全部抱きしめて、ずるいよ、それは4
ルトラールが天使の極意を習得した。
大体三か月。やはり周期があることが分かった。三か月に一度変化が起きてる。現在、都結がこの世界に降り立ってから大体一年と半年が経過していた。もう殆どの神々は彼女と交流を済ませているし、何だったらルトラールらのことも周知されていた。とは言っても、知っているのはあくまでも大神官や全王を筆頭に、天使と破壊神そして界王神のみだ。流石にその下、ましてや見習いにだなんて言う訳もない。
まぁそれはあくまでも誰も居ないで在ればの話だが。
「なぁ頼むよ〜!な!おねげぇだって!!」
『あう、うあう…!!!』
ウイスは現在、現状に大変悩まされていた。
全部抱きしめて、ずるいよ、それは4
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事の始まりは大体30分前だ。悟空が遊びに、正確には料理を持ってウイスと共に帰って来た。ビルス惑星に、である。現在ベジータは一度帰還している。今は一人一人の個別指導、というものに切り替わっているというが、多分こっちの面倒も見なければいけないので、正直相手をしている暇がない、というのが本音だろうと都結は推察していたし、事実上それは大正解である。
未だ都結の現状、余り活動範囲を広げては困る位置に居た。
何せ全王様の腹心になるであろう存在で、尚且つこの小娘、なんととんでもない隠し持ち武器を幾つも取り揃えている。身勝手の極意を習得できる者は勿論だが、呪いに掛かっているような者とは言えども、生まれ変わりのそのまた生まれ変わる前に生きていた人間達をほぼ集めて精神で飼いならしているのだ。それもちゃんと設定迄織り込み済み、での話。
普通其処迄大量に居たら名前を間違えたり、後は設定ミスとかも出てくるはずなのだが…如何せんこういう処は几帳面。出来なければその都度修正して本や物にして覚え叩き込みなおしている始末である。此処まで出来るならばもう少し他にも手を回して頂きたいところだったが、そんなことを言ったら終いだ。やり込み過ぎて前が見えなくなるくらい、するのだ。
少なくとも先日六時間ぶっ続けでやったのがウイスに等々バレてしまい、コンコンと叱られにしかれている後である。あの後盛大に落ち込んだし、暫く本当に、落ち込みまくって煩くて敵わずもう一度叱ったあと互いに謝り仲直りをしたばかりだ。因みにその時間、五分前である。本当にもう……
「ですから、私が申し上げたいのは時間の調整をして下さい。それだけのことです。出来なければタイマー等ありますから、それに続けばいいでしょう?」
『でも…』
「休憩を入れてこそ、質も維持出来るというものですよ。都結さん。確かに貴方の技量は他の方達からしたら遥かに劣ることでしょう。精度は勿論ですが、貴方単体で、と制限を掛ければ極端に落ちる。」
理解はしているだろう。恐らく自分が人間だから、という意識が強すぎるのだ。加えて幼い頃からの抑圧的な環境に重きを置いた状態での成長…未成熟になるのも無理はない。だが今は違うのだ。成長出来る時にしておかねば、一体何時危険に晒されるかわかりゃしない。ルトラールらがもしも動けなかった時、核である貴方が動かねば誰もが消え去る可能性だって大いにあることを、ウイスは伝えたかったし、その意味を、都結はきちんと理解している。
だが理解しても行動に移さねば意味なんてないも同然なのだ。
良いことをしようとするのは、大変良い心がけだが、もう少し分別を付けて欲しいもの。ビルスの様にあそこまでしろとは言わないが、それでも出来なければ一度諦めて食事を摂り、軽く昼寝を取ったって誰も言わないし、なんなら罰なんて当たる訳もない。成長速度が人より劣るならば、質を高める為にまずは現状を把握し、一度出来るまで目標を小さくとも決めて進めるのが、今の仕事だ。
まぁそれも分かっていて、今、なのでもう何も言えずため息しか捌けないのが、本当に心苦しい話であるのだが……
「ご理解して頂けるので何も言わずとも分かると思います。貴方は本当に賢い子です。我々が言おうとしていることも貴方はきちんとその脳で心で、理解しようとして頂けておられる。私がこういうのも、貴方を傷つける訳でもなければ、腹心となられる為の力を育てる訳でもないことだって。」
ただただ、貴方が心配なのだ。此処まで弱いと、いつ死んでいるか心配になる始末である。こっちの気を阻害したくない彼女の気持ちが痛い程分かるが、それでもそれはそれ、これはこれである。こっちだって引っ張られないように必死でもある。見た目には出していないが、あのコルンでさえ、恐らく一人で悩み抜いていることだろう。
このままではお父様が記憶を取り戻すまえに、貴方が息絶えないか心配で仕方がないのだ。
だから時々、こうしてルトラールらの協力を仰いで、一日だけでも良いから都結が外で生活できるような日を取っている。勿論変則的に、だ。これを規則的にしてみろ。まぁ間違いなく雲隠れするし、以前されて以降対策を何度も練りに練った挙句の果てが、これである。もうとにかく逃げる。本当に逃げる。プライドなんてただのハリボテそっちのけ、だ。
其処迄知られたくなければもう少し上手に隠して頂きたいのだが、そうはいかないのだろう。その時間を喜んでくれたお人がいる以上、貴方は良い子ですから。その時間がもう一度巡り廻って戻るその日に、その人が悲しまないように。その時間その者を、維持しようとしておられる。
だから皆が、皆。貴方に手を貸そうとしているのですよ?
「はぁ…出来ないのは当然。幾ら想像出来ても現実違いますからねぇ。ルトラール様らは以前外でお過ごしになられていたとお聞きしております。それにアプルさんらも貴方が創られたとしても、貴方の想像での範疇です。貴方が実際練りに練った動きだって、彼等は行動に移せますが、それはあくまでも。貴方が”想像しただけの”ことです。貴方”が”動いたわけではない。」
そうなのだ、都結自体が動いているのではなく、都結が創り出した者が勝手に動いている状態に近しいというか、もうほぼそれなのだ。親子で手を繋いで歩いているような者。まぁこの場合子供が親を握って全速力で走って親をぶんぶんと人形の様に振り回しながら走り回っていると言っても過言ではないというか…もう諸ソレ、ではあるのだが、それはこの際どうだっていい。
「優しさは時に仇となる、貴方が一番分かっているはずです。ご理解頂けているならば猶のこと。褒めて頂きたければ言ってくれればそのように動きますし、言わなければ致しません。余り貴方を甘やかしていたら彼らにも叱られちゃいますし。」
それにこっちだって余り甘やかすつもりはない。マルカリータに彼女を任せないというのは此処に起因する。彼女は都結が感情を切ったに一番近しい天使だ。情を持って接したら最期、何時中立から外れるかわかりゃしない。コルンやサワアが対応しているのは、都結が何もエフェメラルらの”空想上で培った世界での主人公役”として選ばれたのではないのだ。
都結自身の精神状態が、もっとも良い状態に位置していた者が見ているに過ぎない。
此処が、天使らが都結を見ている者だった。それ故ウイス以降はコルンやサワアは勿論だが、コニックやクスもいる。何だかんだ言ってモヒイトはマルカリータ、アワモと続いた者。彼は確かに切り分けて話をしてくれる子ではあるが、如何せん破壊神の対応にも忙しい身、余り手を焼ける者ではないので除外されている。
その点コルンは本当に適任だったのだ。都結の成長具合からしても、彼女も言っていたが体内にコルンを飼っていたというのはなにもコルンが好きだからだけではない「コルンの真面目で人として生物として実直に生きた方が精神としても世界としても一番安定しやすいであろう位置」にコルンがいたからである。その為これがコルンでなくてもいい。正直サワアや、何ならウイスでもいいものだ。
それでもコルンに位置付けしたのは、他にも理由があった。訓練を、体力の底上げから何からの面倒を事細かく分析し、面倒をみて少しずつ育て上げれるのは彼の方が適任だったのだ。案外コルンはくどくど言うが、内容を良く良く噛み砕いてみれば的確なことしか言っていない。
というかそもそも都結自体が怠けすぎている処があり過ぎるというのもあるが…まぁ環境のせいもあるだろうから、其処ら辺はコルンも配慮してそれ以上は言っていない。うん、筈である。うん。中のコルンやらなんやらはこの際これも置いて置くとしてだ。
まぁそう言った意味もあり、コルンが適任で、最初から面倒は見て居たし、現在だって気になれば連絡だってくる。サワアだってそうだ。彼が一番最後だったし、何なら都結の精神が一番不安定だった時も見ているのだ。それ故、中立から外れやすいともあり、彼に任せるのはその情報が出て以降、実はその枠から外されている。ソレをサワアは分かってのことだというか、本人自らが提言したのだ。自分が手を出せば、変な方向に走っていきかねない、とね。
「語彙も大分身についておられますが、それでも言語は以前過去のもの。それに頼ってばかりでは話になりませんよ。」
アワモは余りにも優し過ぎる。多少厳しい面はあるが、それでも他の子と比べ、はるかに押しには弱いと言える。クカテルも同じである。何だったら都結、クカテルに対して様子を見ているのか何なのか知らないが、結構グイグイ行こうとする。精神的には結構近い子なのだ。故に外された。彼女は押しには其処迄弱くないし、きちんとするが…如何せん一度怒ると収拾がつかないのだ。ソレを言ったらルトラールら全員一致で却下を貰ったし、普通にこっちもソレを貰わずとも却下している。
ヴァドスは料理が余り良くないというか、上手くいかないというか…そもそも都結の性格上、破壊神やら第六宇宙とは合わない。彼女の優しさに漬け込み、彼女のストレスが常時高い位置に、とあれば無理だろう。ヴァドスも都結も別にいいと言ったが、ウイスは勿論、あのクスが駄目だと言ったのだ。そら駄目であろう。長女の言うことは正しい。特にこういったものは、である。女の勘は頼りになる。
マティーヌもアワモとクカテルに似たような位置だ。母性に近しいのを狙っているのがこれで分かる。ならマルカリータやヴァドスと言いたいが「あんなにぼっきゅんぼんじゃなかった」なんて母親になんてことを、と言える発言はしているが…まぁここら辺も流しておく。そもそもその母親やらの関係で今回の形になっているのだ。充分であろう。
カンパーリやコニックだが、彼等は一応補助として実はちょこちょこ手伝って貰っている。何だったら先日カンパーリとは仲良く話をしていた。とは言っても互いに腹の探り合いではあるが。ソレを考えたらまだコニックの方が期待は見込める。何だかんだ言って都結、コニックとの組手を少しだけでも期待していたのだし、それをコニックだって理解してる。
とは言っても体格差は歴然。かなり甘やかして、としてもその差にすぐ気付く都結が落ち込むなんて、もう見えている。がばがばにそりゃあもう、歴然と。はっきりと。もうくっきり見えてないのに見えてしまうくらいだ。想像に容易い。なので、出来る事ならばひとまず数時間組手をしても息が切れない程に、である。…まぁこの子ものの五分足らずで息を上げるのでその日が来るのは一体何時頃だろうかと思えるほどである。この子、一応数年弱で死んでしまいかねない位置の子なのだが、一体大丈夫だろうか?
コニックだって実は楽しみだったりしている。おかげ様で破壊神が先日毒を吐きに来ていた。余り放置するとまずいので、こっちも手を出すが…余り期待は見込まないで頂きたい。だとしても都結の力をこれ以上上げようとスピードをかけたら
今の始末である。
そう、逃げる。本当に逃げる。驚くくらいに尻尾を巻いて逃げ惑う。追い詰めてしまえば、スイッチが入って多少は動きが良くなるが、大体そうなったら全部、彼女の記憶に残らない。きちんと修練するというならば、理解をしながら、覚えながら、が鉄則。直感だけで生き延びてきた彼女の成長速度は、もう、ルトラールらを使わないと太刀打ちできない程に差が広がっていた。
だからこうして変則的に外も中も囲って、彼女を外に出しているのだ。余りこういうことはしたくないが、彼らも心配してのこと。もう中の人達にまで心配をされて、一体どうするというのだ。これでは大神官が戻って来た時、本当に叱られるでは済まされないぞ。
と言った危機感も加味され、現在は少しだけ厳しくいっている。まぁ感覚的には弟だったメルスの代わり、とも言えるかもしれない。
「確かに期待され、怖いことは分かりますが、だとして期待を損ねるからしない、とはまた話が違いますよ。助けを求めてもいいですし、寧ろ貴方はこれまでほぼ助けを求められない位置におられたので助けを示すということが分からないのもまた想像できます。」
間違ってもいいのですよ。それで死ぬわけではない今なら猶のことです。一番恐ろしいのは貴方がその生死の決断で間違いに手を染め、その身が分からない程に悪へ落ち戻れなくなる日のことです。消滅なんて、させたくないのです。だって貴方はあのお方が見つけたたった一つの
「(光)」
それを押し付けて、どうなる。苦しい思いをさせ、数年で死に絶えるならば。今は安息を求めるのも頷けるが…それを、良しなんてきっと他の天使らは思っていやしない。この子が良い子過ぎるというのもある。期待も高まるし、それに紛れて生き延びてきてしまったこの子もこの子。だから、もしも、これ以上長生きが出来るとあれば、その時間で耐え忍ぶには苦しい。
きっと息が出来ずに死んでしまうことになる。
それこそ、一番、怖いのだ。人知れず気付いたら居ない。目を二度と覚まさない。それが、怖いから…コルンは時々都結を起こしてしまわれていた。コルンがウイスに頼んだのは此処にある。もう面倒がみれないのではない、自分が介入した範囲が、中立から背きかねないという自分の落ち度で手放さざるをえないというところだ。所以にこれは都結のせいではなく、強いていうならというか、もうコルンのせいだ。都結が落ち込むところではない。寧ろ何故面倒を見なかったと怒って欲しいくらいだ。怒ってくれたらよかった。
でも、怒らない。笑って、寂しそうにする。遠くから眺めて、息を吐くのだ。その吐いた息には、一体何が込められているのか。
「お願いに弱いですし、ついでですから今日は一日どれ程悩んでも構いません。今日だけご自身が導いた言葉でお話してみては如何でしょうか?」
『え゛』
それくらいは出来る筈だ。というか、今迄寧ろどうやって生き延びてきたのだろうか?…まさかと思うが……この子、自分の人形を瞬時に作り出して使い捨てしてきてはなかろうか?もしも万が一そうだったら、それが知れたらコルンが、いや大神官も、正直言って自分でも誰もが怒るぞ。人を蔑ろにしている処で済まされない、それは人を見ないと決めた行為だし、それにそれは
「(恐れなくて良い立ち向かって少しでも前を向いて下さい)」
貴方の一番欲しがっていた場所なんて、辿り着けない位置に行ってしまうのだ。
欲しいと、やりたいと言って笑うあの姿が恋しくなる。
嗚呼言っておくが、自白剤なんてもうとうの昔に試している。効果は聞かなかったことにしてほしい。あれはもう禁止だ禁止。少なくともあのコルンが「…やめ、も、やめて…」と泣きそうな声で叫んだことで察して頂きたい。お父様が恋に落ちるのも頷けることだ。きっと「絶対に他の者になさらないで下さいね?」なんて一度は言われていることだろう。
「もしも約束を破ればそうですねぇ…今後打ち込みは禁止で」
『!?!?!?!?!?!??!?!!?』
「嫌でしたらお覚悟を、と。」
ポンと音が鳴って入れば悟空の顔が浮かび上がる。どうやら新しい食べ物を見つけてくれたらしい。都結からも貰えるが、それでも数は希少だし、元は地球から取り寄せているのだ。丁寧に作るというのもあるが、何故か食べるのにというか、作れとは言い難い。あのビルスも少し距離を置くのは…恐らく本能だし、その本能は当たっている。
どうせした日には大神官が怒ることだろうから。
だって彼は彼女との時間を心待ちに
「(嗚呼貴方もその想いだから”維持”をし続けているのですよねぇ?)」
だが、もう時間は来た。
動く時間だ。
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という訳で、それから数十分で辿り着き、悟空と会話しての、ルトラールらでの会話を出せば「出して戦わせてくれ」である。
この際言っておくが、都結が拒絶すればルトラールらも拒絶する。これが都結自体敵の手の内におり、ルトラールらが出てくれば死ぬ可能性が非常に高い状態であれば、彼女が嫌を言っても精神での遮断を試みようとしても、無駄なのだが。其処ら辺は強制的に無理矢理出て来れることになっていることだろう。なにをもってのタルパであろうか。そういうものであるのだ。
で、だ。
「(さ、見物ですねぇ〜?此方に目配せをしても無駄ですよ〜。)」
こういう時、大体顔を見せれば彼女が探って正解を導き出す。今回の作戦はその状態も本当にヒントも何もない状態で、彼女が一体どういう反応を示すか、である。かなりストレスが掛かることだろうから、多少の娯楽は一応用意済み。なんだったらサワアらを呼びつけて抱き着かせ寝かしつけさせても、と考えるくらいである。
何だかんだ言って都結は本当に天使らが好きで。彼らが話をしている間も自分の話や追い付いていけないからと自分から話に行かないで聞いているだけのことも彼らが知らない訳がない。謙虚な子は好きですが、そういう此方が困るのも分かった上で距離を置こうと考えるそういったお気持ちも好きなんですよねぇ〜〜〜〜。
想像上では幾度となく天使らと交流を交わしている都結。勿論それは現実に直面した際、少しでも驚かず、彼らに心配をかけずに、というものだ。そうでなければ想像もしていないだろう。様は体験版だ。一応してみて、実際来たらその通りに動くか、考えたことを試す。とは言っても、それが出来るのは向こうに居た土地での話。
こっちは違う。全員が貴方の心情なんてさらりと読み解けてしまうのですよ。
故にその余りにも可愛らしい想像に、何名かの天使もそっと彼女から見えない処で笑いをこらえて居たりしていた。なんだったら此間コニックとマルカリータが笑い合って居たのを話してビルス様が噴出したくらいだ。彼女等というか、あの二人結構笑うなんてことは見せないし、まぁ自分も笑ってばかりではない。反応の違いというのもある。単にあの二人は笑うツボが違うというというか、まぁ都結の可愛らしい想像がそのまま現実に起きたらたまったもんじゃないと笑ったのだろう。普通に凄いことを考え出すからな。
ま、少なくともあのいつかを望んだ時間を再現するのは良い。何だったら先日マルカリータと話を付け、来週にでも追いかけっこをしてやろうと思っているくらいだ。その時にこの子が気乗りするかにもよるが…まぁ無理ならサワアや破壊神であるヘレスにも声をかけている。最初に彼等でほぐして頂ければ後はもう野となれ山となれであろう。
きっと楽しい時間になる。貴方が望んだ、とびっきりの、夢に近しい道の中に。
『あばばばばば』
「んお?どうしたんだ?何時もなら良いっつってくれんのに…」
「おほほほほ、どうされたんでしょうねええ?」
声をかけても都結と眼なんて合わせない。睨まれたりしても無駄だし、そんなムッとされても鼻で笑い吹き飛ばせるというもの。怒りを知らないというか、怒りを知った先の時間を理解し、無駄だと知って以降怒りそのものを打ち消していることだろう。其処ら辺の対策が余りにも完璧すぎて、正直お手上げ。
ならば別の手を使うまでのこと。
そういう簡単なことを全部潰しているから、首を絞められるんですよ?ねぇ?都結さん。ほら、伝えてやって下さい。そうして、前に進んで、その背中に広がる羽根を見せ、あの方の元に飛び込んでいってやってください。拒絶なんてさせませんよ。中立なんて外させるものですか。
だからどうか、その眼を向けて。
そしてあわよくばその眼に目一杯の
『…えと、あの、』
俯く中、覗き見る悟空。それに気付いたのか、ウイスさんとこっちへ声が掛かる。
「はは〜ん、さてはオラを試してるな?」
「え?」
「な、都結!おめぇ自体戦えるのか?」
『ええっとそれは流石に無理と言いますか〜何と言いますか〜お兄さんの実力と比べられたりされると無理だろって言いたいと申し上げますか〜〜〜〜!!!』
おお、喋った。多少早口ではあるが、それでも彼女がそう言うのは、正直手で数えるくらいである。黒目で、それも髪色だって黒。肩を落とし、もう今すぐにでも逃げ隠れられるなら急いでしそうなくらいには、腰が引けているのが少々見るに耐えないが…まぁこの際良い。どうだっていいとも言いたくなる。それくらいに彼女がこうして居るなんて、なかった。
下手したらこの世界に来て初めてだろうか?
何も感じられない。綺麗に形どらずに、話をする彼女。
今目の前には、都結その者が生きていた。