もしもし、神様?いるんでしょう?4
『(文房具用品だようっひょおおおおおきたこれええええええええええ)』
はい私の勝ち。なんで負けたか、一昨日考えて来てくれよ、な!
なんて変なテンションを上げつつも、都結が大神官を連れてきた場所は、とある大型の文房具特化用品店だ。ありとあらゆるものがあり、マジで此処一日溶けるので、朝から来た。ゆっくり回りたいだろうし。
『ペンとか小道具は専ら私のを使っても構いませんが、流石に私のを借り続けるなんて貴方も気を悪くしてはいけませんからね。』
「流石に其処迄は」
『私の好きにさせて下さいな。それに、自分が気に入ったものを一つ持っておくだけでも、結構いいもんですよ?』
私も欲しいものがあるしといえば、折れてくれる。本当に彼は優しい人である。こんな人が親ならどれ程良かったか、いやあの親で良かった。あの人達から産まれたから、貴方に会えたのだ。それでいい。それがいい。
「こちらは?」
『嗚呼日記帳ですね。そういや巻物使ってましたよね、それも筆。』
「よくご存じですね。」
『色々ね。ご覧になります?』
「あるんですか?」
勿論、書道の方面に行けば、大神官の足も浮つくようで。嗚呼、本当に可愛げがあると思う。店員さんにお話をすれば、試し書きも出来るのだそう。マジかそんなこと出来るんだ此処。別にしてもいいが、少し考えて止めることに。そりゃあまぁまだ日本語かけすらどころか、お兄さんが出来るのは精々神々の言語だろうし。物に置いて置くって以ての外だろう。
別に巻物で良ければ購入するが、正直値段が張る。しかも中々にお目に掛かれない上に、湿気類もある。全王宮がどういう状態かは知らないが、こっちは湿気との格闘ばかりだからな。だが彼の扱うものに手は出したい。そう考えたら店員さんがおすすめをとしてくれたのが、
『嗚呼、合成紙か〜』
「此方ですと耐水性も高く、液体でも破れにくい傾向です。」
「ですが少々厚いですね、このままでは物によって破損も安易でしょう。」
「え?」
「用紙のみでしたら何方にありますか?」
「此方にありますが…」
ふむと考える彼に、嫌な予感がする。
『もしかして一から作成なさられようとしている????』
「え?いやいや、そんなの出来る訳ないですよ〜!」
「可能ですよ。此方の方が値段もかなり良いですし、此方を頂いても?」
「え」
『っふふふ、店員さん滅茶苦茶驚いてましたね?』
「ですね、私がそのようなことをなさるとは思わなかったようで。」
『そもそもこの用紙ロス現代社会で洋風ノートはおろか、大昔に使用した巻物を態々一から作成して使うなんて人、この世に何名いるかどうかくらいですよ。』
あるとしても博物館の修正とか、だろうか?そしたらもっと違う処で買うだろうし、もっと高額になる筈だ。余計に驚いたことだろう。まぁ私も巻物は作ったことがあるので、正直驚くのは例外ではなくてだな。
『あれって結構面倒ではないですか。長くなればなる程皺も多くなります。』
「コツがあるんですよ。宜しければ後でお教え致しましょうか?」
『是非とも。』
「ふふ、では後程、ですね。それで貴方の欲しい物は何方に?」
此処です。そう言って入ったのは、海外向けの場所。店に入るとおおいらっしゃいと声を掛けられる。
『どうも、お久しぶりです。』
「顔を見せないからてっきり家に帰ったか死んだかと思っていたが、元気そうでよかった。そっちは?」
『叔父です。暫く訳あって同棲してましてね。』
「おお、そりゃ安心だな。」
「彼女が世話になっていたようで」
「いやいや、とんでもない。」
此処は?
嗚呼、海外向けの用品を取り扱っているんですよ。
「アメリカからメキシコ、後はヨーロッパ方面のコアな客層にもね?」
『うっ』
「彼女がよく好んで使用される処は何方ですか?」
「ヨーロッパ方面のドイツだ。ほら”コルン”って酒があるだろ?茶色い酒で、あの色の手の」
『ちょ、まっ、店長!??!?』
「ほぉ?それはそれは。」
嗚呼バレてしまった。もうおしまいだよ此畜生。誰が親に言うか。もう殺して。私をいっそのこと殺して欲しい。にんまりした目がドキドキする。不整脈作れそうなんですが。
「此処ですよ」
「随分と広いですね。」
「良い客層があるんでねぇ?」
『うっ頭が痛い。』
「っははははは!!いいじゃねぇか!そんな恋人の親に知られたみたいな顔せんでも!!」
「『(強ち間違っていないんですよねぇ〜)』」
恋人ではないが、正直言って、大神官からしたら都結のことは気に入っているし、もしも我が子と、なんて日がくれば大歓迎ではある。まぁ自分が娶っても良いくらいだが、彼女の感覚からしたら、先に自害を取りそうで怖いので、此処はちょっと様子見をさせてもらう。まぁ余力があれば攫って行きたいところだが、そうできたら話は終わっていることである。
古そうな本を手に取る彼女に、そちらは?と声を掛ける。どうやら其方の方面で古い白紙本を作っている場所があるらしく、其処から直送されているのだそう。
『店長色の希望良いですか。』
「まぁそう言うだろうと思って見本で三冊くらい持ってる。ちょっと待ってろ、呼んだら入って来て良いからな。」
『あざ〜〜〜〜〜〜っす!!!!!』
手を叩いてお辞儀をした彼女に、いいってことよと言って捌けた彼。其処は本来客人が入って良い処ではない。では何故仲がいいのか。それは単に此処でバイトをしていたからである。
『三年程バイトしていたんですよ。海外の言語も覚えられるし、海外の方との交流も出来ますからね。』
「コルンを覚えるために?」
『うぐっ…許して、許してく、ゆるしてぇ〜〜〜〜。』
「ぷっ、っくくくくく、別に怒っていませんよ。怒る理由なんぞありませんし。」
こんなことが彼に知られたら、もう頭を抱えること間違いないだろうし。彼が頬を染め上げるなんて処、正直見たことが無いので、出来ればやって欲しい物である。きっとこの子はしてくれるだろう。彼の想像を軽々しく上回ることばかりしているのだ。その場所に居たら是非ともみてみたいものだが、な。
そんなことを話していたら声を掛けられたので中に入る。こじんまりした事務所の中に入って見せてくれたのは数十種類の本だ。
「特注で、とある工場の主がもうこれ以上生産出来なくてな。少々値は張るが、ちょっとやそっとじゃ破けないし、数十いや、数百年か数千年単位で保管可能だ。」
『…待って、待って下さい。もしかしてこれ、全部[[rb:羊皮紙 > ようひし]]じゃないでしょうね?』
「その通り」
『無理です』
「何故ですか?」
「羊皮紙はな、動物の皮を加工して筆写の材料としたものを言うんだ。紙とつくが、狭義の紙ではない。」
『待って先に聞かせて店長。これ、もしかして中世の羊皮紙職人が手掛けてません????』
「おっ良く気付いたな!」
『もっとむり!!!!!!!!!!』
こんなに拒絶なんて、見たことがない大神官は目を丸める。声を張って言うなんて、なかったからだ。ひたすらに無理無理と言っているのも、理由を彼女が説明してくれた。
『この世で製法が周知されていない当時の製法を守った職人が生き残っているだけでも凄いのに、その職人が手掛けたなんて、もう数万とかでなく、数百、いや数千万か数億の単位付く代物でしょう!?それを何で三冊セットで十五冊も此処にあるんですか!!!!』
「だ〜から貰ったんだって。寧ろ置く場所に困るからマジで金要らんので上げるって押し切られて来たんだよ。」
『阿保ちゃうか!!!!!』
羊皮紙というのは、そもそも超絶に工程が面倒くさい。その長期間保存が出来るというのもある。皮から厳選するが、良いのはその分厚みも増える。だが見た所均一で、加えて非常に薄いのに、量もある。これは数年単位とかで作っていない。下手したら数十年単位、世代を交代して作ったレベルだろう。一体どれ程の獣が血肉と化したのか…。
まぁだとしても、だ。手あたり次第やったのではなく、こういうのは狩りをした収穫だろう。一応聞いたが、狩りをした後に残る皮を貰って作っていたのだそう。しかも趣味でだ。何その趣味。凄いコア過ぎない?作る工程だけで一か月くらいかかるんですよ。これ。
冷たい流水の中で時間を掛け、汚れを洗い落とし、毛を抜きやすくするための特殊な液体へ大体約十日間程皮をびっちゃびちゃに入り浸して取り除く脱毛。その間に数回棒を使って擦って毛抜きするが、この工程で皮の保存の為だけに使われていた塩分やら余分な脂肪分も取り除かれ、此処が出来る出来ないで全てが変わるのだ。
色々取れたら、一度浸からせていた養分も取り除くため、更に二日間程流水でゆすいでいく。比較的温暖な地方では、生皮を日の当たる場所に放置して皮を軽く腐敗させ、毛を抜きやすくする場合もあったらしいがな。だとしても肯定的に手間暇がかかり過ぎている。
現代の日本でも、和紙は高級品だ。数百年も保管出来る程の質を作れるというのは、職人技なのだ。海外のそれも羊皮紙は日本の和紙と同等と言っても過言ではない程、手間暇がかかる上に、職人の手によってその保管の年数も左右される。ましてや、先程言っていた中世の、というのはもう「数百年は保管できる手を持っている」と言ってもおかしくないのだ。
そんな貴重なものを、サラッと貰って如何なものなのだろうか!そんじゃそこらの大量生産出来る再生用紙とは訳が違うんだよ訳が!!!
その皮は紐を使って木枠へ張り、製本と削ぎ落しをしていく。まぁ中身は省くが、出来たら仕上げをして、磨きもいれ、完成。写本以外に、護符などの御守りとかにも使用され、余さず使える代物なのである。というかそうしないと勿体なさ過ぎるものだ。手間暇かかり過ぎているからな。
なお、これらの工程は物理的な加工であり、皮の構成物質であるコラーゲンをタンニン等と化学的に結合させるような、なめしとは基本的に異なるが、其処ら辺は話を流させてもらう。
『流石に貰えません。』
「其処を何とか頼むよ〜お前が来ないからボヤいたら暫く変な音もならないし、来てから変なこともないしで嬉しいんだ。」
『待って怨霊付き?そんな苺のトッピング乗せたので♡みたいな感覚で付けたの貰って来ないで下さいよ!!』
あと私に持たせるな。
「だが本当に何にもないんだよ。」
『うう〜確かに凄い良い感じに手に馴染むから困る…本当にえぇ。』
流石に用途に困る。中を開けば白紙ばかりだが、数合わせか知らないが、こんな感じで書いたらこうなるよ、的なお試しの物まで見させて貰えた。何ならくれるらしい。マジかよ。
「本当は全部合わせて一律で三万で、と言いたいが流石にただで良い。」
『いや、払わせて下さい。』
「もうそれ以上持っておきたくないんだよ。金貰ったらたたられそうで怖い俺の身にもなれ。」
『私はその元凶を貰うんですよ。こっちの身にもなって下さい。』
いや本当にとんでもないな。一冊も重い、が。割と思った以上には重くない。ちょっとした分厚い書籍程の重さだ。それに羊皮紙はインク自体沁み込みにくい為、書き損じは削って直せるという利点がある。その為公文書にすら用途されていたこともあるのだそう。因みに古い写本は表面を削り、再利用することもあった。それはパリンプセストと呼び、状態によっては元の文章が判読可能な場合もあったりする。
『というか羽ペンはどうしたんですか。流石に現代のインクでも、ペン自体が無いと駄目でしょ。』
「そう言うと思って今回に限りセットでペンもセットで貰ってきました。」
『そう言う用意周到な所は好きですよほんと。』
とは言っても、三本しかない処、恐らく十五冊ワンセットなんだろうな。とは言っても流石に全部貰うと家が落ちそうである。流石に一組のみ貰いたいところだ。本当は一冊だけでも良いんだが、組じゃないとって言うんだから仕方がない。まぁ貰い手も少ないことだろう。流石にこれは、ちょっとね。
『はぁ、分かりました。受取りましょう。』
「っしゃ!!!」
『ただし!本人から文通でも良いので交流が欲しいです。可能ですね?』
「出来るぞ!何なら今送った!!!」
『はぇ〜〜〜〜〜〜』
流石である。手が回るの速過ぎる。
「これだけですか?でしたら一度車に戻りましょうか。」
「それなら俺も持っていくよ!店は鍵かけたら良いからな。」
そう言って一緒に荷物を持って言ってくれる。
『これ作った人の名前をお尋ねしても?』
「確か、レイモンド・デア・ツァイトヒューテルだったかな。」
『(”時間の守護者”か、随分と良い名前だな。)』
古い時を止める様に、修復するものか。レイモンド自体はゲルマンの助言と守護を組み合わせた名前だろう。「賢明な守護者」という意味をもっている筈だし、賢明な時間の守護者か。随分としたと思ったら、まさかの作った人は女性なのだそう。えっまじか。
「嗚呼本当さ。其処の子は二つ名前を貰っていて職業の名前がそっち。本名はアメリ・ツァイトヒューテルだったかな。嗚呼それこそあれ誰だっけ、あのお前の好きなえっと〜」
『待って服の色は』
「分からん、嗚呼でも何処だったかな、第、第…あの、ほら、お前の好きな」
『分かったサワアか。』
「それだ!!!!そいつ似なんだよ!!!!」
「何故それだけで判断出来るんですか。」
さらっとつっこむのも無理は無いと思う。
「髪はサワアよりも長いが、ちょっとウェーブ掛かった可愛い子だった。」
「お会いしたのですか。」
「こういう職業上な、一度会って直接話をしてから物流するんだよ。向こうに滞在して、つてを使って行ったら偶々会ってな。」
嗚呼コイツと仲良くなったら絶対喜ぶだろうなって。
何故に私。
「お前海外の特に其処ら周辺に興味あったろ?」
『いやいや、其処迄じゃないですよ。』
「馬鹿言え、普通は図書館やら人伝いにまで手を付けて収集する馬鹿はおらんわ。」
それにその子を推すのも理由がある。
理由?
パタンと車の鍵を開け、中に物を入れた後のこと。ドアを閉めた音と同時に聞き返す。
「何か訳が?」
「ま、会ったら分かるよ。とは言ってもこっちに来てくれるそうだがな。」
『え、いつ』
「明後日だそうだ。日本の文化だけでなく、お前さんの話もしていたからな。」
『何故に私生贄されてんの????』
「しゃーねぇだろう?だって交流条件が”年齢の近い女の子”をご希望だったんだからよ。」
『あれこれお持ち帰り確定コース入った??????』
そう変な思考に走りつつも、な訳ないと笑って応える。
「とは言っても仕事だろうから、帰りに寄って来いよ。その日くらいは帰りが遅くなるが、構わないだろう?」
「えぇ、構いませんよ。」
『いやでもぉ』
「仕事ばっかしてたら次なんて進めねぇぞ?」
『うぐっ…分かりました。何とかしますよ。』
嗚呼ドイツ語ですよね、英語は?
多分余り考えない方が良い。ほぼ話していた処ドイツ語だったからな。
うひゃあ……
「だが日本の文化を好き好んでいてな、ご両親が非常に厳格で海外に行くのは原則NGだったんだが、今回特別に許可が下りた。」
『なんで』
「お前さんに会うならいいってよ♡良かったな!ご両親のハートゲット出来て!!!」
『どうしてそうなる!!!!』
もう毎回そうだよと頭を抱える彼女に、以前も?と言った大神官に応える店長。彼女を連れて行けば、まぁ高確率で良い取引が出来るのだそう。何でも引き寄せるのかもしれないのだそう。向こうの当たる占い師に言われたことがあるんだそうだ。
『天使の類に守られてるって言ってテンションぶち上がったのはいい思い出ですよねぇ〜』
「っはは、それな?しかも正直に生きて居たら願いが叶うって言うんだから、良いよ本当に。」
『いやだよぉ、僕正直になんて生きれないよぉ…この世の人生詰む未来しか見えない。』
「それ程ですか?」
「んまぁ優し過ぎるからねぇ〜。」
ちょっとは齧ってるから分かるけどな。そう言う彼がぼそりと声を掛けてくれる。
「あの子の根はこの世界じゃとてもじゃないが生きれない。どういう教育をしていたのか知らねぇが、良くあんな子を作ったもんだよ。」
「…それはそれは。」
「まだマシになった方だが、それでも脆い。」
昔はもっと酷かった。触れるなんて、いや、見るのも絶えない程だ。それで高校生だったので、幼少期は考えたくもない話である。引き取ることも可能だっただろうが、彼女の性格上、親を放すなんてことはしたくなさそうだった。見守るしかなかったと言えば、それもそうだろうなという。
「あいつは少々縋り過ぎる傾向にあるからなぁ。」
「縋る?彼女がですか?」
「嗚呼、書物も絵も、展示するものだろう?」
”額縁の中に保管出来る存在が好き”
そう彼女は言っていたのだそう。それに目を開いて止まってしまった。
それは、つまり。
「…そうですか、彼女がそんなことを。」
「気付いてなかったのか。ま、無理もないか。流石に叔父だと見える範囲も限られるだろう。」
「ええ。」
「昔よりかはマシだから其処迄心配しなくていいだろうよ。何か相談があれば此処まで。」
「助かります。」
そう何か知らない紙を貰う。電話番号だと言って説明してくれた。
「俺の名前は
「私は」
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「偽名ですか?また何故に。」
『日本人は交流ありきですからね。貴方も下界を知っているならば、自身の名を明かすなんてします?』
「別に此方は態々出向きませんからね。必要性がないので考えたこともありませんでした。」
そう言うのは大神官と一緒にショッピングをする前の時間だ。時系列的には話をして、一晩明かした次の日である。家を出る前に、名前を決めて置こうと言ったのだ。叔父だけの設定ではちょっと心もとない。
『一応公言はしていませんが、父方の派生は告げていませんし、母方を名乗っても全然構いません。ですがこっちで名前決めていいですか?』
「それは願ったり叶ったりですが、よろしいのですか?」
『えぇ、丁度貴方らしいお名前を見たので。お気に召せば、ですが。』
「では、お名前を」
『貴方の名前は、』
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「
「良い名前ですね。昔にしては良い名前を付ける親御さんだ。」
「そうですか?」
「えぇ、ご存知でないですか?律は規律や法律を守るだけでなく、しっかりとしていて、優しく良い人なるようにという願いが込められるものですよ。「正しく生きてほしい」という気持ちを込めた者。」
その先の未来が、どうか貴方にとって優しく正しい道を生きて欲しい。
「そういった意味がありますからね。ってどうなされました?」
「嗚呼いえ、お気になさらず」
本当にあの娘は、もうどうしようもない。最初は何故と思っていたが、あの感じ、恐らく自分だけでなく天使らの名前まで決めていることだろうな。まったく、規律や法律を守るというのは、中立を守るという意味から取って来ているのだろう。加えて人を入れたのは、「今は人間で在る者」という意味が強い筈だ。
人間であっても、貴方にとって、優しく正しい道を歩めますように。
最早呪いだ。こんな最上級の呪いなんて見たことも聞いたこともない。彼が言った様に親を見て見たいものだ。どういう育て方をしたらこういう子に育つんだろう。一親としてもご教授願いたいものだ。例え天使じゃ、神じゃなくても。今迄よりも悪い方向に向かわないように。なんて、随分と、酷い言葉をくれるものだ。
本当に、貰ってばかりで申し訳なくなってしまう。
これで”以前よりマシになった”というのだから、もう恐ろしくてかなわない。この自分が恐ろしいだなんて思うのはきっと彼女くらいだろう。全王様のご友人である孫悟空さんですら、其処迄脅威とは思わないのに。あの子の純粋さは違った意味で恐ろし過ぎるというもの。勿論孫悟空さん自体恐ろしいと思わなかったわけでもない。あの全王様とご友人に、なんて本人が許すことも今迄なかったから、という未知なところもあるが。
「では有難く頂きますね。何かあればご相談させて下さい。」
「嗚呼勿論。次来てくれたら住所やら何やら教えてやりますよ。」
「良いんですか?私が貴方を騙しているかもしれないのですよ?」
「貴方は大丈夫ですよ。目が言っている。」
あの子を守って下さい。貴方の届く範囲で、あるならば。
「私はもうこれ以上守れませんから。」
「…!…分かりました。とは言っても、貴方に頼まれずともそう思っていますがね。」
「おやおや、コレは失敬。流石に子供の面倒を13回も見ていりゃお茶の子さいさいか。」
「え?」
「っくくくく、じゃあね?”大神官様”?」
「っな」
また。そう言って都結に向かって行って声を掛けた後、店に入って行ったものに、足が止まって今度こそ声を掛けられる迄何も出来なかった。こんな所子供達に見られたらしまいがつかない。
『全く無理難題をつけやがって。あれ、おじさまどうされました?』
「ああいえ、なんでも。そんなことよりも次は何方に参りますか?」
『嗚呼あとは……』
「(…いけませんね、ほんと。此処の人間は私のことを知っている者が多すぎる)」
其処迄危険視はしていなかったが、都結が懸念視していたことが露わになって、改めて危険を身に感じたものだ。振る舞いをなんとかしなさいと言っていたのは、間違っていなかった。どうでもいいかと思っていたが、こう言われてみたら、名前を明かさないのは良いことだと思うし、この際だからちょっと崩した方で対応するのも気分転換で良いことだろう。まぁ、戻った時に出たら困るが。
その時はその時だ。今は今、私は今
”人間で在るのだから”