も其処ら辺想像していたからこそ「天使に成りたい天使に成りたい」と言っていただろうし。まぁ別に成らしても良いが、それこそこっちの者、というものだ。絶対に逃がしはしないのを、彼女は一体何時気付くことだろうか。…恐らく気付いていても、こっちがいいとか言い出すんだろうな、この子は。
『え〜?アレ見てるんだったらもう、ねぇ?』
「…やめて下さい。ソレ掘り返されたら彼女とどう接していいのか分からないんです。」
エフェメラルと仲を、なんて恐れ多いにも程がある。あの話はあくまでもノンフィクションでの話。確かにエフェメラルは現実世界に生きていたかもしれない。だが、それは過去の話だ。現在は都結の体内、精神世界にのみ存在しているし、何だったら都結が言った方のエフェメラルは華を束ねる王に相応しいも、ので…あって。
まてよ?まさか貴方はその王の時間を耐え忍ぶためにその時間を想像し
「(ほんと、何処までも食えないお人だ…)」
誰がくっついても、自分は”外側に生きて居る”と思わせて生き続けているのだ。だから”維持”も容易い。だって自分は額縁の外で高みの見物をし続けているのだから。こっちに害なんて来るわけもない。だってその世界はノンフィクションだから。
貴方はそのノンフィクションに身体を落としていると知っていても、尚?
紅茶の湯気が消える。何時の間にそれ程の時間が経過していたのだろうか?生ぬるい紅茶をすっと飲み干してしまう。少し残る苦みなんて、クッキーを入れたら綺麗に消え去った。貴方の好きなクッキーは何ですか?そのふわりとした軽いものですか?それとも白い粉がまぶされた丸い形の方?
聞けば「何方も」なんて笑って言う。それは一体、誰に対して答えを返してくれているのですか?ねぇ、都結さん。
確かに私は彼に似ている。自分だって言われたらまぁそうか?というくらいの認識だ。其処迄自慢げにするもんでもないし、持って生まれて来た以上、それ以上もそれ以下も抱いて何になるというのだろうか?普通に考えても無駄なことである。あるものはあるんだから仕方がないし、嫌なら変えたら良い話だ。自分はそんなことにまで手を出すのは無益と思っているので、していない。それだけのことなのだ。
キャラメルの付いたものを渡して、私が喜んでも彼が喜ぶとは限らない癖して、それでも笑うだなんて。
「(ほんと、早くくっついてしまえばいいものを)」
あれ程夜中に泣き、別人のように寝続けていた彼女は何処へやら、だ。二日に一度の頻度で自室のベットのそれも端に小さく丸まって寝ているのを見たら誰しも驚き引くだろう。少なくとも数回は引いたが、その後はもう諦めた。一応最初の方は寝れないなら、添い寝が欲しいなら言えと言っていたのだが、言うことを聞かないのだ。
ベットの端、それも扉の近い壁沿いに触れて寝て丸くなり目を閉じる子。まるで何時だって逃げれる様に準備しているかのようだった。それは自分が襲う可能性が?それとも…
「(ああちがうぜんぶ、ちがう)」
目が覚めたら、
これは現実か、幻か。扉の近くだったら、開いてしまえば醒めると思って?逃げれる様に?触れて確認したら、夢ではない現実だと思えば…貴方の熱を感じながら、ゆっくりと今度こそは目をそっと閉じて寝れるのでしょうか?
今度こそは、やっと、ゆっくりと。その意識を何処までも落とし続けて。
「(知れば知る程、毒ですねぇ)」
いっそのこと毒を盛られて死ねるなら死にたいくらいだ。天使は死なない。掟に反しない限りは一度たりとも。ただ、掟を破れば最期、消滅して跡形も消えてなくなってしまう。次なんて、もう、会えるわけがない。勿論例外はあるにはあるが、原則としてはそういう決まりなのだ。
嗚呼人間だったらよかった。そしたらこの感情の続きになんて、気付く由もなかったハズなのに。
サワアは空になったカップを持って飲み干した。
その中には一体何が残されていたのか、なんて、聞かなくても分かって欲しい者だった。
午後はゆるりと過ぎ去っていく。
(私の頬に過ぎ去った痕すらも撫で去って。)